通信438 「初学者の言語運用能力の状況」伊藤耕一

週刊ハンガンネット通信】第438号 (2023年4月24日発行)

初学者の言語運用能力の状況 
伊藤耕一
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マレーシアでは4月21日にラマダンが終わり、22日からハリラヤ休暇が始まりました。
ハリラヤは日本のお正月のようなもので、国全体がお休みモードに入ります。
公休日は2日しかありませんが、私の会社ではマレー人が従業員の95%程度を占めるためか、前後の土日を入れて10連休となります。
連休明けは日本のGWがあり、今回は長めの休暇を取ることができ、この通信を日本で書いています。

早いものでマレーシアに来て1年4ヶ月が経ちました。
今回は、私のマレー語の運用能力がどれほどになったか、恥ずかしながら振り返ってみたいと思います。

聞く力
マレーシアに来たとはいえ、普段の仕事は英語、買い物やちょっとした用足しも英語で済ませられるため、マレー語に接する機会はほとんどありません。
少しでもマレー語を聞く機会を持ちたいと思い、通勤時の車内ではマレー語のラジオを聞くようにしています。
繰り返し流れるCM、音楽を紹介する時のフレーズ、天気予報など定型的な言い回しは徐々に理解できるようになりました。
私にとっての外国語である英語と韓国語を覚えた時のことを思い出すと、会話の実践で最も役立ったのはリズム感と抑揚でした。
そこで、聞く時にはそこに注意を向けています。
最初は全く聞き取れなかったマレー語が、少しずつ聞き取れるようになってきました。
これは、ざるで砂利をすくった時に、最初は全てが零れ落ちていたのが、大きな石から順にざるに残るのに似ていると思っています。
時間をかければ、ざるの目がもっと細かくなり、零れ落ちる砂がだんだん少なくなっていくイメージを持ちながら、マレー語を聞き続けています。

話す力
日常のあいさつ、単文は語彙力の範囲で話せるようになりました。
会社では月に1回、スピーチの時間があるのですが、1〜2分程度の原稿を作り、それを読むことを続けています。
日本語で文章を書いて、それをGoogle翻訳でマレー語に変換します。便利な世の中になったものです。
翻訳されたマレー語が適切かどうかは、マレー語を英語に変換して確認します。
すると、経験的に全体の20%ほどは手直しが必要になるのですが、英語を修正してマレー語に変換、マレー語を日本語に変換、日本語を修正してマレー語に変換、マレー語を英語に変換…このような作業を数回繰り返すと、手直しが不要な程度の文章が出来上がります。
それを社員の皆さんの前で読むのですが、最初は目を細められたり、首を傾げられたりすることがありました。
最初の頃は単純な文章しか話さなかったので、ひとえに発音が悪かったのだと思います。
最近は、「おはようございます。元気ですか。」と言うとタイミング良く「元気です。」と返してくれたり、ウンウンと頷いてくれたり、伝わる言葉を喋れていることを実感します。
先日、社長とこのことについて話す機会があり「発音は問題なく、だいたい聞き取れる。」とおっしゃっていただけたので、とても嬉しくなりました。
みんなの前で話すことは、月に1回であっても話す力を着実に高めてくれることを実感します。
今後は語彙と言い回しを覚えて、原稿なしで話せるようになりたいと思います。

読む力
スピーチの効果だと思いますが、文字が書いてさえあれば、ゆっくりと文章を読むことはできます。
しかし、語彙力と文法力がなさ過ぎて何が書かれているのかは、分かる時と分からない時があります。
日本語の外来語のように、マレー語には英語由来の単語が多いので、読んで発音するとその音から意味を類推できることが結構あります。
これはハングルで書かれた文章から、音を頼りに漢字を類推して韓国語の意味を捉えるプロセスにも似ています。
実感するのは黙読して分からない時に、声に出して読むと分かる時があることです。
声に出すと、英語に似た音の単語を類推できたり、ラジオで聞いた音が思い出されたり、インプットされた単語やフレーズが頭の中から取り出されるような気がします。
改めて音読は効果的だなと実感します。

書く力
学生の頃のように、ノートに手書きする時間を今はなかなか取ることができず、書くことはほとんどできていません。
聞き取れた単語を書いても、綴りが間違っていることが多々あります。
パソコンで書く時には、英語や日本語はスペルチェックや校正機能が助けてくれるのですが、マレー語はほぼ全ての単語に波線が表示されてしまい、この機能の力を借りることもできません。
書く力はやはり、ペンとノートと時間を使い、地道に築き上げるしかないように思います。

私はマレー語について「聞く>話す>読む>書く」の順番で力を付けようと思っていましたが、現時点では「話す>聞く>読む>書く」の順番になっているようです。
これは、そこそこ適切な文章を手軽に入手できる自動翻訳機能と、話す機会に恵まれている環境のおかげだと思います。
30年以上前に私が韓国語を学び始めた時は「読む≒書く>聞く>話す」でした。
最も手軽な学習法は「読む」ことでした。
二番目に手軽な学習法は「書く」ことでしたが、辞書と文法の教科書を何度もひっくり返すことが必要でした。
しかも、書いた文章が正しいかどうかは、その場で自分では検証できません。
韓国語を聞くにはラジオやテレビを録音・録画したり、先生の音声が録音されたカセットテープを受け取ったりするしかなく、「聞く」は自分の環境(ラジカセやテレビや録画機を買う等)を整え、機会を逃さない姿勢(番組の録音・録画、先生に録音をお願いする、旅行に行く等)が必要でした。
話すことは、交通費をかけて誰かに会いに行く、電話で話すなどコストが高すぎ、学生の私には最も難しいものでした。

今はスマートフォンがあれば、動画を通じて聞くことができ、自分の音声を手軽に録音することができ、それをすぐに誰かに送ることができ、通話アプリで格安に会話ができ、音声も文字も瞬時に翻訳することができ、「聞く」こと「話す」ことの方が、やる気さえあれば安く簡単にできる時代になったように思います。
この30年で随分と環境が変わったものだなと、あらためて驚かされます。

学習歴が1年を超えた韓国語学習者の中には、私と同じような状況にある人がいるのではないかと思いながら、今回の通信を書いてみました。
皆様のご参考になれば幸いです。

ここからは余談ですが、日本に帰って来ていつも感動するのは、耳に入って来る音声のほとんどが聞き取れて理解できることです。
外国にいる時には空港の搭乗前のアナウンスでさえ「どの座席ゾーンに搭乗できる」と言ったのか、全神経を耳に集中させています。
日本ではさほど集中しなくても、何を言われたのか理解できるので、全集中する必要がなく、その分の脳みそのリソースをセーブできるような気がしています。
マレーシアに来て以来、恥ずかしながら、お酒も飲まないのに夜9時には猛烈に眠くなってしまいます。
全集中する必要がない分、日本ではもう少し夜遅くまで起きていられるのではないかと思い、連休中にそれを検証してみたいと思っています。

2023年6月の「ハンガンネットオンラインセミナー」のお知らせ

040-04韓国語市民講座講師のネットワーク「ハンガンネット」が開催する6月のセミナーもオンラインにてお届けします。今回のセミナーテーマは「消費税インボイス制度について」です。

開催日時:2023年6月11日(日) 14:00~16:00
開場:13:50
スタート:14:00
定員:30人(Zoomの定員)
セミナー講師:伊藤耕一(ハンガンネット世話人)

セミナーテーマ「消費税インボイス制度について」
皆さんご存じのとおり、今年10月から消費税インボイス制度が導入される予定です。
この制度は事業者(韓国語講師のような個人事業者を含む)に支払われた消費税が確実に納税されることを可能にするものです。
これを受け、現行の免税事業者(課税売上1,000万円以下)は課税事業者になるのか、非課税事業者のままでいるのかの選択を迫られ、その期限が9月とされています。個人事業主である韓国語講師にも大きく関係してきます。
しかし、消費税インボイス制度が全事業者に正しく理解されているかというと、そうではないように思います。
今回のハンセミでは、消費税の理解とインボイス制度に対する適切な対応ができるよう、理解を深めることを目的とします。

セミナー内容
・インボイス制度の問題点
・消費税の基本的仕組み(本則課税)
・インボイス制度の弊害
・課税事業者になるか、非課税事業者のままでいるか
・消費税の基本的仕組み(簡易課税)
・インボイス制度を無視できそうな人
・経過措置と少額特例と2割特例と返還インボイス免除
・まとめ

発表者:伊藤耕一(いとうこういち)
大阪外国語大学外国語学部朝鮮語学科卒業。
卒業後、市民講座で韓国語を教えていた。

参加条件:
・韓国語講師(これから教室を始めたいという方も、大歓迎)
・今後韓国語を教えたいと思っている講師志望者
・会員/非会員は問いません。

申し込み締切り:2023年6月8日(木)20:00まで
事前に会話授業の実践例や悩んでいることなど、簡単なアンケートに回答お願いします。
参加費:1,000 円
【参加費は事前に銀行振込よりお支払いください。】
⇒振込先 paypay銀行 本店 普通 2174994 ハンガンネットマエダタダヒコ

申し込みページ https://forms.gle/iAG9dYfi2ELPnHkV6

通信430 「電子帳簿保存法」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第430号 (2023年2月27日発行)

電子帳簿保存法
伊藤耕一
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今回は電子帳簿保存法について書いてみたいと思います。
こちらは前回書いたインボイスとは異なり、消費税の課税非課税は関係なく、個人を含む全ての事業者に影響があります。

これまでは「電子的に受け取った帳票類」を「電子的な形式のまま保管」しても「印刷して保管」してもOKでした。
ところが、来年2024年の1月1日以降は「電子的に受け取った帳票類は、電子的な形式のまま保管」しなければならなくなります。
※今回の通信の下書きをした後に「相当の理由がある場合は紙保存も事実上容認することを検討中」との情報を見つけました。「検討中」とのことですので「もし容認されなかったらどうしなければならないのか」という視点でお読みいただければと思います。

保存の手段としては電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つがあり、整理すると次のとおりです。
①パソコン等で作成した帳簿書類を電子データで保存する「電子帳簿等保存」
⇒自分で電子的に作成した帳簿や請求書控えや領収書控えを紙に印刷することなく電子的に保存しておくことができます。
②紙で受け取った書類をスキャン/撮影して電子データで保存する「スキャナ保存」
⇒他社や取引先から受け取った紙の証憑類をファイリングすることなく、スキャン/撮影により電子的に保存しておくことができます。
⇒要件さえ満たせば、スキャン後の紙の証憑類は捨てることができます。
③メールやECサイト等で受け取った取引情報を電子データで保存する「電子取引」
⇒例えば〇mazon等のサイトで電子的に取得した請求書や領収書等は印刷してはならず、電子データのまま保存することが求められます。

上記のうち①と②は任意なのですが、③は強制であることに注意が必要です。

また、事業主として「事務処理規程」を作って用意しておく必要があります。
規程などと聞くと面倒そうですが、下記国税庁のページからダウンロードして自分の名前や法人名を書いて作っておけばOKとのことです。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

最近よく見るテレビCMの「いよいよか!」は上記のことを指しています。

ここまでは、昨年のうちに下書きしてあったのですが、上記※印に書いたように、下記の情報を発見しました。
税務当局の本来の方向性は上記のとおりだったのですが、昨年11月に当局がやや軟化し「相当の理由がある場合」は、当面③は紙に印刷して保存しても良いことになったとのことです。
https://www.youtube.com/watch?v=cBwZDBdw7EQ

「相当の理由」とは「会計ソフト導入が資金的に難しい」といった理由でも良いそうです。
そういうわけで今までどおりのやり方でもOKになりそうですので、電子帳簿保存法に対しては、今すぐ何らかの行動を起こす必要はないように思います。
しかし、遅かれ早かれ③の紙印刷保存が禁止になることは予想できますので、徐々に電子データ保存に慣れたり移行したりすることはお勧めしたいと思います。

電子帳簿保存で当初言われていたのは「日付・取引先名・金額の3情報が検索できれば良い」だったので、私の場合は下記のような感じで保存してきました。
image
しかし、売上5,000万円以下の事業者はこの検索情報の記載も不要になるとのことで、これまでの私の手間は何だったのかと思ったりもしました。

いろいろと書いてきましたが、個人で売上5,000万円は相当な水準なので、おそらくハンガンネットの会員の皆様のほとんどは電子帳簿保存法を今のところはいったん無視できるものと思います。

今回のテーマは、結果的には今までどおりのやり方でも良くなったようで、今後の経理処理の参考にしていただければと思います。
今回も「上記は税務当局との見解と合致しない可能性があることをご了承ください。」と申し添えます。

通信422 「インボイス制度」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第422号 (2022年12月26日発行)

インボイス制度
伊藤耕一
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最近のGoogleを見ていると日本では「インボイス制度」について騒がしく記事がアップロードされています。
このインボイス制度、すでに消費税を納税している法人や個人(課税事業者)にとっては大きな影響がないのですが、消費税を納税していない法人や個人(非課税事業者)にはとても大きな影響があります。
語学教室を運営する皆さんにも無視できない影響があると思い、個人的に思うところを書いてみたいと思います。

そもそもインボイス制度がなぜ導入されるのかはいろいろな方が記事に書いているのでここでは省きますが、非課税事業者が受け取っている「益税」の排除が主目的と私は理解しています。
「益税」は現状では合法なのですが、来年10月からは「益税が発生し得ない仕組み」になり「益税が消滅」することになります。
「益税はずるい」と考える人も多く、その面では公平になるのですが、一方で非課税事業者がインボイス制度に沿った経理処理をしようとすると、経理の手間がかなり増えることになります。
この「経理の手間の増大」が問題と考える人もいて、この手間の増加を苦に感じ「廃業が増えるのでは」と心配する人がいたりします。
その一方で売り上げ要件に該当すればインボイス制度を無視することもできるのですが、その場合「仕事と売上を失う事業者」が出る恐れがあり、結果として「廃業が増えるのでは」と危惧する人がいたりします。
一般的にはこのような問題や心配があるのですが、語学教室を運営する法人や個人には具体的にどんな影響がありそうなのでしょうか。

課税事業者への影響
すでに消費税を納税している課税事業者には大きな影響はないのですが、大きくない影響としては下記のようなものが考えられます。
・「適格請求書(インボイス)」を発行しなければならない。(システムを使えば一定の手間は省けますが、システム利用料等が発生します。)
・非課税事業者と取引(講義を外注している講師が非課税事業者であるなど)すると、自身の消費税負担額が増える。(キャッシュフローが悪化する。)

非課税事業者への影響
課税事業者である語学学校等と業務委託契約等に基づいて講義する講師(非課税事業者)は、契約書に消費税金額が記載されていないことが多いと思います。
この場合「非課税事業者は消費税を受け取っていないと認識できる」「語学学校等は消費税を支払ったものとして経理処理できる(仕入税額控除)」という矛盾した経理処理が今は認められています。
この矛盾が「益税」の源泉です。
これが今後は次のように変わり、結果として大きな影響が出る可能性があります。

①非課税事業者が来年10月以降も非課税事業者であることを選択した場合
・非課税事業者は「適格請求書(インボイス)」を発行できないので「普通の請求書」を発行する。
・課税事業者は「普通の請求書」を受け取っても「仕入税額控除」できず、消費税の納税金額が増えキャッシュフローが悪化してしまうので、課税事業者は非課税事業者との取引をやめる可能性がある。
・または消費税分の値下げを非課税事業者に要請する可能性がある。
・非課税事業者は、取引停止による売上減少と値下げによる売上減少の影響を受ける可能性がある。

②非課税事業者が来年10月以降、課税事業者になることを選択した場合
・課税事業者となれば「適格請求書(インボイス)」を発行できる。
・課税事業者は「適格請求書(インボイス)」を受け取れば「仕入税額控除」できるので、顧客は取引(講師の依頼)を続ける可能性が高い。
・消費税が含まれた講師委託料を受け取っても、そのうちの10%は「預り消費税」であり、講師委託料の総額が同額である場合、実質的な売上金額(収入)は減少する可能性がある。
・経費(交通費や教材費)に含まれる「仮払消費税」と上記「預り消費税」を相殺する経理処理が新たに発生し、相殺後の消費税を納めなければならなくなる。(この相殺後の消費税が「益税」だった金額)
・この経理処理はかなりの手間がかかるので、新たに経理ソフトを使ったり、税理士にその処理をお願いしたりすると今までよりも経費が増え、手元に残るお金はその分減る。

「ずるい益税」は消滅しますが、課税事業者にも非課税事業者にも大小の影響があり、この影響が事業者の手間の増大や手元キャッシュの減少につながり、景気の冷え込みや廃業につながるのではないかと主張する人が増えてきたのが、騒がしい記事の原因だろうと思っています。
しかし、このような心配がある一方で、心配しないためには次のような方法も考えられます。

③非課税事業者を選択するが、顧客である学習者が全員個人である場合
・個人が受講料を支払う時は「仕入税額控除」する必要がないので、消費税が含まれているか含まれていないかは考えなくても良い。
・この場合、個々人から受講料を受け取った非課税事業者は受け取った全額を売上収入とすることができる。
・経理処理は今までと同様に、収入から費用を差し引くだけ。
・この場合はインボイス制度の影響を全く受けないため、心配する必要がない。
・課税事業者から講師を依頼されても戦略的に引き合いを断るという方法もあり得る。

④自身の講師としての存在が唯一無二であり、他に比肩する人がいない場合
これはある記事に書いてあったことですが「この先生に絶対に講師になって欲しい」といった優位性を持っている場合は、事実上インボイス制度を無視できます。
仮に顧客が課税事業者で「講師料について消費税分を安くして欲しい」と言われても「それなら仕事を引き受けません」と強く断ることができ、その課税事業者が自分以外の講師を探すことができないならば、成立するかも知れません。

⑤課税事業者を選択するが、さらに「簡易課税制度」を選択する
簡易課税制度は課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択することができます。
語学講師は「第5種事業」に該当するものと思いますが「みなし仕入率が50%」とあるので、次のような計算となります。
仮に課税売上が500万円とします。
・500万円×10%=50万円(売上に係る消費税額)
・50万円×50%=25万円(仕入控除税額)
・50万円-25万円=25万円(納税額)
このケースでは25万円を消費税として納めることになります。
この制度は「仮払消費税と預り消費税を相殺」する必要がなく、経理処理を大幅に省くことができる一方、毎年必ず消費税を納めなくてはなりません。
ですが、経理処理に要する費用(事務員や経理ソフトや税理士の費用)と本則による消費税納税額の合計を比べ、これが25万円よりも大きいならば、メリットがあるかと思います。

インボイス制度を批判する声を受けて、政府では12月になって様々な軽減措置を決めています。
インボイス制度を解説する動画を見ると、その説明は複雑多岐にわたり、私もついて行けていない部分があります。
税理士の皆さんがいろいろな動画をアップロードされていますので、そちらをご覧いただくのも良いのではないかと思います。

結構、厄介で難しい問題なのですが、我々が選んだ政権が決めてしまったことなので、従うしかありません。
約束事で書かなければならないのですが「上記は税務当局との見解と合致しない可能性があることをご了承ください。」と申し添えます。

今年は皆様にとってどんな一年だったでしょうか。
来年が良い年になることを願っております。
どうぞ良いお年をお迎えください。

通信414 「マレー語の疑問詞」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第414号 (2022年10月31日発行)

マレー語の疑問詞
伊藤耕一
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マレーシアに来て早いものでもうすぐ丸11ヶ月になります。
マレー語を覚えようとしているものの、日常生活では英語が通じるので、マレー語で話す機会はとても少ないです。
今日は、つい最近の買い物の時に、マレー語を話した時のことを書きたいと思います。

この前の日曜日、社員の結婚式に招待され、会社の皆さんと一緒に参加して、その後、同僚とちょっとした買い物に行きました。
目の前にある商品を見て、「『これは何ですか?』とマレー語で聞いてみよう。」と思い、同僚に聞いてみました。
『Siapa ini?』と言ってみたら、怪訝そうな顔をされました。
おかしいなと思い「『これは何ですか?』は『Siapa ini?』ですよね?」
「それは『Apa ini?』だよ。『Siapa ini?』は『こちらは誰ですか?』という意味です。」と言われました。

マレー語の疑問詞は語末の音が似ているせいか、未だに私の中に定着していないことに気付かされました。
(Apa:何、Siapa:誰、Berapa:どのくらい、Kenapa:なぜ)
「Siapa?」は会社でよく耳にする言葉で、誰かが訪ねてきた時のインターフォン越しの第一声が「Siapa?」です。
状況的に「何でしょうか?」という意味に私が思い込んでいたのですが、実際には「どなたですか?」と言っていたのですね。

その一方で「元気ですか?(How are you?)」は「Apa khabar?」と言うのですが、改めて「khabar」を調べてみると「ニュース、新しい情報、面白い情報、最近のイベント」が元々の意味であることが分かりました。
つまり、マレー人は「あなたは何か新しい情報や面白い情報を持っていますか?」とあいさつしていることになります。
当然、日本人が「おはようございます。」の元々の意味を考えて話さないのと同様に、マレー人も「Apa khabar?」の元々の意味を意識して話すことはありません。
私が浅はかだったのは、「Apa khabar?」を「How are you?」と理解し、「Apa」を「How」と誤解していたことでした。
なぜそのように誤解したのかは明確で、私が英語で書かれたマレー語テキストを使っていたことです。

今回の一件を通じて、やはり、実際に声に出して発音してトライすることは大切だなと思いました。
ひとつひとつの単語は理解したつもりでも、声に出してみると本当に理解して定着しているのかが判明するように思いました。
そして、このような小さな失敗は強烈な体験となって、二度と間違えなくなることを経験的に知っているので、これからもどんどん声に出して間違えてみようと思いました。
言葉の勉強はとても楽しい、そんなことを改めて実感した日となりました。

通信406 「統語法」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第406号 (2022年9月5日発行)

統語法
伊藤 耕一
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マレー語の学習を初めて数ヶ月、テキストには少しずつ文法事項も出始めました。
マレー語の語順も部分的にですが、少しずつ理解できるようになりました。

「この・その」等の連体詞は名詞の後に来る。
「私の・あなたの」等の所有格は名詞の後に来る。
「形容詞」は名詞の後から修飾する。
「〜でない」という否定詞は名詞の前に来る。

このように書いてみると理解できたようなつもりになりますが、いざ話そうとすると、頭の中が真っ白になってしまい、もう一度頭の中で作文し直してからそれを話してみるといった感じです。

大学時代の講義で、語順は「統語法」とも言うとの講義があり、「統語法をマスターすると、自然な文章を書いたり話したりできる。」という話を聞いたことを思い出しました。
この統語法(語順)はどうやって覚えたのだろうかと、ふと思い、私が今までに習ったことのある言語で「この厚い本は私の日本語の教科書ではありません。」という文章を書いてみました。
単語のまとまりごとに色分けして並べてみると、このような感じになりました。

スクリーンショット 2022-09-07 10.17.58

改めて見ると、言語によって、てんでばらばらであることがよく分かります。
一見「厚い」はどの言語も2つ目に並んでいますが、マレー語はそれ以外の言語と比べ修飾の方向が逆になっています。
「~でない」は日本語・韓国語以外は否定される語句の前に位置します。
英語・日本語・韓国語は「日本語・教科書」という並びですが、マレー語・イタリア語は「教科書・日本語」という並びです。
ここでは5つの言語サンプルしかありませんが、同じ並びになったのは「日本語・韓国語」だけでした。
でも「あちこち」は「여기저기」と逆になったりするので、おそらく言語の数だけ統語法の数があるのではないかと思います。

言語を教える立場になって考えると、「統語法の規則性」に着目することで「より効率的に教えられるのではないか」という発想が出て来そうな気がします。
しかし、おそらく私の今の実力で、マレー語の語順を「規則性」の観点から理論的に体系的にかつ網羅的に教えてもらったとしても、覚えられる自信がありません。

そこで、実際に私がどうやってマレー語の語順を覚えようとしてきたのかを思い出してみました。
おそらくですが、短い例文「この本は厚い」「この厚い本」「この本は厚くない」「これは日本語の教科書だ」「この教科書は私のものだ」といったものを繰り返し読んでは書き、音と文字で頭の中に定着させてきたような気がします。
その後「この厚い本」と「これは日本語の教科書だ」と「この教科書は私のものだ」という3つの文章を組み合わせて「この厚い本は私の日本語の教科書だ。」という1つの文章を書いている(話そうとしている)のではないかと思います。

この組み合わせ作業で活躍するのが「統語法」だろうと思うのですが、「統語法を理解したから語順を理解できる」のではなく「語順を理解したから統語法を理解できる」というのが実用的な道筋ではないかと考えるに至りました。

私の今のマレー語は、教科書を見ながら書けば簡単なマレー語が書ける(短文だけ)という段階ですが、次は教科書を見なくてもそれなりのマレー語が書ける、話せるように努力を続けたいと思います。

通信398 「語尾」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第398号 (2022年7月12日発行)

語尾
伊藤耕一
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マレーシアに来て7か月が経ちました。
普段の生活や仕事では英語を使うのですが、最近、英語で話した後にマレー語のある語尾を付けて会話している自分に気付きました。
その語尾は「ka?」と「ne.」です。

先日、同僚が木曜日の夕方にこんなことを言ったことがあります。
“See you next week!”(また来週ね。)
すかさず、こう返しました。
“Oh, you don’t come tomorrow, ka!”(え、明日は来ないの?)

「ka?」はマレー語の語尾に付けると疑問文になるのですが、これが英語にも転用されてよく使われるのです。
“OK, ka?”(OKですか?)
“You don’t like this, ka?”(これは嫌いなんですか?)
“You follow the fasting, ka?”(一緒に断食するんですか?)

何かを言って最後に「ka?」を付ければ疑問文になる、便利すぎる語尾です。
ちなみにその同僚は、曜日を間違えていただけでした。

「ne.」はマレー語の語尾に付けると「~なんですね。」というようなニュアンスになります。
“OK, ne.”(OKですね。)
“You don’t like this, ne.”(これは嫌いなんですね。)
“You follow the fasting, ne.”(一緒に断食するんですね。)

これは会話の中で私が感じているニュアンスなので、本当は違うかも知れませんが、日本語の「~なんですね。」だと思っています。
ちなみに断食は今年のラマダンの時に私も一緒にやってみたのですが、その時に言われました。
平日だけの断食でしたが、その後のマレーシア人の同僚たちとの心の距離が少し縮まったように感じました。

もうひとつ「lah.」という語尾があるのですが、これはまだ使いこなせていません。
少し調べてみたら、こんな動画を見つけました。
https://www.youtube.com/watch?v=KPnzyXpSS-k

「lah.」は「~だよ。」というような意味で、初めて知った時、何かを伝えたい時、突っ込みたい時に使うとのこと。
そして「lah.」は体言にも用言にも付けることができるとのこと。
この言葉は仕事のミーティングの最中によく耳にします。
“OK, this is the last month product stock, lah.”(さて、これが先月の製品在庫数です。)
こんな感じで使うのですが、動画を見てそのニュアンスを知ることができました。
なるほど、何かを伝えたいと思って言っているのだなということが分かりました。

動画では「kan.」と「nya.」も紹介されていたので、今後の会話に耳を澄ませて聞き取って使い方を確認してみようと思いました。

マレーシアでは「マレー語」「中国語」「タミル語」を母語とする皆さんが意思疎通を図れるように英語が共通語になっているのですが、そんな中で使われるようになった表現なのだろうと思います。
マレーシアの英語は意思疎通が目的なので、多少構文がおかしくても、複数形でなくても、時制が間違っていても、お互いにその意思を汲み取ろうとしてくださるので、リラックスしてしゃべることができます。
そんな時に共感を示す語尾を付けると、自分が理解していることを相手に伝えることができるのではと思いました。
ただし、その使い方が本当に合っているのか間違っているのか、自分には分からないところが悩ましいところですが。
でも、少し変なマレー語を話す日本人と思ってもらえれば、それはそれで良いのかなとも思います。

翻って、私は韓国に住んだことがないので、完全に理解しているとは思っていませんが、「-요.」「-네요.」「-ㄹ래요.」等の語尾のニュアンスを適切に教えることができたら、生徒さんの会話のレパートリーを増やすことができるのではないかとも思いました。
ゼロから外国語を習得しようとした時に、私が何を感じて何を理解しているのか、ひとつの実験台として今後も通信に書いてみたいと思います。
僭越ながら、韓国語をゼロから学習される生徒さんがどんなことを感じてどのように解釈しようとしているのか、その理解に少しでもお役に立てればと思っています。

通信391 「ラマダン」伊藤 耕一

【週刊ハンガンネット通信】第391号 (2022年5月16日発行)

ラマダン
伊藤 耕一
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イスラム圏では4月2日から5月1日までラマダン(斎戒)でした。
日の出から日の入りまで全ての欲望を絶つのがイスラム教で定められた戒律で、日中の飲食や喫煙などをしなくなります。
4月2日を境にピタッと人々の行動が変わったのには驚きました。
私も平日だけ一緒に断食をしてみましたが、何事もやってみれば慣れるもので4月下旬には空腹やのどの渇きがそれほど苦にならなくなりました。

ラマダンは、食事が摂れないとか、巡礼で砂漠を旅するとか、困難な状況に直面した時にそれを我慢し克服できるように備えておくとか、厳しい状況に置かれた人の気持ちを理解するためとか、そういったことが目的のひとつにあるようです。
ただし、病気の人、妊娠中の人、子供等は対象外で、それなりに配慮がなされています。
ラマダン期間中、マクドナルドに行ったことがありましたが、親子で来ていた家族を見ると、子供だけが食事をして両親は横で見守っている、そんな姿もありました。
異教徒であるインド系や中国系の人たちは断食をしませんが、それぞれの民族の習慣をお互いに尊重し合い、異なる文化の領域にはお互いに足を踏み入れ過ぎないといったバランス感覚のようなものも感じました。
私自身は空腹を感じた時、周りのみんなも同じだよねと自然に考えることができ、相手への思いやりのような気持ちを育むことができたように思います。
その一方で、普段おしゃべりな人でも無口になったり、役所の手続きに時間がかかったり、なるべくエネルギーを節約しようとしているのかなとも感じました。

ラマダンが終わるとマレーシアはハリラヤという休みになり、日本のお正月のような雰囲気になります。
ハリラヤの祝日は5月3日と4日だけですが、今回は5月1日の労働の日、2日の振替休日と祝日が続き、ついでに5日と6日も休みにする会社が多く、ちょうど日本の連休と重なり、出入国制限も大幅に緩和されたので、一時帰国することにしました。
長めの旅行をすることができ、いろいろなことを考える時間があり、ふと初めて海外旅行に行った時のことを思い出しました。

私が初めて海外に行ったのは、21歳の時、冷夏で騒がれた年です。(私は冷夏を経験できませんでしたが。)
最初のフライトは、伊丹空港から返還直前の香港に行く便でした。
当時の航空券は複写式で、香港経由オークランド行きの1年間オープンの往復チケットが何枚も束ねられたもので、傷めないように難儀した覚えがあります。
今では航空券情報がパスポート情報と紐づけられて管理されていて、スキャンするだけで搭乗便が検索できるようになっていますが、ずいぶんと様変わりしたものです。

5月以降は出入国制限がだいぶ緩くなり、12月の渡航時と比べると時間の面でも経費の面でも楽になったと実感しました。
特に隔離がなくなったことは精神面で大きいものがあります。
以前のように気軽に行き来できる日が戻ってくると良いですね。

通信384 「韓国語のパッチムとマレー語の閉音節」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第384号 (2022年3月30日発行)

韓国語のパッチムとマレー語の閉音節
伊藤耕一
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マレーシアに来て3ヶ月半、だいぶマレー語が耳に馴染んできたように思います。
数字は100までだいたい分かるようになり、徐々に聞き取れる単語が増えてきて、知っている言葉をつなぎ合わせて話してみると、時々ですがちゃんとしたマレー語になって褒めてもらえる、そんな楽しい日々を送っています。

マレー語には閉音節があります。
無声音の子音(t,k,p等)が語末に来ると、息を止めて発音します。
韓国語のㄷやㄱやㅂとほぼ同じ発音なので、この発音は軽くクリアできました。
これを傍で聞いていると、とても苦しそうに発音しているように聞こえる時もあります。

マレーシア人とは英語で話すことが多いのですが、英語の発音もマレー語の影響を受け、マレー語以上に苦しそうに発音しているように感じることがあります。
例えば、”I went to the park.” のような文章を話すとき「アイ ウェンッ トゥ ド パッ(아이 웬ㅅ 투 더 팍)」といった発音になります。
最初は戸惑いましたが、今ではだいぶ聞き取れるようになりました。
何事も慣れるものだなと痛感します。

韓国語と異なるのは、無声音の子音の後に母音が来てもリエゾンしないことです。
例えば、”Check it out.” を発音すると「チェッ イッ アウッ(쳌 잍 아웃)」のような発音で、ㄱとㄷのパッチムを律儀に音節ごとに息を止めて発音している感じです。
リエゾンさせれば、もっと話しやすくなるのでは、などと余計なことを考えてしまったこともありました。

ここからは蛇足のような話ですが、クアラルンプールである集まりに顔を出したら、私を含めた日本人数人とルーマニア人、ブラジル人、ミャンマー人と出会いました。
そこでは英語で話をしたのですが、学生時代に勉強したイタリア語を思い出し、ルーマニア人とブラジル人に話しかけてみました。
話したのは自分の自己紹介のような文章ですが、「だいたい分かる」と言われました。

イタリア語、ルーマニア語、ポルトガル語はフランス語とスペイン語を加えてロマンス諸語と呼ばれ、お互いに似ている言葉同士だと学生の時に教えてもらいました。
話してみて分かったのは、なるほど似ているのだなという実感でした。
ほかにもドイツ語とオランダ語、ヒンディー語とウルドゥ語などは似ているようなのですが、どのくらい似ているのか実感できたら面白いのになとも思いました。

マレー語の中期目標はマレーシアにいるうちにCEFRのB1レベルに達することにしてみましたが、そこにたどり着けるように精進したいと思います。