【週刊ハンガンネット通信】第347号 (2021年1月25日発行)
わだかまりを解くのは、人
アイケーブリッジ外語学院 代表 幡野泉
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同居する義父母は大の読売ジャイアンツファンで、
新聞は読売新聞を購読しています。
著名な人物の半生をシリーズで掲載する日経新聞の「私の履歴書」は
有名ですが、読売新聞のそれにあたるのが「時代の証言者」です。
最近、取り上げられていたのが、韓国出身の囲碁プロ棋士、趙治勲氏。
幼い頃、韓国から日本に渡り、韓国人として初のタイトル獲得、
そして当時の史上最年少記録を成し遂げた名人です。
当時、韓国から報道陣がどっと押し寄せ、注目を浴びるものの、
韓国語が上手くないことに対する批判も強く、大変傷つき、
傷が癒えるまで40年掛かった、とありました。
40年後に何があったのかは、何日間かに渡る記事を読んでいけば、
いつか分かるのだろうな…と思いながら、毎回新聞を開くことになります。
このコーナーの記者さん、上手なんですよね。
波瀾万丈のプロとしての道のり、愛情に溢れた家族と愛犬のことなどが
紹介されます。そして、とても残念なことに最愛の奥さん(日本人)が
他界します。
韓国での囲碁大会にも出場し、韓国、韓国人との交流も盛んでしたが、
韓国語ができないことに対する根強い批判、その後台頭した曺薫鉉氏
(アルク『曺薫鉉の考え方』は面白いです!)の肩を持つ?風潮などに
やりきれなさを感じていたころ、紹介で知り合ったのが
「韓国の彼女」(新聞記事そのままの表現)。
この女性は囲碁への理解が深いのはもちろんのこと、
韓国人ならではの考え方などを趙治勲さんに上手に伝えたそうで、
ようやく、それまでのわだかまりのようなものが取れていった、と。
これが「40年後」のことなのかははっきり書かれていませんでしたが、
私はこれが「40年後」のことだと解釈しました。
思ったのは、人の力は大きいな、ということです。日韓のわだかまり、
政治でも、個人でも、どうしても抱えてしまうかもしれませんが、
そんなわだかまりを解くのは人の力。
まずは私たちがそんな人物になること、そしてそのような人を
育てることが、使命だと思いました。