通信387 『韓国語ジャーナル』創刊20周年 裵正烈

【週刊ハンガンネット通信】第387号 (2022年4月18日発行)

『韓国語ジャーナル』創刊20周年 
株式会社HANA 裵正烈
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今月発売された『韓国語ジャーナル 2022』が私のもとに送られてきました。アルクが2002年から発行しているこの雑誌のことを、ご存じの方は多いと思います。今年が創刊20周年になるとのこと。20年の歴史はひとえにこの雑誌を続けて発展させてきた来た人たちあってのことで、私はほとんど部外者なのですが、創刊に関わった者として、当時の話を少ししたいと思います(創刊当初は「1人編集部」だったので話せる人間が私しかいません)。

朝鮮学校の英語教師から出版社の編集者に転身して3年目だった私は、その前年に『中国語ジャーナル』が創刊されて成功を収めたことにも勇気づけられ、この雑誌の創刊を考えつきました。キャリアは浅いものの、留学雑誌と英語検定試験の対策本の制作を通じて雑誌と語学書の作り方を一通り身につけていましたし、それに加えて学校で培った語学が私にはありました。

その頃まで韓国語は、一般にマイナーな言語とみなされていたと思います。私自身もそれを学ぶ人たちに対する認識があいまいだったのですが、調べるうちに、想像以上に韓国語の学習熱が高まっていること、幅広いきっかけや関心から学んでいる人、それこそ英会話を学ぶような感覚で韓国語を学んでいる人がいることが分かってきました。そういう人たちに、ビジュアルを通じて新しい韓国の姿を知らせて、生きた韓国語の素材で学習を後押しする新しい雑誌が必要だという考えに至りました。

とはいえ、韓国語の本を作るうえでの環境や人脈がゼロに等しいところからのスタートでした(この話は長くなるので割愛)。もう一つの大きな問題が、社内で企画が通るかどうかということでした。

準備に着手したのは2001年の10月頃。企画案を練り、営業部署と一緒に数字を練り込み(営業部に韓国語の学習者がいたこともあって協力的だった)、12月の企画検討会議に乗り込みました。社長をはじめとする重役、部署責任者の前でプレゼンを行い、その場で企画の可否が判定されるのですが、通常なら流れ作業で結論が出るところ、このときは1時間近く議論が続くこととなりました。当時は韓国語の学習雑誌がどんなものになるか、それをどんな人が買うか想像できる人がいないわけです。しかも単行本と違い、雑誌は費用もかかり、毎号出し続けなければいけません。プレゼン直後は好意的な雰囲気だったものの「韓国語の雑誌なんかが売れるのかね? 売れたとしてもいいとこ3000部じゃないの」と最後まで反対し続けたのが社長だったので、しまいには皆沈黙してしまいました。業を煮やして司会者が「結局どうればいいんですか?」と言うと、「じゃあまず1号だけやらしてあげよう。赤字が出たらその時点で終わり」との社長の一声でかろうじて承認されました。

発売日は、日韓共催ワールドカップの開催に合わせて2002年6月30日ということになりました。文字通りの1人編集部を立ち上げて、(ここからの制作過程の話も長くなるので割愛)、無事期日どおりに創刊を果たしました。当時日本のテレビで売れ始めていた韓国の女優(ユン・ソナ)を表紙モデルに起用し、彼女の韓国語のロングインタビューなど、生きた韓国語をふんだんに収めたこの雑誌は、学習者にも韓国語の新しい時代を感じさせるものであったと思います。売れる自信があったかというと、分からなかったというのが正直なところ。発売日が土曜日だったのですが、月曜日に出勤してほどなく「朝から書店の注文で電話が鳴り続けています」と営業部から連絡が来ました。それで、やっぱりこういう雑誌を待っていた人がいたんだと安堵したことを覚えています。創刊号は発売後すぐに増刷が決まり、最終的に5万部近くまで部数を延ばしました。その翌年『冬のソナタ』の放映をきっかけに韓流ブームが起こり、さらに大きな韓国語学習ブームが起きたのはご存じの通りです。

私は17号まで編集長を務めて雑誌を離れ、自分の出版社HANAを立ち上げて韓国語学習書の制作や出版を手掛けるようになりました。『韓国語ジャーナル』は後を引き継いだ人たちにより10年の間発展を続け、2013年に44号をもって一旦休刊となりました。私の出版社では、その休刊を受けて、2014年に『hana』という雑誌を作り今に至ります。そして『韓国語ジャーナル』も2020年に復刊を果たし、以後年1回のサイクルで発行されています。一度休刊になった雑誌を復刊させるのは、創刊するよりはるかに難しいと思います。これは本当にすごいことで、復刊後、年度版としてすでに3年出し続けている編集長には心から賛辞を贈りたいです。そっちがあまり売れるとこっちのものが売れなくなりそうなので微妙な思いもありますが、なにより学習者にとって、選択肢が増えるということは望ましいことではないでしょうか。

余談ですが、『韓国語ジャーナル』が10周年を迎えた際に記念イベントが開かれ、私も招かれたので行ってきました。すると、創刊に最後の最後まで反対した社長が「どうやら『韓流が来ている』ということで、私がこの雑誌をやってみたらどうかと、やらせてみたところ大ヒットしました」とあいさつしたのには、心底驚かされました。でも、仮にあのとき「ゼロ回答」だったら、今こうしてこの通信を書いている自分はいませんし、HANAという出版社もありませんから、条件付きでもやらせてくれた社長には恩を感じています。

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