通信081 外来語

【週刊ハンガンネット通信】《第81号》(2013年6月3日発行)
外来語

伊藤耕一

韓国語を一緒に教えている韓国人の先生から、何年か前にこんなことを言われたことがあります。
「日本語のカタカナ単語は、日本語なのか、英語なのか、それ以外の言葉なのか、さっぱり区別がつかない。」
「どういうことですか?」と尋ねてみたら、例としてこんなことを言われました。

「『ポテンシャル』と『ポテンヒット』は同じ『ポテン』という文字があるけど、同じ言語由来でない気がする。」
これはおっしゃるとおりで、「ポテンシャル」は英語、「ポテンヒット」の「ポテン」は日本語です。

言われて初めて気が付いたことですが、日本人は全く気にかけずにこういう単語を使っていますね。
しかも、カタカナで表記するので、一見外来語のようですが、実はそうでもないことが多いようです。

手元の新聞に調味料の記事がありますが、カタカナ単語を拾い出してみると、ラー油、コショウ、ウコン、ギョーザ、ナムル、コク、ポンズ、ソース、つけダレ・・・、実にいろいろな国の言葉があるのに驚きます。

日本人はどうしてこんな言葉遣いをするのか、考えてみたことがありますが、そのヒントは七福神にあるのではないかと思ったことがあります。

七福神はものすごく日本的なものであるような気がしますが、7人の国籍を調べてみたら、ビックリ仰天でした。
日本の神様は「恵比寿」だけ、「大黒天」「弁財天」「毘沙門天」はインドの神様、「布袋」「福禄寿」「寿老人」は中国の神様だったのです。

「きっと、ありがたい神様をみんな船に乗せてしまったんだろうな。」というのが私の推測です。

いろいろな国の神様をひとつの船に乗せてしまうほどですから、いろいろな国の言葉を日本語に取り入れることに、日本人は今も昔もあまり抵抗がないのではないかと思います。

同じ新聞ですが、時計の広告にこんな文章がありました。

「近年、ランニング人口は大きな広がりを見せ、ランニングスキル向上のためにもランニングの正確な距離、速度を測ることができるGPS機能付ランニング機器は重要なアイテムとなっています。(中略)ランニングファッションに適したカラーバリエーションを新たに追加。〇〇はエネルギーを感じる色として人気のある流行色「タンジェリンオレンジ」を採用。□□は大西洋の海をイメージした青で、快適、スポーティ、清涼、晴れやかさを表現した「アトランティコブルー」。△△は、キュートでロマンチックなイメージの「プラムピンク」となっています。」

新聞広告の写真は白黒なのに、色の説明をこと細かにしているところが何とも言えません。

私を含め、多くの日本人は「へえ。そうなんだ。」で見過ごしてしまいそうな文章であるような気がしますが、日本語を習得しようと勉強している学生が読んだら、きっとストレスの大きな文章なんだろうなと思います。かつ、誤解を与えそうな気がします。

ツッコミを入れてみると「ランニングにGPSが必要?」「タンジェリンオレンジって、人気のある流行色? エネルギーを感じる?」「どうして太平洋じゃなくて大西洋の海をイメージしたの?」「プラムピンクって、キュートでロマンチック?」などと思いますが、もしかしたらこれを鵜呑みにする人もいるのではないかと。
広告なので、多少強引な論理は理解できますが。

外国語を勉強すると、日本語が客観的に見えるものですが、母語が日本語でない人から日本語を見ると、もっと違う見方があるような気がします。
このような言葉遣いが日本語にはあふれていて、日本語の良い点でもあり悪い点でもあるとは思いますが、韓国語を書く時にはこのような発想は横に置いた方が良いかなと思っています。

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