通信118 私の韓国原風景

【週刊ハンガンネット通信】第118号 (2014年8月18日発行)
私の韓国原風景

松崎真日

福岡大学で韓国語を教えております松崎真日と申します。メーリングリストには初めての投稿になります。よろしくお願いします。

先日,長崎の島原半島を巡ってきました。初めての島原半島,天候が良かったこともあり,海と山をどちらもとても身近に感じることができました。

私にとっての島原半島の原風景は,今回私が見て体験した島原半島の姿だといえるでしょう。原風景,心に刻み込まれた印象深い風景といったくらいの意味ですが,今回は私の韓国の原風景についてちょっと書いてみたいと思います。

私が初めて韓国を訪れたのは1996年のことです。当時,第2外国語として韓国語を勉強していたのでちょっと旅行に出かけたのです。ソウルに3泊4日の日程でした。

ソウルは予想以上の大都会でした。私が新潟という地方都市に住んでいたこともあるでしょうし,宿泊先のホテルが江南駅の近くにあったことも理由といえるかもしれません。私が見たソウルは高層ビルや高級車が行き交う大都会でした。

教科書には韓国では까치がどうのこうの,개나리がどうのこうのと書かれていた記憶がありましたが,私が実際に目にしたのは大都会ソウルの姿でした。というわけで大都会ソウルが私の第一印象となっています。しかしながら高層ビルや高級車が原風景そのものになっているわけではありません。

それらは確かに原風景の一部ではあるのですが,背景を構成する程度といったところでしょうか。

では原風景の主役は何かというと,高層ビルの合間の路地にあったトッポッキの屋台です。高層ビルが立ち並び,おしゃれな人が行き交う江南で目にしたトッポッキの屋台の風景はそのアンバランスな感じも含め私の脳に強く刻み込まれています。

最初はこの食べ物の色に驚きました。鮮やかな色です。私の知っている色では「だいだい色」か「オレンジ色」ということになるのですが,ちょっと違います。もう少しくすんだ,でも鮮やかな色です。今なら「トッポッキ色」とでも言えそうです。

私は目の前の屋台で炒められているこの不思議な色合いの食べ物に興味を引かれました。そしてこの魅惑的な色をした食べ物はソーセージであると確信していました。太さも長さもまさにソーセージに見えたのです。

そこでさっそく1人前を注文しました。皿にビニール袋をかぶせ,その上に「ソーセージ」が載せられました。この皿の使い方にも少々驚きましたが,まずは食べねばなりません。さっそくこの「ソーセージ」を口に入れました…。なんといいいますか,「肉まん」を食べるつもりが「あんまん」を食べてしまった感覚とでもいいましょうか。

あれから20年近く経ちますが今もトッポッキを食べる度にこの時のことを思い出します。

屋台のご主人(おばさんだったと思いますが,おじさんだったかもしれません)に食べ物の名を聞くと「トッポッキ」だと教えてくれました。旅行に先立って読んでいたガイドブックに紹介されてはいましたが,ガイドブックには写真が無く,色や形は全くわからなかったのでこれがトッポッキであるとは認識できなかったのでした。

紹介の記事は,「トッポッキ:餅炒め。甘辛い。」といったところでした…(食べ物の紹介は写真があったほうがよいと思います)。トッポッキのにおいも印象的でした。高層ビル街の中の食べ物のにおいということで,トッポッキのにおいもより一層記憶に残っています。

私にとっての韓国の原風景は,以上のようなものです。高層ビルディングの合間の路地でトッポッキ色をした美味しそうな匂いすがする屋台,私にとっての韓国の原風景です。初めての韓国でたまたま見た風景なのですが,これが私にとっては懐かしい,郷愁を誘う,韓国の風景なのです。

ときどき,韓国語受講者にそれぞれの韓国の原風景を語ってもらうことがあります。私の知らない韓国を観察していたり,思いもかけないところに着目していたりして,興味深いです。

長くなってしまいました。会員のみなさま,よろしくお願いします。