【週刊ハンガンネット通信】第430号 (2023年2月27日発行)
電子帳簿保存法
伊藤耕一
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今回は電子帳簿保存法について書いてみたいと思います。
こちらは前回書いたインボイスとは異なり、消費税の課税非課税は関係なく、個人を含む全ての事業者に影響があります。
これまでは「電子的に受け取った帳票類」を「電子的な形式のまま保管」しても「印刷して保管」してもOKでした。
ところが、来年2024年の1月1日以降は「電子的に受け取った帳票類は、電子的な形式のまま保管」しなければならなくなります。
※今回の通信の下書きをした後に「相当の理由がある場合は紙保存も事実上容認することを検討中」との情報を見つけました。「検討中」とのことですので「もし容認されなかったらどうしなければならないのか」という視点でお読みいただければと思います。
保存の手段としては電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つがあり、整理すると次のとおりです。
①パソコン等で作成した帳簿書類を電子データで保存する「電子帳簿等保存」
⇒自分で電子的に作成した帳簿や請求書控えや領収書控えを紙に印刷することなく電子的に保存しておくことができます。
②紙で受け取った書類をスキャン/撮影して電子データで保存する「スキャナ保存」
⇒他社や取引先から受け取った紙の証憑類をファイリングすることなく、スキャン/撮影により電子的に保存しておくことができます。
⇒要件さえ満たせば、スキャン後の紙の証憑類は捨てることができます。
③メールやECサイト等で受け取った取引情報を電子データで保存する「電子取引」
⇒例えば〇mazon等のサイトで電子的に取得した請求書や領収書等は印刷してはならず、電子データのまま保存することが求められます。
上記のうち①と②は任意なのですが、③は強制であることに注意が必要です。
また、事業主として「事務処理規程」を作って用意しておく必要があります。
規程などと聞くと面倒そうですが、下記国税庁のページからダウンロードして自分の名前や法人名を書いて作っておけばOKとのことです。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
最近よく見るテレビCMの「いよいよか!」は上記のことを指しています。
ここまでは、昨年のうちに下書きしてあったのですが、上記※印に書いたように、下記の情報を発見しました。
税務当局の本来の方向性は上記のとおりだったのですが、昨年11月に当局がやや軟化し「相当の理由がある場合」は、当面③は紙に印刷して保存しても良いことになったとのことです。
https://www.youtube.com/watch?v=cBwZDBdw7EQ
「相当の理由」とは「会計ソフト導入が資金的に難しい」といった理由でも良いそうです。
そういうわけで今までどおりのやり方でもOKになりそうですので、電子帳簿保存法に対しては、今すぐ何らかの行動を起こす必要はないように思います。
しかし、遅かれ早かれ③の紙印刷保存が禁止になることは予想できますので、徐々に電子データ保存に慣れたり移行したりすることはお勧めしたいと思います。
電子帳簿保存で当初言われていたのは「日付・取引先名・金額の3情報が検索できれば良い」だったので、私の場合は下記のような感じで保存してきました。

しかし、売上5,000万円以下の事業者はこの検索情報の記載も不要になるとのことで、これまでの私の手間は何だったのかと思ったりもしました。
いろいろと書いてきましたが、個人で売上5,000万円は相当な水準なので、おそらくハンガンネットの会員の皆様のほとんどは電子帳簿保存法を今のところはいったん無視できるものと思います。
今回のテーマは、結果的には今までどおりのやり方でも良くなったようで、今後の経理処理の参考にしていただければと思います。
今回も「上記は税務当局との見解と合致しない可能性があることをご了承ください。」と申し添えます。