通信360「相手の立場」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第360号 (2021年8月16日発行)
相手の立場
日下隆博(くさか たかひろ)
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今回、ハンガンネット通信の担当となりました日下隆博(くさか たかひろ)と申します。
簡単に自己紹介をしますと「韓国ミュージカル<パルレ 빨래>」の楽曲や「NHKワールドラジオ日本」の音声を素材とした教材などを執筆している韓国語講師です。
どうぞよろしくお願いいたします。

どんな仕事もそうですが、外国語を教える仕事も、生徒側、相手の立場に立った思考は大切かと思います。

オンライン授業が一挙に広まっておよそ1年半。
オンライン授業移行期での話です。
わたしが運営しているワカンドウ韓国語教室では昨年の全国一斉休校宣言前、
まだ対面授業が可能だった時期に、主婦層の生徒さんにZOOMの接続の仕方などの練習を授業中に行っていました。
いつオンラインのみに変わるかもしれないこともその時にみなさんに認識してもらっていました。
そんな日々のとあるクラスで、説明が始まるやいなや「わたしは絶対にオンラインはしません!」と声を荒げた方がいらっしゃいました。
「とにかく嫌なものは嫌」というトーンで、時期的にも「それでは来週よりこのクラスは休講としましょう」という結論を出すことになりました。

普段iPodも使いこなすような方がどうしてオンライン授業を烈火のごとく拒否したのでしょうか。しばらくして「あの方は旦那さんがとても厳しいんですよね」ということを聞かされました。
そこではたと思いつくことがありました。この方は授業中に「わたしは韓国旅行には絶対行かない」とも言っていました。

ここからはわたしの想像のみです。
「配偶者が心の底から韓国を嫌っている家庭もあるだろう、この方は外に出てこそ韓国語を使えるのであって、家の中では決して韓国語など使える状況ではないのかもしれない。」
昨年オンライン学習が一挙に一般化するころ、「主婦層は機械に弱いのでオンラインについてこられない」といった話も多く聞きましたが、ZOOM接続はLINE連絡ができる人ならそれほど難しいものではないでしょう。

学習者を分析する際、この学習者は勉強が苦手とかではなく、自宅では韓国語学習ができない環境なのかもしれない、若い学習者においても、たとえば子どもの韓国語学習にヒステリックに反応している親がいるのかもしれない、ということに考えを及ばせると、これらの学習者はたいへん厳しい環境を乗り越えて学習を続けている努力家だと分析できます。
学習者の習得の速度は、個人的能力以外に別の要因があるかもしれません。そしてこれらの学習者にとって韓国語の授業は、やりたいことに打ち込めるオアシス的時間かもしれません。こうした想像も相手の立場に立った授業構築のヒントになるかもしれません。