通信543「ハングルを介さない韓国語学習」加藤 慧

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【週刊ハンガンネット通信】第543号 (2025年8月4日発行)
「ハングルを介さない韓国語学習」 加藤 慧=================================================

私も伊藤先生に続き、先日の幡野先生の通信のテーマについて書いてみたいと思います。具体的には幡野先生への返信でも触れたアルファベットを用いた教育の可能性について、もう少し掘り下げてみます。

私はハングルや前回伊藤先生がご紹介くださったタイ文字などの音素文字が大好きな人間なので、ハングルはもちろん、台湾華語の発音記号である注音符号も楽しみながら覚えることができました。ただ、それが苦痛となるタイプの人にとっては、わざわざ苦労してまで覚えたくないと感じてしまうのも無理はないかもしれません。

注音符号はハングルと同様の音素文字で、例えば「你好」の場合ㄋㄧˇㄏㄠˇという表記になり、次の対応をすべて覚えていなければ発音することができません。
ㄋ→n
ㄧ→i
ㄏ→h
ㄠ→ao

これをひとつひとつ覚えるのはなかなか大変なので、台湾華語学習者のなかでも、中国の中国語と同様ピンインのみを使った学習をしている人が多い印象です。ピンインでの表記だとnǐ hǎoとなり、感覚的にも読むことが可能なためです。ただし、注音の方が発音を正確に表すことが可能と言われています。

この注音とピンインの対応を、ハングルとアルファベットの対応に置き換えてみてはどうだろうかと最近考えています。例えばpapago翻訳を使うと、次のようにハングルとアルファベットが併記されます。

한글을 외우고 싶지 않아요
hangeureul weugo sipjji anayo

これは旅行先での利用などで、ハングルを読めなくても発話することを想定されていると思います。もちろん、eu, eo などがローマ字読みに引っ張られないように発音のポイントをよく説明し練習してもらう必要が出てきますが、旅行会話くらいならなんとかなりそうです。

ちなみに日本語の場合でも、日本滞在中のK−POPアーティスト(英語・韓国語のバイリンガル)のオンライン上でのファン(母語は不明)とのやりとりにこのようなものがありました。

Yakitori naniga suki? − Zenbu sukidesu.

日本語のひらがなやカタカナは音素文字ではなく音節文字なので、また分けて考える必要があるかもしれませんが、音だけでコミュニケーションをとるという目的に限っていえば、アルファベットの使用もありなのかもしれないとは思いました。

とはいえ、ハングルのしくみがわかって読めたときのあのパズルが解けたような快感は、韓国語学習の最初の成功体験と言えるものではないでしょうか。大学の講義でも、記号にしか見えなかったハングルが読めるのがうれしく、電車や街中で見かけると意味もなく読んでは楽しんでいるというコメントをくれる学生が多くいます。その快感を知らないままでいるのはもったいないと思うので、少しだけ我慢してなんとか覚えてもらいたいなというのが本音なのでした。

通信542「ハングルを勉強したくない」伊藤耕一

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【週刊ハンガンネット通信】第541号(2025年7月28日発行)
「ハングルを勉強したくない」伊藤耕一
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幡野先生の通信を拝見し、「ハングルは一切勉強したくない、覚えたくない」との一言が私に刺さってきました。
その気持ちはとてもよく分かるなあと。

昨年、カンボジアを訪れた時に、クメール語の文字がタイ語の文字によく似ているなあと感じたことを思い出しました。
試しに両言語の文字をを書いてみると、、、
អរុណសួស្តី
สวัสดีตอนเช้า

両方とも「おはようございます」という意味で、発音をカタカナで書いてみると次のようになります。(Google翻訳で聞こえた音をカタカナで表記したものです。)
アロンスオースタイ
サワディトンチャーオ

次に、たいへん失礼ながら、ふたつの言語の文字を混ぜてみました。
អរុสวัสดีណตอนសួស្តីเช้า
残念ながら私には両言語の文字の違いを識別することができません。
私がクメール語やタイ語を学ぶことになったら、私自身も「対話はできるようになりたいが、文字は勉強したくない」と言ってしまいかねないなあと思いました。

もし私が教える立場で、両言語の文字を教えるとしたら、どのようにするだろうかと考えてみました。

少し遠回りかも知れませんが、両言語の成り立ちの歴史や、なぜこのような文字が編み出されたのかを教えてみて、少しでも文字に興味を持ってもらうのが良いような気がします。

日本語のひらがなは漢字の崩し書き、カタカナは漢字の一部の取り出しでできていて、中学校でそれを教わった時に「そうだったのか」と興味を持ったことを思い出しました。

そこで、Chat GTPに尋ねてみました。

なるほど、インドのブラーフミー文字が起源で、クメール文字がタイ文字に影響を与えたことが分かりました。
だから似ているのですね。

タイ文字は13世紀に制定され、やはりクメール文字の影響を受けていることが分かります。

両言語とも子音と母音の数が半端なく心折れそうになりそうですが、この文字を覚えたら東南アジアや南アジアといった他の言語の文字にもつながりそうで、少しやる気が出そうな気がしてきました。
「アブギダ」という文字を初めて見ましたが、まず子音を書いて母音は付加的に上下に書くシステムの文字体系の名前とのことで、これを知ってから両文字を見ると「なるほど」と思いました。

また「アブギダ」は「いろは」や「アルファベット」と同様に順番に並んだ文字の最初の4つを発音したものだそうです。
これに対するものとして「アブジャド」というものもあり、これは古代フェニキア文字が元祖で子音だけを書いて行くシステムだそうです。
すると「母音はどのように表記するの?」という疑問が生じますが、切りがないのでここまでにしたいと思います。

私自身は、韓国語を勉強するならハングルは覚えた方が良いと考えます。
どうすればハングルを勉強したいと思ってもらえるか、私も考えてみたいと思いました。

※この原稿の下書きを書いた直後に、カンボジアとタイの武力紛争のニュースが入ってきました。意図せずこのタイミングでの配信となってしまいましたが、この通信は紛争に対する特段の意図がないことを申し添えます。これ以上の拡大がないことを祈っています。

通信541「ハングルを介さずに韓国語を教えられるか上達するか」幡野泉

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【週刊ハンガンネット通信】第540号 (2025年7月21日発行)

「ハングルを介さずに韓国語を教えられるか上達するか」
アイケーブリッジ外語学院 幡野泉

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前回のハンガンネットセミナ-は5月でしたが、その時の分科会でとある先生からこんなお悩みが寄せられました。その先生は九州地方で個人で教室を開かれています。

「韓国語を話したいと受講相談にいらした方が、ハングルは一切勉強したくない覚えたくないと言っていて、どうしたらいいか困っている」と。
その時同じ分科会にいた阪堂千津子先生は、そのような要望を持つ方は少なからずいらっしゃり、教科書にすべてカタカナルビを振るなどして対処することもあるとおっしゃっていました。

私もこれまでそのような要望をいただいたことはありますし、要望うんぬんはさておき、どうしても覚えられないという方もいました。
もう20年ほど前になりますが、アラビア語と韓国語の専門家である長渡陽一先生とこの話題について話していたとき、長渡先生は、ハングルを介さずに教えることは可能ではないか、文字にこだわるのはアジア圏の人々の特徴なのではないか、とおっしゃっていました。

昨今のYoutube等の動画配信サービスやSNS等の発達で、夢中になってこれらを見て真似していたら、読み書きはできないけれどペラペラ話せるようになったという人は、若者を中心にかなり出てきました。

こういうケースとはまたちょっと違い、中年以上になってから韓国語を学びたい、学ぶ必要がある等で語学学校の門をたたき、いちから単語や文法を学んでいくのだけれど(そもそもこの方法は合致するのか?)、ハングルは用いないというケースです。このような教え方をされてきたご経験豊富な先生はいらっしゃいますか?

ちなみに、最近当校にいらっしゃった方で、仕事で韓国語が必要になり、いちから韓国語を学ぶのだけれど、必要なフレーズは音だけでどんどん覚えたいという方がいらっしゃり、一般的な教科書でカナダラから学ぶことと並行して、HANAさんの『ネイティブが最もよく使うたった30フレーズでかんたん韓国語会話』を用いています。
こちらの書籍は初心者にとって負担なく、必要最小限のフレーズで会話ができるようになっていてとても良いですね!

以上、ハングルを介さずに韓国語を「継続的に」教え、「レベルアップ」を図れている事例がありましたら、ぜひお伺いしたいです。(^-^)

通信540「録音音声の相互批評」前田真彦

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【週刊ハンガンネット通信】第539号 (2025年7月14日発行)
「録音音声の相互批評」ミレ韓国語学院 前田真彦=================================================

オンライン時代になって、音声添削が簡便になりました。

ミレを立ち上げた当初(2010年)はカセットテープでした。カセットテープを郵送でやり取りしました。3年ぐらい続いたと思います。それがUSBになり、今ではメールでの提出が中心になりました。

音読の録音は、スマートフォンで簡単にでき、提出・共有はLINEグループや、グーグルクラスルームなどで簡単にできます。

今年度は、大学生も合わせて、1週間に100人以上の学生受講生の音読をチェックすることになります。さすがにこれはきついので、受講生同士の「相互批評」を導入しているところです。

「相互批評」のためには、聞く力・コメントする力が要求されますが、それも含めて、普段の授業での指導項目に取り入れ、受講生全員が、クラスメートの音声にコメントを付けられるだけの「聞く力」、「コメントする力」を身に付けられないか、模索しています。(楽器の演奏ができなくても、演奏を批評できるように、自分があまり上手に発音できなくても、人の発音を批評する能力はある程度誰でもあるものです。)

・激音、濃音、パッチムの発音、ピッチなど何がポイントなのか?

・どのように発音するのが、より伝わりやすいのか

・コメントの方法・型 安心してコメントできるクラスの人間関係

など、相互批評するためのトレーニングも考えていかなければなりません。

これがある程度でもできれば、自分自身の発音にも自覚的・分析的になり、発音の上達も速くなるはずだと考えています。録音音声の提出・共有が簡便になった今、新しい音読トレーニングの方法を考えています。

通信539「韓国大好き」日下隆博

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【週刊ハンガンネット通信】第539号 (2025年7月7日発行)
「韓国大好き」 ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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先日韓国に行った際に、「知り合いがソウルにいるので案内も兼ねてその人たちと合流してほしい」と言われ、共に景福宮を回りその後食事をしました。

聞くとソウルには何度も来ているということでした。

「景福宮は初めて行った」とのことで、これまで特に興味はなかったそうです。韓国に頻繁に来ているのは「美容手術」が目的ということでした。

なるほど、自分自身が普段の韓国語授業では意識していなかった、韓国に頻繁に通う思わぬ人を認識しました。

確かに美容手術大国の韓国であれば言葉のハンディキャップも簡単にクリアできるのでしょう。

また彼女たちは韓国での交通手段はタクシーしか使ったことがないということでした。

合流した日本人と日本語で話しながら食事をしていると、 隣席の二人がちらちらこちらに視線を向けてくるのに気づきました。

日本語が気になるのかと思っていたらその二人も日本人ということで私たちに声をかけてきました。

声をかけてきた隣席の二人に「観光でいらしたんですか」と聞いてみました。

すると声を出さずに口の形で返答してきました。

私が「え?」という顔で聞き返すと、身振りで手をひねるかっこうをしてきました。

口元から「カ・ジ・ノ」という単語が読み取れました。

この二人はカジノにのめりこみ頻繁に韓国にカジノ通いをしているということでした。

ここでも再び、私自身普段意識していなかった、韓国に頻繁に通う思わぬ人を認識しました。

普段は推し活などの目的を中心とした韓国語学習者の目線でしか渡韓目的を意識していませんでしたが、「韓国大好き」な人々のその理由は多岐にわたると感じました。

美容手術が渡韓目的の人は「ヨボセヨはどういう意味ですか?」「チョギヨはいつ使いますか?」「自宅から近かったら日下先生の教室に韓国語を習いに通いたいですね」と特に本気ではない軽い感じで話していましたが、普段は接点のないタイプの韓国大好きな人々との思わぬ交流から、意外なところに韓国語学習者掘り起こしの余地はまだまだあるのかもしれないように思いました。

通信538「NHKラジオ英会話を聴いて」田附和久

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【週刊ハンガンネット通信】第538号 (2025年6月30日発行)

「NHKラジオ英会話を聴いて」 田附和久
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前回は、NHKラジオ「まいにちハングル講座」をご紹介しましたが、私はハングル講座だけでなく、英語や中国語のラジオ講座も楽しんで聴いています。

中でも英語は学習者が多いだけに、番組内容も非常に充実しています。毎日、基本単語だけを用いた英語のみの5分間のストーリーを聴く「Enjoy Simple English」、会話に必要な瞬発力のトレーニングに特化した「英会話タイムトライアル」、そして数週間前にNHKワールドで実際に放送されたニュース番組の音声を素材とする「ニュースで学ぶ『現代英語』」など、いずれも魅力的な内容です。同様の番組が韓国朝鮮語でもあればと、うらやましく思いながら聴いています。

こうした多彩なラインナップの中で、おそらく最も多くのリスナーを集めているのが、老舗中の老舗である「ラジオ英会話」でしょう。朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でも取り上げられたように、ラジオ草創期から今日に至るまで、日本における英語学習に計り知れない影響を与えてきた番組です。担当される方々のプレッシャーやご苦労は相当なものと思われますが、現在の大西泰斗先生による講座「ハートでつかめ!英語の極意」は、毎年度、綿密に練り上げられた内容で展開されており、いつも心から感嘆させられています。

年度のテーマに沿って、必要な文法事項を着実に積み上げていくカリキュラムに加え、表現力や運用力を養う練習内容が年々ブラッシュアップされている点も素晴らしいのですが、さらに私が大西先生の講座で特に絶賛したいのは、日々の基本となるダイアログです。男女二人によるダイアログは、複数のストーリーが並行して進行します。考古学者の教授と学生の話、ラーメン好きの宇宙人の話、嫉妬心を抱くアンドロイドのカップルの話、19世紀ロンドンにタイムスリップした宇宙飛行士の話などが日替わりで登場し、それぞれが少しずつ進展していきます。それらの世界線が時に交わることもあり、まるで毎朝の連続ドラマのように、次の展開が気になってつい聴き続けてしまいます。必要な学習項目をしっかり盛り込みながら、こうしたエンターテインメント性あふれるダイアログを執筆される方々にはただただ感服するばかりで、私自身、いつかこんなわくわくするダイアログで構成された韓国朝鮮語テキストを著してみたいという夢も抱かされます。

さて、今年度からその「ラジオ英会話」に、毎回最後の1分間「PRONUNCIATION POLISH」というコーナーが加わりました。レッスンで学んだ表現について、より自然で英語らしい発音を学ぶ時間です。毎号のテキストの巻末に掲載されている「英語らしい発音へのヒント」では、「英語らしい強弱のリズムを生み出すこと」と「なめらかに話すこと」の重要性が説かれ、さらに「なめらかに話す」ための具体的なポイントが以下の通り挙げられ、それらに基づいて日々指導が行われます。

ポイント1 子音連鎖に母音を入れない(例:structure、agree、space)

ポイント2 最後の子音はしっかり発音しなくてもいい(例:have、tap、shut)

ポイント3 同じ音・似た音は2度読む必要はない(例:at ten、good day)

ポイント4 隣接音は影響を与え合う(例:have to、could you、didn’t you)

ポイント5 単語の末尾の子音と次の単語の母音をつなげる(例:I’m an artist. → アイマナーティスト)

ポイント6 /t/ のフラップ(例:letter → レラァ)

ポイント7 /nt/ での /t/ の脱落(例:winter)

ポイント8 強く読む母音の前の /p/ /t/ /k/(気音を伴う強い発音)

ポイント9 機能語の語頭の /h/(代名詞・助動詞の語頭の /h/ の弱化・脱落)

これらを学ぶ中で、ポイント5の子音と母音のつながりや、ポイント9の /h/の弱化・脱落など、韓国朝鮮語と共通する点があることにあらためて気づかされました。そして同時に、韓国朝鮮語の学習では基本段階で徹底的にたたき込まれるこうした発音の基本について、私自身は中高の英語授業でほとんど学んだ記憶がないことに思い至りました。「Get it on」が「げりろん」に聞こえることは好きだった洋楽の歌を通して気づいていましたが、なぜそう聞こえるのかを教室でしっかり習った覚えはありません。もし当時音読させられていたとしても、おそらく「げっと・いっと・おん」と読んでいたことでしょう。

高校を卒業してからおよそ40年。あれほど受験勉強で英単語を覚えたのに、リスニングでは聞き取れなかった理由が今ならよくわかります。正しく発音できないものを、正しく聞き取れるはずがありません。

ずいぶん遠回りをしましたが、私は韓国朝鮮語の学習を通じて、外国語学習における発音学習の重要性がわかるようになり、今改めて英語の発音を学び直しています。日本の英語教育のあり方はあまりに大きな問題なので、今回はこれ以上触れませんが、私と同じように、かつて英語(特にリスニングやスピーキング)が苦手だったものの、韓国朝鮮語は少し話せるようになったという方がいらっしゃれば、ぜひ英語学習に再チャレンジしてみてはいかがでしょうか。英語だけを学んでいたときには持てなかった相対的な視点で見直すことにより、以前とは異なる興味や楽しさをもって取り組めるはずですし、それはまた韓国朝鮮語の学習や教育にもきっと良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。

通信537「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞くようになると」裵正烈

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【週刊ハンガンネット通信】第537号 (2025年6月27日発行)

「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞くようになると」
   HANA ペ・ジョンリョル
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近ごろ私の周りでは、「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞く」という人が増えています。確かに検索で示されたサイトを見に行き自分で情報を取得するよりも、AIとやり取りして答えを聞くほうが手っ取り早いときもありますよね(AIの回答が怪しいこともありますが)。

小社では「韓国のことばと文化を学ぶサイトhana+(ハナタス)」を2023年12月に始めました。オープン以来ずっと定期的に記事をアップしてきて、これまでに公開した記事の総数は900以上にも上ります。Googleでも韓国語関連の検索を行うと上位に表示されることが多くなってきました。まだご覧になっていない方は、ぜひこのサイトを一度訪れてみてください。アドレスはhttp://www.hanatas.jpです。

最近Googleで検索を行うと、結果ページの冒頭に「AIによる概要」が表示されるようになっていますが、その際、AIが参考にしたサイトが示されます。韓国語関連の検索を行うと、hana+が表示されるようにもなってきました。

当初は「AIにも結構頼られているんだな、よし」と思ったりもしましたが、のんきに喜んでばかりいられません。こうやってソース表示でもされるのならまだましですが、対話型AIのChat GPTの場合はそういう機能はなく、どこから情報を得たのかがすぐ分からないようになっていたと思います。

冒頭で書いたようにAIがウェブ上の情報を集めて回答の精度を上げてどんどん便利になると、ウェブで情報を出している人や企業は困ったことになってきます。多くのサイトは無料で見られるようにしているとはいえ、企業には「広告収入を得るために集客する」「有料会員を増やす」「商品やサービスの購買につなげる」など、何かしらの目的があって人力や費用を費やしてコンテンツを提供しているわけです。

AIが便利になればなるほど、企業は費用をかけてウェブを更新したりSEO対策をしたりする意味がなくなる。サイトが更新されないとAIは新たに得られる情報が少なくなる。するとAI自体もどんどん陳腐化して使えなくなる…となってしまうのではないか。ふとそのように思いました。

この疑問をAIに聞いてみたところ、「【結論】確かに、AI利用の拡大がSEOやWeb更新の意味を変えてしまうことは避けられません。ただ、それは「終わり」ではなく、「新しい情報流通の時代の始まり」と捉えるべきです。いま私たちは、Webができた頃と同じように、新しいルールを作る過渡期にいるのだと思います」となんともモヤモヤさせる回答です。

6月26日の朝日新聞朝刊に「AI学習に書籍無断利用 『購入なら合法』米判決」という記事が出ました。あるAIの会社が書籍(を買って?その)データをAIの学習のために無断利用したことに対し、作家が訴えたが、法廷は「作品をそのまま模倣せず独自の『回答文』を生成しているので合法」だと認めたそうです。

仮にAIの会社が、こんなやり方であらゆる本の内容をもAIに取り込み、元ソースも示さずに別の形で配布し、そしてそれが市民権を得るようになるなら、われわれの商売はもう成り立たなくなります。

先のAIの回答にもあったのですが、「自社コンテンツをAIに利用させる代わりに情報提供者が報酬を得る」ようなきちんとした仕組みが早くできるといいのですが。

通信536「教室運営で大切だと感じること~スクール運営担当になって6カ月~」浅見綾子

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【週刊ハンガンネット通信】第536号 (2025年6月23日発行)

「教室運営で大切だと感じること〜スクール運営担当になって6カ月〜」
   HANA韓国語スクール 浅見綾子

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HANA韓国語スクールの運営担当になって、気づけば半年が経ちました。

毎日、「どうすればこのスクールをもっとよく運営していけるだろうか」と、頭を悩ませる日々です。

実際に運営に携わるようになって、韓国語教室を継続的に成長・安定させていくためには、いくつかの重要な要素があると実感するようになりました。

ここでは、私が特に大切だと感じている4つをご紹介します。

1.授業の質

これは、言うまでもなく教室の根幹です。

信頼できる教材や、誠実で指導力のある講師をお迎えし、学習者のニーズに応じた授業を提供していくこと。質の高い授業こそが、受講生さんの満足度と継続につながり、最終的に教室の評判を支えてくれます。

2.適正価格

授業内容に見合った価格設定も、運営においては非常に大切です。

ただし、「適正価格」といっても正解が一つあるわけではなく、無料イベントでまず教室を知ってもらう戦略や、あえて価格を抑えて新規層にアプローチするなど、柔軟な考え方も必要だと感じています。

とはいえ、HANAスクールの母体である出版社HANAの方針も含め、

「やたらと安売りはしない」という考えがあります。

AIを使ったコンテンツや、YouTube・インスタなどの無料コンテンツがあふれるなか、「質の高いものを適正価格で提供する」という姿勢を貫くことも、今後ますます重要になってくると感じています。

3.広報(=情報発信)

そして、私がいま最も難しさと重要性を感じているのが、この「広報」です。

いくら良い講師をお迎えし、魅力的な授業を準備しても、それが必要とする人に届かなければ、意味がありません。

広報は、「いいコピーを書けば人が集まる」という単純な話ではありません。

学習者は、内容を読み込む前に、発信者や教室の「信頼感」を無意識に感じ取っているものだと思います。

日頃から誠実に情報を出し、派手さよりも一貫性や誠実さを大切にしていくこと。

そうして少しずつ積み上げた信頼があるからこそ、「今度の講座もきっとよさそう」と思ってもらえるのだと実感しています。これは、個人で教室を運営されている先生にもきっと共通する感覚ではないでしょうか。

4.受講生対応・サポート体制

授業以外の部分も、教室運営には欠かせません。

問い合わせへの対応、欠席時のサポート、受講生への気配りなど、いわば「授業以外の体験」こそが、教室への信頼を高め、継続受講へとつながっていきます。

もちろん、他にも大事な要素はたくさんありますが、今現在、運営を始めてまだ日が浅い私が特に強く感じているのは、この4つです。

なかでも、「広報の難しさ」には直面する日々です。

SNSやメルマガ、チラシや口コミ、どの手段においても、単なる告知ではなく、「どうすれば信頼と興味を引き寄せられるか」という視点が求められます。

同じような悩みを抱えている先生がいらっしゃいましたら、ぜひお伺いしたいです。

皆さんの工夫や取り組みもお聞きできたら嬉しいです。

通信535「加齢と知的能力」寄田晴代

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【週刊ハンガンネット通信】第535号 (2025年6月16日発行)
「加齢と知的能力」寄田晴代
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 4月に文字から始まった入門クラスでは、そろそろハングルをマスターして文法編に入っている頃でしょうか。

私が担当するおとなのクラスでは、脱落せずに最後まで通ってほしいので、ややゆっくりめに進んでいます。

しかし、ゆっくり進むからといって、ハングルをどんどん覚えられるわけではないので毎年進度のスピードに悩みます。

年齢を重ねると「覚える」ことに時間がかかる。と、いうより、何でも忘れてしまいます。

自分のことですが、新しい単語を覚えるどころか、何しに2階に上がって来たのかも覚えていないことがあります。

すべてを加齢のせいにして、仕方ないよね、と思っていたところ、知的能力の種類によっては高齢になっても向上するという嬉しい話を新聞記事でみつけたので、共有させていただきます。

知的な能力には主に2種類あるのだそうです。

一つは、情報処理スピードが当てはまる「流動性知能」、もう一つは知識や言語能力が該当する「結晶性知能」です。

後者は経験や学習によって得られる知的能力ですが、70歳ころまで伸び続けた後、ゆるやかに低下するということが、老化に関する疫学調査で明らかになったそうです。(国立長寿医療研究センターが40歳以上の住民を対象に実施。)

また、脳の灰白質という領域は10~20代でもっとも体積が大きくなり、その後ゆっくり減少して知的機能も低下していくのですが、

白質という領域は、何かを学ぶなど脳を使い続けることで体積が増えていきます。

脳には変化する力があるので、何歳になっても脳の働きは向上するのだそうです。

まさに、韓国語に取り組むおとなにとって励ましのことばではありませんか。

そして、知的な能力の維持に寄与する語学学習や楽器演奏、運動などを続けるには、スモールステップ法(少しずつ無理せず行う)、すでにある習慣と一緒に行う(歯磨き後に音読など)、楽しく取り組むこと、が脳の癖をうまく利用した方法なのだとか。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授によると「記憶をつかさどる海馬では年をとっても神経細胞が新しく生まれている。楽しくやる方が記憶に残りやすく、上達もしやすい」のだそうです。

やっとハングルを全部覚えたと思ったら、次々と発音変化が出てきて「このまま読んじゃだめなの?」と落胆させられる時期でもあります。楽しく記憶に残る授業で乗り越えたいです。

参考:「結晶性知能」高齢でも向上 2025年1月18日日本経済新聞