【週刊ハンガンネット通信】第287号 (2018年11月25日発行)

「高齢者と外国語教育」

寄田晴代

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先日、自分が韓国語の講師をしているという話を近所の人にしたところ、「この間韓国に初めて行ったの。すごく楽しかったからまた行きたい。韓国語も勉強したい」という反応が返ってきました。

一緒に旅行に行ったお友達は、文化センターのようなところで既に韓国語を習い始めているそうです。そこには、K-POPが好きで韓国語を始めた若い女子たちもいるらしいのですが「あの人たちには負けたくない!」と、お友達は言っているそうです。

私が「へぇー」と思ったのは、私だったら「若い人より覚えが悪くても当たり前。同じようにはできない」と考えるところを、その方は「負けたくない!」と言ったところです。(おそらく50代後半の方です。)みんな、自分のように考えるだろうと思うのは、思い込みですね。

講師が「この人はこの年齢だから、ここまでしたくないだろう」とか、受講生に対して勝手な思い込みを元に指導していなかったか、振り返るきっかけになりました。

そんなとき、ちょうど年齢と外国語学習に関する記事を読んだので、ご紹介します。スコットランドにある、高齢者向けのバイリンガル教育を行う社会的企業「リンゴ・フラミンゴ*」の話です。*Lingo Flamingo

複数の言語を話すバイリンガルの人は、そうでない人に比べて認知症の発症が最大5年遅い」という研究結果が、2013年、神経系医学の学術誌「ニューロロジー」に掲載され、この研究を受けて「リンゴ・フラミンゴ」は誕生しました。

今では、英国中の老人ホームやデイサービスで語学講座を開いて、認知症の進行や脳の老化を遅らせる革新的な取り組みとして注目されているそうです。

主に70~80代の人を対象にしていますが、研究者チームと協力して言語学習の効果を測ったり、講座の内容を開発してきました。

高齢者が学びやすいように大きい文字の教科書を作ったり、記憶術を取り入れたり、また、料理をしながら関連する単語を学ぶなど、体を動かし五感を働かせる活動も行います。

数独(number placement puzzle)やクロスワードパズルは脳の一部しか使いませんが(中略)外国語の学習は、認識力や判断力などあらゆる知能を総動員します。その人に言語学習能力があるかは関係なく、外国語を理解しようと努力すること自体が脳に良い働きをし、脳全体の運動になるのです。」という創業者のことばは、外国語を仕事にしている私たちにとっても嬉しいことばではないでしょうか。

そして、実際、重度の認知症で言葉も出なかった受講者が、外国語で「こんにちは」と発した事例も紹介されています。

高齢者は外国語学習に向かない、というステレオタイプに挑んだ活動を知ったことで、小さな積み重ねが変化をもたらすことを再確認しました。
ビッグイシュー日本版 vol.345 より)