通信548「デリケート」日下隆博

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【週刊ハンガンネット通信】第548号 (2025年9月8日発行)
「デリケート」 ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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オンラインでの月1回特別講座シリーズを2年以上継続した中で、毎月必ず受講してくれている人がふと受講をやめていることに気づくことがありました。

講座のテーマによることもあるかと思っていましたが、風の便りでその方が受講をやめた理由を教えてくれた人がいました。

それは韓国の「美容」をテーマに行った回で私が参加者に「出かける前の化粧時間」を聞いたことに不快な思いをして受講継続をやめたということでした。

これはデリケートな質問だったのかと気づかされました。

入門の授業で簡単な会話を展開する時には ‘아이’ という単語はとてもシンプルな文字構成で使いやすいのですが “아이 있어요?” を主婦層の入門者同士で聞きあう練習はなんとなく避けています。デリケートな質問になるかもしれないと考えているからですが他の先生はいかがでしょうか。

高校生の入門授業で ‘있어요’, ‘없어요’ を覚えてもらったのち ‘우유’ や ‘오이’ などのシンプルな文字構成の単語をランダムに引いてもらい当たった単語を隣の学生に「(例えば家に) “우유 있어요?”」 と聞いてみることをした時、たまたま’아이’を引いた女子生徒が隣の男子生徒に “아이 있어요? ”  と聞く形になりました。

すると聞かれた男子生徒はみるみると真っ赤な顔になり「い、い、いませんよ!」と恥ずかしそうに日本語で否定をしました。

‘아이 있어요?’ は高校生にとってもデリケートな質問になりうると認識したできごとでした。

通信547「9月1日の朝に」田附和久

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【週刊ハンガンネット通信】第547号 (2025年9月1日発行)
「9月1日の朝に」田附和久
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  朝鮮語を学び始めた当初、語順や漢字語の語彙など、日本語と朝鮮語の間にあまりに多くの共通点があることに日々驚かされましたが、一方で、発音には相違点が多いことを不思議に思いました。とりわけ印象的だったのは、日本語では「蚊(か)」と「蛾(が)」が別の語であるのに、朝鮮語母語話者にはその音の違いが聞き取れず、逆に朝鮮語では「비(雨)」と「피(血)」が別の語であるのに、日本語母語話者にはその音の違いが聞き取れず、同じ「ピ」の音に聞こえてしまう点でした。

 日本語母語話者は区別できるのに朝鮮語母語話者には区別できない対立があり、またその逆もあるという事実を通して、私は、それぞれの言語には固有の音の体系があり、そこには優劣はないこと、さらに言えば、それぞれの言語を用いる集団同士にも上下はないということを学びました。

 その経験があるがゆえに、私自身が教師として朝鮮語を教える際、子音を学ぶ単元では、両言語の母語話者が聞き分けられる音の違いを丁寧に説明しながら、その違いは優劣ではなく、両言語の話者の間にも優劣や上下関係は存在しないのだということを強調し、学習者と共有するようにしています。

 そして、朝鮮語母語話者は無声音と有声音(日本語の清音と濁音)の区別が難しいということを説明する際に、もう一つ必ず触れるのが、関東大震災後の混乱の中で朝鮮人が暴動を起こしたというデマを信じた民衆が、朝鮮人であるかどうかを調べるために「十五円五十銭」と言わせたという歴史上の出来事についてです。「十五円五十銭」というのは、日本語の清音と濁音の区別、とりわけ語頭を濁音で発音することが難しいという朝鮮語母語話者の特性に基づく「識別法」にほかなりませんでした。

 関東大震災が発生した1923年当時、日本人と朝鮮人は対等な関係にはありませんでした。支配する者と支配される者という不平等な関係の下で、罪のない多くの朝鮮人が日本人によって命を奪われましたが、その際、命を奪うかどうかを識別する材料として言語の個性の違いが用いられたのです。

 朝鮮人虐殺の惨劇から102年を経た今年の夏、ある政党の街頭演説会場で、聴衆の一人が近くの人に、「『十五円五十銭』って言ってみな」と発言した様子を映した動画が拡散しました。「十五円五十銭」という悪魔の言葉が再び息を吹き返したことに戦慄を禁じえません。

 母語ではない言語(外国語)を学ぶ目的は人それぞれです。しかし、できることならば、それは人の命を奪ったり、傷つけたりするためではなく、人の命を輝かせ、人の心に平和の砦を築くためであってほしいというのが、言語教育に携わる者としての私の切なる願いです。

 関東大震災から102年を迎える9月1日の朝、私はその思いを深く心に刻みなおします。

通信546 「文字を介さずに外国語を学ぶ」裵正烈

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【週刊ハンガンネット通信】第546号 (2025年8月25日発行)
「文字を介さずに外国語を学ぶ」裵正烈
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本通信540号で幡野先生が「韓国語をハングルを介さずに教える方法」に関して投稿されましたが、これと関連して私も自分の個人的な思い出を書きたいと思います。

「韓国語をハングルを介さずに学ぶ」のには、

1 ハングル以外の文字を使って学ぶ

2(文字を使わずに)音声言語として学ぶ

の二つがあると思います。私は上記の2に関心があります。初歩の段階でなるべく文字に頼らずに、つまり韓国語の場合すぐにハングルを導入せずに音声から学ぶ教材が作れないかとずっと考えてきました。

話は変わりますが、90年代の中頃、私は高校の教師を辞めて近所の同胞の土木会社でアルバイトをしていました。そこでの私の主な役目は、4トンダンプを運転して人や機材、残土やアスファルトなどを運ぶことでした。運転以外にもスコップを持って穴ぼこに入ったり、ショベルカー(ユンボ)を操作したり、従業員の人たちと一緒に泥まみれになって働きました。

業界の末端の会社だったので、何人かの日本人の親方を除いて従業員のほとんどは外国人です。イランの人たちが数人いたのですが、彼らはみな滞在4,5年目にもかかわらず、実に流暢な日本語を話していました。アジア系の人たちは独特のなまりがあるのですが、彼らはなまりがあまりない。日本語は日本に来てから現場でいやおうなく、あるいはテレビドラマを繰り返し見て覚えたとのこと。つまり2の方法で覚えたということになります。

ただし現場で丸覚えしただけあって丁寧語や敬語はほとんど使えず、すぐ「馬鹿野郎」と言ったりします。漢字を読める人はいない。それでどうやって日本で生活できるんだろうかと思いました。

私は社長の後輩ということもあり、こういう現場ではめずらしく親方に「烈君(れつくん。正烈君の略)」と「君付け」で呼ばれていました。それでイラン人の従業員たちからは「れつくんさん」と呼ばれました。耳で聞いた音に敬称の「〜さん」を付けたものが彼らの中での私の呼び名になったのです。

彼らの中でもサリーというイラン人とは、仕事の後にビールを飲みに行ったり(イスラム教徒なのに!)、彼の部屋で故郷のテレビ番組のVHSを見たり特に親しく過ごしました。

しばらく1時間ほど離れた現場に通っていて、その行き帰りの車の中でサリーからペルシャ語を習いました。面白がっていろいろ教えてくれるのですが、なかなか一度で記憶できず、忘れてはまた教えてもらって覚えるということを繰り返しました。

すぐ忘れてしまう原因として、運転をしているのでメモを取れなかったことが挙げられます。カタカナでもアルファベットでも何でも、思い出すための記号でもあれば復習ができるのですが…、聞いただけだとすぐ忘れてしまうんですよね。あるいは録音があれば、繰り返し聞いてもっと効率よく覚えられるのにと思いつつ、忘れたことを何度も聞き返してようやく覚えました。

そんなある日、イラン人の新人が会社に来ました。ここぞとばかりに「ショマ ダル シェルチャテ ヤマダ カール ミコニード?(君はヤマダ建設で働いているの? ※フリガナはテキトー)」と習った言葉で話しかけると、彼は目をパチクリさせてビックリしていました。にわか仕込みのペルシャ語ですが、聞き取ったとおり話すことでそれなりに通じたのだと思います。

その後私はある出版社に中途採用され、このバイトも実質1年ほどで終了しました。サリーとはたまに会っていましたが、新しい職場は昼も夜も休日もないような編集部だったので、だんだん疎遠になり、しばらくして新聞の余白に書いたテヘランの電話番号を私に渡して彼は帰国してしまいました。

私のペルシャ語学習もそこから先に進むことはなく、覚えた言葉はあらかた忘れてしまいましたが、今でもいくつかのフレーズは口に出すことができます。

こんな個人的な体験もあってか、次にどこかの言葉を学ぶときは、できるだけ文字に頼らずに学んでみたいと考えています(と思いつつ、はや30数年)。韓国語の語学書を作る立場としても、音声だけを繰り返し聞いて入門レベルの言葉を覚えられる教材が作れないかとずっと考えているのですが、「文字を介さない」という方法が本を作る出版社の仕事と根本的に矛盾していることもあって、いまだ実現の見込みは立っていません。

通信545「編集者って、どこを見てるの?〜企画を検討しやすくするために〜」浅見綾子

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【週刊ハンガンネット通信】第545号 (2025年8月18日発行)
「編集者って、どこを見てるの?〜企画を検討しやすくするために〜」浅見綾子
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先生方、こんにちは。
韓国語教材専門出版社HANAの浅見綾子です。

今回はスクールの担当ではなく、出版の立場から通信をお届けしたいと思います。

韓国語の先生方にも関係のある内容かと存じますので、ご興味のある先生はぜひ参考にしていただけましたら幸いです。

韓国語教材の出版をご希望される先生から、弊社にありがたいことに企画のご提案メールをいただくことがあります。熱意あるご提案を拝見するたびに、韓国語教育の現場で培われた知見やアイデアの豊かさに、深く感銘を受けております。

ただ時折、企画の内容以前の段階で、編集部として少し戸惑ってしまうことがあります。

内容自体は非常に魅力的であっても、「このままでは編集作業が難航しそうだな……」と感じてしまうケースがあるのです。せっかくの良い企画が、伝え方ひとつで検討のテーブルに乗らないのは、本当にもったいないことだと思います。

そこで今回は、出版部の立場から、企画をご提案いただく際に「これが揃っていると編集部として非常に検討しやすい」というポイントをお伝えしたいと思います。

出版にご興味をお持ちの先生方に、少しでも参考になれば幸いです。

企画メールに添付していただきたい3つの資料

1.企画書

企画の全体像をまとめた資料です。出版業界で決まったフォーマットがあるわけではありませんので、ネットで「書籍 企画書」などと検索して出てくる一般的な形式で問題ありません。

以下のような項目が含まれていると、企画の意図や方向性が明確に伝わりやすくなります。

  • 書名(案)
  • 企画趣旨・背景
  • 主な内容(全体構成の概要など)
  • 想定読者(ターゲット層)
  • 類書との違いや差別化ポイント
  • 著者プロフィール
  • その他アピールしたい点(こだわり、想い、教育現場での実績など)

企画書をまとめることで、ご自身の中でも全体像が整理され、「意外と見えていなかった点」に気づけることも多くあります。

2.目次(案)

全体構成を確認するために不可欠な資料です。

たとえ暫定的なものであっても、編集側としては書籍のボリューム感や内容の流れを把握しやすくなりますし、ご自身の執筆計画を立てるうえでも役立ちます。

3.サンプル原稿(1〜2課分程度)

「この本が実際に世に出たとき、どのような内容になるのか」を具体的にイメージするための材料です。

体裁や完成度は問いませんので、あくまで「たたき台」としてお送りいただいて構いません。

この3点が揃っていると、企画全体を多角的に把握しやすくなり、編集部としても前向きに検討しやすくなります。

一方で、原稿だけ、あるいはアイデアのみのご提案ですと、「ターゲットは誰か」「既存の類書とどう違うのか」「なぜこの本を今出すのか」といった視点が見えにくく、検討に時間がかかったり、企画意図のすれ違いが生じやすくなってしまいます。

現場でのご経験や、生徒さんとのやりとりから生まれた教材のアイデアは、まさに実践的なニーズの結晶だと思います。

それを「本」という形に落とし込むためには、“伝え方”の部分でも少し工夫をしていただけると、より多くの読者に届く一冊になるはずです。

もし今後、「いつか自分のアイデアを教材にしてみたい」とお考えの先生がいらっしゃいましたら、ぜひご参考にしていただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

通信544「音声だけで外国語習得?」寄田晴代

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【週刊ハンガンネット通信】第544号 (2025年8月13日発行)
「音声だけで外国語習得?」寄田晴代
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 540号幡野先生の「ハングルを介さずに韓国語を教えられるか上達するか」を読んだとき、そんな人が自分のクラスに来たらどうするだろうか、と考えてみました。

1.学習の目的、韓国語を学んで何をしたいか、を聞く。(旅行で使いたい、韓国人の友人とおしゃべりを楽しみたい、K-popをカッコよく歌いたい→これくらいならハングルを知らなくてもできるかも)

2.これ以外のことをしたいなら、将来的にハングルを読む必要が出てくるのでは、と説明する。例えば、一人で学習を発展させたい場合ハングルを読めた方がいい。なぜなら、中級以上でハングルを読めない人用のテキストを日本で見たことがないから。(では、そんなテキストがあれば売れるのでしょうか?)

以上のように、私も限定的な場合を除いて、ハングルは必要と思っていました。

確かに韓国ドラマを見ていただけで、聞いたり話したりできるようになった人はいると聞きますが、それが実際どれくらい使い物になるのかは会ったことがないのでわかりません。

一方で、ハングルを覚えるのに費やす時間をもっと短くしたい。早く話せる時間に移行したい、でもまだ読めないひといるしな~というジレンマも毎年感じているので「教えなくていいならラッキー」です。

そこで、文字を介さない外国語教育について調べてみました。

韓国語をハングルを覚えずに習得しました!とSNSに上げている人たちは、大学進学したり検定試験などを受けているので、結局はハングルを学んでいます。

他の言語に関する事例も探してみました。

大阪大学 サイバーメディアセンター 言語教育支援研究部門で行われた市民講座「複言語学習のススメ」では、文字を使わない音声中心の学習で、1回の講座で3〜4言語を並行して学んでいます。

講師の発音を聞いて、受講者が真似して発音しながら学ぶのですが、学習内容(挨拶・自己紹介など)を録画し、参加者同士で共有し、講師や他の参加者から発音のフィードバックを受けます(Flipという動画共有ツールを使用)。言語は選べず、ランダムに割り当てられ、アラビア語、ウクライナ語、カザフ語、ペルシア語、モンゴル語、韓国語などを学びます。ステップ1で音声模倣学習をし、希望者はステップ2で文字を学びます。

学習効果として「音から入ることで、言語への抵抗感が少なくなる」「文字を学ぶことで、音との違いや文化的背景に気づく」などがあります。参加者の感想には「音で覚えた言葉を文字にしてみると、発音の仕組みがより理解できた」「音と文字の関係に気づいた」とありました。

東京大学とマサチューセッツ工科大学が2024年に発表した脳科学研究では、文字に頼らず、音声刺激だけで言語習得が可能であることを科学的に裏付けています。研究の題名は「多言語話者になるための脳科学的条件ー新たな言語の文法習得を司る脳部位を特定ー」で、カザフ語を使って音声と文法課題の提示のみでルールは教えない、という実験です。文法理解に関わる文法中枢という脳部位が、音声のみで文法課題を提示することでも活性化するのだそうです。どのレベルの習得が可能なのかは気になるところです。

他にも、音声感受性と英語学習能力の関係についての研究も興味深いものでした。(「音声の敏感さと英語学習総合能力との関係」熊本学園大学)中学生を対象に、音声識別能力(言語音・楽器音)と英語学習能力(読む・書く・聞く・話す)との相関を調査しています。結果は、音声識別能力が高いほど、英語の「読む」「書く」能力も高い傾向が見られ、「聞くこと」は言語習得の基礎であり、他の技能への転移効果が大きい、と見ています。音声中心の学習は、特に初期段階の外国語習得において非常に重要であると示唆しています。

もっとも、この研究は、被験者が48名と人数が少ないので一般化するには無理があるのですが、「聞くこと」が言語学習の基本であることを実証した先行研究を論文の中で紹介しています。(Postovsky, 1974)。

ハングルなしで、どうやって韓国語を学んでもらうか、から始まって外国語学習における音声教育の重要性を改めて認識する機会となりました。そして「文字を覚えなくていいことから心理的ハードルが下がる」という文言が資料のあちこちに出てきたのが印象的でした。ハングルをクリアしてこそ次に進める、と思っていましたが、外国語習得への道程は様々なようです。

そういえば、私が学生時代の旅行ガイドブックに、韓国の国立博物館 국립박물관のルビが「ククリプバクムルグワン」となっていたことを思い出しました。(当時、博物館爆発しそう、と友人の間で話題でした。)音声から学んでいたらこうはならなかったかもしれませんね。(もしくは発音変化の勉強不足?)

通信543「ハングルを介さない韓国語学習」加藤 慧

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【週刊ハンガンネット通信】第543号 (2025年8月4日発行)
「ハングルを介さない韓国語学習」 加藤 慧=================================================

私も伊藤先生に続き、先日の幡野先生の通信のテーマについて書いてみたいと思います。具体的には幡野先生への返信でも触れたアルファベットを用いた教育の可能性について、もう少し掘り下げてみます。

私はハングルや前回伊藤先生がご紹介くださったタイ文字などの音素文字が大好きな人間なので、ハングルはもちろん、台湾華語の発音記号である注音符号も楽しみながら覚えることができました。ただ、それが苦痛となるタイプの人にとっては、わざわざ苦労してまで覚えたくないと感じてしまうのも無理はないかもしれません。

注音符号はハングルと同様の音素文字で、例えば「你好」の場合ㄋㄧˇㄏㄠˇという表記になり、次の対応をすべて覚えていなければ発音することができません。
ㄋ→n
ㄧ→i
ㄏ→h
ㄠ→ao

これをひとつひとつ覚えるのはなかなか大変なので、台湾華語学習者のなかでも、中国の中国語と同様ピンインのみを使った学習をしている人が多い印象です。ピンインでの表記だとnǐ hǎoとなり、感覚的にも読むことが可能なためです。ただし、注音の方が発音を正確に表すことが可能と言われています。

この注音とピンインの対応を、ハングルとアルファベットの対応に置き換えてみてはどうだろうかと最近考えています。例えばpapago翻訳を使うと、次のようにハングルとアルファベットが併記されます。

한글을 외우고 싶지 않아요
hangeureul weugo sipjji anayo

これは旅行先での利用などで、ハングルを読めなくても発話することを想定されていると思います。もちろん、eu, eo などがローマ字読みに引っ張られないように発音のポイントをよく説明し練習してもらう必要が出てきますが、旅行会話くらいならなんとかなりそうです。

ちなみに日本語の場合でも、日本滞在中のK−POPアーティスト(英語・韓国語のバイリンガル)のオンライン上でのファン(母語は不明)とのやりとりにこのようなものがありました。

Yakitori naniga suki? − Zenbu sukidesu.

日本語のひらがなやカタカナは音素文字ではなく音節文字なので、また分けて考える必要があるかもしれませんが、音だけでコミュニケーションをとるという目的に限っていえば、アルファベットの使用もありなのかもしれないとは思いました。

とはいえ、ハングルのしくみがわかって読めたときのあのパズルが解けたような快感は、韓国語学習の最初の成功体験と言えるものではないでしょうか。大学の講義でも、記号にしか見えなかったハングルが読めるのがうれしく、電車や街中で見かけると意味もなく読んでは楽しんでいるというコメントをくれる学生が多くいます。その快感を知らないままでいるのはもったいないと思うので、少しだけ我慢してなんとか覚えてもらいたいなというのが本音なのでした。

ハンガンネット 納涼懇親会 2025

真夏の夜、全国の韓国語講師&これから講師を目指す人たちで、気軽に語り合いませんか?
猛暑も吹き飛ぶ、楽しいオンライン懇親会を開催します!

🔸詳細

🗓 日時 2025年8月16日(土) 19:00~21:00(Zoomにて開催)

👥 対象
• 現在、韓国語を教えている方
• 韓国語教師を目指している方
※ハンガンネットの会員・非会員を問いません

💰 参加費:無料

📝 申込方法

下記フォームよりお申し込みください。


※ZoomのURLは前日までにお送りします

🔸プログラム内容

【第1部】「失敗は成功のパパ ~わざわい転じてなすがママ~」(19:00~19:45)

人間にできて AI にできないこと。

それは「失敗」と「悩み」。しかし人間は、「失敗」や「悩み」からこそ、多くのことを学んでいるのではないでしょうか。そこで今回のテーマは、韓国語教育で悩んだこと、失敗したこと経験を共有し、お互いの「学び」につなげようという趣旨です。自分から話すネタがなければ「イイネ!」を送るだけでも OK。

「そんな悩みがあるんだ~」「それでどうしたの?」など、新鮮な驚きがきっとあるはず。ワイワイたのしく盛り上がりましょう。

〈きっかけ話者(予定)〉
• 幡野 泉(アイケーブリッジ外語学院)→「言いづらいことこそ最初に言いましょう」
• キム・スノク(koribun語学堂)→「講師たちと仲良くつきあいたい」
• 前田 真彦(ミレ韓国語学院)→「レッテル張りはしたらあかん」
• 阪堂 千津子→「時間が足りない」

【第2部】参加者同士のオンライン懇親会(19:45~20:50)

• メインルーム+複数のブレイクアウトルームをご用意!
• お好きなルームを自由に行き来できます。
• 飲んだり食べたりしながら、気軽に歓談しましょう♪

【第3部】全体での振り返り・総括タイム20:50~21:00

ご参加、お待ちしています!
暑さも吹き飛ぶ2時間、一緒に楽しいひとときを過ごしましょう🌟

通信542「ハングルを勉強したくない」伊藤耕一

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【週刊ハンガンネット通信】第541号(2025年7月28日発行)
「ハングルを勉強したくない」伊藤耕一
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幡野先生の通信を拝見し、「ハングルは一切勉強したくない、覚えたくない」との一言が私に刺さってきました。
その気持ちはとてもよく分かるなあと。

昨年、カンボジアを訪れた時に、クメール語の文字がタイ語の文字によく似ているなあと感じたことを思い出しました。
試しに両言語の文字をを書いてみると、、、
អរុណសួស្តី
สวัสดีตอนเช้า

両方とも「おはようございます」という意味で、発音をカタカナで書いてみると次のようになります。(Google翻訳で聞こえた音をカタカナで表記したものです。)
アロンスオースタイ
サワディトンチャーオ

次に、たいへん失礼ながら、ふたつの言語の文字を混ぜてみました。
អរុสวัสดีណตอนសួស្តីเช้า
残念ながら私には両言語の文字の違いを識別することができません。
私がクメール語やタイ語を学ぶことになったら、私自身も「対話はできるようになりたいが、文字は勉強したくない」と言ってしまいかねないなあと思いました。

もし私が教える立場で、両言語の文字を教えるとしたら、どのようにするだろうかと考えてみました。

少し遠回りかも知れませんが、両言語の成り立ちの歴史や、なぜこのような文字が編み出されたのかを教えてみて、少しでも文字に興味を持ってもらうのが良いような気がします。

日本語のひらがなは漢字の崩し書き、カタカナは漢字の一部の取り出しでできていて、中学校でそれを教わった時に「そうだったのか」と興味を持ったことを思い出しました。

そこで、Chat GTPに尋ねてみました。

なるほど、インドのブラーフミー文字が起源で、クメール文字がタイ文字に影響を与えたことが分かりました。
だから似ているのですね。

タイ文字は13世紀に制定され、やはりクメール文字の影響を受けていることが分かります。

両言語とも子音と母音の数が半端なく心折れそうになりそうですが、この文字を覚えたら東南アジアや南アジアといった他の言語の文字にもつながりそうで、少しやる気が出そうな気がしてきました。
「アブギダ」という文字を初めて見ましたが、まず子音を書いて母音は付加的に上下に書くシステムの文字体系の名前とのことで、これを知ってから両文字を見ると「なるほど」と思いました。

また「アブギダ」は「いろは」や「アルファベット」と同様に順番に並んだ文字の最初の4つを発音したものだそうです。
これに対するものとして「アブジャド」というものもあり、これは古代フェニキア文字が元祖で子音だけを書いて行くシステムだそうです。
すると「母音はどのように表記するの?」という疑問が生じますが、切りがないのでここまでにしたいと思います。

私自身は、韓国語を勉強するならハングルは覚えた方が良いと考えます。
どうすればハングルを勉強したいと思ってもらえるか、私も考えてみたいと思いました。

※この原稿の下書きを書いた直後に、カンボジアとタイの武力紛争のニュースが入ってきました。意図せずこのタイミングでの配信となってしまいましたが、この通信は紛争に対する特段の意図がないことを申し添えます。これ以上の拡大がないことを祈っています。

通信541「ハングルを介さずに韓国語を教えられるか上達するか」幡野泉

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【週刊ハンガンネット通信】第540号 (2025年7月21日発行)

「ハングルを介さずに韓国語を教えられるか上達するか」
アイケーブリッジ外語学院 幡野泉

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前回のハンガンネットセミナ-は5月でしたが、その時の分科会でとある先生からこんなお悩みが寄せられました。その先生は九州地方で個人で教室を開かれています。

「韓国語を話したいと受講相談にいらした方が、ハングルは一切勉強したくない覚えたくないと言っていて、どうしたらいいか困っている」と。
その時同じ分科会にいた阪堂千津子先生は、そのような要望を持つ方は少なからずいらっしゃり、教科書にすべてカタカナルビを振るなどして対処することもあるとおっしゃっていました。

私もこれまでそのような要望をいただいたことはありますし、要望うんぬんはさておき、どうしても覚えられないという方もいました。
もう20年ほど前になりますが、アラビア語と韓国語の専門家である長渡陽一先生とこの話題について話していたとき、長渡先生は、ハングルを介さずに教えることは可能ではないか、文字にこだわるのはアジア圏の人々の特徴なのではないか、とおっしゃっていました。

昨今のYoutube等の動画配信サービスやSNS等の発達で、夢中になってこれらを見て真似していたら、読み書きはできないけれどペラペラ話せるようになったという人は、若者を中心にかなり出てきました。

こういうケースとはまたちょっと違い、中年以上になってから韓国語を学びたい、学ぶ必要がある等で語学学校の門をたたき、いちから単語や文法を学んでいくのだけれど(そもそもこの方法は合致するのか?)、ハングルは用いないというケースです。このような教え方をされてきたご経験豊富な先生はいらっしゃいますか?

ちなみに、最近当校にいらっしゃった方で、仕事で韓国語が必要になり、いちから韓国語を学ぶのだけれど、必要なフレーズは音だけでどんどん覚えたいという方がいらっしゃり、一般的な教科書でカナダラから学ぶことと並行して、HANAさんの『ネイティブが最もよく使うたった30フレーズでかんたん韓国語会話』を用いています。
こちらの書籍は初心者にとって負担なく、必要最小限のフレーズで会話ができるようになっていてとても良いですね!

以上、ハングルを介さずに韓国語を「継続的に」教え、「レベルアップ」を図れている事例がありましたら、ぜひお伺いしたいです。(^-^)