第1回ハンガンネット懇談会(ハンコン)で何が語られたか
2014年4月13日(日)、ハンガンネットの呼び掛けで第1回ハンガンネット懇談会を東京で開催しました。韓国語の学院や講座経営者と運営者約20名が現状を報告し、共通の課題を確認しました。以下、その懇談内容の要旨です(機関・個人名を伏せ、複数の意見を1人にまとめるなどの編集を施しています)。
■ メルマガの効能、講師管理の苦労、日本語教育の現場
I:10年間運営し、メルマガの登録数も4千名を超えた。メルマガに広告を出すと反応もよい。設立当初は講師の管理面で苦労が多かった。現在は授業内容の充実に重きを置いている。ベテラン講師が驚くような授業をしているのを見るにつけ、外国語を教えることの難しさを感じる。他方、海外の日本語教育の現場はどこも教授法が統一されている。
□ 交換留学経験者のフォロー
韓流ブームのころは初・中級レベルが多かったが、今は中・上級に広がった。最近、交換留学で韓国に行った経験のある高校生や大学生が通訳をめざしている。社会経験のない人のフォローが難しい。
■ 韓流ブーム、日韓関係の悪化と初級学習者の減少
S:2002年にスタート。土台を形成した後に韓流ブームを迎えた。 最近、日韓関係が悪化したためか、初級レベルの学習者は少なくなった。中・上級は変わらないが、初級は約20%減。協力して市場を拡大する必要がある。
A:2003年にスタート。韓流ブームも去ったせいか、最近は生徒数が減少し、苦戦している。他校の状況を聞きたいと思い、懇談会に参加した。
■ 個人レッスン、韓国人講師と日本人講師
H:2002年にスタート。当初は個人レッスンを中心に教室を経営した。韓流の影響で広がったが、最近は初級者が入らなくなった。グループレッスン中心のクラス編成をしてきたが、最近は再び個人レッスンも行うようになった。どうやって初級者を集めるかが課題だ。入門と初級は日本語母語者が教え、中級から韓国語ネイティブ講師に移行する。日本語をベースに勉強したい年配者が多い。これまで単独で関連イベントを開催してきたが、この機会にみなさんと合同開催する方式を検討していただきたい。
N:1983年にスタート。個人レッスンが中心。危機はあったが、「冬のソナタ」で受講者が増えた。個人の負担を考えるとグループ授業を中心に考えるが、教室の確保問題などがある。初級者向けにハングルの読み書き5回ぐらいを無料にして広告、その生徒が残るようになった。生徒は日本語と比較しながら勉強する。日本人とネイティブ講師がチームで教えると初級学習者も馴れていく。中・上級用の教材をネットワークで作ることができれば、みんなで使えるのではないか。
■ 学習者の高齢化と多様化、転校生
B:15年になり、最近は生徒の高齢化が問題になっている。高齢化クラスをどう維持していくか。学習の目標も多様化してきた。専門的に学びたい人、韓国に行って遊びたい人に大きく二分できる。学習者のニーズに合わせてクラスを細分化し、少人数クラスを増やしたが(2名でも開講)、どうにか講師料を捻出している。最近、通っていた教室の閉鎖などで他の教室から「転校」してくる生徒が増えている。
□ 教室で学びたくても学べない人がいる
– 大学のオープンカレッジでも5名しか集まらずに開講できなかったなどという話しをよく聞く
– 初級レベルの学習者が少ないという話しだが、人数不足で講座を維持できなくなった結果、教室で学びたくても学べない入門レベルの学習者がいることは問題だ
– A県では、非営利の機関がサークルを持っているケースがある。地域ネットワークを作って情報を共有し、講師同士が連携することで何かできないだろうか
■ 経済状況の悪化と教室運営、スカイプ
Y:2009年にスタート。個人クラス2、グループ・スカイプ1クラス。以前多かった専業主婦が仕事につくようになり、受講回数を減らして運営している。月4回のクラスは1クラスだけで、他は月2回のみ。他の教室では、経済的に厳しいために回数を減らしてくれないかなどの要望はないだろうか。経済的な理由でパートに出てやめる人もいる。継続していれば、生徒同士のつながりも役に立つ。講師が我慢して講座を維持すれば将来につながると考えて継続している。スカイプはグループでつないで運営している。
■ 運営管理のIT化、ネットワークによる共同運営
F:運営管理面のIT化がぜひ必要。数年前からオンライン化を進めてきたが、オフラインの人はオンラインに興味がない。出席や授業の進度などの管理を書面で行っていたが、振替え授業の情報伝達などを含め、教室運営全般をIT化した。Google Docsで授業の進捗度管理や生徒管理を行っている。単独では難しいが、ネットワークで(ソフトやツールなどの)解決策を共同で借りて運営できないだろうか。
□どう広報するか
S:広告資産が足りない。媒体にお金を出すのは難しいし、できない。月々何万円程度で広告が出したいと思っても、粗雑な広告手段しか使えない。チラシを定期的に配布するのは効果的だ。地方では、どこに学校があるかわからない。インターネットを見る人も見ない人もいるので、インターネットとチラシを並行して配布することを徹底して続ければ必ず効果はある。
■ フェイスブックとツイッター、ウェブサイト
F:2010年にスタート。ツイッターとフェイスブック(FB)を中心に、韓国語の学習に関心のある人に見てもらえるよう工夫している。例えば、長文の説明が必要な場合はFBを利用する。最近、ツイッターをみて入学する生徒が増えた。個人レッスンをベースに運営している。生徒数30名から始め、ようやく100名になった。授業では、なるべく日本語で説明する。日本人学習者のブログなどを参考に、幅広く韓国語に興味がある人にツイッターやFBにアップし、並行してウェブサイトに掲載し、生徒数を確保できた。
□ 集中講座を通じて集客
F:3日間の集中講座など、レベルごとに工夫して運営している。3名以上集めないと収益はないし、講座の度にテキストを作成する手間はあるが、4時間ずつ3日間開講する。課題に作文を課し、提出してもらう。すべて黒板に書いて説明する。講師6名(1名は日本人)。
□ 韓国人講師はこわい?
– 韓国人の講師はこわいという生徒がいる。なぜか、どこがこわいのか
– 韓国人講師の授業では半分が雑談という批判もある。それも日本語で話すという話をよく聞く
– 日本語母語者に文法の説明をするときは日本語で解説することが大事
■ 講師のリクルート、生徒の募集
M:地方では講師を選べない。韓国語教授法など専門的な教育を受けていない、韓国人だというだけで個人で韓国語で教えている。韓国人講師にこれを聞いてもよいのだろうか、答えてくれるのだろうかという生徒が集まってきている。
H:地方には適材がいないから、講師を選べない。近隣大学の卒業生や院生とネットワークを作っているが、彼らは本業を持っている。地方都市は人口も生徒数も圧倒的に少ない。カタカナ式の発音でもよい、韓国語はこういうものだと理解してもらえば十分だと思っている。生徒集めで苦労している。ブログとホームページをみてくる人が最も多い。地元の求人誌に1コマいくら式の広告を出している。悩みは全国共通ではないかと思う。>
J:2012年にスタート。S県で開講していたが、T県に引っ越したので、そこで再開した。悩みはみなさんと同じ。周りに優秀な講師がいない。小規模ながらパンフを自分で制作し、口コミで募っているが、発信力が圧倒的に不足している。外的要因が大きい。優秀な講師がいない。それ最大の課題だ。
韓国へ生徒約10名を連れて行き韓国で授業を行うが、韓国にはよい講師がいる。韓国に行くと疑問が解けるという声が多い。そういう人たちを呼び込めないか。人材不足と対外的な発信手段の確保が課題だ。>
S:想像しにくいだろうが、10年前には東京でも講師が不足していた。優秀な講師は待っているわけでない。韓国から連れてくる方法がある。ただし、韓国のよい学校で高給をもらっているところから講師を連れてくるのは難しい。韓国語講師課程を卒業した韓国人、または3ヵ月程度のインターン、本当に能力がある人であれば採用し、ダメならば帰っていただく。地方でも好条件でできるのではないか。
■ 日本人講師と韓国人講師、よい講師とは
J:13ヵ月経って、早い人はTOPIK初級を受けるまでになった。学習動機の高い人は上達も早い。日本人講師には安心感、韓国人講師には文化。両者が交互に担当する。悩みごとは日本人講師に、発音などは韓国人講師に分業すれば効果的だろう。よい講師を養成することが最大の関心事。
R:2007年にスタート、生徒数約150名。去年9月に第2校を開講した。悩みは大体みなさんと共通。教材、講師の教育の問題。講師のレベル。よい講師をどこから連れてくるかが大きな問題。教師資格を持たない講師がほとんど。韓国語教員資格を持っている講師がどれほどいるだろうか。自分で勉強してみて、教師資格は必要だと思う。講師に対するペイを考慮すると韓国から連れてくるのも難しい。大学の先生とのつながりで派遣していただいたり、長年自分で教育してきた講師はいる。これからは資格のある講師の獲得に向かっている。
C:よい講師の条件は、講師たちにこういうものだと言っていただければ、講師も意識化できるのではないか。どういう方策があるか、自分たちでも考えなければならない。
■ 学習者の多様化、生徒募集
R:資格をとって何かをしたい学習者は少ない。趣味で学ぶ人が多いので、学習者に応じた教育方法を考えなければならない。どうしたら興味をもって上級まで続けてもらえるか、悩みは尽きない。3年前からK大学へ生徒を連れていき、料理教室を開催するなど、生徒が興味を持てるように工夫してきたが、最近は自分が体力的に難しくなった。
K:2009年にスタート。料理も含めて60名。FBやブログ、ホームページ管理、授業まで一人でやってきた。去年から講師を1人雇っている。1-2名から始め、料理も習い始めた。
新聞の折り込み広告を入れても1人も来なかった。去年ようやく、市民講座をやめた生徒たちが入ってきた(ブログの効果)。ブログはどんな講師かがよくわかる。韓国語講座テキストに広告を載せたりしている。生徒も増えたので教室を借りようとも思うが、家賃を払えるかなどの問題もあり、躊躇している。教材開発などもしなければならないが、単独でやるのは無理。よい講師を探している。意見を伺いたい。>
T:長年の間には、厳しい時期もあったが、最近は非常に厳しい。専門学校でも第二外国語としての授業を減らしている。受講者は最初の1-2回で継続するかどうか決めるようだ。日本人の入門初級者を対象に調査し、年配者にはどうするかなど、経営だけではなく語学的な面から研究する必要がある。
■ 市民講座・個人経営
U:S県の市民講座、公民館、サークルで教えている。生徒の問題、教育の問題など悩みは尽きない。生徒たち、年配者への配慮などあるが、みなさんと悩みを共有できて大変うれしい。日本に住んでずいぶん経つが日本語が完璧ではなく、逆の立場にある日本人が韓国語を学ぶ気持ちはわかる。>
P:交流が大事だと感じた。講師同士の交流、経営者同士の交流。お互いをよく知ることが大事だ。年に何回かこういう場を持ち情報を共有することが大事だ。
H:どうやって生徒の韓国語の発音を矯正するかが最も大きな課題だ。
■ 公的機関と民間機関の関係
G:80年代90年代を通じて公的機関の韓国語受講者は業務上で韓国語を使う男性が主だった。最近は圧倒的に女性が多い。毎年進級テストを実施し、合格すると次のレベルに進むようにしている。「嫌韓ブーム」のせいか、民間のみならず公的機関でも生徒獲得は難しいが、定員の倍程度の応募はある。韓国語以外の科目や料理教室・イベント等を企画している。
U:公的機関の受講料は民間機関の約半額、施設もすばらしい、講師料は市場価格の2倍程度だ。たとえば、公的機関は初級クラスだけ実施し、中上級は民間機関で学ぶように促すなど、公的機関の教育事業を韓国語の総体的な普及を図る方向で刷新する必要がある。精一杯努力しているのに報われない民間の学校を後押しするのが公的機関の役割であるはずだ。ハンガンネットとして提言することも一案として検討すべきだろう
■ 主催者ハンガンネットより
ハンガンネットの設立当初とは状況が変わっている。だからこそ、ハンガンネットとしてやるべきことが増えている。ネットワーク化することで打開策を見出すことができるのではないかという意見も出た。今後皆さんと協議しながら具体化していきたい。会員非会員にかかわらず、事務局に意見を提案していただきたい。第2回懇談会もぜひ開催したい。第1回に出席したくでもできなかった人も少なくない。次回はぜひ参加していただけるようにしたい。
[文責:ハンガンネット事務局]