通信173 わたしは学生です、かれは親切です

【週刊ハンガンネット通信】第173号 2015年11月30日

わたしは学生です、かれは親切です

伊藤耕一

 

私が韓国語の学習を始め、初級を終えてひととおりの文法を身に付け、韓国語での単文表現ができるようになった頃、戸惑ったことに、こんな表現の韓国語訳があります。

わたくしは学生です。
かれは親切です。

저는 학생입니다.
그는 친절입니다.

こんな訳文を書いていました。

日本語の「です」に引きずられて、両方とも “입니다” で書いてしまうのですが、結構ありがちな現象ではないでしょうか?

私自身がこの間違いを自覚するのに、数か月かかったような気がしますが、原因は次のようなものではないかと思いました。

「学生です。」は「名詞+指定詞+語尾」、「親切です。」は「形容動詞+語尾」であることに気付いていない。

ふだんの日本語会話では、「です。」という音を「指定詞+語尾」であるのか「形容動詞の活用+語尾」であるのか、考えずに話していることが原因だと考えました。

しかも「学生」も「親切」も漢字二文字なので、パッと見た目には「形容動詞」と認識できないのではないかとも思います。

これが英語ならば、学生はstudent 、親切はkind 、英語の形容詞は活用しないので、英語では起きにくく、韓国語では起きやすい間違いであろうと思います。

文型としても、日本語も韓国語も、英語に例えると S+V+C の形で、しかもCには名詞も形容詞も形容動詞も当てはまってしまうので、構文からアプローチしても間違いに気付きにくいように思います。

私が学習者であった頃を思い出すと、間違いを指摘されてからは、この文型で表現する時に名詞なのか、形容詞なのかを考えて作文していたように思います。

なので、書く時には間違えにくくなったものの、とっさにスピーキングの時には間違えて話してしまうことが多々あり、だいたい話した直後に間違いに気づくのですが、トライ&エラーをくり徐々に直していったように記憶しています。

韓国語を教えるようになった時、学習者の皆さん全員てが、かつての私と同様にこの間違いをするのを見て、日本語の発想による間違いであることを確信しましたが、どのように教えたらこの間違いを認識してもらえるのかは、良い説明の言葉をなかなか見つけられませんでした。

たどり着いたのは「わたし」と「学生」、「かれ」と「親切」を逆にしてみて、後ろの単語(学生と親切)が前の単語(わたしとかれ)を修飾できるかどうか確認してみるというステップです。

そうすると「親切なかれ」は形容動詞の活用で修飾できるのに対して、「学生であるわたし」は「である」という指定詞を補ってあげなければならなくなり、「親切」が形容動詞であることが明確になるので、韓国語訳は「친절합니다」と「합니다」を使わなくてはならないという説明をして、少しずつこの違いを覚えてもらうようにしました。

覚えてしまえば何のことはないのですが、日本語の発想から抜け出すまでは、とても大変だなと経験的に認識しました。

まるで「自分で気が付いて理解した」ように書いてしまいましたが、きっと先生方があの手この手で私に気付かせようと説明していたのだろうなと、私の先生方の苦労に思いを寄せることができるようになった一件でもあります。

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