通信366 「発音苦労話」寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第366号 (2021年9月27日発行)
発音苦労話
寄田晴代
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昨日のハンガンネットセミナーには(第1部:発音クリニックリレーライブ 第2部:オンライン時代の教え方)40名を越える方々に参加していただき、盛況のうちに終えることができました。
ありがとうございました。
改めて「発音指導」への関心の強さを実感しました。

韓国語が母語でない私は、自分はできているのだろうか、というところがいつも気になります。ネイティブスピーカーのようにはいかなくても、講師としての信頼を得るためには、ある程度のレベルを習得していなければならないからです。
今日は、自分が学習者としての発音・イントネーションで苦労した話を書いてみます。

発音に関する思い出ならいくらでもあります。
韓国で、封筒(봉투)ください、と言ったのに、ボンドを渡されたり、タクシーの運転手さんに「明洞」と何回言っても通じなかったり。
(結局最後にはわかってもらえたのですが、運転手さんが「あ~,명동?」といったとき「私の発音と何が違うんだよっ!」と思ったのを
覚えています。)
「通じない発音」から脱却した後も「不自然な抑揚」が悩みの種でした。買い物に行って、一言話しただけで「日本人でしょ?」と言われるのです。(「釜山から来たの?」もよく言われました。関西アクセント韓国語だったんですね。)

韓国語の意思疎通では何も不自由がなかったのですが、日本人だとバレるのが嫌で、韓国に住んでいたときはタクシーに乗ったらほとんど口をききませんでした。家族そろってタクシーに乗る時も同じで、誰も口をききません。小学生の子どもたちまで、一言も話さず黙って窓の外を見ている。用があって話すときはひそひそ声。なんて不気味な家族を乗せてしまったんだ、と運転手さんは思ったことでしょう。

独学で韓国語を習得した私は、音声教材もほとんどない時代、一人で一生懸命音読を続けた結果、独自のイントネーションを身に着けていたと思われます。一方、韓国人と区別がつかないくらい、上手に韓国語を話す日本人の友人が身近にいたので、自分も練習すればそうなれるかも、と思って続けられたのでしょう。(その友人は日本人よりも韓国人と一緒にいる時間が断然長い人でした。)

ある時、知り合いの韓国人のおばさんにこう言われました。
「お笑い番組に、日本人の韓国語を真似をする芸人がいるんだけれど、あなたの話し方、その人にそっくりね。」
がーん。
悔しくて、練習に拍車がかかりました。やっぱり、自然に話せるようになりたいと思いました。
テレビを見ながら、ラジオを聴きながら、聞こえたものをずっと真似することを続けていました。
地下鉄の中で聞こえる会話も、大声で真似できないときは、ハミングで歌うようにイントネーションを真似していました。
(これが癖になり、日本人と話しているときもシャドーインしてしまうことも。)

学習者として飛躍したきっかけは私の場合「悔しさ」で、効き目があったのは「お手本に基づいたしつこい練習」でした。そして
後に教える立場になって韓国語の発音や抑揚に関する知識を本や講座から得て、実体験と合致し腑に落ちた、という感じです。

発音や抑揚を指導することは、こうして自分が練習を積んで身につけることとは、また違った難しさがあります。
学習者はどこまで指摘してほしいのか。通じればいいのか、もっと自然な発音や抑揚で話したいのか、人によって違うでしょう。
また、指導するときの表現、言い方にも配慮が欠かせません。
指摘内容は正しくても、伝え方を間違うと相手を傷つけたり、ストレスを与えたりしかねません。
特にオンライン授業だと、雰囲気を把握しにくかったり、授業後に相手の気持ちを修復する雑談などのチャンスがなかったりするので、対面よりも言葉に気をつけています。
でも、発音・抑揚ばかりは指摘してもらわないと一人で克服するのは難しいのですよね。

昨日の発音ライブ指導では、前田先生と金順玉先生の「明るく」「励まし」「テンポがいい」ご指導が印象的でした。

次回のハンガンネットセミナーは2月11日を予定しています。お楽しみに。