通信487 「授業のフィードバック」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第488号(2024年5月6日発行)

「授業のフィードバック」
加藤慧
===============================================

「フィードバック」というと一般的には教師側が行う評価を指すかと思いますが、ここでは最近感じている「受講生からの」フィードバックの重要性について書きたいと思います。

受講生の方の反応をリアルタイムで確認しながら進めることのできる個人レッスンと違って、大学の講義では全ての学生の理解度やニーズを把握することが困難です。
今学期は8コマの担当科目のうち、受講者数70名のクラスがあるため、余計にそう感じます。

学期末になれば授業評価アンケートで反応を知ることができますが、ニーズを反映させながら授業を作っていくためには都度コメントをもらいたいと思い、課題提出のツールとして利用しているGoogleやMicrosoftのフォームに毎回記入してもらっています。

これは以前こちらで書かせていただいた、コロナ禍でのオンライン授業の名残です。
ミニットペーパーを利用していたころは一枚一枚読むのが一仕事でしたが、ペーパーレスになって確認と管理が本当に楽になりましたし、普段からスマホ入力に慣れているからか、たくさん書いてくれる学生が多い印象です。

難しかった箇所や授業のペースについてなどを詳しく記入してくれる学生もいますし、質問や「わざわざ質問するほどでもないけれどちょっと気になったこと」などを書いてくれる学生もいます。
その場合は、次の講義冒頭で回答しています。

フィードバックによってひとりよがりな授業になるのを防ぎ、インタラクティブな授業に近づけていると感じます。
毎回講義後にこのフィードバックを読むのが楽しみになりつつあります。

プラットフォーム上で提供しているレッスンの場合はクチコミというかたちで記入していただける場合がありますが(任意のため全ての生徒さんからコメントをいただけるわけではありません)、個人的に運営している教室の方でもフィードバックをいただけないものかと最近思案中です。

先生方は個人レッスンのフィードバックやアンケートをどのように実施されているのか、頻度や方法などについてご教示いただけると嬉しいです。

通信486 「日本語的な表現」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第487号(2024年4月30日発行)

「日本語的な表現」
伊藤耕一
===============================================

4月に半年ぶりに日本に戻って、数週間を過ごしています。
聞こえてくる言葉がほとんど聞き取れるというのは、とても楽なことだと、帰ってくるたびに感じます。
その中で、日本語的だなと感じた表現について書いてみたいと思います。

歯だけは、外国で治療を受けようと思っても海外旅行保険が適用されず高額になることがあるため、一時帰国するたびにクリーニングとチェックをしてもらっています。
今回のチェックでは、幸い虫歯はありませんでした。
その時の歯科衛生士の言葉に、このような表現がありました。
「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」
何気ない表現なのですが、少し違和感のようなものを感じました。

このような表現を英語にすると、こんな感じになろうかと思います。
“OK, let’s check from the upper teeth.”
直訳すると「それでは、上の歯から診ましょう。」といったところでしょうか。

私が気になったのは「診て行きます」という部分です。
英語なら「診ましょう」で済むのに、この場合は「診て」に「行く」を付け加えないと、日本語では少しもの足りない印象を個人的に感じます。
皆さんは、そのように感じられるでしょうか。

ここからは、私の個人的見解ですが「診て行く」のように「診る」と「行く」の2つの動詞を繋げないと、全ての歯の検査をしてもえないような気がしました。
一方で英語は「from」があれば「check」される歯は全てであると解釈できるような気がします。

私の場合、歯の治療はつい身構えがちになる(突然、痛みやしみを感じるのではないかという恐怖に備える)ので、こんな重たいことを言われると、その恐怖が増幅されるような気がします。
なので、できるだけリラックスした状態で治療を受けたいと思います。
そんなことを考えているうちに歯のチェックは終わり、年齢の割には歯茎の出血が少なく悪くはない状態とのコメントをいただき、歯磨きのブラッシングに気を付けるようにとのお話があって診察は終わりました。

「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」を無理して英語に逐語訳すると、こんな感じかと思います。
“OK, I will go and check your upper teeth first.”
家に戻ってから検証のためにDeepLで日本語に訳してみると、は「では、まず上の歯を診てきます。」となりました。通じないこともないようです。

もう一度「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」をDeepLで訳してみると、こうなりました。
“I will now examine the upper teeth first.”
これも悪くはないと思いますが、”OK, let’s check from the upper teeth.”と比べると、少し重たい感じがします。

また「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」をDeepLで韓国語に訳してみました。
「그럼 윗니부터 차례로 진료해 보겠습니다.」
私は韓国で生活したことがないので「차례로」が自然な表現なのかどうか、よく分かりません。
私の第一感では「순서대로」とか「하나씩」が浮かんで来ましたし、「진료해」も今回はチェックなので「확인해」くらいかなと思っていましたが、いかがでしょうか。

自動翻訳が手軽にできるようになったのは良いことですが、翻訳結果が自然なのか適切なのかの判断は、まだ人間がしなければならないなと、そんなことを考える機会となりました。

通信485 「白水社『言葉のしくみ』シリーズ 幡野泉

【週刊ハンガンネット通信】第485号 (2024年4月22日発行)

「白水社『言葉のしくみ』シリーズ」 
アイケーブリッジ外語学院 幡野泉
=================================================
前回の通信で、スペイン語の学習をしていると書きました。その後の寄田晴代先生による「外国語学習は何歳からでも」の記事投稿には大変励まされ、気持ちが晴れ晴れとしました。

さて、学習をする中で手に取った書籍があります。
『スペイン語のしくみ』(白水社)です。こちらはシリーズものになっていて、様々な言語があります(代表的な言語から、スワヒリ語、バスク語まで…!)
このシリーズ書についてご存じの先生方も多いと思いますが、私は初めて知り、手に取りました。

白水社のシリーズ紹介ページ
https://www.hakusuisha.co.jp/search/s6994.html )には、
=====
寝ながら読める外国語! 文法用語抜きで!
言葉にはそれぞれ大切なしくみがあります。細かい規則もいっぱいありますが、大切なのは全体を大づかみに理解すること。
最後まで読み通すことができる画期的な入門書シリーズ!
=====
とあり、本当に最後までスラスラと楽しく読めました。

少し勉強していたからより楽しめたという側面はありますが、もしまだまったく勉強していなくても、外国語に興味のある人なら面白く読み進められるのではと思います。

『スペイン語のしくみ』の筆者の先生の、なるべく易しく解説をしようとされる姿勢、そして「スペイン語学習の楽しさを伝えたい」という思いが垣間見られ感心しました。また、初心者の目線を保ちつつ、筆者の先生におそらく意見をされたりする編集者の方の力も大きいのだと思います。

また、韓国語について語るとき、このように分かりやすく楽しく表現できるだろうかと自問自答しながら、どのようにしたらいいだろうと思いながら読んだりもしました。

本腰入れて外国語を勉強するということは、なかなか思い切りのいることではありますが、こちらのシリーズ書だったら興味のある言語について、その世界を覗いたような、入り口に立てたような気分になれると思います。

気になっている言語のものを、何か一冊手に取ってみてはいかがでしょうか。

通信484 「韓国を理解するための基本知識」前田真彦

【週刊ハンガンネット通信】第484号 (2024年4月16日発行)

「韓国を理解するための基本知識」
ミレ韓国語学院 前田真彦
=================================================

금강산도 식후경 「金剛山も食後の景色」=「花より団子」

中級で出てくることわざですが、金剛山がどこにあるのかを知らない受講生がいました。これはひとえに、このことわざを教えた時に、地図で金剛山がどこにあるのかを教えなかった講師に責任があります。実は私のことです。

以降猛省し、テキストに地名が出てきたら地図で指し示し、場所を教えることに決めました。前田の自宅とミレ教室のホワイトボードの横に、学校の教室に貼っているような大型の韓半島地図を貼っています。

韓国で一番高い山は? 漢拏山 1950メートル 한번 구경 오십시오 で覚える。

韓国で一番長い川は? 洛東江

高句麗と高麗、どちらが古い時代か区別がつかない人がいます。高句麗の末裔であることを意識して、高麗という王朝名を付けたわけですから、高句麗が古いのです。

以前は「韓国の常識」という言い方をしていましたが、私たち外国人にとっては常識ではなく、意識して覚えていくべき事柄です。「韓国を理解するために必要な基本知識」を計画的に覚えていかなければ、いつまでたっても北朝鮮と中国の国境を流れる川は「鴨緑江と豆満江」ということを知らないままになってしまいます。

専門知識が必要なのではありません。小学生が日本社会を知るために地理や歴史の勉強を小学校の先生から習うように、広く浅くても、基本知識をどんどん知っていく必要があります。英語学習がグローバルな関心を育てるとすれば、韓国語学習は、韓国文化への関心へと発展していくものですし、そういう関心が韓国語の学習を支えるものでもあります。

韓国語講師は韓国文化を理解するための基本知識も意図的に教えていかなければなりませんね。

通信483 「ドラマ」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第483号 (2024年4月8日発行)

「ドラマ<Eye Love You>」
ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
=================================================

3月末に という日本のドラマが最終回を放送しました。

日本の女性と韓国の男性の恋愛を描いたドラマで、
こうしたドラマが地上波で放送されるのが話題となったようです。

番組宣伝にも力を入れ同局のバラエティ番組などに主演俳優が出演していましたが、付き添う通訳さんのキャラクターも話題になりました。

同時にNetflix配信も行い日本のドラマをすぐに韓国でも見ることができるというのも新しい時代の形でした。

日本人女性は相手の「心の声」が聞こえるため、相手が声に出さなくても相手の気持ちがわかるという能力の持ち主ですが、韓国人男性の心の声は韓国語のため理解できないという設定でした。

この韓国人男性の心の声に日本語字幕がついていないということでも、韓国に感心のある人や韓国語学習者らの注意を引いたかもしれません。

そこで教材に良いかもしれないとドラマを見てみましたが、教材として継続使用はやめました。理由の最も大きいものに、韓国人男性の心の声という設定のため心の声が流れるところでは韓国人男性は口を閉じたまま、あるい日本人女性の顔の表情を映しているなどで韓国人男性の口の動きを見ることができないという点でした。

初回放送週、19歳女子が主な構成の韓国語クラス(全15人)にドラマを見たかどうか訊いてみたところ3人ほどが「キャーー」と興奮気味に手をあげました。
他の学生は「見てません」あるいは「何それ?」といった反応でした。
授業でこのドラマのことを話題にしたのはこの一度きりではありますが。

ドラマは韓日の男女が温泉施設に行ってデートをするシーンで韓国人男性が 양머리 を教えてあげるといった場面もあり、こうしたシーンはまだ韓国にあまり興味を持っていなかった人たちの中で新鮮な胸キュンシーンとなる人もいるかもしれないな、新たな韓国ファンを生むだろうなあと感じました。

通信482 「英語由来の外来語」田附和久

【週刊ハンガンネット通信】第483号 (2024年3月25日発行)

「英語由来の外来語」
田附和久
=================================================

教える仕事を何年あるいは何十年と続けてこられた先生方は、ある単元を教えるときに必ず話すジョークや面白い話などの「鉄板ネタ」をいくつもお持ちのことと思います。私も、それほど多くはありませんが、そのようなネタのストックがいくつかあります。

例えば아야어여を学ぶ際には、「유」を発音する際に口をよくとがらせないと通じないということを記憶にとどめてもらうために、自分が留学した際、「저는
유학생(留学生)이에요.」と発音したつもりが「저는 여학생(女学生)이에요.」と聞こえてしまい、相手に驚いた顔をされたという話を必ずします。

また、次のようなネタもあります。
40年近く前に初渡韓した際、旅を終えて金浦空港に向かうタクシーの中、もうすぐ空港に到着しようというところで、運転技士ニムから
「チャール?」
とたずねられました。
チャール? 朝鮮語を学び始めたばかりだった私は、「チャールといえばチャールモゴッスムニダのチャールかな?」という連想から、楽しく観光したのかとたずねられたのではないかと考え、
「네. 잘 봤습니다.」
と答えてみましたが、反応なし。
それならば、タクシーの乗り心地をたずねられたのかなと思い、
「잘 탔습니다.」
と言ってみても、やはり反応なし。
そして繰り返される「チャール?」の質問。
いったい何を聞かれているんだ!とわからずに混乱しているうちにタクシーは空港に到着し、国際線の出発ロビーの前で停車したのでした。
「チャール?」
技士ニムが指さす赤い鶴のマークを見て、ようやく「チャール」が「JAL」のことだったのだと理解しました。

この話は、英語由来の外来語の発音の聞き取りが難しいという話題になったときに必ず話す、私の「鉄板ネタ」です。
英語由来の外来語は漢字語同様、日本語話者にとっては語彙を大幅に増加させる「強い味方」になるはずのものですが、語頭に有声音がなく、転記の規則も異なり、日本語でカタカナを用いるような表記上の区別もしないため、規則性を身につけるまでは、学習者にとっては逆につまづきになりがちです。
学習者には外来語に苦手意識を持つことなく、上手に味方にしてほしいという意識を持って、私も「チャール」の話などを導入に使いながら、毎学期、教室での努力を重ねています。

この一週間、韓国から伝えられる報道を通して「다저스」という表記や発音に触れ、「タジョスって何?」と戸惑った学習者が多くいたのではないでしょうか。
正解を知り、「なんでドが다で、ジャが저になるの!」と嘆きの声を上げた学習者の皆さんが、そこで感じた素朴な驚きや疑問をきっかけに、身近にいらっしゃる先生方のご指導によって外来語表記への関心をさらに深め、外来語を味方にできるようになったらいいなと思いながら、韓国からのニュースを見ていました。

通信481 「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第481号 (2024年3月18日発行)

「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」
奈良美香 下関市立大学 他
=================================================

皆さんは、ICTツールを活用した授業を実践されたことがありますか? 教育の情報化に伴い、様々な教育用アプリが開発されており、学習活動もICTツールを活用することで、授業内容の幅が広がり、活気をもたらすことが可能となります。今回、私が授業で使用しましたツールをご紹介したいと思います。

教育用クイズアプリ「Kahoot!(カフート)」は、ノルウェーで開発された教育アプリで、クイズ(4択問題や◯✖問題など)をオンラインで、ゲーム感覚で学習を進めることのできるアプリです。主催者は大型テレビなどにクイズの問題を映し、参加者は手持ちのスマホやタブレット端末から解答していきます。参加者は、ニックネームでも実名でも、どちらでも登録可能です。クイズに正解すると、速かった順にポイントが加算され、1問ごとに獲得した総ポイントが多い順に上位3位が画面に表示されるため、学習者の競争意欲を刺激し教室内は盛り上がります。また、利用が終わると即座に、設問ごとに正答数、回答者が選んだ選択肢とその割合などのデータ集計ができる仕組みになっているので、すぐにフィードバックすることも可能です。

授業では、大学1年生のクラスを対象にカフートに慣れてもらうため、私が作成した復習クイズ問題に挑戦してもらいました。初めてカフートクイズを体験する学生が多く、設問ごとに発表されるランキング結果に大盛り上がりでした。そして、このカフートを使用して学生にクイズ問題と解説用スライドを作成し発表するグループ課題を実施しました。出題内容は、授業で学習した範囲でひとりにつき3問は作成するように指示し、グループで2問までなら、芸能問題や文化関連問題の作成も許可しました。発表後は自己評価と相互評価を実施しましたが、

・「問題を作る過程で、授業で習ったことを復習し、間違えやすいポイントがどこなのかを考えることができて韓国語の理解がより深まった。」

・「ただクイズするだけでなく、スコアを競うのも問題に対してやる気が出て、いいシステムだと思いました。」

・「他の人の問題を解くのは自分が考え付かなかったような問題や、面白い問題、動画や画像を使った問題など沢山あって、やっていてとても楽しく、ゲーム感覚で出来るので集中して問題を解こうとするし、頭に残るのでとても勉強になりました。」

などの回答があり、復習するのに最適なツールであると確認できました。「復習用」のツールと位置付けると「初級」、「中級」、「上級」のどの水準でも対応可能なため、韓国語レベルに適したクイズ問題の作成ができます。

このカフートは大学だけでなく社会人向けの講座でも対応可能です。私の場合、受講生が年配の方々なので、クイズ問題と解答解説を作成し紙面で提出してもらい、私がカフートアプリに入力し、授業でクイズ大会を実施しました。ほとんどの方がスマホをお持ちなので、支障なくクイズに参加できますが、お持ちでない方には、手持ちのタブレットを貸出して、実施しました。設問ごとに表示される成績上位ランキングに一喜一憂しながら、盛り上がる授業となり、受講生の方々は、「クイズ問題を自身で考えることは新鮮で、難易度を考えるのが難しかったが、楽しく復習することができた」と感想を頂きました。ただ、実施後の講師側の気づきとして、受講生が年配の方々なので回答までの制限時間を長めに設置すべきだったと反省しました。

このカフートクイズを実施するには、講師側のアカウント登録が必要となります。有料版もありますが、無料版でも十分対応可能です。登録までの流れを紹介しているサイトのリンクを貼りますので、興味のある方々は是非、ご覧になってください。

参考サイト

カフート完全ガイド!作り方遊び方を徹底解説 | サンソンの「レクで学級をHappyに!」 (sanson-rec.com)

また、受講生が作成したクイズ問題からハンガンネット向けに選抜したカフートクイズを作成しましたので、興味のある方は、是非、挑戦してみてください。下記のURLをクリックし、表示されたQRコードをスマホで読み込むとクイズに参加できます。2024年3月24日(日)午後8時まで、回答を受け付け、期限を経過すると成績上位ランキングが表示されますので、ご確認されてください。果たして、順位の結果はいかに??

Kahootクイズ↓

https://kahoot.it/challenge/02682632?challenge-id=949fd9b2-2eb2-4a93-8510-d72c5824434e_1710751916560

末尾になりますが、今回の記事を持ちまして私の投稿は最後となります。つたない文章ではありましたが、授業で実践した内容が少しでも皆様の参考になれば幸いです。今後も学生の学習意欲を刺激するようなアプローチの模索のため、私の奮闘はまだまだ続きそうです。1年間、お読みいただきましてありがとうございました。

通信480 「韓国で録音を行うときの問題点」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第480号 (2024年3月15日発行)

「韓国で録音を行うときの問題点」
ペ・ジョンリョル
=================================================

小社では、韓国語学習書の録音の多くを韓国で行っています。なんといっても良い韓国語の声優が多くいます。録音費、声優費も日本に比べて安く、最近では完成したMP3ファイルをネット経由で納品してもらうので、タイムラグもありません。

一方、デメリットとしてはまず、日本語の声優が少ないことが挙げられます。そして、10年以上韓国で録音をしていますが、すごく満足できる人にいまだ巡り会えていません。大きな不満が何かというと、単語のアクセント(抑揚)を間違えることです。

音声の録り直しが生じると、スタジオと同じ声優を再度ブッキングする手間と、最低でも(再録音時間が5分でも10分でも)1時間分のスタジオと声優の費用がかかります。チェック用の音声を聞いたら、韓国語は問題ないのに日本語のアクセントの誤りを見つけてがっくりする、ということがこれまでに何度もありました。さらに、同じ声優さんの再々録音の予定がどうしても合わず、音声が遅れて本の発売に間に合わなかったこともありました。

日本国内で録音するときは編集者や著者が現場に立ち会えるので、あやしい発音に気付いたらその場ですぐに録り直すことができます。それに対し、韓国だといちいち現地に行って立ち会うことができず、上がってきた音声をチェックすることになります。それが韓国で録音することの一番の問題です。

なので、なおさら完璧に発音できる人が求められるのですが、なかなかそういう人がみつからないのです。

日本語の部分だけ日本で録音して、編集で音声を合体させるという方法もありますが、場所や機材が違うと音の雰囲気がまったく違ってしまうそうで、あえて試したことがありません。いまや多くの会社でオンライン会議を取り入れているご時世ですから、できたらZoomなどの中継で録音に立ち会えたら一番いいんですけれど。

ちなみに、韓国語の声優が単語レベルで抑揚を間違える問題はほぼ起きません。これは高低アクセントがある日本語特有の問題でしょう。

話は変わりますが、数年前、大阪出身の方に「ペさん関西の出身ですよね?」と言われたことがありました。東京弁を話しているけど西のアクセントがときどき混じっているとのことでした。でも私は東京以外に住んだことがないので、その自覚がありません。

ところが最近、ある会議の文字起こしをするために、録音された自分の声を聞く機会があったのですが、気を付けて聞いていると、たしかにあやしいアクセントがいくつも混じっています。社内に関西弁でよくしゃべる人がいるので、それがうつってしまったのでしょうか。

前述した韓国での日本語のアクセント問題、声優さんの出身地やスキルの問題かもしれませんが、案外、韓国に住んでいて日本語に接する時間が少ないことにも原因を求められるかもしれませんね。

通信479 「10年を振り返ってみた」浅見綾子

【週刊ハンガンネット通信】第479号 (2024年3月8日発行)

「10年を振り返ってみた」
浅見綾子
=================================================

私が編集長を務める『韓国語学習ジャーナルhana』がこの度10周年を迎えます。
そこでこの10年間で、自分は何か成長したかなと、思いを馳せてみました。

そうだ、ひとつある!

HANAという会社に入ってからイラストを描き始めました。
初期のころからはだいぶ成長したのではないかと思います。
最初は本当に下手で、上手になりたい一心で色んな「イラストマスター本」を買い漁りました。ですが、「絵、イラスト」は描く人の「世界観」や「味」が大切だということにこの10年で気づき、学ぶのを辞めました。(学ぶのを辞めてはいけないですが!)

初期のイラスト
01

少し成長しました

02

03

iPadを与えられ、急速にパワーアップ

04

05

自分の味を守りつつ、これからも色んなことを学んでいけたらと思います。来週の校了を控え、仕事に追われておりこんなつまらない内容になりました。申し訳ございません!

06