通信434 「韓国語業界の世代交代 」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第434号 (2023年3月28日発行)

韓国語業界の世代交代 
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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某大学で教授を務められている先生から3月で定年退職されるとの連絡をいただきました。私が韓国語を手掛けるようになった20年ほど前、すでに韓国語の学習書を出版されていて、NHKテレビのハングル講座も担当されました。私も2002年に立ち上げたばかりの『韓国語ジャーナル』でずいぶんお世話になった方です。でも、ご退任のニュースを自社内で共有する際に、その先生を知らないスタッフが何人かいたので、どんな先生でどんな関わりがあったかを説明する必要がありました。

今年は「韓流20周年」に当たるとのこと。この韓流をきっかけに韓国語学習の一大ブームが起きました。当時から継続的に学習を続けている人は学習歴20年ということになりますが、弊社への読者ハガキなどで読者の学習歴を見ると、このブームをきっかけに韓国語を始めた(可能性のある人は)ごく少数です。これは今に始まった話ではなく、『韓国語学習ジャーナルhana』を創刊した2014年当時もそうでした。弊社の中上級レベル書籍の読者の中には、学習歴数年という人も結構います。

この20年の間に、教える方側も学ぶ側も絶え間なく世代交代しているわけです。制作する側もそうだと思います。その中にあって、幸いなことに私はいまだ現場との関わりが少しあります。それ以前の草創期に活躍された大先生たちとも仕事をする機会があったので、このまま元気に仕事を続けられれば、この分野の生き字引の一人になれるかもしれません。

何年か前にある出版社の知人に聞いた話ですが、その会社では企画書を出すとまず聞かれることが「著者はネットで有名なのか? フォロワーはどれだけいるのか?」だそうです。今は出版社がユーチューバーの人気に便乗して本を売る時代です。韓国語学習書も例外ではなく、ある大手出版社は、ユーチューバー、ブロガーなどのネットで人気のある人をどんどん起用し、韓国語学習書の分野でどんどん実績を上げています。

弊社は他の出版社の下請けの仕事もやっていたので、こうした本の校正依頼をよくいただきました。そうした仕事の中には、著者の方が原稿を書くことに慣れておらずなかなか大変なときもあります。やるからには手を抜かずに仕事するので、校正紙が文字通り「血の海(修正指示の赤字だらけ)」になるのですが、こうなると仕事としても手が掛かりすぎて割に合いませんし、それ以上に自社の最も貴重なリソースを浪費して競合商品の付加価値を高めてあげているようで、かなり複雑な心境になります(なので最近この手の仕事は断っています)。

もちろんネットで人気を集めている韓国語の先生の中にはしっかりした内容を配信されている方もいらっしゃいます。逆にユーチューブに新たな活動の場所を作ろうと積極的に行動されている「旧世代」の先生もいらっしゃいますね。HANAでもそういう先生の本を出しています。つまり先生の人気に便乗することをやっているので、他社を悪く言うことはできません。大事なことは、こうして学習者にとって選択肢が増えることが韓国語の普及のためにとても望ましいということだと思います。

ただし、ネットから無料で学べる世の中にしてしまうと、紙の本を商売としている自分の首を絞めることになります。ブログ、メルマガ、ツイッター、インスタ、ユーチューブと、どうすれば次々現れる新しいメディアを自社のビジネスに役立てることができるかと、日々苦慮しているところです。

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