通信391 「ラマダン」伊藤 耕一

【週刊ハンガンネット通信】第391号 (2022年5月16日発行)

ラマダン
伊藤 耕一
==============================================

イスラム圏では4月2日から5月1日までラマダン(斎戒)でした。
日の出から日の入りまで全ての欲望を絶つのがイスラム教で定められた戒律で、日中の飲食や喫煙などをしなくなります。
4月2日を境にピタッと人々の行動が変わったのには驚きました。
私も平日だけ一緒に断食をしてみましたが、何事もやってみれば慣れるもので4月下旬には空腹やのどの渇きがそれほど苦にならなくなりました。

ラマダンは、食事が摂れないとか、巡礼で砂漠を旅するとか、困難な状況に直面した時にそれを我慢し克服できるように備えておくとか、厳しい状況に置かれた人の気持ちを理解するためとか、そういったことが目的のひとつにあるようです。
ただし、病気の人、妊娠中の人、子供等は対象外で、それなりに配慮がなされています。
ラマダン期間中、マクドナルドに行ったことがありましたが、親子で来ていた家族を見ると、子供だけが食事をして両親は横で見守っている、そんな姿もありました。
異教徒であるインド系や中国系の人たちは断食をしませんが、それぞれの民族の習慣をお互いに尊重し合い、異なる文化の領域にはお互いに足を踏み入れ過ぎないといったバランス感覚のようなものも感じました。
私自身は空腹を感じた時、周りのみんなも同じだよねと自然に考えることができ、相手への思いやりのような気持ちを育むことができたように思います。
その一方で、普段おしゃべりな人でも無口になったり、役所の手続きに時間がかかったり、なるべくエネルギーを節約しようとしているのかなとも感じました。

ラマダンが終わるとマレーシアはハリラヤという休みになり、日本のお正月のような雰囲気になります。
ハリラヤの祝日は5月3日と4日だけですが、今回は5月1日の労働の日、2日の振替休日と祝日が続き、ついでに5日と6日も休みにする会社が多く、ちょうど日本の連休と重なり、出入国制限も大幅に緩和されたので、一時帰国することにしました。
長めの旅行をすることができ、いろいろなことを考える時間があり、ふと初めて海外旅行に行った時のことを思い出しました。

私が初めて海外に行ったのは、21歳の時、冷夏で騒がれた年です。(私は冷夏を経験できませんでしたが。)
最初のフライトは、伊丹空港から返還直前の香港に行く便でした。
当時の航空券は複写式で、香港経由オークランド行きの1年間オープンの往復チケットが何枚も束ねられたもので、傷めないように難儀した覚えがあります。
今では航空券情報がパスポート情報と紐づけられて管理されていて、スキャンするだけで搭乗便が検索できるようになっていますが、ずいぶんと様変わりしたものです。

5月以降は出入国制限がだいぶ緩くなり、12月の渡航時と比べると時間の面でも経費の面でも楽になったと実感しました。
特に隔離がなくなったことは精神面で大きいものがあります。
以前のように気軽に行き来できる日が戻ってくると良いですね。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。