通信465 「今年の年末イベントで、また新しい試みを」幡野泉

【週刊ハンガンネット通信】第465号 (2023年11月20日発行)

「今年の年末イベントで、また新しい試みを」
アイケーブリッジ外語学院  幡野 泉
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当校の韓国語講座は毎年、年末に大きなイベントを行っていますが、
対面のイベントは2019年の年末を最後に開催せず、オンラインで行ってきました。
この間、縮小したスピーチ大会の代わりに翻訳大会を催し、大変盛り上がりました。

今年はコロナ禍の制限もなくなってきたので、久しぶりに対面のイベントに
戻すのですが、このコロナ禍の約4年間で、海外・地方の受講生が増えたため、
オンライン形式も残したい、となりました。

対面形式のイベントをただYoutubeで配信することを考えたのですが、
まてよ、オンラインの受講生がスピーチ大会に参加できないではないか、
翻訳大会で受賞した人がオンライン参加だったら喜びの声を聞けないな、と。

同時に、教室周辺の貸会議室について調べ、下見に行ったところ、
ビデオカメラとマイクを使ってのYoutube配信にZoomをドッキング
させることができることが分かり、今年はこの方式にチャレンジして
みることになりました。

映像翻訳部門はこれまで字幕翻訳だったのですが、今年は初の
「吹き替え翻訳」とし、韓日翻訳部門はこれまでエッセイだったものを、
初めて小説にしてみました。

去年の字幕翻訳部門の受賞者の方は、この受賞がはずみになって、
それから一定のお仕事を受注するきっかけになったとおっしゃっていて、
一人でも多くの方に、何かの「きっかけ」を届けられるイベントにしたいな
と思っています。

イベントの様子はまた、ご報告させていただきたいと思います!

通信464 「K-POPダンスの衝撃」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第464号 (2023年11月6日発行)

「K-POPダンスの衝撃」
ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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先日、韓国語学習者が中心となって企画主催した「みんなでK-POPダンスを踊ろう」という催しに参加して来ました。

入門者向けの内容でしたが(そうでなければ自分には参加は不可能でしたが)人生初体験のダンスレッスンは衝撃でした。

まずはストレッチに1時間ほど。もうこれだけで体が心底喜んでいます。

そしてそのあとついに具体的なダンスの振付の練習です。
練習曲はBTSの<Dynamite>。

たった1小節を覚えるのに必死です。
最終的にはサビの8小節をなんとか頭に入れて通しで踊って完成です。

合計で3時間ほどの全身運動となりました。

そこで得たものは計り知れないものでした。

記憶の作業は日常的に行っていますが、様々な体の動きを記憶していくという作業は初めてした気がします。
そしてK-POPアイドルの振付を分解して、多少なりとも記憶できるようになったことは大変な喜びでした。

脳は相当に活性しているに違いない。
体は心地よい疲労で喜びがあふれてくる。
そうか、ダンスに魅了される人々はこの喜びの積み重ねをしているのか!
ダンスの魅力が初めてわかったぞ!

ああ、そしてK-POPアイドルの偉大さを初めて体で知った。
彼らはこんな練習を毎日何時間もこなし、この何百倍もの小節数のダンスをライブで踊り、
おまけに息切れもせず踊りながら生で歌も歌ってしまうのだ。
そして曲と曲との間には軽妙なトークまでもこなしてはいなかったか!

普段なんとなく見ていたK-POPアイドルたちのパフォーマンスが神のなせる技だとこの日初めて認識した。
だからなのだ!だから全世界がK-POPに熱狂するのだ。
ああ偉大なり。たゆまぬ努力の結晶よ。

そして私は教室生にこの話をしました。
「K-POPアイドルはとんでもない神業をなんでもないようにパフォーマンスしていたんですね。」
そして最も強調する部分は、たゆまぬダンスや歌の練習努力に加えて
「おまけに彼らはダンスやメロディー歌詞を覚えることのみならず、外国語まで勉強をしているんですよね」ということでした。

外国語まで勉強する努力家K-POPアイドルという視点を改めて話すと、
やはりみなさん元気づけられるようです。
「そうか!自分たちもK-POPアイドルの努力に見習ってそのほんの一部でも韓国語の勉強をがんばろう!」と。

通信463「4技能5領域」田附和久

【週刊ハンガンネット通信】第463号 (2023年10月30日発行)

「4技能5領域」
田附和久
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私は前回、学習指導要領改訂に伴う高等学校での観点別評価の実施というトピックをご紹介しました。学校教育の現場から離れている方々はあまりご存じないかもしれませんが、今、日本の小中高校の現場は評価方法の変更というたいへん大きな変化に直面しているという話でした。

今回は関連してもう一つ、学習指導要領の改訂に伴い、小中高校での外国語教育(現状では主に英語教育ですが)の指導目標が、これまでの「4技能」別ではなく、「4技能5領域」別に設定することが求められるようになったということをご紹介したいと思います。

「4技能」が何かはご存じでも、「5領域」というのは初めて聞くという方も少なくないのではないでしょうか。「4技能」と言えば、「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと」、「書くこと」ですが、「5領域」というのは「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと(やり取り)」、「話すこと(発表)」、「書くこと」であり、すなわち従来の「話すこと」が「話すこと(やり取り)」と「話すこと(発表)」に分けられるようになったのです。この変更に伴い、高校英語は、細分化した5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」と、発信能力を強化する「論理・表現」の2種類の科目に再編されました。

現在の高等学校では、英語教育以外の外国語教育はまだあまり多く実施されていませんので、科目の細分化は行われていませんが、私自身は、近年、自らの高校での韓国語授業の目標を5領域別に設定するよう心がけています。そして授業の中では、従来から行ってきた、やり取りの力を養うための会話練習だけでなく、発表する力を養うためのプレゼンテーションやポスター発表の時間も設けるようにしています。

具体的には、「ソウル2泊3日旅行計画の作成と発表」、「日本の高校生が好きな○○ベスト5のポスター制作と口頭発表」といった課題を出題しています。私からは、ルーブリックによる評価基準と、発表の中で使ってほしい文型等をわずかに伝えるのみで、あとは生徒の自発性に任せていますが、多くの生徒はたいへん生き生きとした表情でこれらの課題に取り組んでいます。Papago等のアプリも使いこなしながら作成した成果物やプレゼンテーションはなかなかの水準に達していて、韓国の大衆文化が大好きな、2023年という時代に生きる日本の여고딩たちの生態をよく描き出した内容となっています(여고딩のような単語も私からは教えていませんが、自分たちで学び、使いこなしています)。

さて、一般市民を対象とした講座の場合には、準備したテキストに依拠した授業になることが多く、発表課題等に取り組む機会はあまり多くないのではないでしょうか。受講生の方たちも発表の力を養うことはあまり求めていないかもしれませんが、仕事の現場等ではプレゼンをすることもあるでしょうし、考えようによっては自己紹介も発表の一つの形態と見ることができるかもしれません。

授業のはじめに一週間の出来事等を自由に語ってもらう時間を設けている先生もいらっしゃるかと思いますが、「やり取り」とは異なる「発表」の力を養うという視点で取り組んでみると、少し違った展開へと発展させることができるのではないでしょうか。

2回続けて、高校の外国語教育の現場における近年の変化についてご紹介しましたが、高校の韓国語教育の水準をさらに高めようと努力している仲間たちが集まって高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク(JAKEHS)という団体を組織し活動を行っています。同団体の今年度の全国研修が来る11月25日、26日に東京で開催されます(会場は25日が韓国文化院、26日が目白大学)。ご紹介した観点別評価に対応した授業の実践報告等も行われます。高校で教えていない方でも興味関心のある方でしたら、どなたでも参加いただけます。オンライン視聴も可能です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク
http://home.a08.itscom.net/jakehs/

通信462「映像選びも楽じゃない」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第462号 (2023年10月24日発行)

「映像選びも楽じゃない」
下関市立大学 他 奈良美香
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会員の先生方皆様も、K-popやドラマ、映画等を活用して授業をされたご経験があるかと思います。学習者からすると楽しく学べるという印象があるらしく、授業での要望が多いため、私も取り入れたりします。

以前、韓国ドラマ「私のIDはカンナム美人」の第1話を使用して映像授業を実施しました。主人公の男性がイケメンで学生受けする点、韓国の外見至上主義、美への追及意識、美容整形に関する意識が垣間見れる点、大学のMTの様子が見れる点からこのドラマを選びました。

授業では、映像を見せる前に、あらすじを簡単に述べ、登場人物の相関図を説明します。語彙説明では①강남언니, ②오크, ③티(가)나다, ④모태솔로, ⑤18학번を紹介し、問題シートを作成しドラマを見ながら答えを見つけるようにと指示します。また、聞き取れた単語や表現を5個以上は書くようにとも伝えます。ドラマ鑑賞後は、この映像を選択した趣旨を説明し、問題シートの答え合わせとドラマに関する感想を書いてもらい提出させます。

この内容を理工系の大学1年生の後期の授業で実施しました。回収した感想には、「韓国の大学生は19歳からお酒が飲めるのか」、「美に対する意識がすごい」、「見た目で判断されるのがつらい」、「MTが楽しそう」などの感想がある中、一人だけ「興味のないドラマを見せられ、面白くなくつまらなかった」という感想がありました。このコメントに、正直ショックを受けました。視聴後にこのドラマを選択した趣旨を説明しましたが、伝わっておらず、人それぞれ好みがあるため、全員が満足できる映像内容を選択する難しさを痛感しました。

そこで、第2弾としてYahooニュースで紹介された「韓国七放世代の絶望」という5分程度の映像を使用しての授業を実施しました。韓国での就職難、外見至上主義、企業間格差などの内容が凝縮された映像に学生達は衝撃を受けたようでした。ナレーターが日本語で紹介するので、語学よりは文化紹介に適切な映像だと思います。

視聴後に、韓国での就職事情や「三放世代」から「七放世代」のキーワードについて説明した後に、感想を提出してもらいました。回収した感想からは、「大企業と中小企業の格差の違いに驚いた」、「整形してまで就職活動をするのに驚いた」、「若者が大企業を目指すために多くのことを諦めていることを知り悲しくなった」などが大半を占めており、マイナス意見はなかったのでホッとした記憶があります。

学習内容の用途にもよりますが、映像を使用して何を学習者に伝えたいのかという意識が非常に大切だと思います。その趣旨を反映させた映像を選択し授業を展開しますが、学習者の反応が良い時と悪い時もあり、なかなか一筋縄ではいきません。私の奮闘の日々はまだまだ続きそうです。

会員の皆様も授業でお薦めの映像がありましたら、是非、教えて頂ければと思います。

参考までにYahooニュースのリンクを貼りますので、興味のある方は是非、ご覧になってみてください。

夢も仕事も恋愛も手が届かない 韓国「七放世代」の絶望
https://news.yahoo.co.jp/feature/91/

通信461 「K-POPで韓国語? 英語?」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第461号 (2023年10月18日発行)

「K-POPで韓国語? 英語?」
ペ・ジョンリョル
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最近、大学の出身学部(外国語学部)の同窓会が主催するセミナーの企画を任されました。それで現役英語教師B先生に出演依頼をしにいったときのことです。「参考までに、A先生は倍数表現を取り上げるとおっしゃっています。twice, three timesとか…」「それ私も得意なやつですよ!」とB先生。そして提案されたのが「TWICEの歌詞で英語表現を学ぶ」という内容でした(以上実話)。

このTWICEはご存じ人気K-POPグループのことなので、わざと言ったのか、人の話をちゃんと聞いていなかったのかのどちらかですが、それはともかく、彼によると最近のK-POPは英語の歌詞が多く、生徒受けもいいので、英語の授業でよく取り上げているそうです(勤務校は英語の他に韓国語にも力を入れている日本の中学校です)。最近のK-POPには英語オンリーの曲もあるので、英語の授業で取り上げられてもなんら不思議はないですよね。

さて、小社に『K-POPで韓国語!』というシリーズがあります。2013年7月に1冊目を出してから、『K-POPで韓国語!2』『K-POPで韓国語!3』『K-POPで韓国語!4』と続けて出し、少し間が空いて5冊目の『K-POPで韓国語! 2017-2018』まで出版しました。

これらは本ごとにテーマや取り上げるアーチストを変えて、韓国語の歌詞を、発音どおりのハングルとフリガナ、文法項目などの丁寧な解説とともに紹介した学習教材です。人気のK-POPで韓国語が勉強できるとあってそれなりに売れましたが、作る側にとっても「歌詞ありき」でゼロから何かを生み出す必要がなく、最初に作ったフォーマットや作業要領を次作でそのまま生かせるので、かなり楽な本といえます。

もちろん歌詞を勝手に掲載することはできないので、著作権管理団体を通じて所定の料金を支払って利用しています。これも手続きの問題なので、一度経験したら難しいことはありません。

K-POPの人気はずっと高かったのに、なぜか2018年の5冊目以降続編を作っていませんでした。「韓国語の学習」という観点で見ると、冒頭で記したように英語が多い、韻やリズム重視で意味のないフレーズの繰り返しが多いなどの理由で、実際に使える曲が多くないという事情もあります。でも、久しぶりに1冊作ってみたいという編集者が社内にいるので、ぜひ最近の曲の中で、ネットワークの先生方のオススメを教えてほしいです!

もっとも「韓国語の学習」を重視するなら、バラードやドラマOSTがいいのかもしれません。個人的にはトロットや7080歌謡の名曲をやりたいのですが、「需要がない!」と社員から猛反対されそうです。

通信460 「日韓交流おまつりでの売上推移」浅見綾子

【週刊ハンガンネット通信】第459号 (2023年10月13日発行)

「日韓交流おまつりでの売上推移」
浅見綾子
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去る9月30日、10月1日に駒沢オリンピック公園で開催された「日韓交流おまつり2023 in Tokyo」にHANAも書籍販売ブースを設け参加してきました。

日韓交流おまつりは、2005年の日韓国交正常化40周年を記念した「日韓友情の年」の主要事業として始められたもので、ソウルでのみ開催されておりましたが、2009年からは毎年両国のソウルと東京で開催されるようになりました。

HANAは2014年から参加しており、今年で10年目を迎えました。2014年の年は、一つの小さい長机を駿河台出版社と半分ずつ区切って本を並べ、炎天下の中テントもない状態でのスタートでした。帽子を準備しなかったことをかなり後悔したものです。

2014年から地道に参加し、日韓交流おまつり事務局側の方から頑張っていると認められたのか2016年にはテントの中に入れていただき、日焼けの心配なく販売できるようになりました(テントがあるのとないのでは疲れ方がかなり違います)。

コロナの3年間を除いては、ずっと日比谷公園での開催でしたが、日比谷公園が改修工事に入っているため今年は駒沢オリンピック公園での開催になりました。2日間の人の入りを見ていると、やはり毎年同じことを感じますが、土日開催ですと土曜日よりも日曜日の方が人の入りがかなり多いです。よって日曜日の方が売上も良い。

さて、2014年からHANAの売上の推移を見てみたいと思います。
日韓おまつり売上推移

2020年〜2022年の3回はオンラインでのみの開催でした。つまりオンラインでショップを開き、販売をした売上になります。2020年は弊社がオンラインで書籍を販売するのが初めてで、不慣れだということもあり、さほどネット販売用に商品を準備しませんでした。ところが思いの外売れたので、2021年にはたっぷり商品をネットショップ上に並べ、去年よりは売れたらいいなぁくらいに思っていたところ、これが韓流第4次ブームにもうまく乗り、大売れしました。2022年も売れる!と意気込んでいましたが、結果は売上は落ち、今年の2023年は対面とオンラインと両方開催したのにも関わらず、あまり売上があがりませんでした。

売上が上がらなかった理由は推測ですが、まず駒沢オリンピック公園という場所が駅からも遠く交通が不便だった、毎年日比谷公園だったので駒沢オリンピック公園に馴染みがなかった、物価上昇の影響で韓国語書籍にお金をかけなくなった、などなど。私も含め、やはり最近は財布の紐が固くなっています。

売上は期待ほど上がりませんでしたが、それでも参加する価値は大いにあります。何よりも学習者の皆さんの声が直接聞ける機会は非常に貴重です。どういう悩みを持っているのか、どういう目的で購入するのかなど。また書籍をパラパラめくりながら、止めてじっくり読むページはどんなページか、手に取られやすい本はどんな表紙の本かなど参考になること盛りだくさんです。

次の対面販売は11月に東京神保町で開催されるK-BOOKフェスティバルです。またここで直接学習者さんや先生方にお会いできるのを楽しみにしています。

通信459「消齢化」寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第458号 (2023年10月8日発行)

「消齢化」
寄田晴代
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「消齢化」ということばを最近知りました。
消齢化とは、「若者らしさや年相応のような年代、年齢にひもづいた生活者の特徴が徐々に薄らいでいき消えていくこと」で、博報堂生活総合研究所が今年発表した新語です。

この言葉を聞いて思い浮かんだことがありました。

日本に30年以上住んでいる、50代の韓国人男性の話なのですが、面識のない韓国人と電話で話をすると、「あなたが何歳なのか見当がつかない」とよく言われるのだそうです。
声を聞いたらおおよその歳がわかりそうなものですが、予想する年齢と、その年齢らしいと思われている話し方(語彙、イントネーション、語尾など)がズレていると混乱します。

そういえば、私が以前韓国で日本語を教える仕事をしていたときにもこんなことがありました。
あるクラスに、中学生のころまで日本で生活していたという受講生がいました。発音、イントネーションなど自然な日本語を話せるのですが「40代の人なのに、話し方が10代の若者みたいなんです。」と担当の先生が言っていたのを覚えています。日本で身についた、その時の話し方がそのままアップデートされていなかったようです。

私たちは周囲の人からことばを学び続けています。
前述の二つの例のように、もともと使っていたことばに囲まれた世界から出てしまうと、年を重ねるにつれて変わっていく話し方に接する機会がほとんどなくなり、意識しない限り自然に身につくことはないのかもしれません。また、文法的間違いならコミュニケーションに支障が出ますが、「年相応」の話し方でなくても日常の会話なら「ちょっと変わってる」と思われるくらいなので、指摘されることもあまりないと考えられます。(家族など身近な人は、その人の話し方に慣れているだろうし、身近ではない人はわざわざ指摘しにくい。)

ちなみに、私は仕事で20歳前後の人と接することが多いのですが、知らないうちに「若者の話し方&微妙な関東アクセント」(勤務地は東京ですが、私は大阪弁ネイティブスピーカー)になっているらしく、家族によく「ときどき気色悪い話し方する」と言われます。

同研究所によると、消齢化の傾向はこれからも進んでいくということなので、このように「ちょっと変わってる」と思われることもなくなるのでしょうね。
そもそも、年齢による話し方に全く違いのない言語もあるのか、も興味深いところです。

通信458「韓国文学翻訳院の研修に参加しました」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第457号 (2023年9月25日発行)

「韓国文学翻訳院の研修に参加しました」
加藤 慧
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7月24日から8月4日にかけて、ソウルの韓国文学翻訳院で行われた <2023 한국문학 번역가 역량강화 프로그램> に参加しました。

渡航費・宿泊費・食費の支援をいただきながら、日本語圏・フランス語圏・ドイツ語圏・ロシア語圏の韓国文学翻訳家、合計15名で研修を受けました。

大変充実したプログラムでしたので、簡単にではありますが、内容の一部をご報告したいと思います。

・작가와의 만남
作家のキム・ミウォルさん、チョン・セランさんのお話を伺うことができました(サインもいただけました!)。
翻訳についての、作家さんたちの考えを聞ける大変貴重な機会でした。

・번역실습 및 합평
事前にそれぞれ取り組んでいる訳文20ページ分と原文(30ページ以上)を提出し、全員分読んでから臨みました。
日程的にもかなりハードでしたが、この過程だけでも力がついたような気がします。
先生と日本語圏参加者の皆さんから訳文のフィードバックを受け、たくさんのヒントをいただきました。

・번역 세미나 “좋은 번역이란 무엇인가”
最後の翻訳セミナーでは、「良い翻訳とは何か」について全員で考えました。
各言語圏ごとに代表者が発表を行い、様々な視点から討論をしました。

翻訳に関する学びはもちろん、日本、そして世界の韓国文学翻訳家の皆さんとの素敵な出会いが大きな財産となりました。

韓国文学や韓日翻訳への学習者の関心が高まるなか、この経験は韓国語教育の仕事にも還元できると思います。
オンラインでの文学作品精読のレッスンも好評です。

まだ夢のまた夢ですが、いつの日か翻訳も教えることのできる講師になれるよう、さらに学びを深めていきたいと思っています。

通信457「講座の料金設定と講師の収入」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第457号 (2023年9月18日発行)

「講座の料金設定と講師の収入」
伊藤耕一
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幡野先生の通信に続き、私もお金にまつわる話題を書いてみたいと思います。

例えば、授業料をいくらに設定すれば良いか、これはとても悩ましい課題かと思います。
自宅の一室を利用して、半年コース(25回)の講座を複数設定しようとする場合、1回当りの講座料金もしくは、1コースの料金をいくらに設定すれば良いのでしょうか?
原則的には需要と供給の関係で決まってくるのですが、そのあたりの関係をどのように考えれば良いのか、飲食店の例を参考にしながら考えてみたいと思います。

飲食店業の場合、よく言われるのが「飲食店の原価は約3割が適正」という指標です。
「原価」とは飲食店の場合「食材費」のことを指します。
例えば1食1,100円のラーメンを考えた場合、スープ・麺・具材・調味料等が330円という意味です。
残りの770円は家賃・光熱水費・アルバイト等の人件費・広告宣伝費・設備の減価償却費・その他経費と利益ということになります。
利益が3割(330円)欲しいとすると、諸経費を440円以内に抑えなければなりません。

続いて、自分が1ヶ月でいくら稼ぎたいかを考える必要があります。
例えば月に手取り30万円くらい欲しいと思えば、額面ではザックリ40万円ほどの利益を得る必要があります。(税金・社会保険料を約25%と仮定。消費税は40万円の中から3万円ほどを納めなくてはならず、実質収入は37万円ほど。)

では、月に40万円の利益を得るには、いくら売り上げれば良いか?
それは「利益÷利益率」という算式で求められ、40万円÷30%=約133万円、月に133万円程度の売り上げが必要となります。
では、月に25日働くとして、一日いくらを売り上げれば良いか?
133万円÷25日=約53,000円となります。(売上121万円+消費税12万円=133万円)

image
左側の表は顧客の目線で考えた視点、右側の表は、経営者の目線で考えた視点のイメージです。(万円単位で表示しているため、矛盾する箇所はご了承ください。)

次に、ラーメンを一日に何杯売れば良いか?
53,000円÷1,100円=49杯≒50杯、以下の計算では一日50杯としてみましょう。
続いて、1杯作るのに何分必要か?
もし10分なら、50杯×10分=500分=8時間20分、これだと休憩時間もなさそうです。
もし8分なら、50杯×8分=400分=6時間40分、休憩はできそうですが、仕込みや閉店後の清掃の時間は取れそうでしょうか?
このように考えながら、無理そうなら利益を減らす、あるいはアルバイトを増やして食数を増やし売り上げを上げることを考える、時短での調理法を考える、といったことを試行錯誤しながら考える必要があります。

また、これはひっきりなしにお客さんが来てくれる場合の想定ですが、閑古鳥が鳴いたらどうするかも考えなければなりません。
最悪の場合、一日25杯でもやって行けるだろうか? 食材が残ったとしてもロスにしにくい方法はないだろうか? 自分が風邪を引いたらどうしよう? 昨今の電気代やガス代や食材費の値上がりは1,100円で吸収できるだろうか? 等々、リスクについても考えておく必要があります。

韓国語講師の原価を考えるのは、経営方法によって千差万別なので、今回は自宅の一室を教室にして極力諸費用を抑え、自身の人件費のみが必要という前提で考えてみます。
自宅の一室なので、定員は1回当り8人としてみます。
90分授業を一日に4回、間に30分休憩を挟み(90分×4回+30分×3回=450分=7時間30分)、週に5日(月に20日)働くという前提にしてみましょう。

月に40万円を稼ぐには、40万円÷20日÷4講座÷8人=625円となるので、1人の受講生から1講座1回当たり625円の受講料を受け取ることができれば実現できそうです。
1講座25回(半年コース)とすれば、625円×25回=15,625円となり、受講料は1人当たり半年で約16,000円という計算になります。
しかし、全講座に8人が集まるとは限らないので、リスクを考えて半分の4人としてみると、受講料は1人当り半年で32,000円という計算になります。

つまり1回当り1,280円(32,000円÷25回)ですが、受講生は集まりそうでしょうか?
一日に4講座を1人でやって行けそうでしょうか?
このあたりが「需要と供給の関係」を考える場面になります。

もし難しそうであれば、40万円の稼ぎを35万円にしてみる、授業時間を60分にして一日の講座数を増やしてみる、プライベートレッスンを行い単価を上げてみる、オンラインの授業も行い遠隔地の方でも受講できるようにして定員を増やしてみる、平日の午前は休みにして、平日の夕方から夜にかけてと土日に授業をするようにしてみる、等々、条件を変えて試算することになろうかと思います。

いずれにしても、自分自身が満足できる収入を得つつ、受講生に料金をリーズナブルと感じてもらい、受講生が参加しやすい時間帯と手段で授業を行い、働き過ぎにならないように気を付け、リピーターを確保し、、、講師にとっても受講生にとっても持続可能なところで時間とお金の折り合いを付けることになるのだろうと思います。

何となく半年の講座で授業料40,000円とか50,000円などと上から考えるのではなく、1日当り売上〇〇円、1ヶ月当り売上〇〇円、1回当り受講料〇〇円と、受講生の立場も考えながら下から積み上げて計算してみるのが良いのではないかと個人的には思います。
このように考えておけば、価格競争に巻き込まれ価格を維持するか下げるかの判断を迫られた時や、コロナ禍のような減収があった時でも、根拠を持った対策が打てるのではないかと思います。
もしくは32,000円もらえば十分だけど、強気に40,000円に設定してみることも可能になります。

以上は、もし私が韓国語講師を専業でやってみたらどうなるだろうかと何年か前に考えた時の思考法ですが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。