【週刊ハンガンネット通信】第328号 (2020年8月7日発行)
学習者が書き取りの見本にできるフォント
株式会社HANA 裵正烈
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韓国語を学び始めた小学1年生の息子が、ハングルの書き取り練習をしているのですが、教材のフォントが明朝体なので、リンゴのようなㅇ(イウン)やチンアナゴのような縦棒を書いています。見本のフォントに「ヒゲ」が付いているので、それをそのまま書き写しているわけです。
実はこれには見覚えがあって、子どもの頃、私もそのように書いていたように思います。いつ「ヒゲ」が取れのかは思い出せませんが、成長しながらいろんなハングルを見るうちに、ヒゲなしの自分の字が自然と出来上がったのだと思います。一方で、そのときの自分やうちの息子が子供であることを差し引いても、初歩の学習段階では明朝体を見本にするとこういうことが起こり得るということが、教授経験のない私でもよく分かりました。
日頃生徒さんの書く文字を見ている先生方は、どのフォントのどんな文字がよろしくないか、経験的にお分かりかもしれません。独学の場合その教材のフォントがほぼ唯一のサンプルとなるでしょうから、出版社の私たちも大いに気を付けるべきですし、機会があればぜひ先生方にご教示いただきたいポイントです。
明朝体は、息子の字を見た感想(衝撃)から、やはり見本として適切ではないという思いを深めました。一方のゴシック体にはヒゲはありませんが、フォントによってはㅈ(チウッ)がウサギの口のようなシンメトリー型になっています。また、ㅎ(ヒウッ)の頭の点が立っているもの、寝ていているもの(その場合も下の棒と平行なものと斜めなもの)があります。ㄱ(キオク)も一緒に使われる母音によって、形が大きく変わるものがあります。人によって気になるポイントは違うかもしれませんが、満足できるフォントがなかなかありません。
今年の春頃、教材で使うハングルフォントについてのやりとりが他のメーリングリストで交わされていました。そのときは、どなたかが나눔 고딕を提案されたところで結論を見たようでしたが、実は弊社でも、入門書にはこのフォントをよく使っています。
「韓国語学習者がハングルを楷書で書くための見本」という観点で作られたフォントはまだないようです(あくまでネット検索の結果ですが)。漢字が必須となる日本語に比べると、韓国語は(ハングルだけなら)デザインしなければいけない文字の数はさほど多くないはずです。国立国語院でもどこでもいいので、学習者の書き取り用見本としてフォントを開発・提供してくれないものでしょうか。