【週刊ハンガンネット通信】《第28号》(2012年1月9日発行)
「福島での人権侵害と韓国語学習」
池上和芳 (いけのうえ かずよし)
放射能に汚染された福島の状況に心を痛めています。福島県内の
あちこちで今日も、韓国語教育が繰り広げられているのだろうと
推測しますが、その情景を思い浮かべるだに、私は居ても立っても
いられない心境になります。
ベラルーシという国は、国土の多くが、1986年のチェルノブイリ
原発事故で放射能に汚染されました。そのベラルーシの汚染地で、
医療に従事してきた同国の医者が、昨年11月に日本で講演したようです。
その医者は講演の中で、土壌汚染の度合いと、そこに住む住民の
健康被害との関係について触れ、「子供は、土壌1kg当たり20ベク
レルの汚染だと、まだ安心。子供は同50ベクレルから危険が始まる。
大人は同200ベクレルから危険です」と発言したようです。講演の
概要は次のブログにあります。
この発言は、机上の空論ではなく、実際の臨床経験に基づいたもの
でしょうから、十分信頼に値するのだろうと私は思っています。
土壌1kg当たりのベクレル値を1平方メートル当たりに換算するには、
原子力安全委員会によると、65をかけるようですので、大人が危険
になり始める「1kg当たり200ベクレル」は「1平方メートル当たり
13,000ベクレル」に相当します。
一方、福島県の中でも人口の多い福島市、郡山市、二本松市などを
含む、いわゆる「中通り」と呼ばれる地域では、今も多くの方々が
生活を続けているのですが、その地域のセシウムによる土壌汚染は、
文部科学省が昨年夏に測定した結果によると、1平方メートル当たり
50万ベクレル程度です。
したがって、ベラルーシの医者の見解が正しいとすれば、「中通り」
には、大人が危険になり始める汚染の、実に38倍もの汚染が広がっ
ていることになります。日本政府が、そういう危険な地域から住民
を避難させないで放置している現在の状況は、極めて重大かつ大規
模な人権侵害だと言わざるを得ません。
話が少しそれますが、この日本社会の中で韓国語は、今でこそ人々
によって、ある程度、盛んに学ばれてはいるけれども、かつては、
隣国に対する偏見とあいまって、学ぶ人がほとんどいない言語でも
ありました。
ですから韓国語学習は、学習者が意識する、意識しないにかかわら
ず、それは、他者に対する理解、ひいては人権の状況の改善につな
がる素晴らしい取り組みなのだと私は考えています。
そのため、福島で現在、韓国語を学んでいる方々は、人権の状況の
改善につながる素晴らしい取り組み(韓国語学習)をしながら、そ
の一方で、自らの人権が著しく損なわれるという格好になって
しまっており、私はそのことがあまりにも痛ましく、気の毒に思え
てなりません。
避難の必要性を強く感じながらも、様々な事情で福島に残って生活
している方々も多いのだろうと推測いたします。その方々の、避難
ができない状況に変化が生じ、あるいは、その方々が万難を排し、
1日も早く避難なさることを心の底から願ってやみません。