【週刊ハンガンネット通信】第469号 (2023年12月17日発行)
「韓国語教材のカナルビについて」を読んで
寄田晴代
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前回の加藤慧先生の通信を読んで、周囲の韓国語を学習したことのある人に、韓国語教材のカナルビについて聞いてみました。
「いいと思う」「いいと思う。ただし、ハングルを学び始めて慣れるまでの間だけ」という意見でした。
いいと思う理由は「韓国語で言えた!と思える経験が意欲につながるから」「ハングルを覚えるのが嫌にならないために」でした。
私は、文字の指導と発音指導は一体だと思っているので、カナルビに頼る癖をつけたくない派です。また、ハングルが読めない人に発音規則を教えるのは大変そうです。
韓国語のカナルビと言えば思い出すのが、昔、バックパッカーによく読まれていた旅行ガイドブックの韓国編です。국립박물(国立博物館)のカナルビが「ククリプバクムルグァン」となっていて「なんだか爆発しそうだね」と友人と話した思い出があります。
カナルビに頼ってほしくないとは思うものの、1年間毎週受講しているのにハングルが読めない学生に出会うことも実際にあり、そんなときは、読み方をカタカナで書いてもいいからやめないでほしい、と思うのも事実です。
「英語にカタカナを振ることに対する小学校教員の意識」(田中 真紀子・河合 裕美 2023)という論文に英語を指導する小学校教員の「カタカナ使用」に関する意識調査があるのですが、賛成、反対の意見を読んでみると、いずれもなるほどと思わされます。
賛成:自信のない子どもにとっては安心につながる。苦手意識を持ちづらくさせる。児童のやる気や自主的な学習に結び付く。
反対:正しい発音、音韻認識を身に着ける妨げになる。カタカナではスペルの違いに気がつかない。新しい単語に出会ったとき自力で読めない。書くことにも影響する。
教える側としては、学習を続けて上達し韓国語が使える楽しさを知ってほしい、と思うので、まずは嫌になってやめてしまわないためならカナルビもアリなのかもしれない。逆上がりができないときに「鉄棒回転サポーター」を利用するのと同じと考えればいいではないか、と思い始めているのですが、韓国に初めて行ってきた人に「韓国語は全然話せなかったけど、ハングル読めたのが嬉しかったし助かった」と言われると、やっぱりしっかりハングル覚えてもらわなきゃ、と思ったりするのです。
参考文献:英語にカタカナを振ることに対する小学校教員の意識
-賛成派と反対派の考えの相違:教員の英語力および英語指導力の自己評価との関係から-
田中真紀子・河合裕美 神田外語大学紀要第35号(2023)
