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【週刊ハンガンネット通信】第535号 (2025年6月16日発行)
「加齢と知的能力」寄田晴代
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4月に文字から始まった入門クラスでは、そろそろハングルをマスターして文法編に入っている頃でしょうか。
私が担当するおとなのクラスでは、脱落せずに最後まで通ってほしいので、ややゆっくりめに進んでいます。
しかし、ゆっくり進むからといって、ハングルをどんどん覚えられるわけではないので毎年進度のスピードに悩みます。
年齢を重ねると「覚える」ことに時間がかかる。と、いうより、何でも忘れてしまいます。
自分のことですが、新しい単語を覚えるどころか、何しに2階に上がって来たのかも覚えていないことがあります。
すべてを加齢のせいにして、仕方ないよね、と思っていたところ、知的能力の種類によっては高齢になっても向上するという嬉しい話を新聞記事でみつけたので、共有させていただきます。
知的な能力には主に2種類あるのだそうです。
一つは、情報処理スピードが当てはまる「流動性知能」、もう一つは知識や言語能力が該当する「結晶性知能」です。
後者は経験や学習によって得られる知的能力ですが、70歳ころまで伸び続けた後、ゆるやかに低下するということが、老化に関する疫学調査で明らかになったそうです。(国立長寿医療研究センターが40歳以上の住民を対象に実施。)
また、脳の灰白質という領域は10~20代でもっとも体積が大きくなり、その後ゆっくり減少して知的機能も低下していくのですが、
白質という領域は、何かを学ぶなど脳を使い続けることで体積が増えていきます。
脳には変化する力があるので、何歳になっても脳の働きは向上するのだそうです。
まさに、韓国語に取り組むおとなにとって励ましのことばではありませんか。
そして、知的な能力の維持に寄与する語学学習や楽器演奏、運動などを続けるには、スモールステップ法(少しずつ無理せず行う)、すでにある習慣と一緒に行う(歯磨き後に音読など)、楽しく取り組むこと、が脳の癖をうまく利用した方法なのだとか。
東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授によると「記憶をつかさどる海馬では年をとっても神経細胞が新しく生まれている。楽しくやる方が記憶に残りやすく、上達もしやすい」のだそうです。
やっとハングルを全部覚えたと思ったら、次々と発音変化が出てきて「このまま読んじゃだめなの?」と落胆させられる時期でもあります。楽しく記憶に残る授業で乗り越えたいです。
参考:「結晶性知能」高齢でも向上 2025年1月18日日本経済新聞
