【週刊ハンガンネット通信】第186号 (2016年4月25日発行)
外国人とともに構成する韓国社会へ
松﨑真日
アンニョンハセヨ?
福岡の松﨑です。
先日、韓国に出張してきました。
宿が鐘路周辺だったのですが、光化門から乙支路にかけてのここ数年の再開発は目を見張るものがあります。
大きな立派なビルが続々と竣工し、かつてランドマークであったような建物が新しいビルの間にひっそりとたたずむ感じには、時代の変化を感じざるをえません。
時代の変化といえば、韓国語母語話者の外国人の韓国語に対する許容度や外国語に対する反応にも変化が感じられました。許容度がかなり上がっているように感じるのです。
私が最後にソウルに住んでいたのは2006年~2011年なのですが、そのころは地下鉄の車内で日本語で話していると、視線をそれなりに感じたように思います。それが最近は少なくなったという印象です。10年単位で比べると確実と言ってもよさそうに思います。
特に中国から韓国に来て暮らしている人が増えていますので、一見韓国人にも見える人が外国語で話をするということに慣れたのだろうと想像しています。
また多くの人が、職場や親戚や友人に外国の人がいる時代になり、外国人の存在が当たり前のことになったことが背景にあると思います。
さて、今回の出張では、このところ調査を行っている京畿道安山市も訪ねました。ここは外国人労働者の住民比率が極めて高い地域としてよく知られています。
特に安山駅前の「多文化通り」のある元谷本洞は、約56000人の人口のうち、1万人が外国人です。さほど広い地域ではありませんが、大勢の外国人が暮らしており、さながら外国のような地域です。
ちなみに、韓国の外国人労働者を描いた映画「방가? 방가!(日本語タイトルは「バンガ? バンガ!」)」という映画がありますが、元谷洞で撮影も行われていて、ここの雰囲気がよく伝わる映画です。
安山に多い移住労働者のほかにも、結婚移民者や留学生等も増加してきています。来韓のきっかけは何であれ、長く暮らしているとそこにネットワークが誕生し、生活の基盤ができ、永住を決意するというのは、自然な人生選択のようにも思えます。
外国人とともに暮らす社会を実現するために、かねてより政府は「多文化」の掛け声を意識的にかけていましたが、最近は掛け声だけでなく実践へと重点が移ってきているようでした。それは「社会統合プログラム」と名づけられた制度です。
このプログラムを履修することで、ビザの変更等をしやすくするような制度設計になっており、韓国語の教科書のコーナーにもこのプログラムに関連した教科書や参考書が並んでいました。
安山で働く労働者の中にも、このプログラムを履修する人たちがいて、韓国で合法的に暮らし続けるための制度として外国人労働者にも関心をもたれているようでした。
今後、この制度を利用し韓国で長く暮らす人々が増加すると思われます。多数派と少数派という枠組みが組み変りはじめているのでしょう。
このようなことを、出張中考えました。