【週刊ハンガンネット通信】第283号 (2018年10月3日発行)
松本ハンセミの報告
伊藤 耕一
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9月30日、松本でハンセミを開催しました。
今回もライブ授業を行い、より良い教授法について意見交換する形で企画しました。
韓国語教師参加者は7人、ライブ授業の生徒役は13人、世話人3人の合計23人の催しとなりました。
ライブ授業の1本目は阪堂千津子先生による「고と서の使い分け」でした。
고と서の使い分け
まず、生徒役の皆さんを4つのグループに分けて、簡単な自己紹介をした後、二つの文章の間のブランクに고を入れるのか、서を入れるのかをメンバー間で話し合ってもらい、どちらが適切なのかを確かめるという方法で授業が進みました。
どうしてそうなるのかを、いくつかのテキストに出てくる説明を引用しながら確かめてみたり、韓国語ネイティブの参加者に確認してみたりしました。
例文によっては고を使っても서を使っても良いケースがあるのではないか、その違いをどのように学習者に説明すれば分かりやすいかといった議論が展開されました。
日本人学習者の傾向として、서を多用する傾向があり、고を使うべき場面で서を使ってしまうことに対し、「人のシルエットが変わる動詞」「知覚を表す動詞」の後には서を使うという覚え方を提案してくださり、アンケートではこの説明が分かりやすかったという感想がいくつかありました。
ただ、その一方でこの使い分けには多少の個人差があることの言及に対しては「少し分かりにくかった」という感想もありました。
最後に「むすんでひらいて」の動揺を韓国語に訳して歌うアクティビティをしました。
歌詞に出てくる「て」を訳す時に「고」になるのか「서」になるのか、手を使いながら解説した時にはすんなりと理解できたようでした。
2本目は金順玉先生による「ネイティブにとって聞き取りづらい発音ワースト3」でした。
ネイティブが聞き取りにくいノンネイティブの発音
韓国語の学習者が実際に韓国で話をしてみると通じないことがあったり、学習者と話をした時にネイティブの先生が聞き取りづらい発音があったりする現象をいくつかのパターンに分けた中から最も聞き取りづらい3つの類型についてのお話しでした。
それは「①母音/ㅓ/と/ㅗ/が入れ替わる」「②平音・激音・濃音が入れ替わる」「③パッチム(終声子音)の発音」の3つで、これをどのように直すかを実際にやってみました。
生徒役の皆さんに伝言ゲームのアクティビティをしてもらい、音としての文章が最後まで正確に伝わるかどうかを確かめてもらったのですが、うまく伝わった文章もあれば、伝わらなかった文章もあり、/ㅓ/と/ㅗ/の発音の違いを、発声時のあごの高さで比べてみるといった分かりやすい解説もあり、とても勉強になったという感想もありました。
あいにくの台風24号接近
当日は運悪く台風24号が近づいてくる日となってしまい、開催自体をどうするか世話人で話し合いました。9月30日のハンセミ終了の段階では松本が暴風圏に入らない見込みと判断し開催を決め、実際に当日の風雨の影響は小さかったのですが、鉄道の運休が予想よりも早くハンセミ終了時刻よりも前に実施されることがセミナー進行中に発表され、急遽の判断でライブ授業のみを行って終了することとなってしまいました。
ライブ授業の振り返りの議論を行い、懇談会や懇親会も行う予定だったのですが、残念な結果となってしまいました。
それでも、ご参加いただいた皆さんからは「勉強になった」「今後の授業に活かしてみたい」という声も聞かれ、一定の良い結果も残せたものと思っております。
今後もハンセミ、交流会などを予定しています。企画が決まりましたら随時お知らせしますので、是非多くの皆様にご参加いただきたいと思います。
最後に、松本ハンセミの運営にご尽力いただいた皆様、ご参加くださった皆様に感謝申し上げます。
日本人らしい英語の発音や話し方があるように、日本語母語者らしい韓国語の発音や抑揚、語順などがあると思います。
僕らが受けた英語の学校教育はネイティブがいわば絶対標準で、可能な限りそれに近づくように教えられました。それは一面で正しいのですが、絶対ではない。ネイティブらしい外国語という呪縛から自由になる必要が一方であると思います。これは、学習者だけではなく、教える側の人々にもいえることだと考えています。