【週刊ハンガンネット通信】《第69号》(2013年2月11日発行)
伊藤耕一
新年あけましておめでとうございます。韓国はお正月まっただ中ですね。
おかげでこの時期は取引先の動きが鈍くなるので本業の仕事が円滑に進まず、苦労する時期でもあります。
今回も私が教えるクラスで起きたことを書いてみたいと思います。
日本人が日本人の発想で韓国語を書いたときの面白さ。
これは韓国語を教えながら思いがけず発見したことですが、韓国語を教えていて最も楽しいことのひとつです。
韓国語の用言活用と助詞と時制をある程度理解できて辞書も引けるようになると、生徒さんは韓国語を書くのが楽しくて仕方ないようです。
いろいろな韓国語を書いてきては楽しませてくれます。
学生時代に私自身も間違えたところをほぼ同じように間違えるので、「昔の私と同じ間違いをしているだけですから問題ないですよ。次に間違えないように気をつけましょう。」などと励ましています。
まずは、英語の第2文型的な文章です。
日:昨日、先生は休みでした。
한:어제 선생님은 휴일이었어요.
日本語の場合、特に不自然ではないのですが、韓国語に直訳すると不思議な文章になります。
日本人としては、このような韓国語を、つい書きたくなってしまうものです。
「これだと、先生が休日そのものになってしまいますね。『先生は(体調不良で)(講義を)休みました。』みたいに具体的に書くと、良い文章になりますよ。」といった指導をします。
改めて考えると、日本人はどうやって「先生は休み」を「先生は休んでいる」と頭の中で理解しているのか、わからなくなります。
文型的には「先生は美人」と一緒なのですが、「美人」は補語として捉えていますし、「休み」は述語的に捉えていますし、不思議です。
次は、進行形を教えるとよく目にする文章です。
日:私は座っています。
한:저는 앉고 있어요.
「これ、韓国語だとスローモーションで座るような動作ですよ。」と言いながら、ゼスチャーを見せたりすると、おかしな文章であることを理解してもらえます。
そして、日本語の「~している」には3つの意味があることを言います。
「歩いている」は進行、「座っている」は状態、「予約している」は完了、それぞれ “걷고 있어요.” “앉아 있어요.” “예약했어요.” と書くことを教えます。
日本人は日本語を話す時、進行なのか状態なのか完了なのか、何も考えずに「~している」と話すことが多いと思います。
「何も考えていないのに、同じ『している』という音で3種類の意味の使い分けができるのは超人的ですね。」「もっとスゴイのは聞く方もそれで正確に理解できてしまうことですけどね。」みたいな話をします。
言語学的に日本人は頭の中でどうやってこの違いを理解しているのか、ご存じの方はいらっしゃいますか?
長くなるので、これで最後にしますが、日本語をそのまま直訳して秀逸だった文章です。原文はこんな感じだったと思います。
日:久しぶりに美容院に行きました。こういう女磨きは必要ですね。
한:오래간만에 미장원에 갔어요. 이러한 여자 연마는 필요하지요.
きっと「磨く」を辞書で引いて「연마」を見つけたのでしょう。
「女磨き」を “여자 연마” と訳したのが面白すぎて深く印象に残っています。
韓国語には一言で「女磨き」という言葉はないような気がしますが、どうやって韓国語に訳せば良いか、一緒に教えている韓国人の先生と一生懸命考えました。
確か「自分がきれいになって嬉しい。」というような表現にしたような気がします。
生徒さんには「皆さんが書いた面白い韓国語を集めて本を出しましょ う。テーマは『日本人が間違えやすい面白い韓国語』、うまく売れたら、印税で韓国に遊びに行きましょう。」などと言っては、教室を続けています。
そんな日が来るのを楽しみにしています。