通信301-350 [19年6月-

301. きっかけ 伊藤耕一 302. 読解力 寄田晴代 303. オンライン授業の可能性 前田真彦 304. 続・オンライン授業の可能性 幡野泉 305. バラエティに富む発音 伊藤耕一 306. 韓国語に思いをのせて 前田真彦 307. 韓国語の読書は大変 幡野泉 308. 309. 310. 311. 312. 313. 314. 315. 316. 317. 318. 319. 320. 321. 322. 323. 324. 325. 326. 327. 328. 329. 330. 331. 332. 333. 334. 335. 336. 337. 338. 339. 340. 341. 342. 343. 344. 345. 346. 347. 348. […]

通信302 読解力 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第302号(2019年6月17日発行) 読解力 寄田晴代 ============ 長文読解の授業で時々ぶつかる困難に「日本語に直してみたものの、その文章の意味がわからない」というものがあります。 論説文に出て来る漢字語に馴染みがなくて意味がわからない、という人もいます。TOPIKの読解問題に出る論説文はそんなに長くありませんが、自分の馴染みのない分野だと、読む前から拒絶反応を起こす人もいます。 予備知識が全くない分野について読むことを負担に思うのでしょう。そもそも、集中してまとまった文章を読むのが苦手な人もいます。そうなるともはや、韓国語の問題ではありません。 語彙数は人生経験や読書量に比例するのでしょうか。若い人ほど、日本語の単語の意味がわからなくて苦労する人が多い印象があります。 よく使うことばだから知っておいた方がいいよ、というと「それ、方言じゃないんですか」と関西標準語母語話者の私に確認する人もいます。 ところで、 最近、年齢に関わらず大人でも、書いてあるものをちゃんと読んで理解していないことがあるのではないか、と思うようになりました。 私は時々スポーツジムに行くのですが、そこで「あれ?」と思うことがあったからです。 運動するマシンにはそれぞれ、鍛える筋肉、注意事項、使用方法などが、図解と簡潔な文章で示されています。 それなのに、そんな風に使っては体痛めますよ、と声をかけたくなるような人が少なからずいるのです。 どうして?これ読んでないの?読んだけれど自分流に解釈してるの? 質問してみたくてたまりませんでした。(説明文が難解だとは思えないので、「勝手に解釈派」が主流ではないかと推測しています。) 日本語でも(こんなに短い説明文でも)、読んでみて正確に把握できないことは珍しくないのかもしれない、と思うようになったわけです。 今年5月、新聞で「AIに勝る読解力を養おう」という記事を読みました。筆者は国立情報学研究所教授の新井紀子さんです。 「これまでの研究でAIの限界がハッキリした一方で、多くの中高生がAIと同じように読解力が不足していることもわかった。」という文にうなずきました。 ここでいう読解力とは、言うまでもなく、教科書や新聞など事実について書かれた文書を正確に把握する力です。 そして、読解力不足を放置するとAIに仕事を奪われる層が増え、格差が広がる危険性があるという怖い話が続き、まず母語である日本語やAIの基礎となる数学を身につけてほしい、と述べられています。 韓国語学習の初級の段階では「読解」と言っても、韓国語と日本語を置き換える作業が中心になるでしょう。 しかし、韓国語を使って何かしたい、と思っている学習者には、先を見据えた、母語の読解力の大切さを伝えたいと思いました。 母語以上に語彙や表現が広がることはありえないので、自分もしっかり日本語の向上に励みたいです。 まずは、なんでも「ほらほら、あれ、あれ」で済まそうとする傾向を改善しようと思っています。

通信296 第3回韓国青年訪日団と韓国語学習者の交流会 阪堂千津子

【週刊ハンガンネット通信】第296号 (2019年3月4日発行) 「第3回韓国青年訪日団と韓国語学習者の交流会」無事終了! ハンガンネット世話人 阪堂千津子 ================ アンニョンハセヨ!  いよいよ花粉症のシーズンが始まったのか、私は「コンムル」(カタカナにすると花水のように見えるかな?)との戦いが始まりました。 みなさんはいかがですか さて、少し前になりますが、2月21日に横浜で、ハンガンネットと日韓文化交流基金による「第3回 韓国青年訪日団と韓国語学習者の交流会」(参加者120名)が開催されました。 これは「JENESYS2018」 というプログラムの一環で、韓国全土から集まった大学生を日本のいろいろな場所に招待し、ホームステイや観光・人的交流を通して日韓相互理解相互を促進する事業の1つです。ハンガンネットでは、3年前からこの交流会を企画・協力しています。 今年は昨年のアンケート結果から前2回のプログラムを見直し変更、事前に計6回の打ち合わせを重ね、準備を整えました。当日は日本側のメンバーが韓国の大学生が宿泊している横浜のホテルに集合し、韓国の学生たちを宴会場で待ち受けました。 まずは日韓メンバーの対面式が行われグループに分かれたあと、横浜散策として各班が準備したコースに出かけました。 ゴールは横浜駅近くにある展望レストラン「クルーズ・クルーズYOKOHAMA」。当日は幸い2月にしては比較的暖かく、みんなで横浜のインスタ映えするステキな景色を楽しんだようです。ほとんどの班が予定時間になっても到着しないので、「料理が待ってますよ~」と何度も交流会LINEに写真を投稿して帰りを促しました。 2~3時間の散策のあとは、ゴールのレストランに到着したグループから和洋中の豪華ビュッフェと、特別にしつらえた山形・横浜合同の裏千家師範の先生方によるお茶席を堪能しました。私も1服いただきましたが、嘘ではなく今まで飲んだどの御抹茶よりも美味しかったです! 食事の後は、各グループの「散策報告会」で盛り上がりました。今回は、「今日最高の1枚の写真」と、「今日習った日本語・韓国語」をレストラン到着までにSNSで送っておくというのがミッションでした。「最高の一枚」は、今朝初めて会ったメンバーとは思えないような和気あいあいとしたショットばかり。参加者が日韓両語をまじえながら交流を満喫した様子がありありと分かりました。 そして笑えたのが「今日習った日本語・韓国語」。両国語の新語・造語・珍語がたくさん紹介されました。一例をあげると、韓国語は「소확행」「일빠」「갑분싸」など、日本語は「ガチかわいい」「手に職をつける」「それな!」などがあがっていました。皆さんはわかりますか? 私にはほとんど初耳のものばかりで、とても勉強になりました。  でも、いつか使えるようになるのでしょうか~??? そしてあっという間に閉会の時間となり、日本恒例の「三本締め」で、めでたく交流会はお開きとなりました。(公式日程の後も、ボランティアで韓国人学生をご案内くださった先生方もいらっしゃいました。お疲れ様でした。) 今回の交流会には、ハンガンネットに参加している学校・教室から、60名を超える方たちが参加しました。昨年同様、茨城、三島、山形、仙台などからも参加申し込みがあり、遠方組は前日から近隣のホテルに宿泊するほどの熱心さでした。参加者からは「リピーターの方が多かった(遠方の方もです!)ので、また会えて嬉しい」、「先生も一緒に参加してくれて心強かった」、という声が多く聞かれました。本当にお疲れ様でした! ハンガンネットからは韓国語講師の先生が8名もご協力くださって、フィールドワークで教室の生徒さんと韓国人大学生との橋渡し役に貢献してくださいました。この場を借りてあらためて御礼もうしあげます。 また、このメールをご覧になっていらっしゃる参加者を送り出して下さった学校・教室の先生方も、きっと舞台裏でいろいろとご心配やご協力頂いたことと思います。本当にありがとうございました。 そして何と言っても交流会の真の立役者は、受付やSNSの投稿集約、司会進行、お茶席の準備など、交流会の裏方事務を担っている学習者の方々です。彼らの韓国の大学生たちを「おもてなし」しようという暖かい情熱には、毎回、本当に頭が下がります。 このような素晴らしい学習者を生徒さんとして教えられるなんて、私たち韓国語講師はなんと幸せ者なのだ、と心から思いますよね!! 今のところ、来年度の交流会については未定ですが、もしも来年度も実施が決定しましたら、今年度に引き続き、ハンガンネット会員からのたくさんのご参加・ご協力をお待ちしております。よろしくお願いします。 以下、今回参加した学校・教室と先生方のお名前です。 参加学校・教室(あいうえお順) アイケーブリッジ外語学院 アオナビ韓国語教室  アンニョンハセヨ(市民サークル) 韓国語教室  ケナリ コリブン語学堂 楽しい韓国語教室 趙永鳳先生の教室 東京外国語大学オープンアカデミー ひろば語学院 ミリネ韓国語教室 ミレ韓国語学院 参加された先生方(あいうえお順) 大和田友美先生(楽しい韓国語教室) 小田みすず先生(アンニョンハセヨ) 成智姫先生(アオナビ) 趙永鳳先生(趙永鳳先生の教室) 丹羽光(ひろば語学院) 丹羽裕美先生(ひろば語学院・ハンガンネット世話人) 朴智貞先生(ミリネ韓国語教室) 阪堂千津子(コリブン語学堂・ハンガンネット世話人) 寄田晴代(ハンガンネット世話人) 参加者のアンケートの一部(抜粋) 韓国代表の方の言葉で、お互いの言葉が分かれば、より親しみを感じて距離感が近くなれると仰っていたのが印象的で、心に響きました。草の根活動ですが、未来を担っていく優秀な韓国の若者と交流できたことは今後の日韓関係の良化に繋がっていくのではないかと思います。年齢も国籍も違う人々が100人近く集まった会場を見渡した時、ここにはお互いの国への愛があると感じて感動しました。(30代、会社員) 3度目の参加ですが、今まで当日のみ参加していて、今回が初めて準備から当日の役割まで参加という形になりました。韓国人大学生との交流という体験ももちろんですが、準備などを通じてほかの韓国語学習者とも知り合うことが出来ました。ただ勉強しているだけでは経験出来ない貴重な経験になり、モチベーションもあがりました。(40代、主婦) たくさんの交流会を経験してきましたが今回は、現在の日韓関係のなか 親御さんや親戚に日本交流を止められた学生も少なくなかったと思います。(中略) 今回、参加した学生から「初めて日本にきて本当にまた来たい国になりました」とメッセージを頂き本当に嬉しかったです。(40代、主婦) 所属が無い私を暖かく迎えてくださり、何かと声をかけてくださったミレ班の皆さん、そして人がやりたがらない重責の司会に手を挙げて頂いたお二人にこの場を借りて感謝申し上げます。そして、そういう横の繋がりが出来るのも、このハンガンネットならでは、なのだと思います。(50代、主婦) 韓国語の勉強を始めてからかなりたちますが、先生以外の韓国の方と話をするのはほとんど経験がなく、最初はとても不安でした。でも学生さんたちがとても可愛くフレンドリーで最初の心配も吹き飛び、楽しい時間を過ごさせていただきました。ただ自分の拙さも痛感し、もっと話して交流できるようになりたいという気持ちもでき、近頃下がっていた韓国語のコンブへのモチベーションが上がったように思います。韓国語だけでなく、韓国の若い方と触れ合えたことは60代のハルモニにとっても大変思い出深い貴重な経験となりました。このような機会を作っていただき本当にありがとうございました。(60代、主婦) 韓国人学生と直接話したり、案内する機会を作って戴き感謝しています。交流会行事の話を先生から伺った時、教室の他の生徒達の殆どが参加を希望し、初めて参加させて頂くことになりました。私自身も韓国学生と接する折角の機会なので、最近の流行語や それが生まれた背景を調べたり、韓国で現在放送中の人気ドラマをネットで見たりしましたが、少なからず韓国語のスキルとモチベーションアップに役立ったと思います。交流した学生達の日本語学習に取り組む姿勢、熱心さにも 感銘を受けました。(70代、会社員) *********** […]

通信287 高齢者と外国語教育 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第287号 (2018年11月25日発行) 「高齢者と外国語教育」 寄田晴代 ——————– 先日、自分が韓国語の講師をしているという話を近所の人にしたところ、「この間韓国に初めて行ったの。すごく楽しかったからまた行きたい。韓国語も勉強したい」という反応が返ってきました。 一緒に旅行に行ったお友達は、文化センターのようなところで既に韓国語を習い始めているそうです。そこには、K-POPが好きで韓国語を始めた若い女子たちもいるらしいのですが「あの人たちには負けたくない!」と、お友達は言っているそうです。 私が「へぇー」と思ったのは、私だったら「若い人より覚えが悪くても当たり前。同じようにはできない」と考えるところを、その方は「負けたくない!」と言ったところです。(おそらく50代後半の方です。)みんな、自分のように考えるだろうと思うのは、思い込みですね。 講師が「この人はこの年齢だから、ここまでしたくないだろう」とか、受講生に対して勝手な思い込みを元に指導していなかったか、振り返るきっかけになりました。 そんなとき、ちょうど年齢と外国語学習に関する記事を読んだので、ご紹介します。スコットランドにある、高齢者向けのバイリンガル教育を行う社会的企業「リンゴ・フラミンゴ*」の話です。*Lingo Flamingo 複数の言語を話すバイリンガルの人は、そうでない人に比べて認知症の発症が最大5年遅い」という研究結果が、2013年、神経系医学の学術誌「ニューロロジー」に掲載され、この研究を受けて「リンゴ・フラミンゴ」は誕生しました。 今では、英国中の老人ホームやデイサービスで語学講座を開いて、認知症の進行や脳の老化を遅らせる革新的な取り組みとして注目されているそうです。 主に70~80代の人を対象にしていますが、研究者チームと協力して言語学習の効果を測ったり、講座の内容を開発してきました。 高齢者が学びやすいように大きい文字の教科書を作ったり、記憶術を取り入れたり、また、料理をしながら関連する単語を学ぶなど、体を動かし五感を働かせる活動も行います。 数独(number placement puzzle)やクロスワードパズルは脳の一部しか使いませんが(中略)外国語の学習は、認識力や判断力などあらゆる知能を総動員します。その人に言語学習能力があるかは関係なく、外国語を理解しようと努力すること自体が脳に良い働きをし、脳全体の運動になるのです。」という創業者のことばは、外国語を仕事にしている私たちにとっても嬉しいことばではないでしょうか。 そして、実際、重度の認知症で言葉も出なかった受講者が、外国語で「こんにちは」と発した事例も紹介されています。 高齢者は外国語学習に向かない、というステレオタイプに挑んだ活動を知ったことで、小さな積み重ねが変化をもたらすことを再確認しました。 (ビッグイシュー日本版 vol.345 より)

通信280 「話す力」求め一直線: 英語教育から考える 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第280号 (2018年8月18日発行) 「話す力」求め一直線: 英語教育から考える 寄田晴代 ———— 学校の夏休みも後半になりました。我が家では、夏休みの宿題に焦りを見せ始めている人がいます。 うちの子どもと同じクラスに、韓国人の友達がいます。その友達が夏休みに韓国に研修に行くと聞き、てっきり韓国語に磨きをかけるためかと思っていたら、英語のTOEFLの集中講座を受けるというのです。午前9時から午後4時まで、日曜日以外毎日授業があるそうです。 そのお母さんによると、韓国の学生は普通4週間コースだけれど、うちは日本から行くから日程が合わなくて2週間、なのだそうです。ちなみに、中学生の話です。 夏休みのTOEFL集中講座には海外在住の韓国人子弟たちが、あちこちの国からソウルへやって来るというのにも驚きました。アメリカに住んでいる子どもも来るそうで、やはり生活で外国語を使えるということと、試験で得点を取るということは別なのでしょうか。 夏休みの計画といえば、家族で遊びに行くことしか考えたことのない私は、韓国人の教育熱心さに改めて感心させられました。 英語と言えば日本では2020年度からの大学入試改革で英語の民間試験を活用するなど、英語教育が大きく変わろうとしています。 英語教育改革、まず検証を 今年6月4日の日経新聞で、立教大学の鳥飼玖美子名誉教授が書いた「英語教育改革 まず検証を」という記事を読みました。韓国語教育にも通じるところがあると思い、紹介させていただきます。 記事では「英語を話せるようになりたい」という長年に渡る日本人の願いを背景に、1986年臨時教育審議会第2次答申が、中学高校では「文法知識の習得と読解力の養成に重点が置かれすぎている」と糾弾し、それを受けての教育改革の流れを紹介しています。 高校に「オーラルコミュニケーション」という教科の新設、小学校での「外国語(英語)活動」必修化、高校での英語授業は「英語で行うことを基本とする」という指示など、みなさんもご存知だと思います。 「コミュニケーションに使える英語」を目指して30年近く改革は続けられてきましたが、政府による達成目標(中3英検3級以上、高3英検準2級以上、それぞれの割合50%以上)には達しておらず「生徒の英語力はむしろ下がった感がある」「現実に多くの大学では、英語を話すどころか読めない、書けない入学生の対応に追われている」と筆者は述べています。 そして、これまでの英語教育の改革を検証し、改革の方向は適切であるのか、思い込みを捨てて議論すべき時が来ている、と結んでいます。 これは中学高校での話なので、やる気満々の市民講座受講生の場合と同じには考えられません。しかし、なかなか思うように韓国語が話せない、と思っている受講生は少なくないでしょう。 具体的に話す場面や内容を思い浮かべる 漠然と「話せるようになりたいなあ~」と夢見るのではなく、この外国語でこんな話がしたい、と具体的に話す場面や内容を思い浮かべてみてはどうでしょう。話す力は、発信したい意欲に負うところが大きいと思うからです。 中高生も、質問したり意見を言う習慣と、安心して発言できる場があれば、外国語を話す力の助けになるのでは、とも思いました。また、記事の中で「読み書きの基礎力があれば、大学入学後に話すことの指導は可能である」と述べられているのですが、この基礎力なしに話す力は伸びないことは、講師のみなさんも共感できるのではないでしょうか。 そういうことも、学習者にうまく伝えられると学習効果が上がるのでしょうね。何かの思い込みが私たちの学習を邪魔していないか、考えるきっかけになりました。

2018年7月1日現在の通信のアクセス状況

2018年7月1日現在の通信のアクセス状況(ビューア数20以上)を集計しました。 通信no 通信タイトル 筆者 20180701 068 日本人が間違えやすい面白い韓国語 伊藤耕一                  1000 124 方言で韓国語訳を考える 伊藤耕一                    190 062 トイレの水にオタマジャクシ 伊藤耕一                    159 203 名古屋ハンセミ「会話レッスン」について考えよう 吉川寿子                    149 051 韓国語で話してみる 林鳩順                    135 161 作文指導: 量を豊富にし、書くスピードを上げるには? 幡野泉                    133 220 私の韓国語講師奮闘記12: 発音について考えてみた 宮本千恵美                    125 229 私の韓国語講師奮闘記13: 日本で韓国語(外国語)を学ぶ 宮本千恵美                    119 129 […]

通信273 「韓国語らしさ」について 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第273号 (2018年6月9日発行) <韓国語らしさ>について 寄田晴代 ———- 「韓国語をやるからには、韓国人っぽく話せるようになりたい」そう思って韓国語を学んでいる人は多いと思います。私もそうです。 先日、この<○○語らしさ>について考えることがありました。大阪へ同窓会のために帰ったときのことです。夜行バスに乗ったのですが、大阪のバス会社でした。 乗務員のおじさんが荷物を預かりながら「どこまで行かれますかぁ?」とか、ご年配の乗客を座席まで案内しながら「新宿出るとき、よう揺れるから立たんとってなあ」と話すのを聞いて あ、ネイティブスピーカーだ、と思いました。 同窓会の会場でもネイティブスピーカー(大阪弁の)がいっぱいでした。中学校の同窓会で、ほとんどが地元で生まれ育った人なのです。 気兼ねない関係に久しぶりに再会した興奮が加わり、にぎやかな会話が続きました。特に「女子」同士の会話はテンポが速い。スポーツでいうなら卓球。(もちろん個人差はありますよ) 速いだけではなくて、適当なタイミングで冗談が入ったり、間をためたり。 私は東京で暮らすようになって3年なのですが、久しぶりに大阪弁らしい大阪弁に包まれた気がしました。 語尾が「~や」「~ねん」などになるとか、イントネーションだけでなく、あのバスのおじさんのゆるりとした親し気な話し方や、友達との会話のテンポに、大阪弁らしさを感じたのでした。 韓国語も話すテンポや間合いを研究したら、もっとそれらしく聞こえるかな、などど考えていました。 また、大阪弁との違いで思い出すのは「お金の話なんかしない」と言った神奈川県出身の友人の言葉です。 親しい間柄なら「これなんぼで買うたと思う?」と値段の話をするのも普通だった私には、少なからず驚きでした。 話題にしていいものに差があるのだ。日本の中でも。そう思いました。 こんな私でも、韓国で出会ったばかりの人に、年齢や既婚か未婚か、子どもの有無、夫の収入などを尋ねられるのには、ずいぶん戸惑った覚えがあります。 中国の北京に長く住んでいた知り合いも、電車を待っているときに、列に並んでいる見ず知らずの人に収入を聞かれたことがあると言っていました。 (年齢や家の広さなども、韓国と同じように結構平気で質問するとのことでしたが、近年、家庭ごとの経済格差が生じるようになって、何でも聞いていいという雰囲気が弱くなってきたように思う、と言っていました。) ○○語らしさ(大阪弁を例に挙げていますが)というのは、文法だけでなく会話の内容や話し方にも関係があると思っていますが、 地域、年齢、性別などによっても異なるので、簡単には説明できないでしょう。 話題に関して、もう一つ書きます。 20年以上韓国に暮らしている知り合いに、東京で会った時のことです。質問されました。 「それで時給、いくらもらってるの?」 親しい間柄ではありますが、日本語でこの直球を受けると、衝撃があることを知りました。(大阪でも家族以外でこれはないと思います。) 韓国語らしく話すことを目指して、文法や発音以外に、会話のテンポや選ぶ話題にも注目したいと思いこれを書き始めました。 そして、円滑な会話を進めるために、暗黙の了解となっている決まり事は知っておいた方がいい、という意味においても大丈夫な話題、そうでない話題は押さえておいた方がよいと思っています。 前回、幡野先生が南北のことばについて言及されていましたが、会話のテンポや好まれる話題などについても、南北でどんな違いがあるのか、気になるところです。

通信266 翻訳講座で学んでみた 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第266号 (2018年4月13日発行) 翻訳講座で学んでみた 寄田晴代 ———- 少し前のことですが、短期の翻訳講座(もちろん韓国語)に行ってみました。そのことについて書きます。 翻訳講座を受講しようと思った理由は、まず、具体的な翻訳のスキルについてもっと知りたかったこと、翻訳家として活躍している方から直接いろいろと話を聞いてみたかったことです。 時々、韓国語を日本語に訳す仕事もしていましたが、この機会に自分の翻訳力を素直に見つめ直してみよう。 そして、韓国語を使う仕事について知っておくことは、そんな仕事をしたいと思っている学習者を教える上で役に立つのでは ないか、そんな考えもありました。 講座の先生は現役の翻訳家で、受講生は私を始め、みなさん社会人でした。 授業で一緒に訳すものとは別に毎回宿題があり、事前に翻訳して提出します。 授業当日、お互いの訳を見比べ、訳し方が分かれた部分や注意するポイントについて先生が解説してくださいました。 また、ビジネス文書は使われる用語や表現が決まっているので、実際の文書を読みながら訳し方を教わると、馴染みのない表現に、日本語ながら新鮮さを感じました。 日本と韓国で読者に受ける文章が違う話や、筆者と編集者の関係も両国では少し違う、など、実際に翻訳業で活躍されている先生ならではのお話も面白かったです。 受講生の方々も熱心で、翻訳するためにいろいろな情報を調べ言葉にこだわり吟味する姿に、さすが翻訳の勉強をしてみようと やって来る人は違う!と思わされました。 ある方は「こうやって、とことん調べることは○○先生のところで身に着いたんです」と、おっしゃっていました。 私も自分が韓国語を教えた人からこんなこと言われたい。それにしても韓国語の世界は狭い。「〇〇先生」って知り合いの先生だ。 短い期間でしたが、この講座を通して気づいたことがいくつかありました。 一つ目は、自分の日本語は韓国語の影響を結構受けている、ということです。 普段から気をつけているつもりだったのに、職場ではほとんど韓国語を使い、 家でもしょっちゅう韓国語を使っているせいでしょうか(家族は全員日本人ですけれど)。 意識して日本語の本もよく読んでいるのですが、足りなかったか? 正直、ギョッとしたのと、自分では発見できないことに気づけて良かった、というのが感想です。 二つ目は「自然な日本語」という基準にも個人差があること。 翻訳は、読む人が違和感を感じないように訳すのが大前提ですが、ひとつの単語に対して持つイメージや解釈も、人によって差がある、ということを感じました。 たとえば、成人した子どもに対して呼びかける「너」を、私以外の方はみんな「あなた」と訳しました。 私は、成人していても我が子に使うのは「おまえ」。それも、丁寧さを欠いた乱暴な感じの「おまえ」ではなく、 幼いものを慈しむイメージの「おまえ」が浮かびました。が、実は私は関西人なので、本当は「あんた」と呼びたい。 「あんた」だったら「あなた」と同じでしょ、と言われそうですが、違います。私にとっては「あんた」は「あなた」より 「おまえ」に近いのです。 みなさんはいかがですか? また、豊かな語彙や表現を増やすことで、自分にとっての「自然な日本語」の幅が広がるのでは、とも思っています。 そして、一緒に学ぶ受講生の方々の姿から、自分が教える学習者の未来の姿を見たような気になりました。 こんな風に、言葉を学ぶ先にある自分のやりたいことに向って、自分で学びを進められるようになってほしい。 そんなことを願いつつ、授業の準備に精を出します。

通信259 「学習者に伝える」ということ 寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第259号 (2018年2月5日発行)   「学習者に伝える」ということ 寄田晴代        ———-   授業で一生懸命説明したつもりなのに、今ひとつ伝わっていないようだ。 そんな経験をされたことはありませんか? そんなときは、つい学習者側に責任を転嫁してしまいがちな私ですが、それを考え直すようなことがありましたので、書いてみます。   離れて暮らす高齢の両親を時々訪ねます。先月は、母が病院に行くのでついて行きました。 お医者さんは、今回受けた検査の結果と、生活上の注意点、次回の検査について話すのですが、声が小さめで、話し方が不明瞭。話のどこが大事なところなのかわかりにくい。 母はふん、ふん、とうなずいているものの、絶対わかってないわ、と思ったので、 「それは、こういうことですか?」「こういう意味ですか?」と横から確認をしながら聞きました。 その後、次の検査の詳しい話を看護師さんがしてくれました。 注意事項が書いてある紙を見せながら、説明するのですが、それがちょっと早口で、しかもざわざわした待合スペースでのことで、耳が悪くなった母には聞き取るのがしんどいはずです。 「○○時までにお食事を済ませておいてくださいね」と言うので、「すみません。ここに書いておいてもらえますか」と頼み、 大事なところにマーカーで印つけて、とお願いしました。 母は、うなずきはするがメモを取ろうともしないし、言われた数字を覚えているとは思えないからです。注意事項の紙も、小さい文字がいっぱいなせいか、母は読む気すらなさそうでした。   私はとても不思議に思いました。 医者も看護師も、日常的に大量の高齢者に接しているはずなのに、高齢者に何かを伝える際の配慮がないように見えたからです。 これ、わたしのような付き添いのいない高齢の患者さんは、どうしているのでしょうか? その日出会ったお医者さんも看護師さんも、特に不親切というわけではありません。好意的に考えれば、ただ気づいていないだけ。 そんな話し方じゃ、高齢者には伝わりにくいことに気づいていないだけなのでしょう。   そこで唐突に、私も授業でこういう配慮のないことをしていないだろうか、と思ったわけです。 何か質問ありますか?わかりましたか?と聞くと、学習者はたいてい黙っています。 「え~?わかんなーい」と言う人もたまにいます。 そういう人に対して、内心ムッとしている場合ではなかった。 知りたいと思っているのに、分かりにくい説明をされるとこんなにイライラする、という経験を久しぶりにして、私も授業で使う言葉や言い方、声の大きさをもっと吟味してみよう思いました。   ある知り合いの韓国語講師から聞いた話が印象的でした。 若い学生が露骨に「わからない」を繰り返すので、文法用語など排除して、本当に平易な言葉で説明するようにした。 そうしたら、他の年配の学習者たちから「先生最近わかりやす~い」とほめられた、と。 わからなくてモヤモヤしている人って、結構いるのかもしれません。 「わからないことは質問してください」と言っているだけでは、先に進めないことがある、と思いました。