通信359「出版社が韓国語教室をやる理由」裵正烈

【週刊ハンガンネット通信】第359号 (2021年8月9日発行)
出版社が韓国語教室をやる理由
株式会社HANA 裵正烈(ペ・ジョンリョル)
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弊社HANAのような小さな出版社(の社長)が飲食店を経営するケースがあります。飲むこと食べることに人一倍関心の強いオーナー社長が、「自分のこだわりの店」を持つというパターンでしょうか。具体的なケースを多く知っているわけでありませんが、たいがいは「(道楽なので)うまく行かなかった」というオチがついてきます。

「事務所の1階がHANAの韓国料理店だったらいいのに…」「HANAで韓国料理店をやったいいのに…」。これも弊社で雑談の際によく話題に上ってきた話です。みんな韓国料理が大好きで、舌が肥えています。副編集長は飲食店の厨房にいたこともあり、ほとんど自分がやるというくらいの勢いだったので、(優秀な編集者を失うという意味で)少々恐ろしくもありました。

ただしHANAが始めたのは、飲食店ではなく韓国語教室でした。これは韓国料理店を始めるより、はるかに分かりやすい選択だと思います。

HANAは韓国語の専門出版社であるため、学習者の間で比較的知名度が高く、集客面で大きな利点があります。また、自社の本を使うことでさまざまなフィードバックが得られる、これから本にしたいアイデアを試すことができるというメリットもあります。さらに加えるなら、弊社スタッフが教育の現場を知る機会、学習者を間近に見られる機会を得られる点が大きいと考えています。

最近では、教室の舞台をオンラインに移したことで、韓国語学習における地域・条件格差の解消、弊社の主要読者である全国の中上級学習者層の維持・拡大にも大きな意義を見出しています。

以上はまさに、弊社が教室を始めた一番の理由に他なりません。ただし、経営者の立場からは、さらにもう一つ、別の理由があります。

ある出版業界の先達は、出版社の経営で最も大事な点について「1に資金繰り、2に資金繰り、3,4がなくて、5に資金繰り」とおっしゃいました。経営という観点で出版社を見ると、最も大事なことは、企画ではなく資金繰りだというのです。

出版社が本を出すと、著者に印税を払うほか、制作に関わった外部のスタッフや会社にすみやかに外注費を払わないといけません。担当した社員の給料はもっと先に支払われます。しかし本の売上は、発売後かなり後にならないと支払われません。また弊社が主に扱うような中上級レベル向けの本は、1,2年後になってようやく元が取れるものが少なくありません。このように、収支の時間差が特に大きいのが出版業界の特徴であり、新刊を出せば出すほどその間の資金負担が増加します。

弊社の韓国語教室では、現在最大10クラスほどの講座を実施しています。各講座(通常6~10回)の全回分全員分の受講料が、しかもまだ授業を行っていないのに先払いで入金されます。社員6人の出版社としては大した売上ではないかもしれませんが、新刊が世に出ても数カ月間ほぼ収入がない出版社としては、それを少しでも補える、計り知れないメリットがあるのです。

ここまで記すと、冒頭の出版社オーナー社長が飲食店経営に手を出す理由について、ちょっと違った見方ができるかもしれません。「社長の道楽」のように書いてしまいましたが、飲食店は「日銭」が入る仕事ですから案外それが理由の場合もあるのではないでしょうか。