通信266 翻訳講座で学んでみた 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第266号 (2018年4月13日発行)

翻訳講座で学んでみた

寄田晴代

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少し前のことですが、短期の翻訳講座(もちろん韓国語)に行ってみました。そのことについて書きます。

翻訳講座を受講しようと思った理由は、まず、具体的な翻訳のスキルについてもっと知りたかったこと、翻訳家として活躍している方から直接いろいろと話を聞いてみたかったことです。

時々、韓国語を日本語に訳す仕事もしていましたが、この機会に自分の翻訳力を素直に見つめ直してみよう。

そして、韓国語を使う仕事について知っておくことは、そんな仕事をしたいと思っている学習者を教える上で役に立つのでは
ないか、そんな考えもありました。

講座の先生は現役の翻訳家で、受講生は私を始め、みなさん社会人でした。
授業で一緒に訳すものとは別に毎回宿題があり、事前に翻訳して提出します。

授業当日、お互いの訳を見比べ、訳し方が分かれた部分や注意するポイントについて先生が解説してくださいました。

また、ビジネス文書は使われる用語や表現が決まっているので、実際の文書を読みながら訳し方を教わると、馴染みのない表現に、日本語ながら新鮮さを感じました。

日本と韓国で読者に受ける文章が違う話や、筆者と編集者の関係も両国では少し違う、など、実際に翻訳業で活躍されている先生ならではのお話も面白かったです。

受講生の方々も熱心で、翻訳するためにいろいろな情報を調べ言葉にこだわり吟味する姿に、さすが翻訳の勉強をしてみようと
やって来る人は違う!と思わされました。

ある方は「こうやって、とことん調べることは○○先生のところで身に着いたんです」と、おっしゃっていました。

私も自分が韓国語を教えた人からこんなこと言われたい。それにしても韓国語の世界は狭い。「〇〇先生」って知り合いの先生だ。

短い期間でしたが、この講座を通して気づいたことがいくつかありました。

一つ目は、自分の日本語は韓国語の影響を結構受けている、ということです。

普段から気をつけているつもりだったのに、職場ではほとんど韓国語を使い、
家でもしょっちゅう韓国語を使っているせいでしょうか(家族は全員日本人ですけれど)。

意識して日本語の本もよく読んでいるのですが、足りなかったか? 正直、ギョッとしたのと、自分では発見できないことに気づけて良かった、というのが感想です。

二つ目は「自然な日本語」という基準にも個人差があること。

翻訳は、読む人が違和感を感じないように訳すのが大前提ですが、ひとつの単語に対して持つイメージや解釈も、人によって差がある、ということを感じました。

たとえば、成人した子どもに対して呼びかける「너」を、私以外の方はみんな「あなた」と訳しました。

私は、成人していても我が子に使うのは「おまえ」。それも、丁寧さを欠いた乱暴な感じの「おまえ」ではなく、

幼いものを慈しむイメージの「おまえ」が浮かびました。が、実は私は関西人なので、本当は「あんた」と呼びたい。

「あんた」だったら「あなた」と同じでしょ、と言われそうですが、違います。私にとっては「あんた」は「あなた」より
「おまえ」に近いのです。

みなさんはいかがですか?
また、豊かな語彙や表現を増やすことで、自分にとっての「自然な日本語」の幅が広がるのでは、とも思っています。

そして、一緒に学ぶ受講生の方々の姿から、自分が教える学習者の未来の姿を見たような気になりました。

こんな風に、言葉を学ぶ先にある自分のやりたいことに向って、自分で学びを進められるようになってほしい。

そんなことを願いつつ、授業の準備に精を出します。

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