通信483 「ドラマ」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第483号 (2024年4月8日発行)

「ドラマ<Eye Love You>」
ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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3月末に という日本のドラマが最終回を放送しました。

日本の女性と韓国の男性の恋愛を描いたドラマで、
こうしたドラマが地上波で放送されるのが話題となったようです。

番組宣伝にも力を入れ同局のバラエティ番組などに主演俳優が出演していましたが、付き添う通訳さんのキャラクターも話題になりました。

同時にNetflix配信も行い日本のドラマをすぐに韓国でも見ることができるというのも新しい時代の形でした。

日本人女性は相手の「心の声」が聞こえるため、相手が声に出さなくても相手の気持ちがわかるという能力の持ち主ですが、韓国人男性の心の声は韓国語のため理解できないという設定でした。

この韓国人男性の心の声に日本語字幕がついていないということでも、韓国に感心のある人や韓国語学習者らの注意を引いたかもしれません。

そこで教材に良いかもしれないとドラマを見てみましたが、教材として継続使用はやめました。理由の最も大きいものに、韓国人男性の心の声という設定のため心の声が流れるところでは韓国人男性は口を閉じたまま、あるい日本人女性の顔の表情を映しているなどで韓国人男性の口の動きを見ることができないという点でした。

初回放送週、19歳女子が主な構成の韓国語クラス(全15人)にドラマを見たかどうか訊いてみたところ3人ほどが「キャーー」と興奮気味に手をあげました。
他の学生は「見てません」あるいは「何それ?」といった反応でした。
授業でこのドラマのことを話題にしたのはこの一度きりではありますが。

ドラマは韓日の男女が温泉施設に行ってデートをするシーンで韓国人男性が 양머리 を教えてあげるといった場面もあり、こうしたシーンはまだ韓国にあまり興味を持っていなかった人たちの中で新鮮な胸キュンシーンとなる人もいるかもしれないな、新たな韓国ファンを生むだろうなあと感じました。

通信482 「英語由来の外来語」田附和久

【週刊ハンガンネット通信】第483号 (2024年3月25日発行)

「英語由来の外来語」
田附和久
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教える仕事を何年あるいは何十年と続けてこられた先生方は、ある単元を教えるときに必ず話すジョークや面白い話などの「鉄板ネタ」をいくつもお持ちのことと思います。私も、それほど多くはありませんが、そのようなネタのストックがいくつかあります。

例えば아야어여を学ぶ際には、「유」を発音する際に口をよくとがらせないと通じないということを記憶にとどめてもらうために、自分が留学した際、「저는
유학생(留学生)이에요.」と発音したつもりが「저는 여학생(女学生)이에요.」と聞こえてしまい、相手に驚いた顔をされたという話を必ずします。

また、次のようなネタもあります。
40年近く前に初渡韓した際、旅を終えて金浦空港に向かうタクシーの中、もうすぐ空港に到着しようというところで、運転技士ニムから
「チャール?」
とたずねられました。
チャール? 朝鮮語を学び始めたばかりだった私は、「チャールといえばチャールモゴッスムニダのチャールかな?」という連想から、楽しく観光したのかとたずねられたのではないかと考え、
「네. 잘 봤습니다.」
と答えてみましたが、反応なし。
それならば、タクシーの乗り心地をたずねられたのかなと思い、
「잘 탔습니다.」
と言ってみても、やはり反応なし。
そして繰り返される「チャール?」の質問。
いったい何を聞かれているんだ!とわからずに混乱しているうちにタクシーは空港に到着し、国際線の出発ロビーの前で停車したのでした。
「チャール?」
技士ニムが指さす赤い鶴のマークを見て、ようやく「チャール」が「JAL」のことだったのだと理解しました。

この話は、英語由来の外来語の発音の聞き取りが難しいという話題になったときに必ず話す、私の「鉄板ネタ」です。
英語由来の外来語は漢字語同様、日本語話者にとっては語彙を大幅に増加させる「強い味方」になるはずのものですが、語頭に有声音がなく、転記の規則も異なり、日本語でカタカナを用いるような表記上の区別もしないため、規則性を身につけるまでは、学習者にとっては逆につまづきになりがちです。
学習者には外来語に苦手意識を持つことなく、上手に味方にしてほしいという意識を持って、私も「チャール」の話などを導入に使いながら、毎学期、教室での努力を重ねています。

この一週間、韓国から伝えられる報道を通して「다저스」という表記や発音に触れ、「タジョスって何?」と戸惑った学習者が多くいたのではないでしょうか。
正解を知り、「なんでドが다で、ジャが저になるの!」と嘆きの声を上げた学習者の皆さんが、そこで感じた素朴な驚きや疑問をきっかけに、身近にいらっしゃる先生方のご指導によって外来語表記への関心をさらに深め、外来語を味方にできるようになったらいいなと思いながら、韓国からのニュースを見ていました。

通信481 「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第481号 (2024年3月18日発行)

「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」
奈良美香 下関市立大学 他
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皆さんは、ICTツールを活用した授業を実践されたことがありますか? 教育の情報化に伴い、様々な教育用アプリが開発されており、学習活動もICTツールを活用することで、授業内容の幅が広がり、活気をもたらすことが可能となります。今回、私が授業で使用しましたツールをご紹介したいと思います。

教育用クイズアプリ「Kahoot!(カフート)」は、ノルウェーで開発された教育アプリで、クイズ(4択問題や◯✖問題など)をオンラインで、ゲーム感覚で学習を進めることのできるアプリです。主催者は大型テレビなどにクイズの問題を映し、参加者は手持ちのスマホやタブレット端末から解答していきます。参加者は、ニックネームでも実名でも、どちらでも登録可能です。クイズに正解すると、速かった順にポイントが加算され、1問ごとに獲得した総ポイントが多い順に上位3位が画面に表示されるため、学習者の競争意欲を刺激し教室内は盛り上がります。また、利用が終わると即座に、設問ごとに正答数、回答者が選んだ選択肢とその割合などのデータ集計ができる仕組みになっているので、すぐにフィードバックすることも可能です。

授業では、大学1年生のクラスを対象にカフートに慣れてもらうため、私が作成した復習クイズ問題に挑戦してもらいました。初めてカフートクイズを体験する学生が多く、設問ごとに発表されるランキング結果に大盛り上がりでした。そして、このカフートを使用して学生にクイズ問題と解説用スライドを作成し発表するグループ課題を実施しました。出題内容は、授業で学習した範囲でひとりにつき3問は作成するように指示し、グループで2問までなら、芸能問題や文化関連問題の作成も許可しました。発表後は自己評価と相互評価を実施しましたが、

・「問題を作る過程で、授業で習ったことを復習し、間違えやすいポイントがどこなのかを考えることができて韓国語の理解がより深まった。」

・「ただクイズするだけでなく、スコアを競うのも問題に対してやる気が出て、いいシステムだと思いました。」

・「他の人の問題を解くのは自分が考え付かなかったような問題や、面白い問題、動画や画像を使った問題など沢山あって、やっていてとても楽しく、ゲーム感覚で出来るので集中して問題を解こうとするし、頭に残るのでとても勉強になりました。」

などの回答があり、復習するのに最適なツールであると確認できました。「復習用」のツールと位置付けると「初級」、「中級」、「上級」のどの水準でも対応可能なため、韓国語レベルに適したクイズ問題の作成ができます。

このカフートは大学だけでなく社会人向けの講座でも対応可能です。私の場合、受講生が年配の方々なので、クイズ問題と解答解説を作成し紙面で提出してもらい、私がカフートアプリに入力し、授業でクイズ大会を実施しました。ほとんどの方がスマホをお持ちなので、支障なくクイズに参加できますが、お持ちでない方には、手持ちのタブレットを貸出して、実施しました。設問ごとに表示される成績上位ランキングに一喜一憂しながら、盛り上がる授業となり、受講生の方々は、「クイズ問題を自身で考えることは新鮮で、難易度を考えるのが難しかったが、楽しく復習することができた」と感想を頂きました。ただ、実施後の講師側の気づきとして、受講生が年配の方々なので回答までの制限時間を長めに設置すべきだったと反省しました。

このカフートクイズを実施するには、講師側のアカウント登録が必要となります。有料版もありますが、無料版でも十分対応可能です。登録までの流れを紹介しているサイトのリンクを貼りますので、興味のある方々は是非、ご覧になってください。

参考サイト

カフート完全ガイド!作り方遊び方を徹底解説 | サンソンの「レクで学級をHappyに!」 (sanson-rec.com)

また、受講生が作成したクイズ問題からハンガンネット向けに選抜したカフートクイズを作成しましたので、興味のある方は、是非、挑戦してみてください。下記のURLをクリックし、表示されたQRコードをスマホで読み込むとクイズに参加できます。2024年3月24日(日)午後8時まで、回答を受け付け、期限を経過すると成績上位ランキングが表示されますので、ご確認されてください。果たして、順位の結果はいかに??

Kahootクイズ↓

https://kahoot.it/challenge/02682632?challenge-id=949fd9b2-2eb2-4a93-8510-d72c5824434e_1710751916560

末尾になりますが、今回の記事を持ちまして私の投稿は最後となります。つたない文章ではありましたが、授業で実践した内容が少しでも皆様の参考になれば幸いです。今後も学生の学習意欲を刺激するようなアプローチの模索のため、私の奮闘はまだまだ続きそうです。1年間、お読みいただきましてありがとうございました。

通信480 「韓国で録音を行うときの問題点」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第480号 (2024年3月15日発行)

「韓国で録音を行うときの問題点」
ペ・ジョンリョル
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小社では、韓国語学習書の録音の多くを韓国で行っています。なんといっても良い韓国語の声優が多くいます。録音費、声優費も日本に比べて安く、最近では完成したMP3ファイルをネット経由で納品してもらうので、タイムラグもありません。

一方、デメリットとしてはまず、日本語の声優が少ないことが挙げられます。そして、10年以上韓国で録音をしていますが、すごく満足できる人にいまだ巡り会えていません。大きな不満が何かというと、単語のアクセント(抑揚)を間違えることです。

音声の録り直しが生じると、スタジオと同じ声優を再度ブッキングする手間と、最低でも(再録音時間が5分でも10分でも)1時間分のスタジオと声優の費用がかかります。チェック用の音声を聞いたら、韓国語は問題ないのに日本語のアクセントの誤りを見つけてがっくりする、ということがこれまでに何度もありました。さらに、同じ声優さんの再々録音の予定がどうしても合わず、音声が遅れて本の発売に間に合わなかったこともありました。

日本国内で録音するときは編集者や著者が現場に立ち会えるので、あやしい発音に気付いたらその場ですぐに録り直すことができます。それに対し、韓国だといちいち現地に行って立ち会うことができず、上がってきた音声をチェックすることになります。それが韓国で録音することの一番の問題です。

なので、なおさら完璧に発音できる人が求められるのですが、なかなかそういう人がみつからないのです。

日本語の部分だけ日本で録音して、編集で音声を合体させるという方法もありますが、場所や機材が違うと音の雰囲気がまったく違ってしまうそうで、あえて試したことがありません。いまや多くの会社でオンライン会議を取り入れているご時世ですから、できたらZoomなどの中継で録音に立ち会えたら一番いいんですけれど。

ちなみに、韓国語の声優が単語レベルで抑揚を間違える問題はほぼ起きません。これは高低アクセントがある日本語特有の問題でしょう。

話は変わりますが、数年前、大阪出身の方に「ペさん関西の出身ですよね?」と言われたことがありました。東京弁を話しているけど西のアクセントがときどき混じっているとのことでした。でも私は東京以外に住んだことがないので、その自覚がありません。

ところが最近、ある会議の文字起こしをするために、録音された自分の声を聞く機会があったのですが、気を付けて聞いていると、たしかにあやしいアクセントがいくつも混じっています。社内に関西弁でよくしゃべる人がいるので、それがうつってしまったのでしょうか。

前述した韓国での日本語のアクセント問題、声優さんの出身地やスキルの問題かもしれませんが、案外、韓国に住んでいて日本語に接する時間が少ないことにも原因を求められるかもしれませんね。

通信479 「10年を振り返ってみた」浅見綾子

【週刊ハンガンネット通信】第479号 (2024年3月8日発行)

「10年を振り返ってみた」
浅見綾子
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私が編集長を務める『韓国語学習ジャーナルhana』がこの度10周年を迎えます。
そこでこの10年間で、自分は何か成長したかなと、思いを馳せてみました。

そうだ、ひとつある!

HANAという会社に入ってからイラストを描き始めました。
初期のころからはだいぶ成長したのではないかと思います。
最初は本当に下手で、上手になりたい一心で色んな「イラストマスター本」を買い漁りました。ですが、「絵、イラスト」は描く人の「世界観」や「味」が大切だということにこの10年で気づき、学ぶのを辞めました。(学ぶのを辞めてはいけないですが!)

初期のイラスト
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少し成長しました

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iPadを与えられ、急速にパワーアップ

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自分の味を守りつつ、これからも色んなことを学んでいけたらと思います。来週の校了を控え、仕事に追われておりこんなつまらない内容になりました。申し訳ございません!

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通信478「外国語学習は何歳からでも」寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第478号 (2024年3月2日発行)

「外国語学習は何歳からでも」
寄田晴代
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この通信で外国語学習体験の記事が続いていますが、新しい言語ができるようになったら楽しいだろうなと思いつつ、もう今から勉強を始めてもモノにならないんじゃないか、と年齢を理由にチャレンジをあきらめている人も少なくないと思います。

そこで、ちょうど先日ラジオで、脳言語学者である酒井邦嘉さんの興味深い話を聞いたのでご紹介します。

酒井さんは、言語習得に年齢は関係ないと言います。

大学生以上を対象に行った実験を紹介していたのですが、カザフ語(カザフスタンで使用されている言語)を、文法は一切教えずに音声だけをひたすら繰り返して聞かせたところ、約半数の人がカザフ語がわかるようになったというのです。
私たちの脳には言語野という部分があって(大半の人は左にある)ここの文法中枢でことばを理解しているそうです。母語も第二言語も同じところを使うんだそうです。
この実験は、できた人とできなかった人の脳の動きの違いを調べ、第三言語、第四言語も同じ文法中枢を使うのかをつきとめるものでした。
カザフ語ができるようになった人は、脳の文法中枢に活動の上昇が見られました。
このことから、私たちが新しい言語を習得するとき、ゼロから始めているのではなく、母語や学習したことのある英語などで培った脳の場所を使っていると言えます。
言語哲学者のノーム・チョムスキーは「すべての文法は人間の脳にとっては同じなのだ」と60年以上前に言っているように、私たちには言語の枠組みのようなものが備わっている。だから、おとなでも同じ脳の場所を使って十分に音声が入ればカザフ語の正しい文を認識できるようになるのだ、と酒井さんは言います。
「ことばは教えるものではなく引き出すもの」ということばが印象的でした。

さて、言語をうまく引き出す方法ですが、まず音を真似する。聞こえた音に近いように言ってみることを勧めています。
この場合、ローマ字やカタカナ語にとらわれないことが大事です。(外来語に引きずられてcapのpを「プ」と言ってしまうなど)

「単語をたくさん覚えたら話せるようになるか?」というアナウンサーの質問には「単語だけ知っていても複合語や文になると発音が変わるので文で練習した方がいい」とアドバイスしながら、「東京都」と「東京と京都」でアクセントが変わる例が示されました。

シャドーイング練習法については、上級者には有効だが、そうでない人(まだ音が十分に入っていない人、文の意味がわからない、脳の中で考えなければいけないとき)の場合は習得を封印してしまう恐れがあるので無理しないほうがいい、と述べていました。

言語習得のために練習しよう!と思って取り組むよりも、映画や好きな歌を繰り返し真似しているうちに言えるようになった、というように体験を通して身につく方法が良いというお話でした。

ある年齢を超えると言語の習得は難しいという臨界期説は関係ない、という酒井さんの話には大変勇気づけられ、受講生の方にお話ししなくっちゃ、と思いました。一方、限られた時間内にやるべき学習項目が決まっている授業もあるので、いかに音をたくさん聞いてもらうか、考えたいところです。

最後に、言語を学ぶということは繰り返し聞いたり言ってみたり、元来非効率的なものである。それを「効率的な教育」と謳う時点で大事な部分から遠ざかっていると思う、と学校の英語教育におけるAI活用に対して警戒感を述べていました。

元来、非効率的なもの、時間がかかって当たり前と思えば、教えるときも、自分が新しい言語を学ぶときも焦らずにすむかもしれません。(実は中国語やインドネシア語を細々と勉強しているのですが、一向に前進できず焦っていました。)

通信477 「外国語学習の喜びと哀しみ」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第477号 (2024年2月19日発行)

「外国語学習の喜びと哀しみ」 
加藤 慧
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幡野先生のスペイン語学習についての投稿、伊藤先生のマレー語脳についての投稿を楽しく拝見し、私も外国語学習について書いてみたいと思いました。

私は昔から外国語の勉強が大好きで、英語と韓国語以外ではスペイン語、タイ語、台湾華語の学習経験があります。
(NHKの語学講座で触れた程度まで入れると、イタリア語、ドイツ語、フランス語も入ります)

スペイン語は大学の第二外国語だったためなじみがあり、数年前にメキシコを舞台にした映画『リメンバー・ミー』をきっかけに再び学習を始めましたが、現在はお休み中です。(いつかは再開したいです…!)

タイ語は旅行をきっかけに勉強を始めましたが、文字と簡単な挨拶だけ覚えて終わり、残念なことに今ではすっかり忘れてしまいました。

どれひとつまともに習得できておらずお恥ずかしい限りですが、唯一ゆるく続いているのが台湾華語で、月に2、3回のペースでオンラインレッスンを受けています。
きっかけは注音符号が可愛くて興味を持ったことなのですが、その根底には学生時代に行った台湾旅行の楽しかった記憶と、もう一度旅行に行きたいという気持ちがあったと思います。
韓国で使われる漢字と近い繁体字に親しみを感じたことも大きいです。

複数語学を学ぶことのメリットはいろいろありますが、〝韓国語で〟外国語を学ぶことができるのもそのひとつです。
台湾華語のコンテンツは圧倒的に少ないため主に中国の中国語にはなるものの、この方法だと韓国語と外国語の両方を同時に学ぶことができて一石二鳥です。

さらに私の場合、韓国の小説の台湾華語版を読んで、ここはこう訳したのか、と翻訳の参考にすることもできました。
(まだ一人で小説を読めるレベルではないので、先生に教えていただきながらでしたが)

ですが一番の収穫はやはり何と言っても、生徒さんの気持ちがわかるようになったことです。

非ネイティブ講師の最大の強みは、「生徒さんと同じ言語の学習者であること」だと思っています。
生徒さんよりも早く韓国語の勉強を始め、たまたま深めることができただけの先輩で、語学学習にはゴールはないので、自分も生涯〝学習者〟です。
とはいえ上級レベルの学習者なので、特に初級の頃の気持ちというのはどうしても忘れがちです。

一方で台湾華語の学習には、頭で理解しているつもりの声調が口からは何故か出てこなかったり、習いたての単語の意味が思い出せなかったりして、苦戦するばかりです。
注音符号も読むのに時間がかかったり、似た形のものを混同してしまったりします。

授業で生徒さんがこのような状況に陥っているとき、台湾華語を学ぶ以前と比べてその気持ちがよくわかるようになり、寄り添いながら誘導できるようになりました。
それまでは「たった今教えた単語なのに…」と思ってしまっていたところがあったとすれば、今は馴染みのない音はすぐに覚えられるものではない、とわかるからです。

また、「復習してくださいね!」といつも呼びかけているくせに、当の自分はなかなかその時間がとれません。
仕事をしながらレッスンの復習時間を捻出するのは容易ではないこともわかりました。

私が韓国語を習得したのは、まだ頭も柔らかく、時間的な余裕もある学生時代だったので、この「大人になってから語学を学ぶ大変さ」というのは大きな発見でした。

発音が上手くできない、単語が覚えられないストレスや、復習する時間がとれない結果なかなか伸びない自分への失望感はたしかに〝哀しみ〟と言えるかもしれません。
でもその分、本当に少しずつでも自分の言いたいことが言えるようになったり、台湾ドラマや中国ドラマのセリフが一言でも聞き取れたり、先生と会話ができ、褒めていただけたりしたときの〝喜び〟はひとしおです。
そう思わせてくれる先生にも学ぶところが多く、「生徒」という立場になること自体が、私にとっては素晴らしい経験です。

このように、特に語学講師にとって新しい外国語の学習は、初心にかえり喜びも哀しみもわかるようになる絶好の機会だと思います。
私の台湾華語学習は、韓国語学習がそうだったように、喜びの方が大きいから続いているのだと思います。
生徒さんたちにも、そう思っていただけるような授業がしたいものです。

通信476 「外国語脳を作る」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第476号 (2024年2月12日発行)

「外国語脳を作る」 
伊藤耕一
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マレーシア生活も3年目に入りました。
最近困ったなと思うのは、単語を覚えられなくなったことです。
英語や韓国語を勉強していたころは、新出単語を一度覚えれば、ほとんど忘れることはありませんでした。
しかし、今は、過去に覚えたはずの単語の意味が思い出せない、そんなことを毎日のように感じます。

そんな時に、このような動画を見ました。
https://youtu.be/kfMWelITPpg?si=FqpY6MC0mwUFUx2M

「韓国語脳を作るには」とのテーマです。
そのために必要な前提として、基本的な「単語・文法・発音」を身に付ける必要があるとの話がありました。
私のマレー語を振り返ると、このような感じです。
・単語 圧倒的に語彙力が低い。
・文法 語順、修飾被修飾、格、前置詞といった基本的な文法は、ほぼ覚えた。
・発音 スピーチの時の話は通じているので、問題なさそう。

ということで、動画の話に納得するとともに、私の場合は「単語」が課題であることを再認識しました。

その動画では、単語の覚え方として「イメージで覚える」ことを推奨していました。
つまり、韓国語の単語を日本語に変換することなく認識するような手法です。
振り返ってみれば、学生時代には英語も韓国語も難しい単語は逐語的に覚えるのではなく、イメージで覚えていたことを思い出しました。
例えば「따뜻하다は、暖かい日差し」「어지럽다は、グルグル回るめまい」などのイメージが頭の中にあります。
今でも言葉を発した時の音とそのイメージが結びつくような感覚があります。

翻ってこの2年間で覚えたマレー語の単語を思い起こすと、マレー語を英語に変換して逐語的に覚えてきたような自覚があります。
「Kesihatan=Health」「Keselamatan=Safety」「Belajar=Learn」「Bekerja=Work」「Sedap=Delicious」
つまり、イメージとして覚えていないことになります。

また、韓国語を教えていた時、「(外出先で)これから私の家に来る?」と言う時の「来る」は「오다」でなく「가다」を使わなければならないと言っていたことを思い出しました。
「逐語的に覚えてしまうと、実際に言葉を発する場面では不適切な表現になる場合があるので、なるべくイメージで覚えましょう。」「自分の所有物や所属先を言う時にも「내」でなく「우리」を使うことが多いです。」などと言っていたような気がします。
このようなイメージの絵と解説をホワイトボードに何度も書きました。

image

しかし、欠点は、学習する側としては膨大な数のイメージの場面を覚える必要があり、教える側も膨大な数のイメージの場面を提供する必要があり、非常に手間がかかることです。
私はホワイトボードに絵を描くことが多かったのですが、本当はこのようなカードを用意しておくと、もっと効率的なのかも知れません。

私が韓国語を学習していた頃は、ふんだんな時間と旺盛な記憶力があったのですが、今は限られた時間と衰えた記憶力しかなく、これが一番のネックです。
いくつかのマレー語の単語を覚えたつもりが、翌日にはその半分ほどは忘れてしまい、まさに3歩進んで2歩下がるような感じです。
そうは言っても、マレー語脳を作るには、一歩一歩を積み重ねるように一語一語の単語を覚えて行くしかないなと思うのが、記憶力が衰えた学習者の開き直った本音のような気がしています。

通信475 「新しい言語の習得」幡野 泉

【週刊ハンガンネット通信】第475号 (2024年2月5日発行)

「新しい言語の習得」
アイケーブリッジ外語学院 幡野 泉
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正しくは、「新たに言語を習得するために勉強を開始する」ということなのですが、最近、スペイン語の学習を始めました。動機はスペインやキューバの音楽が以前から好きで、いつか行ってみたいと思っていたためです。

先生方の中に、スペイン語の知識も豊富な方がいらっしゃるかもしれませんね。
まだ開始してから1か月くらいしか経っていませんが、主語を言わなくていい代わりに、動詞の活用で主語を明らかにしたり、言語ならではの特徴がとても面白いです。

面白い、と強がってみましたが、やはり語学の習得というのはストレスを伴うものだなと改めて思います。マレー語の学習をされる伊藤先生のお話、いつも「すごいなぁ」と思いながら読んでいます。

スペイン語はローマ字が使用されているし、発音も特殊なものはあまりないので、文字と発音に関してはそこまでストレスはないのですが、男性名詞と女性名詞、単数と複数、1人称~3人称で活用が七変化します。
もちろん、不規則動詞もあります。終始、これらと格闘することになるのかな、と感じています。(ロシア語もそうでしたが…)

しかし、学習の唯一の救いは音楽でした。昔好きだったキューバ音楽のCDを引っ張り出して聞いてみたところ、その歌詞に出てくる単語は「あれ、これ、教材に出てきた!」となり、定冠詞と一緒に覚えられたり。
教科書に出てくる例文はなかなか覚えられないのに、歌を歌っているといつの間にか覚えていたりしますね。

以前、日下隆博先生とミュージカルの講座をご一緒していたとき、日下先生も同じようにおっしゃっていましたね。

最近、当校にいらっしゃる受講生の中には、教科書で韓国語を勉強したことがない。
K-POPやドラマだけで、話せるようになったという方もいますが、好きこそものの上手なれ、で、なるほど、やっぱりそんなことも可能なのかなと思います。

スペイン語技能検定は6級にはじまり、1級(最上級)まであるようです。
そのうち、検定試験を目標にしてみようかなとも思っています。