【週刊ハンガンネット通信】第231号 (2017年5月15日発行)
実力差のあるクラス
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往々にして授業は思い通りに行かないことが多いのですが、とにかく実力差の激しいクラスは「どうしたもんじゃろな~」の連発です。
4月から始まった某大学の2年生のクラスですが、
英語の代わりに韓国語を集中的に選択できるコースのせいか、2年目になると実力差がハンパありません。
昨年からカナダラを習い初めて、もうハングル検定3級が受かりそうな学生さんもいれば、まだハングルがようやく読める程度の学生さんもいます。
さらに、高校から韓国語を履修している三分の一の「できる」グループも混在しており、1つのクラスにTOPIK5級からハングル検定5級までの実力が、混在して学習している状況です。
それでも好きなk-popアーティストがいる学生は、モチベーションを持続してなんとかがんばってついて来てくれています。
しかし、「韓流?そんなの興味ありません」という子は、そうした他の学生さんの熱気にさえ、圧倒されがちのようです。
教科書は 西江大学の「2A」を元に、「よんではなそう」「きいてはなそう」だけをピックアップして授業を行っています。
先日、クラスニーズを確かめようとアンケートをとってみました。予想通り、3分の2の学生からは
- 「毎回、テストが復習になる」「もっとテストをしてほしい」
- 「復習テストだけでは物足りない」
・・・という非常に前向きの意見が出ましたが、その一方で、
- 「毎回つらいです」
- 「難しい、キツイ」
- 「これ以上進んだら、もうダメ」
という悲鳴も聞こえてきました。
単語や文法の実力が追いつかない学生さんのために、最近では前もって台本をネットで上げておくようにしています。また、質問しやすい雰囲気を作りだすために、授業では、できる人をリーダーにしてグループを作り、教えあう方式を取っています。
しかし、「全くわからない」「教えてもらうばかりで何もわかっていない」という想いが、彼らには常につきまとっているようです。
そこで昨日、30分をかけて、この問題をクラスで話し合ってもらいました。その結果、出てきた要望やアイディアを整理すると、次のようなものでした。
- 新しい単語や難しそうな単語は、講師があらかじめ単語リストを作成して、
- 講師がサイトにアップしておく。
- 新出文法や難しそうな文法は授業中に説明してもらう。
- また、1年生の時に使っていた教科書(木内先生の「初級韓国語」「中級韓国語」)のどこに載っているかを講師がサイトにアップしておく。
- 次回あつかう台本を前もって講師がサイトにアップしておく。
- リーディングやリスニングに自信のない人はそれを読んだり聞いたりして、予習する。
- 授業では、文章を聴いたり読んだりした後にグループ内で教え合う時間を十分に取る。
私は授業で、単語や文法があっても「背景知識から推測して文を読み取る力・聞き取る力」を育てたい(一般的な読む・聴く授業の理論的背景ですね)ので、
最初から単語や文法がすべてわかっているとあまり意味がないのですが、彼らに安心して授業を楽しんでもらうために、要望を全面的に受け入れました。
さて、話し合いをしながら、「でおくれている」受講生に見られる意見の共通点としては、次のようなものが見られました。
- わからない単語や文法がでてくるのが恐怖だ
- 日本語ですべて理解できないと不満がつのる
実は「教科書はわかる単語だけがでているテキストにしてほしい」というわけのわからないリクエストがあったりもしました。
「わかっていることを勉強することほどつまらないものはないんじゃない?」と言ったら、「なるほど~」と納得した学生さんもいましたが、
概して、「わからない」ことを「悪」とか「苦」のように感じているようです。
そもそも「学習する」というのは、「わからないこと知る喜び」を楽しむことのはずなのに、なぜ「わからない」が「苦」「悪」になってしまうのか・・・
このように実力差のあるクラスというのは、どんな現場でも大なり小なり起こりうる事態だと思います。
みなさんのクラスでは、「授業についていけない」と言ってやめてしまう方はいませんか。もちろん、本当の理由は話さずに、仕事が忙しくなったから、とか、家族の用事ができた、など、ほかに理由をつけてやめていく方もいらっしゃいます。
講師が授業内の実力差をうまくコントロールできないために、受講生がやめて言ってしまう…。恥ずかしながら、市民講座でも、私はこのような経験をたくさんしました。
先生方は、このような状況をどのように乗り越えていらっしゃいますか?ぜひとも、みなさまのお知恵をお借りしたいです。