通信402「値上げの影響は本の売り上げにも」裵正烈

【週刊ハンガンネット通信】第402号 (2022年8月9日発行)

値上げの影響は本の売り上げにも
裵正烈
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最近あきらかに本の売り上げが落ちてきています。6、7月の実績をみると、自社の売り上げが昨年同時期に比べて3割は減っている感じです。

「値上げ、値上げ」とマスコミが繰り返し流し始めたのが、ちょうど同じくらいのタイミングではなかったでしょうか。「光熱費や食材費を節約することがあっても、本代だけはケチらない」という人は世の中では少数派だと思いますし、書籍代は家計が厳しくなるとまっさきに絞られるものの一つです。「韓国語学習熱の高まり」という別の要素もあるのですが、この秋・冬にはさらに値上げが続くということなので、会社の社長としては「経営上の大きな危機」と捉えています。

さて、弊社HANAは、ほぼ韓国語一本で出版活動を続けてきたこともあり、この分野ではそれなりに知られた出版社だと自負しています。そういうことから、「HANAから本を出したい」と言ってくださる方がいらっしゃいます。大変光栄なことですが、ときには「他社で出した方が売れると思うんですけど、うちからでいいんでしょうか?」と正直にお伝えすることがあります。

HANAには営業を担当する社員が一人しかおらず他の仕事も兼任しているので、営業担当の社員を二桁も抱えているような出版社には販売面で太刀打ちができないのです。全国の書店をあまねく回ることは不可能ですし、首都圏の書店に限るとしても月に1度の訪問が精一杯です。営業部員が多い出版社は、それこそ毎週のように、さらには週に何度も主要書店の店頭に現れて、棚の整理もしていきます(業界の慣習で、外部出版社の営業が店の許可を得た上で売り場の本の並びを変えることがあります)。

例えば、HANAの新刊が出るときに平積みにしてもらったとします。ところがこちらからはなかなかその後のフォローができないので、他社から次々発売される新刊に押し出されて、平積みだったものが数週間後には棚に移され、数カ月後に返品されて店頭からなくなることもしばしばです(売り場のスペースは有限なため)。もちろん平積みのときに動きがよい本などは、この限りではありませんが。

それで弊社の本でよくあるパターンが、発売直後によく売れて増刷を掛けたら、2刷以降ぱったりと売れ行きが止まるというものです。在庫が減らず「売れておかしくない本なのになぜ?」と思って調べると、書店の店頭にほとんど置かれていなかったといったことがよくあります。いくら本の内容が良くても、店頭にない本が売れるわけがありませんね。

もっと売れるはずなのに動いていない、もっと読者に使ってほしいと思う本がいくつもあるので、8月から営業社員を一人雇用することにしました。景気の落ち込みが続く最中に社員を増やすことに心配は尽きないのですが、営業人員を2倍にして一度出した本を少しでも長く多く売る。これは今回の危機への対策でもあります。

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