【週刊ハンガンネット通信】第273号 (2018年6月9日発行)
<韓国語らしさ>について
寄田晴代
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「韓国語をやるからには、韓国人っぽく話せるようになりたい」そう思って韓国語を学んでいる人は多いと思います。私もそうです。
先日、この<○○語らしさ>について考えることがありました。大阪へ同窓会のために帰ったときのことです。夜行バスに乗ったのですが、大阪のバス会社でした。
乗務員のおじさんが荷物を預かりながら「どこまで行かれますかぁ?」とか、ご年配の乗客を座席まで案内しながら「新宿出るとき、よう揺れるから立たんとってなあ」と話すのを聞いて
あ、ネイティブスピーカーだ、と思いました。
同窓会の会場でもネイティブスピーカー(大阪弁の)がいっぱいでした。中学校の同窓会で、ほとんどが地元で生まれ育った人なのです。
気兼ねない関係に久しぶりに再会した興奮が加わり、にぎやかな会話が続きました。特に「女子」同士の会話はテンポが速い。スポーツでいうなら卓球。(もちろん個人差はありますよ)
速いだけではなくて、適当なタイミングで冗談が入ったり、間をためたり。
私は東京で暮らすようになって3年なのですが、久しぶりに大阪弁らしい大阪弁に包まれた気がしました。
語尾が「~や」「~ねん」などになるとか、イントネーションだけでなく、あのバスのおじさんのゆるりとした親し気な話し方や、友達との会話のテンポに、大阪弁らしさを感じたのでした。
韓国語も話すテンポや間合いを研究したら、もっとそれらしく聞こえるかな、などど考えていました。
また、大阪弁との違いで思い出すのは「お金の話なんかしない」と言った神奈川県出身の友人の言葉です。
親しい間柄なら「これなんぼで買うたと思う?」と値段の話をするのも普通だった私には、少なからず驚きでした。
話題にしていいものに差があるのだ。日本の中でも。そう思いました。
こんな私でも、韓国で出会ったばかりの人に、年齢や既婚か未婚か、子どもの有無、夫の収入などを尋ねられるのには、ずいぶん戸惑った覚えがあります。
中国の北京に長く住んでいた知り合いも、電車を待っているときに、列に並んでいる見ず知らずの人に収入を聞かれたことがあると言っていました。
(年齢や家の広さなども、韓国と同じように結構平気で質問するとのことでしたが、近年、家庭ごとの経済格差が生じるようになって、何でも聞いていいという雰囲気が弱くなってきたように思う、と言っていました。)
○○語らしさ(大阪弁を例に挙げていますが)というのは、文法だけでなく会話の内容や話し方にも関係があると思っていますが、
地域、年齢、性別などによっても異なるので、簡単には説明できないでしょう。
話題に関して、もう一つ書きます。
20年以上韓国に暮らしている知り合いに、東京で会った時のことです。質問されました。
「それで時給、いくらもらってるの?」
親しい間柄ではありますが、日本語でこの直球を受けると、衝撃があることを知りました。(大阪でも家族以外でこれはないと思います。)
韓国語らしく話すことを目指して、文法や発音以外に、会話のテンポや選ぶ話題にも注目したいと思いこれを書き始めました。
そして、円滑な会話を進めるために、暗黙の了解となっている決まり事は知っておいた方がいい、という意味においても大丈夫な話題、そうでない話題は押さえておいた方がよいと思っています。
前回、幡野先生が南北のことばについて言及されていましたが、会話のテンポや好まれる話題などについても、南北でどんな違いがあるのか、気になるところです。