通信481 「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第481号 (2024年3月18日発行)

「ICTツール Kahoot(カフート)で韓国語学習」
奈良美香 下関市立大学 他
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皆さんは、ICTツールを活用した授業を実践されたことがありますか? 教育の情報化に伴い、様々な教育用アプリが開発されており、学習活動もICTツールを活用することで、授業内容の幅が広がり、活気をもたらすことが可能となります。今回、私が授業で使用しましたツールをご紹介したいと思います。

教育用クイズアプリ「Kahoot!(カフート)」は、ノルウェーで開発された教育アプリで、クイズ(4択問題や◯✖問題など)をオンラインで、ゲーム感覚で学習を進めることのできるアプリです。主催者は大型テレビなどにクイズの問題を映し、参加者は手持ちのスマホやタブレット端末から解答していきます。参加者は、ニックネームでも実名でも、どちらでも登録可能です。クイズに正解すると、速かった順にポイントが加算され、1問ごとに獲得した総ポイントが多い順に上位3位が画面に表示されるため、学習者の競争意欲を刺激し教室内は盛り上がります。また、利用が終わると即座に、設問ごとに正答数、回答者が選んだ選択肢とその割合などのデータ集計ができる仕組みになっているので、すぐにフィードバックすることも可能です。

授業では、大学1年生のクラスを対象にカフートに慣れてもらうため、私が作成した復習クイズ問題に挑戦してもらいました。初めてカフートクイズを体験する学生が多く、設問ごとに発表されるランキング結果に大盛り上がりでした。そして、このカフートを使用して学生にクイズ問題と解説用スライドを作成し発表するグループ課題を実施しました。出題内容は、授業で学習した範囲でひとりにつき3問は作成するように指示し、グループで2問までなら、芸能問題や文化関連問題の作成も許可しました。発表後は自己評価と相互評価を実施しましたが、

・「問題を作る過程で、授業で習ったことを復習し、間違えやすいポイントがどこなのかを考えることができて韓国語の理解がより深まった。」

・「ただクイズするだけでなく、スコアを競うのも問題に対してやる気が出て、いいシステムだと思いました。」

・「他の人の問題を解くのは自分が考え付かなかったような問題や、面白い問題、動画や画像を使った問題など沢山あって、やっていてとても楽しく、ゲーム感覚で出来るので集中して問題を解こうとするし、頭に残るのでとても勉強になりました。」

などの回答があり、復習するのに最適なツールであると確認できました。「復習用」のツールと位置付けると「初級」、「中級」、「上級」のどの水準でも対応可能なため、韓国語レベルに適したクイズ問題の作成ができます。

このカフートは大学だけでなく社会人向けの講座でも対応可能です。私の場合、受講生が年配の方々なので、クイズ問題と解答解説を作成し紙面で提出してもらい、私がカフートアプリに入力し、授業でクイズ大会を実施しました。ほとんどの方がスマホをお持ちなので、支障なくクイズに参加できますが、お持ちでない方には、手持ちのタブレットを貸出して、実施しました。設問ごとに表示される成績上位ランキングに一喜一憂しながら、盛り上がる授業となり、受講生の方々は、「クイズ問題を自身で考えることは新鮮で、難易度を考えるのが難しかったが、楽しく復習することができた」と感想を頂きました。ただ、実施後の講師側の気づきとして、受講生が年配の方々なので回答までの制限時間を長めに設置すべきだったと反省しました。

このカフートクイズを実施するには、講師側のアカウント登録が必要となります。有料版もありますが、無料版でも十分対応可能です。登録までの流れを紹介しているサイトのリンクを貼りますので、興味のある方々は是非、ご覧になってください。

参考サイト

カフート完全ガイド!作り方遊び方を徹底解説 | サンソンの「レクで学級をHappyに!」 (sanson-rec.com)

また、受講生が作成したクイズ問題からハンガンネット向けに選抜したカフートクイズを作成しましたので、興味のある方は、是非、挑戦してみてください。下記のURLをクリックし、表示されたQRコードをスマホで読み込むとクイズに参加できます。2024年3月24日(日)午後8時まで、回答を受け付け、期限を経過すると成績上位ランキングが表示されますので、ご確認されてください。果たして、順位の結果はいかに??

Kahootクイズ↓

https://kahoot.it/challenge/02682632?challenge-id=949fd9b2-2eb2-4a93-8510-d72c5824434e_1710751916560

末尾になりますが、今回の記事を持ちまして私の投稿は最後となります。つたない文章ではありましたが、授業で実践した内容が少しでも皆様の参考になれば幸いです。今後も学生の学習意欲を刺激するようなアプローチの模索のため、私の奮闘はまだまだ続きそうです。1年間、お読みいただきましてありがとうございました。

通信471 「推しとK-popと韓国語」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第471号 (2024年1月8日発行)

「推しとK-popと韓国語」
奈良美香 下関市立大学 他
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  明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 2023年度のNHK紅白歌合戦にも韓国アイドルが数組出演するなどK-popの勢いはとどまることを知りません。韓国語に興味を持ったきっかけとしても「推しが話している内容を日本語字幕なしで理解したい」という方もいるでしょう。私の家族もボーイズアイドルグループのファンになり、毎日推しグループの曲を聞いています。(私も聞かされています。)また、お目当ての推しが出演する歌番組やバラエティー番組を視聴しながら、表現を質問してくるようになりました。家族との会話の中で、覚えたてのフレーズで話す姿を見ていると、「推し」の威力を実感します。

 皆様も、授業でK-popを使用しての聴き取り練習を実施した経験はありませんか?私も授業の状況に合わせて、私が選んだ曲で聴き取り練習をします。先日も1年生の授業で、私の好きなチョ・ソンモさんのデビュー曲「To Heaven」の歌詞を使用しての聴解練習をしました。私が留学中の1998年に大ヒットした曲で、バラード調で聴き取りやすく、MVもイ・ビョンホンさんが出演したショートストーリ仕立ての内容が独特なため選曲しました。MV視聴後にその当時の韓国の状況と留学中のこぼれ話をしたら、学生達は興味深く聞いていました。

2年生の授業では、学生が<曲選択→文法説明→文法問題→穴埋めリスニング問題>までをひとりで作成して、発表するK-pop課題を実施しました。学生が選曲し、その歌詞から文法を1つ選び、説明後に、文法問題と穴埋めリスニング問題までを発表する内容です。発表後は自己評価と相互評価を実施しました。質問項目の中で「k-pop課題は韓国語学習に役立つと思いますか?」とたずねたところ、全員が「強くそう思う」と回答していました。その理由に、

・「文法を自分で調べ説明できるようにすることで、頭に入りやすくなり、歌を活用することで楽しく覚えられるから。」
・「今まで聞き流していた歌詞を楽しく勉強することができるから。」
・「歌で学習することで楽しく覚えることができ、聞き取る力も向上すると思います。」
などの回答がありました。

 学生が主体となり活動するK-pop課題は、好きな楽曲による韓国語学習であるため、「楽しみながら学べる」というアプローチが可能となります。また、教師も学生の発表からさまざまなタイプのK-popに触れることで、刺激を受け、授業で使えそうなネタを見つけ出すことも可能となります。是非、皆様も機会がありましたら、k-pop課題を実践してみてはいかがでしょうか?

 次回はどの楽曲で、学生が楽しみながら学べる内容を作成しようかと私の奮闘はまだまだ続きます。

参考までに、チョ・ソンモさんの「To Heaven」のリンクを貼りますので、興味のある方は是非、ご覧になってみてください。

通信462「映像選びも楽じゃない」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第462号 (2023年10月24日発行)

「映像選びも楽じゃない」
下関市立大学 他 奈良美香
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会員の先生方皆様も、K-popやドラマ、映画等を活用して授業をされたご経験があるかと思います。学習者からすると楽しく学べるという印象があるらしく、授業での要望が多いため、私も取り入れたりします。

以前、韓国ドラマ「私のIDはカンナム美人」の第1話を使用して映像授業を実施しました。主人公の男性がイケメンで学生受けする点、韓国の外見至上主義、美への追及意識、美容整形に関する意識が垣間見れる点、大学のMTの様子が見れる点からこのドラマを選びました。

授業では、映像を見せる前に、あらすじを簡単に述べ、登場人物の相関図を説明します。語彙説明では①강남언니, ②오크, ③티(가)나다, ④모태솔로, ⑤18학번を紹介し、問題シートを作成しドラマを見ながら答えを見つけるようにと指示します。また、聞き取れた単語や表現を5個以上は書くようにとも伝えます。ドラマ鑑賞後は、この映像を選択した趣旨を説明し、問題シートの答え合わせとドラマに関する感想を書いてもらい提出させます。

この内容を理工系の大学1年生の後期の授業で実施しました。回収した感想には、「韓国の大学生は19歳からお酒が飲めるのか」、「美に対する意識がすごい」、「見た目で判断されるのがつらい」、「MTが楽しそう」などの感想がある中、一人だけ「興味のないドラマを見せられ、面白くなくつまらなかった」という感想がありました。このコメントに、正直ショックを受けました。視聴後にこのドラマを選択した趣旨を説明しましたが、伝わっておらず、人それぞれ好みがあるため、全員が満足できる映像内容を選択する難しさを痛感しました。

そこで、第2弾としてYahooニュースで紹介された「韓国七放世代の絶望」という5分程度の映像を使用しての授業を実施しました。韓国での就職難、外見至上主義、企業間格差などの内容が凝縮された映像に学生達は衝撃を受けたようでした。ナレーターが日本語で紹介するので、語学よりは文化紹介に適切な映像だと思います。

視聴後に、韓国での就職事情や「三放世代」から「七放世代」のキーワードについて説明した後に、感想を提出してもらいました。回収した感想からは、「大企業と中小企業の格差の違いに驚いた」、「整形してまで就職活動をするのに驚いた」、「若者が大企業を目指すために多くのことを諦めていることを知り悲しくなった」などが大半を占めており、マイナス意見はなかったのでホッとした記憶があります。

学習内容の用途にもよりますが、映像を使用して何を学習者に伝えたいのかという意識が非常に大切だと思います。その趣旨を反映させた映像を選択し授業を展開しますが、学習者の反応が良い時と悪い時もあり、なかなか一筋縄ではいきません。私の奮闘の日々はまだまだ続きそうです。

会員の皆様も授業でお薦めの映像がありましたら、是非、教えて頂ければと思います。

参考までにYahooニュースのリンクを貼りますので、興味のある方は是非、ご覧になってみてください。

夢も仕事も恋愛も手が届かない 韓国「七放世代」の絶望
https://news.yahoo.co.jp/feature/91/

通信452 「夏休み前に…」奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第452号 (2023年8月7日発行)

「夏休み前に… 」 
下関市立大学 他 奈良美香
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時期的に期末試験の採点及び成績判定処理に追われる頭の痛い毎日となりました。期末試験の点数や平常点など、総合的に判断した結果、「不可」認定を与えなければならないケースの場合は、心が穏やかではありません。大学で授業を担当されている先生方は、同様な状況ではないでしょうか。

新学期がスタートする際に、毎回初回の授業で学生に「今学期の到達目標を決めよう!」というシートを作成させます。その内容は

① 今学期の到達目標を3つ書いてください。
② 目標を達成するための学習目標または方法を書いてください。
③ 自己紹介を書いてください。

上記の3つを作成後に、自己紹介も兼ねながら①の到達目標から一番に達成させたいもの1つだけ発表させ、「有限実行」できるように今学期終了までお互いに頑張りましょうと動機付けをし、15回目の最後の授業の際にその用紙を学生に返却し、振り返りシートを作成させます。授業開講時に設定した自身の到達目標を達成できたかどうか、反省点などの自己評価と授業に関しての感想も書いてもらいます。回収した内容には、「目標を2つは達成できた」、「授業の活動を通して簡単な文を韓国語で話せるようになった」、「読めるようになったが単語の意味を書くのは難しい」、「自分が当たるところを答えるのに必死で、他の問題の解説をまともに聞けてない」など、この作業を通して学生本人も、当初の目標設定時と現在の状況を比べ、今学期の韓国語学習に対して具体的に振り返ることができたようです。私自身も回収した内容から、授業への評価がわかり、励まされ今後の改善点などの参考になります。この結果をふまえ、後期からスタートする授業準備に備えたいと思いますが、いよいよ大学は夏休みに入ります。教養科目になると、後期の初日には、韓国語力がリセットされているケースがあるので、学生の韓国語学習のモチベーションがアップできるようなアプローチを考えないといけません。私の奮闘はまだまだ続きそうです。

猛暑が続きますので、先生方みな様もお身体にはご自愛くださいませ。

通信442「情熱の境界線」 奈良美香

【週刊ハンガンネット通信】第442号 (2023年5月29日発行)

情熱の境界線
下関市立大学他 奈良美香
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ハンガンネット 会員の皆様
はじめまして。今年度、ハンガンネット通信を担当させて頂きます奈良美香と申します。
私は、現在、下関市立大学、九州工業大学、福岡県立大学と個人教室にて韓国語を教えています。韓国語教育に関して、皆様と情報を共有できればと思っておりますので、一年間どうぞよろしくお願いいたします。

私の場合、まず個人教室の韓国語講師としてスタートしました。社会人対象でしたので、受講生の方々も目的意識が強く授業も円滑に進みました。
その後、大学での授業を担当することになりましたが、学生により学習意欲も様々です。しかし韓国語を専攻科目に選んだ学生なので週に3回以上は韓国語に触れることで、進級するにつれよりレベルアップした内容で授業を展開することができました。韓国語についてより多くのことを習得してほしいと思う余り、次第に課題の質と量も増えていきましたが、幸いなことに、特に問題はなく学期を終えることができました。しかし、過去の課題の内容を再確認すると、学生への負担が多かったのではと反省しています。

2022年度からは、工学系の大学でも韓国語のクラスを担当することになりましたが、これまでの専攻科目とは違い教養科目になると、学生も週に1回の授業の上に専攻外の科目のため、習得度もかなり緩やかになり、ハングル文字が読めるまで、四苦八苦する状況です。その中で、授業中にスマホでゲームをしたり、別の科目の課題をする学生を目にすると、正直腹が立ちます。そこで、諦めて放置するのではなく、何とかして授業に巻き込むことはできないかと、試行錯誤する中で、実行しているのが、指定席にして教室内を巡回しながら学生に積極的に声かけしたり、マイクを回して必ず一度以上は発話させることです。また、簡単な韓国語フレーズを通して数人以上の学生とコミュニケーション活動を行うようにしています。その際に、大変役に立つ教材がゆう きょんみ先生による「フォーカスオンフォームで身につく。トライ!コリアン!」です。TASK中心なので、授業にすぐ活用でき、学生も楽しみながら会話練習ができるので、反応がとてもいいです。私の場合、そのTASKを超初級者向けにアレンジした内容で使用しますが、頻度が多すぎると当初に比べ反応が薄くなることもありました。過度な情熱は、かえって気持ち的にお互いマイナスになるので、需要と供給側が相互に満足する着地点に到着するのは難しいようです。私の奮闘はまだまだ続きそうです。