【週刊ハンガンネット通信】第406号 (2022年9月5日発行)
統語法
伊藤 耕一
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マレー語の学習を初めて数ヶ月、テキストには少しずつ文法事項も出始めました。
マレー語の語順も部分的にですが、少しずつ理解できるようになりました。
「この・その」等の連体詞は名詞の後に来る。
「私の・あなたの」等の所有格は名詞の後に来る。
「形容詞」は名詞の後から修飾する。
「〜でない」という否定詞は名詞の前に来る。
このように書いてみると理解できたようなつもりになりますが、いざ話そうとすると、頭の中が真っ白になってしまい、もう一度頭の中で作文し直してからそれを話してみるといった感じです。
大学時代の講義で、語順は「統語法」とも言うとの講義があり、「統語法をマスターすると、自然な文章を書いたり話したりできる。」という話を聞いたことを思い出しました。
この統語法(語順)はどうやって覚えたのだろうかと、ふと思い、私が今までに習ったことのある言語で「この厚い本は私の日本語の教科書ではありません。」という文章を書いてみました。
単語のまとまりごとに色分けして並べてみると、このような感じになりました。
改めて見ると、言語によって、てんでばらばらであることがよく分かります。
一見「厚い」はどの言語も2つ目に並んでいますが、マレー語はそれ以外の言語と比べ修飾の方向が逆になっています。
「~でない」は日本語・韓国語以外は否定される語句の前に位置します。
英語・日本語・韓国語は「日本語・教科書」という並びですが、マレー語・イタリア語は「教科書・日本語」という並びです。
ここでは5つの言語サンプルしかありませんが、同じ並びになったのは「日本語・韓国語」だけでした。
でも「あちこち」は「여기저기」と逆になったりするので、おそらく言語の数だけ統語法の数があるのではないかと思います。
言語を教える立場になって考えると、「統語法の規則性」に着目することで「より効率的に教えられるのではないか」という発想が出て来そうな気がします。
しかし、おそらく私の今の実力で、マレー語の語順を「規則性」の観点から理論的に体系的にかつ網羅的に教えてもらったとしても、覚えられる自信がありません。
そこで、実際に私がどうやってマレー語の語順を覚えようとしてきたのかを思い出してみました。
おそらくですが、短い例文「この本は厚い」「この厚い本」「この本は厚くない」「これは日本語の教科書だ」「この教科書は私のものだ」といったものを繰り返し読んでは書き、音と文字で頭の中に定着させてきたような気がします。
その後「この厚い本」と「これは日本語の教科書だ」と「この教科書は私のものだ」という3つの文章を組み合わせて「この厚い本は私の日本語の教科書だ。」という1つの文章を書いている(話そうとしている)のではないかと思います。
この組み合わせ作業で活躍するのが「統語法」だろうと思うのですが、「統語法を理解したから語順を理解できる」のではなく「語順を理解したから統語法を理解できる」というのが実用的な道筋ではないかと考えるに至りました。
私の今のマレー語は、教科書を見ながら書けば簡単なマレー語が書ける(短文だけ)という段階ですが、次は教科書を見なくてもそれなりのマレー語が書ける、話せるように努力を続けたいと思います。