【週刊ハンガンネット通信】第247号 (2017年10月2日発行)
パンダの名前は香香
伊藤耕一
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上野動物園生まれのパンダの赤ちゃんは、香香(シャンシャン)と名付けられました。
愛らしい名前を聞いて、その音に興味を引かれたのは私だけでしょうか?
香の字を見て、まず私の頭に浮かんだのは、香港でした。
香港は、日本では普通「ホンコン」と読みますが、香の字は「ホン」と広東語で発音します。
ならば香港では、上野動物園生まれのパンダの赤ちゃんの名前は「ホンホン」と名付けられたと報道されたはずですが、「ホンホン」ではあまり愛らしく聞こえないと感じてしまいました。
皆さんは、いかがでしょうか?
香の字は韓国語では「향」と発音しますが、韓国の報道ではどのようにパンダの赤ちゃんが呼ばれたのか? こちらも興味深いところです。
漢字は文字通り、中国から韓国と日本に伝わってきたものですが、大きく分けて3種類の音(3つの地域の音)が伝えられたと私は大学で教えてもらいました。
ひとつは「漢音」で主に大陸の北の地方の音が遣隋使や遣唐使の時代に伝えられ、ひとつは「呉音」で主に大陸の南の地方の音がそれよりも以前に伝えられ、もうひとつは「唐音」で主に鎌倉時代に禅宗の僧侶によって伝えられたと聞きました。
香の字では、シャンは漢音、ホンは呉音となります。
韓国語の「향」はシャンとホンが混じったみたいで、さらに興味深いとも思いました。
韓国語の漢字語由来の単語を覚えるとき、漢音、呉音、唐音をバックグラウンドにして日本語音と比較するととても覚えやすく、また、知らない単語を聞いた時にも漢音、呉音、唐音のバックグラウンドから類推すると、その正体が分かったりと、私は随分とこれに助けられた覚えがあります。
私の場合は、経験によって身に付けたこの音の関連をベースに新出単語を教えることが多いのですが、もしこれが体系的に整理されたテキストなどがあればいいなと思ったりするのですが、そのようなテキストをご存知の方はいらっしゃるでしょうか?
あと、シャンシャンの「ン」の発音を、多くの日本人は「ㄴ」と発音しそうですが、教室でそんな音を耳にしたら、「ㅇ」であることを指摘してあげなければならないとも思いました。
ピンインでは「xiāng xiāng」で、「シィァンシィァン」に近い音だそうですね。
パンダの赤ちゃんの名前から、そんなことを考えた今週でした。