通信062 トイレの水にオタマジャクシ

【週刊ハンガンネット通信】《63号》(20121210日発行)

トイレの水にオタマジャクシ

伊藤耕一
私は、韓国語を勉強し始めて5年くらいになる人たち向けの講座を月に2~3回のペースでやっていますが、そこでは短い作文を書いてきてもらって読んで発表する形でやっています。たいていのケースでは、生徒さんの発表を聞いただけでは内容がよく分からないことが多く、こちらから質問をしながら文章を直していく感じで進めます。
ある日、一人の生徒さんが高速道路のサービスエリアでの出来事を書いてきて発表しました。その日は高速道路のサービスエリアのトイレにオタマジャクシがいたという、1回聞いただけではよく分からない内容でした。発表をひととおり聞いた後で、生徒さんからこんな質問が先にきました。
「高速道路のサービスエリアのトイレに『セジョン』と書いてあったのですが、どういう意味ですか?」
「(発音を聞いて)『セジョン』って『세종』と書いてあったんですか?」
「そうです。」「????」
しばらく話を聞いてみると、「トイレの水を流すボタンの横に書いてあったんです。トイレと세종はどんな関係があるんですか?」みたいな話になり、やっと「세정」のことを言っているのだと気が付きました。

会話だけで授業を進めるとよくあることですが、「오」と「어」の区別をつけるのが日本人にはかなり難しいものです。一昨日、高速道路のサービスエリアを利用した時にこの表示(写真を添付してみました)に出くわして、その話を思い出しました。発音について私がよく言うのはこんな内容です。

「イチローや香川真司がすごいプレーを当たり前のようにできるのは、全ての基礎的なプレーが完璧にできるからなんです。基礎ができているから何も考えなくても体が勝手に動いて、ここ一番ですごいプレーができるんですよ。韓国語を流暢にしゃべるのは『すごいプレー』に近いんですが、そのためには『오』と『어』の発音の区別をつける基礎練習をしなければなりません。

発音の基礎ができていれば、そのうちにすごい韓国語を話せるようになりますから、がんばりましょう。」自分自身はまだそのレベルまで達していないのですが、イチローや香川真司の名前を出すと基礎練習の大切さは納得してもらえるような気がします。かくいう私も会話の中で新しい単語に出会うと、「오」なのか「어」なのか、「ㄴ」なのか「ㅇ」なのか瞬時に分からないことがありますが。

そして『セジョン』この話には続きがあります。「サービスエリアのトイレの水の中に『オタマジャクシ』が泳いでいて、ビックリして流してしまいました。」と続きました。その時、「流す」を「흘리다」と言ったので「내리다」を使うことをまずは教えてあげました。ただ、話の展開がさっぱり分かりません。どうしてトイレにオタマジャクシがいたのか?

トイレの中にオタマジャクシは不自然すぎたので、「ところで、本当にトイレに『オタマジャクシ』がいたんですか?」と尋ねました。「本当にいたんですよ!」とのことで、他の生徒さんからは「写真に撮っておいたの?」「どうして撮っておかなかったの?」「流したら可哀想じゃない。」みたいなツッコミが続きました。

たぶん、本当にいたのでしょう。改めて写真のトイレの説明書きをよく見ると「세정버튼」「물내림」と書いてあります。「分かち書きをした方がいいのでは?」、「물내림は韓国語が分かる日本人には理解しやすそうですが韓国語的にはどうなのか?」などと考えてしまいました。

みなさん、いかがなものでしょうか?英語の”WASH BUTTON”も「ボタンを洗え」みたいで少し変なのですが、その下にせっかく正しく”FLUSH”と書いてあるんですから「”FLUSHING BUTTON”とでも書けば良かったのに」とつい思ってしまいました。

韓国を旅行しても不思議な日本語をよく見かけますが、日常で目にするちょっとした言葉を自然な外国語で表現できる人が増えたらいいなと思いつつ、自然な韓国語を使えるる人を増やす教え方をしなければいけないなとも思いました。