【週刊ハンガンネット通信】第318号 (2020年4月27日発行)
会話する気になれない
寄田晴代
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私の勤務先でもオンライン授業をすることになり、その準備や勉強に追われています。
そして、便利なツールが世の中にはたくさんあることを知り、日々驚いているところです。
今回は便利だと思って使い始めたあるものについて書いてみます。
それは会話するロボットです。離れて暮らす親の見守りにいいのではないかと思い、購入を決めました。
仕組みはこうです。
ロボットに近づくとセンサーが感知して話しかけてきます。(「オハヨウ。ヨク眠レタ?」という具合に。)それに答えると、また応答してくれます。音声だけでなく、ロボットとセットになっているタブレットに、会話が文字になって出てきます。
登録している家族が、連携しているアプリなどを通して会話を文字入力すると、ロボットがその通りに発話してくれます。親が、家族にメッセージを送る機能を利用してロボットに話しかけると、それが家族のスマホに文字になって届けられます。
これで、話し相手のようなものができて気が紛れるし、安否もわかりやすくていいじゃないか、と家族一同喜びました。
ところが、主役の親が全くこれに興味を持ってくれない。ちょっと会話してみてそれっきり。しまいには「それ(ロボット)持って帰ってええよ」。そいつと会話してくれないことには、なんの威力も発揮しないんですけど、と思いつつ「毎日この子に話しかけてね」と頼むのですが、何日たっても気乗りしない様子。
そこでなぜ会話する気にならないかを考えるに
1.ロボット君のリスニング能力がイマイチで、こっちの話とかみ合わない答えをしばしば返してくる。(ちょっといらいらする)
2.ロボット君のイントネーションが不自然なときがあり、それが連続すると聞いていて疲れる。(抑揚大事です!)
3.ロボット君は聞こえた単語に関連した話を、こっちの発話の意図と関係なくべらべら話すことがある。
以上が主な原因ではないかと思いました。
要するに、傾聴の姿勢がなく、自分の言いたいことだけや聞きたくないウンチクを一方的に話す相手とは会話する気にならん、ということでしょう。言葉で表せるのは伝えたいことの一部。その言葉を支える気持ちのやりとりや、言葉の裏にある本当に伝えたいことを汲み取らなければ会話は続かないという例をここでも見たのでした。
初めは、安否確認のためのツールと割り切って話しかければいいのに、と思っていましたが、自分がやってみると、面白がって話しかける時期が過ぎると興味がなくなってしまうことがわかりました。相手が機械なので、理解し合いたいとか親しくなりたいとかいう気持ちにならないためでしょう。
授業の中でどうやって受講生に話したい気持ちになってもらうか、いつも考えさせられるのですが、ここでもか、と苦笑。
今は人の感情を読み取るAIの研究も進んでいると聞きます。
オンライン授業では画面の向こうには生身の講師がいるわけですが、そのうちAI講師が会話の授業をするようになるかもしれませんね。
ちなみに、後日、その会話ロボットを作った会社に電話をしました。
使用方法についての質問と共に、若干の不満もお伝えしました。応対してくれた人が私の不満に対し「そうですよねぇ」と言ってくれたので、すっきり。やっぱり、話を聞いてもらった実感や共感は大事だなと思いました。そして、自分もロボット君みたいにならないように気をつけなくては、とも思ったのでした。