通信423 「日本語の良さ、韓国語の良さ」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第423号 (2023年1月9日発行)

日本語の良さ、韓国語の良さ
加藤慧
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昨年、韓ドラファンの方々の間で人気だった日本のドラマの脚本家の発言が、SNSで話題になりました。
ざっくり言うと「日本語の良さは他の言語に翻訳されたら意味が伝わらないから、自分の作品は日本人、日本語がわかる人に観てほしい」という趣旨の発言でした。
いろいろな意味で聞き捨てのならない排他的な発言だと思うと同時に、ことばを学び、教え、翻訳する身として、この「日本語の良さ」という部分について非常に考えさせられました。

日本語に限らず、すべての言語にはその国の言語でしか表現できないものや、その文化の人にしかわからない情緒というものがたしかにあると思います。
でもそのときに、その言語にしかないから「伝わらない」と切り捨ててしまうのではなく、ないからこそ歩み寄り、踏み込んでいきたいし、学習者の皆さんにもそうあってほしいです。

その言語にしかない〝なにか〟を少しでも理解したいからこそ、私たちは外国語を学ぶのだと思うのです。
このことは、韓国ドラマを字幕なしで直に聞き取りたい、推しのことばを通訳なしで聞き取りたいという動機で韓国語を学んでいる人が多いことを見ても明らかでしょう。
例え100%はわからなくても「この国ではこういう言い方をするのか」という味わい方をするのが、本当の意味で海外のコンテンツを楽しむということではないでしょうか。

それぞれの言語にはスペクトラムがあり、その違いが面白くもあり、翻訳するときの難しさでもあります。
韓国語にしかない表現、韓国語の良さ、美しさ——そしてそれを作っている韓国の方々の情緒まで、伝えられるような授業をしていきたいなと思いました。

通信422 「インボイス制度」伊藤耕一

【週刊ハンガンネット通信】第422号 (2022年12月26日発行)

インボイス制度
伊藤耕一
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最近のGoogleを見ていると日本では「インボイス制度」について騒がしく記事がアップロードされています。
このインボイス制度、すでに消費税を納税している法人や個人(課税事業者)にとっては大きな影響がないのですが、消費税を納税していない法人や個人(非課税事業者)にはとても大きな影響があります。
語学教室を運営する皆さんにも無視できない影響があると思い、個人的に思うところを書いてみたいと思います。

そもそもインボイス制度がなぜ導入されるのかはいろいろな方が記事に書いているのでここでは省きますが、非課税事業者が受け取っている「益税」の排除が主目的と私は理解しています。
「益税」は現状では合法なのですが、来年10月からは「益税が発生し得ない仕組み」になり「益税が消滅」することになります。
「益税はずるい」と考える人も多く、その面では公平になるのですが、一方で非課税事業者がインボイス制度に沿った経理処理をしようとすると、経理の手間がかなり増えることになります。
この「経理の手間の増大」が問題と考える人もいて、この手間の増加を苦に感じ「廃業が増えるのでは」と心配する人がいたりします。
その一方で売り上げ要件に該当すればインボイス制度を無視することもできるのですが、その場合「仕事と売上を失う事業者」が出る恐れがあり、結果として「廃業が増えるのでは」と危惧する人がいたりします。
一般的にはこのような問題や心配があるのですが、語学教室を運営する法人や個人には具体的にどんな影響がありそうなのでしょうか。

課税事業者への影響
すでに消費税を納税している課税事業者には大きな影響はないのですが、大きくない影響としては下記のようなものが考えられます。
・「適格請求書(インボイス)」を発行しなければならない。(システムを使えば一定の手間は省けますが、システム利用料等が発生します。)
・非課税事業者と取引(講義を外注している講師が非課税事業者であるなど)すると、自身の消費税負担額が増える。(キャッシュフローが悪化する。)

非課税事業者への影響
課税事業者である語学学校等と業務委託契約等に基づいて講義する講師(非課税事業者)は、契約書に消費税金額が記載されていないことが多いと思います。
この場合「非課税事業者は消費税を受け取っていないと認識できる」「語学学校等は消費税を支払ったものとして経理処理できる(仕入税額控除)」という矛盾した経理処理が今は認められています。
この矛盾が「益税」の源泉です。
これが今後は次のように変わり、結果として大きな影響が出る可能性があります。

①非課税事業者が来年10月以降も非課税事業者であることを選択した場合
・非課税事業者は「適格請求書(インボイス)」を発行できないので「普通の請求書」を発行する。
・課税事業者は「普通の請求書」を受け取っても「仕入税額控除」できず、消費税の納税金額が増えキャッシュフローが悪化してしまうので、課税事業者は非課税事業者との取引をやめる可能性がある。
・または消費税分の値下げを非課税事業者に要請する可能性がある。
・非課税事業者は、取引停止による売上減少と値下げによる売上減少の影響を受ける可能性がある。

②非課税事業者が来年10月以降、課税事業者になることを選択した場合
・課税事業者となれば「適格請求書(インボイス)」を発行できる。
・課税事業者は「適格請求書(インボイス)」を受け取れば「仕入税額控除」できるので、顧客は取引(講師の依頼)を続ける可能性が高い。
・消費税が含まれた講師委託料を受け取っても、そのうちの10%は「預り消費税」であり、講師委託料の総額が同額である場合、実質的な売上金額(収入)は減少する可能性がある。
・経費(交通費や教材費)に含まれる「仮払消費税」と上記「預り消費税」を相殺する経理処理が新たに発生し、相殺後の消費税を納めなければならなくなる。(この相殺後の消費税が「益税」だった金額)
・この経理処理はかなりの手間がかかるので、新たに経理ソフトを使ったり、税理士にその処理をお願いしたりすると今までよりも経費が増え、手元に残るお金はその分減る。

「ずるい益税」は消滅しますが、課税事業者にも非課税事業者にも大小の影響があり、この影響が事業者の手間の増大や手元キャッシュの減少につながり、景気の冷え込みや廃業につながるのではないかと主張する人が増えてきたのが、騒がしい記事の原因だろうと思っています。
しかし、このような心配がある一方で、心配しないためには次のような方法も考えられます。

③非課税事業者を選択するが、顧客である学習者が全員個人である場合
・個人が受講料を支払う時は「仕入税額控除」する必要がないので、消費税が含まれているか含まれていないかは考えなくても良い。
・この場合、個々人から受講料を受け取った非課税事業者は受け取った全額を売上収入とすることができる。
・経理処理は今までと同様に、収入から費用を差し引くだけ。
・この場合はインボイス制度の影響を全く受けないため、心配する必要がない。
・課税事業者から講師を依頼されても戦略的に引き合いを断るという方法もあり得る。

④自身の講師としての存在が唯一無二であり、他に比肩する人がいない場合
これはある記事に書いてあったことですが「この先生に絶対に講師になって欲しい」といった優位性を持っている場合は、事実上インボイス制度を無視できます。
仮に顧客が課税事業者で「講師料について消費税分を安くして欲しい」と言われても「それなら仕事を引き受けません」と強く断ることができ、その課税事業者が自分以外の講師を探すことができないならば、成立するかも知れません。

⑤課税事業者を選択するが、さらに「簡易課税制度」を選択する
簡易課税制度は課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択することができます。
語学講師は「第5種事業」に該当するものと思いますが「みなし仕入率が50%」とあるので、次のような計算となります。
仮に課税売上が500万円とします。
・500万円×10%=50万円(売上に係る消費税額)
・50万円×50%=25万円(仕入控除税額)
・50万円-25万円=25万円(納税額)
このケースでは25万円を消費税として納めることになります。
この制度は「仮払消費税と預り消費税を相殺」する必要がなく、経理処理を大幅に省くことができる一方、毎年必ず消費税を納めなくてはなりません。
ですが、経理処理に要する費用(事務員や経理ソフトや税理士の費用)と本則による消費税納税額の合計を比べ、これが25万円よりも大きいならば、メリットがあるかと思います。

インボイス制度を批判する声を受けて、政府では12月になって様々な軽減措置を決めています。
インボイス制度を解説する動画を見ると、その説明は複雑多岐にわたり、私もついて行けていない部分があります。
税理士の皆さんがいろいろな動画をアップロードされていますので、そちらをご覧いただくのも良いのではないかと思います。

結構、厄介で難しい問題なのですが、我々が選んだ政権が決めてしまったことなので、従うしかありません。
約束事で書かなければならないのですが「上記は税務当局との見解と合致しない可能性があることをご了承ください。」と申し添えます。

今年は皆様にとってどんな一年だったでしょうか。
来年が良い年になることを願っております。
どうぞ良いお年をお迎えください。

通信421 「シゴトの韓国語とジェンダー問題」幡野泉

【週刊ハンガンネット通信】第422号 (2022年12月19日発行)

シゴトの韓国語とジェンダー問題
アイケーブリッジ外語学院 幡野泉
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先日、当校の出身生、受講生対象の年末イベントをオンライン形式で
開催しました。前田先生にいらして頂き、先週ご感想をお寄せ頂きました。
本当にありがとうございます。

また、先週末は前田先生の学院のスピーチ大会も拝見することができました。
熱い感動的なスピーチを聞かせていただきました。
これらの両学院の催しについて感想を述べる機会があればと思います。

さて、本日は表題のテーマを書きたいと思います。

先日メールマガジン417号でHANAの浅見さんが最新号『韓国語ジャーナル
hana Vol.46』の特集「初めてのビジネス韓国語」について書かれていました。

水平的呼称システムのこと、韓国語での面接のことなど(先日、ワーホリに
行く当校受講生の方がネットで韓国での仕事を探していると言っていました)、
時代はどんどん変化し、それに伴いビジネスマナーや言葉も変わりつつ
ありますね。

ハッとさせられることや初めて知るような情報、言葉もあり、これまで
なかった視点を持つことができました。

そして、特集の最後に、拙著『シゴトの韓国語』をご紹介くださっています。
本当にありがとうございます。

初代シゴトの韓国語を出版したのは約20年前。現在発売中のものは、
約10年前に改変を行い、新たに出版し直しました。基礎編、応用編ともに
細々と…なんとか3刷まで販を重ねました。

増刷するたびに修正すべき・したい点を出版社に伝えるのですが、それは
CD音声に関わらない部分に限られるため(最近の書籍は音声ダウンロード
等なので変わってきていると思いますが)、ここ数年、直したい
(削除したい)のにそれができず、ずっと悩んでいることがあります。

たとえば、ここに書くのもお恥ずかしいのですが、

사모님이 미인이시네요.

というような文章です。敬語を教えることが目的の文章ではありますが、
以前はそのように褒めたりするのが潤滑油になったりすることもあり
載せたと思います。

しかし、近年のジェンダー問題などを考えたとき、この例文に潜む
様々な違和感については、言うまでもありません。

ビジネスマナーや言葉遣いの更新以前に、このあたりを取り残したままに
してはいけないと思っています。

いろいろなハードルはありますが、ここに書いたからには…!ということで、
出版社の担当編集者さんと真剣に話し合おうと思います。是非、先生方の
お知恵もお貸しください。

通信420 「『English Journal』休刊のニュースに触れて」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第421号 (2022年12月15日発行)

『English Journal』休刊のニュースに触れて
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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私が以前勤めていたアルクという出版社から出ていた『English Journal』という雑誌が休刊するとのニュースに接しました。同社のリリースには次のように記されていました。
「「使える英語」「生きた英語」にこだわった本誌は、希有な教材として多くの英語学習者から支持されました。しかし、雑誌市場が加速度的に縮小する昨今、紙の定期刊行物として維持することが困難となり、休刊を決定した次第です」
実は同社ではこれに先立ち、「1000時間ヒアリングマラソン」という通信教講座の終了も決定しています。これらは50年前から先進的な英語教材を提供してきた同社を象徴する商品でもありました。
実際に日本国内で英語を熱心に学んだ人の中には、この二つの教材のお世話になった人が少なくないと思います。20年以上前、朝鮮高校の英語教師だった私も数年にわたってこの通信講座を受講していました。英語圏から非英語圏まで多様な分野の人々への英語インタビュー音声を収めたカセットテープ、その音声を書き起こした記事と対訳の冊子、さらに『English Journal』が毎月送られてきました。当初の実力ではナチュラルスピードの音声に全くついていけず、何とか聞き取れるようになろうと、テープがすり切れんばかりに何度も聞いたものです。
後日私がこの出版社の入社試験を受けたのは、これらの教材を通じてこの出版社に強い信頼を寄せていたからに他なりません。幸いにも英語の編集者として中途採用された私は、ここで本の仕事をゼロから覚え、2002年に『韓国語ジャーナル』という雑誌を創刊しました。『韓国語ジャーナル』では生きた韓国語にこだわりました。出演者が原稿を読み上げるのではなく、台本を基にインタビューや対話、トークを行う、ラジオ番組形式の韓国語音声を付録CDに収め(ただし司会・進行は、標準的な韓国語を駆使するプロのアナウンサーです)、それを書き起こした原稿と対訳を提供しました。このように手加減のない自然な韓国語を聞かせる教材は当時としては他に例のないものだったと思います。これらの発想の源泉はすべて先ほどの「ヒアリングマラソン」『English Journal』にありました。現在の私の出版社から出ている『hana』でも、CDがMP3ダウンロードへと形を変えはしましたが、生きた韓国語を聞かせるという音声のコンセプトをそのまま受け継いでいます。
この通信講座と雑誌がなかったら、『韓国語ジャーナル』『hana』は間違いなく生まれていませんでした。『韓国語ジャーナル』の創刊から今日までの20年間ずっと韓国語出版の世界で生きてきた私も、これらがなかったらどんな違う人生を歩いていたかなと思うときがあります。

通信419 「アイケーブリッジさんの年末イベントで感じたこと」前田真彦

【週刊ハンガンネット通信】第419号 (2022年12月12日発行)

アイケーブリッジさんの年末イベントで感じたこと
ミレ韓国語学院 前田真彦
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10日(土)アイケ―ブリッジの年末イベントを見学させていただきました。
ゲーム、スピーチ、先生方の座談会、字幕翻訳、翻訳コンクールの表彰、そして、同時通訳のパーフォマンスなど、多彩な内容。
そしてリアル参加、ZOOM参加、録画による発表など、多様な参加・発表の形態を見ることができました。

それぞれレベルが高く、普段から先生方が受講生をしっかりと鍛えているのがよく分かりました。

以前、アイケーブリッジのスピーチ大会に寄せていただいたときに
「その学院のドアを入れば、その学院の普段の教育が分かる。アイケーブリッジさんは知的でエレガントだ」と講評で話させてもらったことがあります。
興味意味深いことに、ZOOMによる視聴でも、そのことを感じました。
その学院のカラーはオンラインでも出るのですね。

ミレ韓国語学院も17日(土)13時から、スピーチ大会です。
「年間行事」についてハンガンネットで報告したことがありますが、
年間行事は、その学院の普段の授業の総まとめのような位置づけです。

ハンガンネットセミナーのような発表の場も定期的にあるのが望ましいですが、
それぞれの学院の年間行事や普段の授業の見学など、「学び合いの時間」があってもいいですね。

幡野先生、アイケーブリッジの先生方、ありがとうございました。

通信418 「ファンミ」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第418号 (2022年12月5日発行)

ファンミ
ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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先月11月19日に韓国女優パク・ウンビン 박은빈 のファンミーティングに行ってきました。
今年の大ヒットドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 이상한 변호사 우영우」の主人公ウ・ヨンウ効果で追加公演も出て、当日の会場、府中の森芸術劇場どりーむホールは満員の熱気に包まれていました。

パク・ウンビンさんのデビューは4歳で、もはや芸歴27年であるとか、ウヨンウ・ドラマの最初の回転扉のシーンは撮影に3日間かかった、などなど、初めて知るエピソードに驚き、そしてなんといっても、素のパク・ウンビンさんが半分ほどウ・ヨンウぽくてその絶妙な雰囲気がかわいさ倍増でした。

これまで様々な役どころで魅了してきたパク・ウンビンさんはここまでファンでいてくれた人たちに対し、ドラマ「ウヨンウ」のおかげでやっと皆さんに会いに来ることができた、と感無量の様子でした。

また私自身は韓国芸能人のファンミーティングは初参加で、そのフォーマットも見どころでした。

パク・ウンビンさんの現在の心境を2択で選ぶクイズ。
会場の全員が立ち上がり、観客は2択を〇×のポーズで選択、パク・ウンビンさんが選んだほうでなければ着席でそこでゲーム終了。パク・ウンビンさんが選んだほうと合致すれば勝ち残り、立ったままで次の問題に進めます。
こうしたやり方でも10問ほどで2千人の中から勝ち残りプレゼントがもらえる3人まで絞れるのも、なるほど、数学的にそういうものなんだあ、と感心していました。

早々とゲームに敗退した私は会場で出題された2択問題をすべてメモしました。
これを今後授業で使おうと思ったからです。
「さあ、パク・ウンビンと同じ性格の人は誰だ?クイズ!」
「きょうからあなたもパク・ウンビンになれるクイズ!」などの方法でやると盛り上がると思います。
また韓国語語彙の増加効果も期待しています。

それではここで最初に出題された一問を紹介します。
パク・ウンビンさん、次のドラマは2択ならどちらを選ぶ?
みなさんも選んでみてください。
로맨스 vs 코미디

答えは、次回の私の執筆の折に書きますね。^^

通信417 「大きく変化しつつある韓国の企業文化」浅見綾子

【週刊ハンガンネット通信】第417号 (2022年11月24日発行)

「大きく変化しつつある韓国の企業文化」
株式会社HANA 浅見綾子
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韓国語を学んだその先は?
将来韓国語を使って仕事をしたい、今の会社で韓国に関連した部署に異動したい、など将来韓国語を使って仕事をしたいと思って勉強している方は多いかと思います。そこで12月発売『韓国語学習ジャーナルhana Vol. 46』の特集は「初めてのビジネス韓国語」。その原稿を読んでいて感じたのですが、どんどん発展している韓国、当たり前ですが企業文化もかなり変わってきているようです。

ご存知の先生方も多いかと思いますが「수평적 호칭 제도(水平的呼称システム)」の導入です。既存の役職をなくし、役職員間の呼称を프로、님などに統一させる制度で、CJグループが2000年に님の呼称を初めて導入したのを皮切りに、ここ数年にわたって韓国の大企業を中心にフラットな組織文化を目指して本格的に導入され始めました。

チーム長、グループ長、役員などに限って例外的に役職を呼ぶことが許されているようです。制度導入当初は新しい呼称に慣れず、既存の呼称を交ぜて呼んだりもしていましたが、現在ではかなり定着してきているそうです。昇進の可否も本人以外には公開しないほどだとか。

他には、同僚の結婚式のご祝儀の値段。
結婚式に参加する場合は5万、7万、10万ウォンのどれかを出せばよいですが、親しい関係なら7万ウォン、二人で行くなら10万ウォンを。数年前より食事代が上がり、一人当たりの食事代が5万ウォンを超える式場が多いため、ご祝儀の金額も少し上がったそうです(もちろんソウル以外で状況が異なる、企業によっては当てはまらない場合もあります)。

ドラマ「恋愛ワードを入力してください~Search WWW~(검색어를 입력하세요www)」(2019)は変化しつつある韓国企業文化のことがたくさん題材にあげられています。とても参考になりますので、ぜひ先生方にも見ていただきたいドラマです。ネットフリックスで見ることが可能です。ちなみに『韓国語学習ジャーナルhana Vol. 44』の学習連載「ドラマで伸ばす韓国語」でも「恋愛ワードを入力してください」を取り上げ、聞き取り問題に、役職を付けずお互いのニックネームを紹介し合うシーンを取り上げています。ぜひ『hana Vol. 44』をご購入頂き、ドラマページを学習素材としてもお使いください。最後は営業になってしまいました。すみません!

hana44_drama

通信416 「 発音うまくなりたい」寄田晴代

【週刊ハンガンネット通信】第416号 (2022年11月21日発行)

発音うまくなりたい
寄田晴代
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12月4日(日)13時からのハンガンネットセミナーは「音声添削実習」です。
受講生の発音指導のための音声添削を、ワークショップ形式で前田真彦先生と一緒にやってみます。

ここで、自分は発音をどのように学んできたのか思い出してみました。
私が韓国語を勉強し始めた頃は、本屋に行ってもテキストが2~3種類くらいしかなく、音声教材もありませんでした。それで、もっぱらテキストを書き写しまくり、単語を書きまくり、勝手に音読しまくり、という方法で独学していました。大学の授業中も、授業と全く関係ないハングル文字をひたすら書いている私の手元を見て「それ何?」と隣の席の人によく聞かれたものでした。

文法や単語はどんどん覚えていい調子だったのですが、音声教材なしに勝手に音読を続けたため(だと思います)自由気ままなイントネーションと発音を身につけてしまいました。
大学生の頃は年に2回、毎年韓国でボランティア活動に参加し韓国人の友人もたくさんできていました。彼ら彼女らと韓国語で話すときは未熟ながらもそんなに困らなかったので、イケている、でもなんか違うかも私の話し方、と思っていました。
通じるけれど、ときどき尋ね返されたり、少し話すとすぐ日本人だとバレる自分の韓国語をなんとかしたいと思っていました。ネイティブスピーカーのように格好よく話したかったのです。

韓国語の抑揚や発音についての書籍に出会うのはそれからずっと後のことです。
何の知識もなかった私が思いついたのは真似することでした。聞こえる韓国語をとにかく真似する。歌を真似して歌うように、音の高低から強弱から真似する。それをしつこく続けていました。
韓国に住んでいたときは、地下鉄やバスの中で聞こえる会話も真似してぶつぶつつぶやいていました。(これが癖になって日本語で話しかけられても真似をしてオウム返しに答えてしまうという変な時期がありました)

ただ、この方法の欠点は、本当に同じように話せているのか、録音して聞いてみないとわからないところです。そして、どうやって同じ発音になるのかを勘に頼って試行錯誤するので、時間がかかります。
それでも、真似しようと一生懸命聞くことにも集中した結果、韓国語を話すときのリズムや日本語と違う息の出し方などに気づくことができました。(今でも韓国ドラマを見ながらつい真似してしまい、家族にうるさがられています。)

以前、韓国語の単語を読み上げて、同僚の韓国人の先生たちに発音をチェックしてもらったことがあります。
ㅇやㄱ の終声を指摘されるかと思っていたら「『감자』 のㅁが甘い」と言われ、自分じゃわからんもんやな~と改めて思いました。そう、誰かに指摘されなくてはわからないのです。

また、自分が上達するためにあれこれ工夫し努力できても、人を指導するのはまた別物ですよね。
発音をことばだけで説明するのはなかなか難しいと感じています。
受講生が納得できるように直すべきところを気づかせ指導するのに、音声添削をうまく活用できるようになれたら指導しやすくなるのでは、と思っています。

12月のハンガンネットセミナー、みなさまのご参加をお待ちしています。

通信415 「’맵다’ と〝辛い〟」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第415号 (2022年11月7日発行)

‘맵다’ と〝辛い〟
加藤慧
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日本語と韓国語の単語の意味が一対一で対応するとは限らないというのは、授業をする上でも翻訳をする上でも重要な点です。

今回約3年8か月ぶりにソウルに行ってきたのですが、改めてそれを実感する出来事がありました。

등갈비찜 のお店で、辛さを’매운 맛 / 덜 매운 맛 / 안 매운 맛’ の3段階から選ぶことができました。
皆さんはどのレベルの辛さを想像しますか?
店員さんが ‘안 매운 맛이 신라면정도예요.’ と説明してくれました。
辛ラーメンレベルを「辛くない」と表現する日本語話者はおそらくいないでしょう。
韓国人の’안 맵다’ を信用してはいけないことは知っていたつもりでしたが、ここまでとは思いませんでした。

(ちなみに’아예 안 매운 맛’ の ‘간장 맛’ もあるとのことでした)

単純に、韓国人と日本人の辛さの基準の違いととらえることもできると思います。
でも私にはそれだけではなく、「辛い」と’맵다’ の感覚には微妙な違いがあるように思えるのです。
例えば韓国語話者と同じ料理を食べていて’매워?’ と聞かれるとき、味が辛いかどうかはわかっているはずなので、それはとても主観的な質問で、「あなたにとって辛いか」を聞いていると思っています。
また、友人が香辛料の匂いを嗅いで’맵다’ と言っていたのも印象的でした。
日本語の「辛い」は、匂いにはあまり使わないのではないでしょうか。
(これは個人的な感覚かもしれないので、先生方のご意見を伺いたいです)
同じ日本語の「辛い」でも、関西地方では’짜다’ の意味になりますね。
また、ワサビの辛さは’코가 맵다’ や ‘코가 찡하다’ などと表現されます。
このように考え出すと、なかなか奥が深いです。

特に初級の授業ではどうしても、単語の持つ感覚の違いまで一緒に教えることは難しいとはいえ、常に意識しておきたいところだなと改めて感じました。

ちなみに’안 매운 맛’ の 등갈비찜 はお肉がほろほろで本当に美味しかったです!そして普通に辛かったです。