【週刊ハンガンネット通信】第307号 (2019年11月11日発行)
韓国語の読書は大変
アイケーブリッジ外語学院 幡野 泉
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昨日、横浜のコリ文語学堂さんにお招きいただき、5月末に出版した翻訳書『無礼な人にNOと言う44のレッスン』に関する講演会を行いました。
コリ文さんは金順玉先生のスクールです。こうして韓国語学校を運営する運営者同士が交流し、仲良くしている姿を学習者に見せられることは、韓国語学習界をみんなで一緒に盛り上げようとしている気持ちが伝わり、とても良いことだと思います。
順玉先生、貴重な機会をいただき、ありがとうございました!
講演はこの書籍の原書『무례한 사람에게 웃으며 대처하는 법』が韓国でベストセラーになった背景、著者の生い立ち、日本女性と韓国女性、キーワードとなった韓国語、そして原書を味わってみよう、という柱で進行しました。
目玉は「原書を味わう」というところですが、仮に韓国語の上級レベルに達しても韓国語の書籍を一作品読む、というのはかなりハードルが高いんですよね。分からない言葉もでてくるし、どうしても日本語のようなスピードで読めないので、億劫になってきてしまうんです。
以前、とある韓国語教授法のセミナーで、著名な韓国語の先生(日本人)が、韓国語のホームページ画面を表示させながら、「韓国人の先生には実感しにくいと思いますが、こうして画面いっぱいに韓国語がびっしりと出てくると、けっこうウッとくるものなんですよ」とおっしゃり、そのとき私は、「あ、〇〇先生のような方でもそう思うのか」と半ば安心したような覚えがあります。
そこで、この日の講演会では、その本の背景を充分に説明した上で、持ち帰ってほしい内容の韓国語の部分だけをピックアップし、日本語訳を付けて、みんなで一緒に両方を読んでみました。
そして、こんなふうに、私なりの考えを伝えました。まず、私の現在の本業は語学学校の経営で、職業翻訳家(例えば週5日、一日8時間以上翻訳に没頭できる人間)ではないと冒頭で伝えてある、ということが前提になります。
「私が一つの文学作品や書籍を翻訳できるくらい熟読したと自信を持って言えるのは、『소나기』と『우리들의 일그러진 영웅』。そして、今回翻訳したこの書籍くらいです。
(ちなみに、ビジネス翻訳ならたくさん経験があります)
ソナギとウリドゥレ~は、語学堂のイルキの教科書に載っていて、授業で読みました。二つとも韓国人なら誰でも知っている本当に素晴らしい作品で、本当に良かったと思っています。
(2作品の解説を簡単に)そして今回翻訳したこの本、実はそんなものなんです。
当校には、一つの作品読むために、プライベートレッスンで先生と一緒に読んでいるという方が何名かいらっしゃいます。そこまでしないと読まないから、読めないから、なんですよね。
皆さんは韓国語の勉強をしていて、上級になると、韓国語の本を読んだ方がいいと言われたり、読んでいる人を見ては自分も読まなきゃと焦ったりするかもしれませんが、韓国語の読書が趣味の方でないかぎりは、なかなか大変なことなので、読み進められないからといって、自分を卑下したり落ち込んだりしないでください。」
以上です。あなたがそんなこと言ってはだめ、原書の読書を勧めないと、と言われてしまうかもしれませんが、あまり気負わずにまずは翻訳書を手に取って、韓国について理解や見聞を深める、そして原書に興味が湧いてきたら原書を味わう、で良いのではないか、と。
参加者の皆さんのアンケートを見ると、私が伝えたかったことを充分くんでくださった反応が伺え、とても嬉しく思いました。
先週末、ロシア語通訳の大御所先生の特別講座がありましたが、先生は「文学作品で通訳訓練はできない。文学作品は、作家が他人は使わない表現を選んで書くから」とおっしゃっていて、なるほど、と思いました。
外国語の文学作品を読み込むことが億劫になってしまうのは、そのような理由もあるのかもしれません。
読書自体は心から薦めたいですし、私も常に一冊は鞄の中に本が入っています。しかし、忙しい社会人が隙間時間で読むには外国語の原書はなかなか手が伸びません……。
恥ずかしながら、プチ暴露でした。