【週刊ハンガンネット通信】第300号 (2019年6月3日発行)
私の韓国語講師・奮闘記23 「早く会話したい!」
宮本千恵美
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最近感じること・・・春や秋がないような、直ぐに夏になったようなそんな毎日、皆様、元気でお過ごしでしょうか?
300号を書かせていただきとても光栄に思っております!
この記事を書いている前日、春季ハングル検定を私の生徒達も何名か受けに行きました。
私も10年くらい前ですか?
初めてハングル検定を受けに富山まで行った事を思い出します。
昨年から改定された試験とは違い、当時は前半の60分が筆記、休憩30分を挟んで後半30分の聞き取り、この休憩時間がとても長く感じたことを覚えています。
その休憩時間のこと、制服を着た高校生らしき2人組がこう話しているのです。
「5級なんて落ちる人いる?」
「普通落ちないよね!」
ほうほう・・・私は当時4級を受けていましたから、5級ってそんなに落ちたら恥ずかしいレベルなのかと思いながら聞き耳を立てていました。
試験会場だった富山県立伏木高校は、門に日本語の高校名と共にロシア語や韓国語が書かれており国際交流や研修などを盛んに行っているせいか、どうもその高校の生徒達が受けている模様。
そんな当時のことを思い出しながら、今回私の生徒達は5級を受けているわけで・・・。
私自身も5級の過去問や対策本を買い生徒にテスト対策をしたのですが、5級は決して簡単ではないことを教えながら改めて感じました。
5級のレベルと言えば1時間の授業を40回=40時間受けている(月4回の授業で10ヶ月程度)、単語数が約480個、基本的な表現や挨拶、相槌などが分かる、など大体の目安を見ると、決して簡単とは言い切れません。
今まで韓国語に接したことのなかった生徒達が、韓国語を1から勉強し受けるわけですから、まず緊張します。
また聞き取りなどは教科書とは全く違いランダムに出題されるわけなので、今までの聞き取り練習が生かされるかどうかなのです。
さて結果はどうなったのか、今からドキドキしながらでも楽しみでもあります。
やはり受かったときはどんなに嬉しいか分かりません。
今回試験を受けた生徒達のクラスはスムーズに授業進行でき、上達の早いクラスです。
平均年齢が20~30歳なので、とても若いのも勉強する上では勿論プラス面ではありますし、生徒達の仲もとても良いです。
しかしながらそのようなクラスだけではないのは、他の講師の先生方も経験済みと思います。
あるクラスは年齢差があるクラスで、若年層は20代なのですが、60~70代の生徒と一緒に学習しています。
若年層はどちらかと言えば、教えられたことをそのままこなす・・・と言うよりも、教えられたことがスーッと頭に入っていく感じですが、やはり高齢になると覚えることに対してもとても時間がかかります。
それは仕方ないと講師側も生徒側も暗黙の了解で進行していました。
ある日、音の変化の勉強中のことです。
その年配の生徒が小さな声でポツリと、
「何でこんなことしなくちゃいけないの?」
と言った言葉が耳に入ってきてしまいました。
その生徒は会話がしたいとの目標があるので、そう思う気持ちは重々理解できます。
私の教室は初級でするべき音の変化や不規則動詞を早めに教え、どんな文章も自分で読めるようにをモットーに教えています。
文章ごとに音の変化を教えていては時間も余計にかかってしまいますし、自分で考え身に付けることができなくなってしまうと思うからです。
最近の独学者の悩みが、この音の変化と不規則動詞を個人学習では理解できないとの意見が多いので、やはりそこはしっかり教えるべきだと思います。
だからでしょうか、早く会話したい生徒にとってはその授業が面白くないのでしょう。
早く会話したいのに、そんなことばかりしていては・・・と思うのも当然なのですが、決して会話をしないわけではありません。
挨拶から基本的な会話を毎回行っていますし、その課題ごとに習う例文なり宿題なりを発する授業を行ってはいますが、会話をしたいと希望する生徒の多数は、勉強すればすぐにでも話せるようになると誤解することがよくあり、授業で話す会話を会話と感じていないのでしょう。
昔お恥ずかしながらイーオンに通い英語を勉強した経験があり、そこで日本人スタッフが話した台詞がまさに私が思ったことと同じでした。
「語学の学校に来れば直ぐに話せると思われがちだけど、言語学習は積み重ねるしか上達する術がありません。」
つまり階段の段を飛ばして上るようなそんな近道がない、それが外国語を学ぶことーなのです。
まずはその勘違いを正すことからしていかないと、生徒達は勘違いしながら、近道があると思いながら身の入らない勉強を続けてしまうのです。
と言っても年配の方はそれを何度説明しても、気持ちが焦るのでしょう、授業に集中していない感が否めません。
しかし近道のない語学の道、私は粘り強く各々の項目の重要性を説き続けています。
私の教室に熱心に通っている姿を見ると、何とか上達させてあげたいと日々奮闘しております!
ハンガンネット通信300号の発行おめでとうございます。振り返れば、創刊は2011年6月でしたね。ハンガンネット設立10周年とともに心よりお祝い申しあげます。
通信の第1号から第50号までの目次は次のとおりです:
https://hangangnett.com/blog/%e9%80%9a%e4%bf%a1001-050/
宮本先生の奮闘記、いつも興味深く読んでいます。学習者の視点と教える側の視点が混在し、学習者として共感できる点が多いように思うからです。
上の投稿にある「年配の方」について、学習者の立場からコメントさせていただきます。「年配の方」というのは先生からみて年上の人や60代以上の学習者をさしているのでしょうが、僕のような年配者からみてあまり心地よい括(くく)り方ではありません。若い方々にいろいろな人がいるように年配者にもいろいろな人がいるからです。一般論として高齢者はもの覚えが悪い(記憶力が低下する)といわれます。韓国語や他の外国語の学習者についても同じことがいえるとお考えでしょうか。僕はそのようには考えません。他の外国語能力や経験、学習の動機づけなどによって高齢者も若い方々と同じように多様だと思うからです。