通信022 ハンセミ09東京レポート

【週刊ハンガンネット通信】《第22号》(2011年11月7日発行)
ハンセミ09東京 レポート

フェリス女学院オープンカレッジほか講師 阪堂千津子(はんどうちづこ)

すでにご存じのとおり、11月5日(土曜日)に、東京・飯田橋のアスク出版で「ハンセミ09東京」が開かれました。
当日は日本語・韓国語講師や講師をめざす留学生など総勢25名が集まり、3時から6時半まで、川口義一先生の講義を熱心に受講しました。
今回は、少々長くなりますが、この様子をレポートさせていただきます。

まずはドイツ語のデモンストレーション。
4人が前に出て、「立ちなさい」「さしなさい」「入れなさい」「置きなさい」などの動作を、先生の言われる通りに行います。
もちろん全員、ドイツ語は初心者です。初めはさっぱりわからないのですが、失敗もしながら、体で覚えていきます。

何度も繰り返し聞いているうちに、意味不明のドイツ語が、意味を持ったかたまりで聞こえてくるようになるのが不思議でした。
人間は意味と音が結びつくと、理解ができるようになる、という言語習得論の言葉を実感しました。

次はロシア語です。家族写真を見せながら、先生が人間関係を説明していきます。
誰と誰が兄弟です、かれらが両親で、この二人は夫婦で、・・というような内容(おそらく)が、ネイティブスピードで話されます。

受講生からは「わからない学生の気持ちになれた」「間違えるとプレッシャーだけど、4人だから(=仲間がいるから)楽しい」
「知っている単語と似ている音声を手がかりに推測していった」というような感想が出ました。

「もうすこしペースを落とすとゆっくりと考えらえるのでは?」という質問には、「集中しているから大丈夫」とのこと。
たしかに、機関銃のように話される先生の言葉も、やっているうちに慣れてきます。

教室でいつもあのように話されているのなら、教室外のわからない音声に対する恐怖感がなくなると思いました。

最後はフランス語です。母音と子音の発音を色にたとえた図を用いて、学生に発音させます。
ポイントは決して教師はモデル発音をしないこと。実は、教師が発音してしまうと、学生はわかった気になって、まちがった音でとらえてしまう可能性が高いそうです。

教師はぐっとこらえて、学習者自らが正しい音を見つけ出すまで、何度でも言葉(日本語)で説明します。
私は4人のうちの1人になって体験してみましたが、なかなか思い通りの音声にはなりません。
でも、ほかの3人の発音がとても参考になりました。そして、自分で獲得した発音は不思議と忘れないんですね。

今回のセミナーで、私が最も印象に残ったことばは「教えないこと」です。

「教師が教えると、わからない人はバカになる。しかし、教師が教えなければ、わからなくて当たり前なのだから、間違えが恥ずかしくなくなる」。

教師が教えてしまうと、「できる人」は先生の話が理解できる人ということになります。
川口先生いわく、「説明したらわかったことをテストしてはいけない、これは不公平です」。

なるほど。私と同じような方法で理解できる人だけが、テストで良い点をとることになってしまうんですね。
たしかに今回のデモ授業では、失敗しても、みんなが笑いながら楽しんで授業をうける雰囲気満点でした。

川口先生は、今回のような教授法を授業の導入部分に取り入れ、あとは教科書に戻る、という方法で授業を行っているそうです。
また、人数が多いクラスでも、数人が前にでてきてもらって実施すれば、ほかの学習者に十分に集中してもらえると思いました。

引き続き、「初級文法の外国語教授法」は時間の都合上、前半のみを講義していただきました。
テーマは「文脈化」と「個人化」です。

これも印象的だったのは、「教室の文脈を無理して教室外の状況に合わせない」。
最近流行の「会話練習」を重要視するあまり、不自然な練習をさせるのはおかしいということですね。

たとえば、受け身表現などは、「自然な会話」の状況を作り出すのは難しいので、
書かせたり読ませたりして練習させるほうが効果的である、ということでした。

そして、教室の文脈を生かして、宿題を提出させるときや、先生とのやりとりの文脈で、自然な日本語をマスターさせるのです。
教室を出るときには先生に向かって「さようなら」ではなくて「失礼します」、というように・・・

また、会話は個人的な文脈に即したものでなければ最終的には意味がありません。

「昨日何しましたか?」で会話をはじめたら、「~しました」で終わるのではなく、なるべく詳しく聞いてあげる。
個人的な話ができるようにするのが、会話練習の本当の目的です。

「そうすると周りがざわついてしまう」という質問に、先生は「聞きたい学生は聞いています、皆が聞いている必要はありません」。

今回もいろいろと目からウロコの発見が多々ありました。

自分の授業についてももっとも大きな反省材料となったのは、
いつの間にか「教室全体が一体となって授業をうけることを望んでしまっている」、ということです。

みんなが同じ環境で生きているわけではないのですから、それぞれ言いたいことは違う。
それなのに、同じことを言わせたり、ほかの人のいっていることを聞かせようと、つい圧力をかけてしまうのですが、
実際のコミュニケーション場面では、同じテーブルに座って複数の話題を話すこと(=他人の話をきいていないこと)ってよくありますよね。

「静かにだまってきいていてほしい」というのは現実世界では普通でないこと、これは教師のわがままであるということに、気がつきました。

残念ながら、ここで時間が着てしまい、つづきは次回で、ということをお約束いただいてお開きとなりました。
セミナー後は、ちかくのイタリアンレストランで食事をしながら、先生を交えて熱心に語り合いました。

いつもながら、熱くて楽しい時間でしたね。

最後になりましたが、今回のセミナー開催にあたって、会場をご提供いただき、いろいろとお心遣いただいた(株)アスク出版の天谷修身社長、高橋正之様、小栗章様にこの場をかりてお礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

・・・長々と失礼いたしました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。