通信254 言語干渉 伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第254号 (2017年12月11日発行)
言語干渉
伊藤耕一
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言語干渉のこと、私も書いてみたいと思います。

私が言語の発音について体系的に認識できるようになったのは、大学3年の頃だったと思います。

それまでは、日本語の音韻体系に英語や韓国語の音韻を当てはめて発音していたように思います。

どのようにそれを認識したかというと、ニュージーランド渡航に備えてNHKラジオの英語講座を聞いていた時、「phonetic corner」という発音に着目した数分の時間があり、これを聞いた時でした。
どんな内容だったか、思い出せる範囲でいくつか書いてみます。

①摩擦音と破擦音の違い

pleasure の “su” と joke の “jo” の発音は異なり、前者は摩擦音、後者は破擦音である。

②”L” の音は側音と呼び半母音に近い

“L” の音は、舌を上あごにつけてその側面から空気が出てくる音で、子音というよりも半母音に近い。

③単語の最後にくる”L”はほとんど発音されない

“beautiful” “fall” など、単語の最後にくる ”L” の音は “dark L” と呼ばれ、ほとんど発音されない。だから “unbelievable” を「アンビリーバボー」と表記するのは合理的である。

④”T”と”D”、”T”と”T”、”K”と”G”、”K”と”K”、”P”と”B”、”P”と”P”、の音が続く時、前の音は後の音に飲み込まれてほぼ一緒に発音される

“It depends.” は「イッディペンズ」、”Hepburn” は「ヘボン」のような音になる。

⑤単語と単語のつなぎ目が子音と母音の並びになっているとき、その子音と母音は同じ音節で発音される。

“half an hour” は「ハフェンナウア」のような音になる。

これは英語の発音のコツなのですが、このような内容を聞くたびに目から鱗が落ちる思いを何度もして、日本語訛りがかなり改善した実感があります。

摩擦音と破擦音の違いが分かるようになって、ようやく濃音の発音ができるようになりましたし、韓国語の”ㄹ”の発音は②と③の知識を得てから、飛躍的にうまくなった自覚があります。

④と⑤の前の音が後の音に飲み込まれたり一緒に発音されたりする現象はパッチムの発音に応用できるようになり、聞き取り能力が驚異的に高まりました。

私の場合、このラジオ講座のおかげで、日本語の音韻体系から脱出でき、私自身の言語干渉のかなりの部分を払拭してくれたと思っています。
このような細かな技能を身に付けて、自分の中で積み重ねると、言語干渉の一定の対策になるのではないかというのが私の経験に基づく仮説です。
そして異なる言語にも相互に良い影響をもたらすものと信じています。
話は変わって、私の趣味のひとつは将棋なのですが、将棋もこれに似た細かな技能(手筋)がたくさんあります。
「垂れ歩」「継ぎ歩」「底歩」「ダンスの歩」「頭金」「腹銀」「桂馬のふんどし」「田楽刺し」「十字飛車」「遠見の角」「玉の早逃げ」などなどたくさんあるのですが、発音や文法と同じで手筋を覚えれば覚えるほど、複数の手筋の組み合わせを考え付けば考え付くほど将棋に強くなれます。
藤井4段や羽生永世七冠はおそらく全ての手筋を身に付けているはずです。
発音に限らず文法も単語もこのようなコツや技をパーツとして教え、例文に混ぜて身に付けさせる、そんな方法もあるのではないかと思います。