【週刊ハンガンネット通信】第140号 (2015年3月9日発行)
「東回りでも西回りでも地球は一周できる」
幡野泉 アイケーブリッジ外語学院
もう一ヶ月前になりますが、2月11日にハンガンネットセミナーが
当校で開催されました。関東、関西圏だけでなく、北は山形県、南は
九州から駆けつけてくださった先生がいらっしゃいました。
美味しいお土産も頂戴しました。ご馳走様でした。
私は終始、準備や後片付け、途中業務の電話が入ったりと落ち着かず、
懇親会も所用で参加できなかったので、参加者の全員の方とじっくり
お話をすることができず、それが悔やまれます。
私も発表させていただきましたが、阪堂先生の発表、小栗さん進行の
懇談会など盛りだくさんでした。参加された先生方それぞれが、
大なり小なりの気づきがあったのではないでしょうか。
私が最もハッとさせられたのは、阪堂先生の挙げられた事例です。
なるべく韓国語を話して欲しい、「直説法」が大切だと思い、
しきりに日本語で受け答えをされる生徒さんに、韓国語で話すように
何回か言ったところ逆効果で、その方は教室から出られてしまった
という事例でした。
人にはいろんな学習タイプがある。合わない学習法を強要すると
「思考停止」になってしまう、これではいけない、と阪堂先生は
おっしゃっていました。
当校も、教科書のある地点から徐々に直説法に変えていくという
教授法を講師間で共有していますが、相手をよく見てより柔軟に、
と痛感しました。
思い返すと当校の通訳クラスの受講生の中で、これまでいわゆる
語学学校に通わず、韓国語の本を読んだり、韓国人と会話をする中で
上級レベルに達し、韓国語能力試験の過去問を解くだけで6級に受かった、
という強者がいます。
いわゆる「ザ・オハクタン」教育の中で育った私にはアンビリバボー。
人は自分の歩んできた道しか道が見えにくく、また、「こうしたら
効果があった。だからこうすべき」という少ない成功体験で考えて
しまいがちですね。
私はいま中国語を勉強していて、今年6月で学習歴5年になります。
加藤嘉一(かとうよしかず)さんという、「中国でいちばん有名な日本人」
と言われる若者がいますが、彼は18歳で北京に留学したとき、
お金が無かったので、辞書一つ片手に新聞で猛勉強。会話は売店の
おばさんとの雑談で鍛えたそうです。
その加藤さんの講演を聞いたとき、中国語上達の秘訣について、
「漢字で考えないほうがいい。音で反応できるように。漢字を思い浮かべて
いると時間がかかり、反応が鈍くなる。日本人にとって、漢字は邪魔に
なることもある」というお話をされていました。
私はすべての音に漢字を当てはめたい!と思っていたタイプだったので、
少しショックであると共に、そのように中国語が理解でき、あの運用力を
もつ加藤さんが本当に羨ましかったです。
でもその後、アルクの『中国語ジャーナル 2013春号』で、
清原文代先生という方の書かれたこんなコラムを読みました。
「私の場合は先に文字でインプットして、後で音声として定着させていく
というパターンで学習してきましたが、その逆の方が楽な人もいます。
東回りでも西回りでも地球は一周できますよね」
あ、文字から入ってもいいんだ、自分は文字が分からないと音声が
定着しないというタイプだ、と思って、このままの方法で進めようと
思いました。
それぞれの学習者がいろんな道を通ってゴールにたどり着く。重要な
ポイントは押さえつつも、講師はゴールにたどり着くいろんな道筋を
知っていて、その人の行きたい方を認め、誘導していけないと、
と思いました。