通信259 「学習者に伝える」ということ 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第259号 (2018年2月5日発行)
 
「学習者に伝える」ということ
寄田晴代
      
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授業で一生懸命説明したつもりなのに、今ひとつ伝わっていないようだ。
そんな経験をされたことはありませんか?
そんなときは、つい学習者側に責任を転嫁してしまいがちな私ですが、それを考え直すようなことがありましたので、書いてみます。
 
離れて暮らす高齢の両親を時々訪ねます。先月は、母が病院に行くのでついて行きました。
お医者さんは、今回受けた検査の結果と、生活上の注意点、次回の検査について話すのですが、声が小さめで、話し方が不明瞭。話のどこが大事なところなのかわかりにくい。
母はふん、ふん、とうなずいているものの、絶対わかってないわ、と思ったので、
「それは、こういうことですか?」「こういう意味ですか?」と横から確認をしながら聞きました。
その後、次の検査の詳しい話を看護師さんがしてくれました。
注意事項が書いてある紙を見せながら、説明するのですが、それがちょっと早口で、しかもざわざわした待合スペースでのことで、耳が悪くなった母には聞き取るのがしんどいはずです。
「○○時までにお食事を済ませておいてくださいね」と言うので、「すみません。ここに書いておいてもらえますか」と頼み、
大事なところにマーカーで印つけて、とお願いしました。
母は、うなずきはするがメモを取ろうともしないし、言われた数字を覚えているとは思えないからです。注意事項の紙も、小さい文字がいっぱいなせいか、母は読む気すらなさそうでした。
 
私はとても不思議に思いました。
医者も看護師も、日常的に大量の高齢者に接しているはずなのに、高齢者に何かを伝える際の配慮がないように見えたからです。
これ、わたしのような付き添いのいない高齢の患者さんは、どうしているのでしょうか?
その日出会ったお医者さんも看護師さんも、特に不親切というわけではありません。好意的に考えれば、ただ気づいていないだけ。
そんな話し方じゃ、高齢者には伝わりにくいことに気づいていないだけなのでしょう。
 
そこで唐突に、私も授業でこういう配慮のないことをしていないだろうか、と思ったわけです。
何か質問ありますか?わかりましたか?と聞くと、学習者はたいてい黙っています。
「え~?わかんなーい」と言う人もたまにいます。
そういう人に対して、内心ムッとしている場合ではなかった。
知りたいと思っているのに、分かりにくい説明をされるとこんなにイライラする、という経験を久しぶりにして、私も授業で使う言葉や言い方、声の大きさをもっと吟味してみよう思いました。
 
ある知り合いの韓国語講師から聞いた話が印象的でした。
若い学生が露骨に「わからない」を繰り返すので、文法用語など排除して、本当に平易な言葉で説明するようにした。
そうしたら、他の年配の学習者たちから「先生最近わかりやす~い」とほめられた、と。
わからなくてモヤモヤしている人って、結構いるのかもしれません。
「わからないことは質問してください」と言っているだけでは、先に進めないことがある、と思いました。