通信495「K-POP、K-文学の次はK-ティーチャー?!」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第495号(2024年7月22日発行)

「K-POP、K-文学の次はK-ティーチャー?!」 
ペ・ジョンリョル
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先日、出張でソウルに行きました。6年ぶりです。この間に街の様子がずいぶん変わったと聞いていて、実際そのとおりだと思いましたが、滞在中に動き回っていたのが地味な界隈だったこともあり、以前とあまり変わらない現地の人々の姿も多く見られました。私個人としては妙に安心しました。

さて、今回、地下鉄5号線の西側終点パンファ駅近くの国立国語院を訪れ、チャン・ソウォン院長にお目に掛かりました。院長先生は、実は小社HANAの著者の先生でいらっしゃいます。

その際に国立国語院が運営を始めた「K-티처 프로그램」についての話を伺いましたので、今日はそれをお伝えしたいと思います。

国立国語院では、海外各地で韓国語教育に尽力している韓国語教師の方々の力量向上のために、今年度からオンライン教育プログラム「国外韓国語教員(K-ティーチャー)プログラム」の運営を始めました。

https://kcenter.korean.go.kr/kcenter/kteacher/info.do

国外の大学で韓国語学関連を専攻している・した方、もしくは国外の教育機関で韓国語を教えている教師であれば、このプログラムを受講することができます。

プログラムは韓国語教師として知っておくべき韓国語学、韓国語教育学、韓国文化などのさまざまな理論分野と実習分野の計130回分で構成されており、修了後は国立国語院が発行する履修証(オンラインで発給)とバッジをもらえるとのことです。

大学や高校などの正規教育機関以外にも、民間の語学学校や教室に所属している先生も受講可能。ただし、受講申請の際には「韓国語教育機関に在職中であることを証明する在職証明書を提出する必要がある」とのことです。

上記は、日本における韓国語の教室の多くが民間で小規模なものであることを説明したうえでいただいた返答を基にしています。

受講料は無料です。

HPで現在公開されている今年度プログラムの募集はすでに終わっていますが、院長先生の話を伺った限りでは、今後も継続的に運営を行っていくものと思われます。

プログラムのサイトでは「외국인 한국어 학습자가 선생님이 되는 시대. 세계를 무대로 한국어를 가르치는 K-티처」とうたっています。韓国語教師を韓国から送りだすことだけでなく、現地の韓国語教師による韓国語の教育・普及にも国語院は大きな関心を寄せていると院長先生はおっしゃっていました。

国立国語院では、日本に既に多くの韓国語教師がいることをよく知っており、ぜひこのプログラムを利用して、教師としての力量を高めてくださいとのことでした。

受講手続きやプログラム内容についての詳しい情報は上記のリンクからご覧いただくことができます。関心のある方はサイトを詳しくご覧ください!

通信488 済州語と私 ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第488号(2024年5月21日発行)

「済州語と私」
ペ・ジョンリョル
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30年ほど前、東京の朝鮮高校で教師をしていたときに担任を受け持ったクラスに済州島出身の一世の男子生徒がいました。済州島で生まれ育ちましたが、両親をなくし村の人たちにしばらく育てられた後で、中学生のときに親戚を頼って妹と一緒に東京に移住しました。そして親戚のつてで、朝鮮学校に編入してきたそうです。親戚の支援のもと、きょうだい二人で生活しており、兄は朝寝坊で学校をさぼるので、たびたび私が車で起こしに行ったりしていました。

きょうだい同士で話すときは済州語でした。「済州語でした」と書きましたが、聞き取れない言葉なのでそう推察するしかなく、でも済州語でしかないだろうということで、これが私にとって初めて済州語を聞いた経験です。

その後、カラオケで「감수광」という曲の済州語の歌詞を知り、映画でも何度か済州語に触れる機会があり、おぼろげながら済州語の一部の語尾や単語を知ることになりました。

私の故郷は慶尚道で、済州島にはほとんど直接の縁がなかったのですが、おばが10年ほど前に済州島に移住してペンション経営を始めたことで、2018年、初めてこの島を訪れました。済州語は今ではほとんど使われていないということは知っていましたが、あちこちで注意して耳をそばだてていると、それらしき言葉を時々耳にすることができました。でも話の内容はわからない。すると職業柄か「済州語の入門書を作れないか」という考えがだんだんと湧いてきました。

以前、『話してみよう!釜山語』という本を試行錯誤しながら作った経験があるので、入門書を作ることはできます。でも商売としては成り立ちません。さらに具体的なあてがわけでなく、そのままになっていました。

ところが今年、済州島出身で韓国語教師のパパ友ができたのですが、なんと彼は済州語ネイティブで言語学専攻だとのこと。試しに弊社の釜山語の本を参考に原稿を書いてもらったところ、結構な内容と量のものをいただくことができました。済州語企画が少し現実味を帯びてきました。

実は6月に発売される『hana Vol. 52』で済州島を特集します。そこで済州語入門のページも作ってみました。誌面の都合上、基本の文法や語彙、フレーズなど、ごく簡単な内容しか載せられませんが、興味のある方はぜひご覧いただければと思います。

手元にある原稿は「hana」記事の数倍の分量があり、さらに内容を充実させて音声を補完することで、それなりの本を作れると判断しています。あとは資金をどうするかですね。

教え子の同窓会をきっかけに、前述した教え子にもたまに会うようになったので、この本で勉強して、一度済州語で驚かせてみたいです。

通信480 「韓国で録音を行うときの問題点」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第480号 (2024年3月15日発行)

「韓国で録音を行うときの問題点」
ペ・ジョンリョル
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小社では、韓国語学習書の録音の多くを韓国で行っています。なんといっても良い韓国語の声優が多くいます。録音費、声優費も日本に比べて安く、最近では完成したMP3ファイルをネット経由で納品してもらうので、タイムラグもありません。

一方、デメリットとしてはまず、日本語の声優が少ないことが挙げられます。そして、10年以上韓国で録音をしていますが、すごく満足できる人にいまだ巡り会えていません。大きな不満が何かというと、単語のアクセント(抑揚)を間違えることです。

音声の録り直しが生じると、スタジオと同じ声優を再度ブッキングする手間と、最低でも(再録音時間が5分でも10分でも)1時間分のスタジオと声優の費用がかかります。チェック用の音声を聞いたら、韓国語は問題ないのに日本語のアクセントの誤りを見つけてがっくりする、ということがこれまでに何度もありました。さらに、同じ声優さんの再々録音の予定がどうしても合わず、音声が遅れて本の発売に間に合わなかったこともありました。

日本国内で録音するときは編集者や著者が現場に立ち会えるので、あやしい発音に気付いたらその場ですぐに録り直すことができます。それに対し、韓国だといちいち現地に行って立ち会うことができず、上がってきた音声をチェックすることになります。それが韓国で録音することの一番の問題です。

なので、なおさら完璧に発音できる人が求められるのですが、なかなかそういう人がみつからないのです。

日本語の部分だけ日本で録音して、編集で音声を合体させるという方法もありますが、場所や機材が違うと音の雰囲気がまったく違ってしまうそうで、あえて試したことがありません。いまや多くの会社でオンライン会議を取り入れているご時世ですから、できたらZoomなどの中継で録音に立ち会えたら一番いいんですけれど。

ちなみに、韓国語の声優が単語レベルで抑揚を間違える問題はほぼ起きません。これは高低アクセントがある日本語特有の問題でしょう。

話は変わりますが、数年前、大阪出身の方に「ペさん関西の出身ですよね?」と言われたことがありました。東京弁を話しているけど西のアクセントがときどき混じっているとのことでした。でも私は東京以外に住んだことがないので、その自覚がありません。

ところが最近、ある会議の文字起こしをするために、録音された自分の声を聞く機会があったのですが、気を付けて聞いていると、たしかにあやしいアクセントがいくつも混じっています。社内に関西弁でよくしゃべる人がいるので、それがうつってしまったのでしょうか。

前述した韓国での日本語のアクセント問題、声優さんの出身地やスキルの問題かもしれませんが、案外、韓国に住んでいて日本語に接する時間が少ないことにも原因を求められるかもしれませんね。

通信470 「学習書の音声ダウンロード方式の四つのメリット」 裵正烈

【週刊ハンガンネット通信】第470号 (2023年12月25日発行)

「学習書の音声ダウンロード方式の四つのメリット」  
HANA 裵正烈

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今日、ほとんどの語学学習書で音声が提供されています。でも私が大学生だった80年代後半、語学書に音声が付いていることはまれだったと記憶します。

別売カセットで音声を提供している場合がありましたが、二千数百円とか三千何百円とかを払って、本とは別途に購入しなければいけませんでした。音声はほしいけど高いので、複数名で同じ本を買い、カセットだけダビングして融通し合った人もいたのではないでしょうか。

私が韓国語の出版物を手掛けるようになった20年前には、もうカセットを見掛けることはほとんどなく、とっくにCD付き書籍という商品形態になっていました。音声が別売りではなく本に付属するようになって、音声自体の値段が劇的に安くなっていました。

そしていまやCDを回したことがないという世代が読者の中にも増え、家にCDを再生できる機器がない人も多くなりました。HANAでも、新刊の音声はすべてダウンロード方式になりました。

ダウンロード方式になってよかったことは、音声の制作において時間的な余裕が増えたことです。CDの場合は、製本と併行してCDのプレスを行う必要があり、CDの完パケ(制作終了・納品)は校了とほぼ同じタイミングでした。一方ダウンロードの場合、発売日までに音声をサーバーにアップすればよくなり、単行本の場合で2~3週間遅くてすむようになりました。日々締め切りに追われている立場からすると、これは大変ありがたいのです。本の編集を終えた後、校了した原稿で余裕をもって音づくりに取り掛かれるので、精度も増します。

よかったことの二つめは、本が出た後で音声の間違いを見つけてしまったときに、CDはその中身を変えられませんが、ダウンロード方式の場合修正して差し替えることができるということです。例えば音声の順番を間違えたなどの再録音がいらない修正なら、自分のパソコンで簡単に直して、差し替えてしまうことができます。

三つめは、単純にメディアとしてのCDの材料費や制作費が掛からなくなったことです。コストダウンなのでもちろんありがたいのですが、声優のギャラやスタジオ代、音声編集費はどのみち必要なので、音声制作費全体から見たらすごく大きな部分ではないとも言えます。

ここまでダウンロード方式の利点について見てみましたが、現実的には、CD再生以外の方法で音声を利用できないという人(ほとんど年配の方)がまだいらっしゃいます。そういう方がどうしてもCDをほしいという場合、HANAではCD-Rに音声を焼いて送ってあげています(送料分の84円切手2枚のみご負担)。韓国語の専門出版社HANAの使命として、どんな学習者も取り残さないという気持ちでやっているのですが、「いつまでやるんだ」という社長に対する批判が社内にあるのも事実です。

つい最近実際にあったケースでは、その本の音声全部を収めるのに、CDを6枚焼く必要がありました。私が担当した本だったので自らCDを焼いて送ることになりましたが、さすがに「こりゃやってられないな」と思いました。

CDには1枚最長80分ほどの音声しか収められず、最大2枚×80分が提供できる音声の限度でした。一方のダウンロード方式はサーバーの容量が許す限り無制限に音を提供できます。つい欲張り過ぎて、いろんな練習用音声を準備してしまうのです。これが四つめのメリットと言えるのかどうなのかは私にもわかりません。

最後に、HANAの韓国語学習書は高いというご意見をごくたまにいただくことがありますが、ダウンロードになったとはいえ、音声の制作にも相応の費用と労力を掛けている点、ぜひぜひご理解をいただきたいです。

通信461 「K-POPで韓国語? 英語?」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第461号 (2023年10月18日発行)

「K-POPで韓国語? 英語?」
ペ・ジョンリョル
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最近、大学の出身学部(外国語学部)の同窓会が主催するセミナーの企画を任されました。それで現役英語教師B先生に出演依頼をしにいったときのことです。「参考までに、A先生は倍数表現を取り上げるとおっしゃっています。twice, three timesとか…」「それ私も得意なやつですよ!」とB先生。そして提案されたのが「TWICEの歌詞で英語表現を学ぶ」という内容でした(以上実話)。

このTWICEはご存じ人気K-POPグループのことなので、わざと言ったのか、人の話をちゃんと聞いていなかったのかのどちらかですが、それはともかく、彼によると最近のK-POPは英語の歌詞が多く、生徒受けもいいので、英語の授業でよく取り上げているそうです(勤務校は英語の他に韓国語にも力を入れている日本の中学校です)。最近のK-POPには英語オンリーの曲もあるので、英語の授業で取り上げられてもなんら不思議はないですよね。

さて、小社に『K-POPで韓国語!』というシリーズがあります。2013年7月に1冊目を出してから、『K-POPで韓国語!2』『K-POPで韓国語!3』『K-POPで韓国語!4』と続けて出し、少し間が空いて5冊目の『K-POPで韓国語! 2017-2018』まで出版しました。

これらは本ごとにテーマや取り上げるアーチストを変えて、韓国語の歌詞を、発音どおりのハングルとフリガナ、文法項目などの丁寧な解説とともに紹介した学習教材です。人気のK-POPで韓国語が勉強できるとあってそれなりに売れましたが、作る側にとっても「歌詞ありき」でゼロから何かを生み出す必要がなく、最初に作ったフォーマットや作業要領を次作でそのまま生かせるので、かなり楽な本といえます。

もちろん歌詞を勝手に掲載することはできないので、著作権管理団体を通じて所定の料金を支払って利用しています。これも手続きの問題なので、一度経験したら難しいことはありません。

K-POPの人気はずっと高かったのに、なぜか2018年の5冊目以降続編を作っていませんでした。「韓国語の学習」という観点で見ると、冒頭で記したように英語が多い、韻やリズム重視で意味のないフレーズの繰り返しが多いなどの理由で、実際に使える曲が多くないという事情もあります。でも、久しぶりに1冊作ってみたいという編集者が社内にいるので、ぜひ最近の曲の中で、ネットワークの先生方のオススメを教えてほしいです!

もっとも「韓国語の学習」を重視するなら、バラードやドラマOSTがいいのかもしれません。個人的にはトロットや7080歌謡の名曲をやりたいのですが、「需要がない!」と社員から猛反対されそうです。

通信451 「ハン検1・2級受験者のための単語集を作りました」 ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第451号 (2023年8月1日発行)

「ハン検1・2級受験者のための単語集を作りました」
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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つい先日、544ページの本を校了しました。ハン検1・2級受験者を対象とした単語集『hanaの韓国語単語上級編 ハン検1・2級レベル』という本です。著者は本ネットワークの会員でもあるミリネ韓国語教室の金玄謹先生で、先生がご自身の学校で開催されてきた「ハングル検定1級・2級対策講座」の教材がベースになっています。

今回の単語集で取り上げた単語は5000語以上になります。まず固有語単語と韓日で漢字や用法が異なる漢字語(이재민[罹災民]=被災者、기상[気像]=気性など)を最優先に選び例文と例文訳、必要に応じて補足説明を加えました。その他、韓日で一致する漢字語や動植物名などは最短で覚えられるよう一覧掲載し、接辞、依存名詞、冠形詞も短い複数の用例とともに掲載しました。もちろんハングルと日本語の索引もあり、音声のダウンロードも可能です。

この本には、ハングル能力検定協会が発行する『合格トウミ上級編』の単語がほぼ網羅されています。本の設計にあたっては、字が小さくなりすぎないようにしつつも、1冊の本にいかに多くの語彙を効率的に入れられるかという点に気を配りました。その結果、B6判で544ページ、背幅26㎜の本になりましたが、必要なものはなんとかギリギリ収めることができたと思います。

弊社内に1人、ハン検1級所持者がいますが、検定試験の頂点ともいえるハン検1級合格のためには、この本で取り上げた上級単語に準2級以下の単語も加えたボキャブラリーが当然必要で、彼女はこれらすべてを覚えたそうです。ハン検の5級から準2級までの出題範囲は7000語弱(弊社調べ)なので、上級単語と合計すると、1万2000語くらいのボキャブラリーは必須とされるわけです。

本を作ってみてよくわかったことは、私が1級を受験したら確実に不合格になるということです。2級もあぶないと思いました。普段から韓国語を使って仕事をしてはいますが、だいたいわかったつもりになっているだけなのでしょう。1級に受かるくらいのボキャブラリーを身に付ければ、聞き取れる韓国語の「解像度」が高まるでしょうし意思疎通や読書、映画・ドラマ鑑賞などをもっと滑らかに進められるのは間違いないと思いました。久しぶりに学習意欲が湧いてきたので、本が出たら、自社のこの本で勉強しようと考えています。

ハン検のHP(https://hangul.or.jp/siken-top/pastexam/)に掲載されている今年春の出願者数を見ると、1級が120人(受験者106人、合格者20人)、2級が426人(受験者370人、合格者70人)とのこと。1・2級共に合格は狭き門ですが、前回は1級合格者が20人も出たと(多すぎると)話題になったそうです。

会社としては採算度外視の本ですが、いつかは元が取れるよう、今後検定上級の受験者が増加することを期待しています。本は8月12日頃から店頭に並ぶ予定です。

通信441 「日本のオーディブックの状況」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第441号 (2023年5月19日発行)

日本のオーディブックの状況
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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先日久しぶりに新宿で会食し、2次会でゴールデン街に足を伸ばしました。ご存じの方も多いと思いますが、新宿のゴールデン街は、新宿区役所の向かい側に幾つもの細い路地に小さなスナックやバーがひしめき合っている地域で、約300件もの店があるといわれています。

行ってみると、路地が外国からの旅行者でごった返していました。多くの、いやほとんどの店が彼ら・彼女らに埋め尽くされ、街全体が外国勢に占拠されている感じです。これでは古いお客さんは行きつけのお店にいって落ち着いて飲めないでしょう。でも一方で、ここはただの酒飲みから著名文化人まで多種多様な背景の人たちが気安く接し、言葉を交わしてきたそんな場所ですから、今後面白い空間になるのではないかとも思いました(私が行った店では、お店の女性がスマホアプリの通訳機能を使って会話していました)。

実はこの日、オーディオブックに力を入れている韓国の出版社の方を接待しました。そこでは韓国の著名俳優を起用した『100인의 배우, 우리 문학을 읽다』『100인의 배우, 세계문학을 읽다』という商品を出しています。朗読している俳優たちはチェ・ミンシクをはじめそうそうたる俳優たち。韓国語の学習にも活用できそうです(USBメモリー付きの書籍が販売されています。ただし原作のテキストは含まれていません)。

私がオーディオブックというものを意識したのは、20年ほど前、韓国語の学習雑誌を始めてからのことだったと思います。特にアメリカは車社会なので、小説などを音声で聞く習慣の人も多く、かなり普及していると聞きました。

それをきっかけに、学習者が文学作品を韓国語の音声で楽しむ、そんな企画をできないかと考えるようになったのですが、学習者が韓国語の音声だけで文学作品を楽しむのはかなり難しいですし、またその原文と訳も確認したいでしょう。結局、原作ではなくリライト、オーディブックではなく対訳本に音声が付いた形に行き着きました。

『多読多聴の韓国語 やさしい韓国語で読む世界の名作文学』というCD付きの本がそれです。2011年に出したときはまったく売れず、19年に改訂してからは何度か増刷するくらいにぼちぼち売れています。この本の後に、リライトではなく書き下ろしですが『やさしい韓国語で読む韓国の昔ばなし』『やさしい韓国語で読む韓国人物伝 歴史編』という本も出しました。次は『やさしい韓国語で読む韓国名作文学』も出そうと、書きたまった原稿はあるのですが、まだ実現に至ってはいません。

今回韓国からお客さんを迎えることになって、日本のオーディオブック市場について少し調べてみました。日本では「オトバンク」とamazon傘下の「Audible」が主なオーディオブック提供サービスとのこと。Audibleは日本語の作品の他、英語の作品が幅広く選べ、オトバンクは日本の俳優・声優による朗読作品が主で、アニメキャラがアニメと連動して名作を読んでくれる「朗読少女」というアプリも出しています。

一方韓国語のオーディオブックは韓国に윌라というストアがあることは知っているのですが、日本からだと決済ができないようです(윌라については弊社の『hana Vol. 47』でも紹介しています)。

出版業界紙『新文化』(2023年4月27日号)の記事によると、2018年に30億円だった日本のオーディオブック市場は20年に70億円を超え、24年度には240億円に達する予想だそうです。ものすごいスピードで広がっていることになります。

通勤しながら、家事をしながら、ジムでエクササイズをしながら聞いているという人が増えているのではないでしょうか? やはりスマホが普及したことが決定的な要因でしょうね。

私も最近体力作りに励もうと「●●●ザップ」に入会したので、運動と語学学習を一緒にできるようオーディオブックの作品を物色してみました。問題は仕事が忙しくて余裕がなく、たまに行って体を動かすと、その疲れで風邪を引いたり、体に不具合が生じたりして、ジム通いが続かないことです。それでいまだに体力作りの入口にも、オーディオブックによる語学学習の入口にもたどりつけていません。

通信434 「韓国語業界の世代交代 」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第434号 (2023年3月28日発行)

韓国語業界の世代交代 
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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某大学で教授を務められている先生から3月で定年退職されるとの連絡をいただきました。私が韓国語を手掛けるようになった20年ほど前、すでに韓国語の学習書を出版されていて、NHKテレビのハングル講座も担当されました。私も2002年に立ち上げたばかりの『韓国語ジャーナル』でずいぶんお世話になった方です。でも、ご退任のニュースを自社内で共有する際に、その先生を知らないスタッフが何人かいたので、どんな先生でどんな関わりがあったかを説明する必要がありました。

今年は「韓流20周年」に当たるとのこと。この韓流をきっかけに韓国語学習の一大ブームが起きました。当時から継続的に学習を続けている人は学習歴20年ということになりますが、弊社への読者ハガキなどで読者の学習歴を見ると、このブームをきっかけに韓国語を始めた(可能性のある人は)ごく少数です。これは今に始まった話ではなく、『韓国語学習ジャーナルhana』を創刊した2014年当時もそうでした。弊社の中上級レベル書籍の読者の中には、学習歴数年という人も結構います。

この20年の間に、教える方側も学ぶ側も絶え間なく世代交代しているわけです。制作する側もそうだと思います。その中にあって、幸いなことに私はいまだ現場との関わりが少しあります。それ以前の草創期に活躍された大先生たちとも仕事をする機会があったので、このまま元気に仕事を続けられれば、この分野の生き字引の一人になれるかもしれません。

何年か前にある出版社の知人に聞いた話ですが、その会社では企画書を出すとまず聞かれることが「著者はネットで有名なのか? フォロワーはどれだけいるのか?」だそうです。今は出版社がユーチューバーの人気に便乗して本を売る時代です。韓国語学習書も例外ではなく、ある大手出版社は、ユーチューバー、ブロガーなどのネットで人気のある人をどんどん起用し、韓国語学習書の分野でどんどん実績を上げています。

弊社は他の出版社の下請けの仕事もやっていたので、こうした本の校正依頼をよくいただきました。そうした仕事の中には、著者の方が原稿を書くことに慣れておらずなかなか大変なときもあります。やるからには手を抜かずに仕事するので、校正紙が文字通り「血の海(修正指示の赤字だらけ)」になるのですが、こうなると仕事としても手が掛かりすぎて割に合いませんし、それ以上に自社の最も貴重なリソースを浪費して競合商品の付加価値を高めてあげているようで、かなり複雑な心境になります(なので最近この手の仕事は断っています)。

もちろんネットで人気を集めている韓国語の先生の中にはしっかりした内容を配信されている方もいらっしゃいます。逆にユーチューブに新たな活動の場所を作ろうと積極的に行動されている「旧世代」の先生もいらっしゃいますね。HANAでもそういう先生の本を出しています。つまり先生の人気に便乗することをやっているので、他社を悪く言うことはできません。大事なことは、こうして学習者にとって選択肢が増えることが韓国語の普及のためにとても望ましいということだと思います。

ただし、ネットから無料で学べる世の中にしてしまうと、紙の本を商売としている自分の首を絞めることになります。ブログ、メルマガ、ツイッター、インスタ、ユーチューブと、どうすれば次々現れる新しいメディアを自社のビジネスに役立てることができるかと、日々苦慮しているところです。

通信426 「大量の本を収める本棚」裵正烈

【週刊ハンガンネット通信】第426号 (2023年1月30日発行)

大量の本を収める本棚
株式会社HANA 裵正烈
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弊社は韓国語の専門出版社ということもあり、気になる韓国語学習書、参考になりそうな韓国語学習書があったら参考資料としてちゅうちょせずに購入しています。また弊社の雑誌『韓国語学習ジャーナルhana』のインフォメーションページで本の紹介を行っていることもあって、多くの出版社さんからも新刊の見本が送られてきます。そういうこともあって、韓国語学習書の蔵書が増えており、年末にざっと数えてみたところ1000冊を越えていました。一方で日々増えていく本をどう収納していくのかという問題があります。今日は韓国語とはあまり関係のない、本棚のことについて少し書いてみたいと思います。

今日、本棚もしくは本棚になり得るさまざまな収納棚が市販されていますが、多くの本棚の奥行きは30cm以上あります。30cmという奥行きは結構なもので、私たちの狭い室内空間をさらに狭めます。30cmという奥行きは本を収めるにも広すぎて、本を置いた前の空きスペースにさらに本や物を並べることになりがちです。すると背表紙が見えなくなった奥の本がすぐに見つからなくなったり、奥の本を取り出すのに前の本や物をまずどかす手間が生じたります(取り出した本を戻すときも、さらに同じ手間が生じます)。

市販の本棚に関する私のもう一つの不満が、木くずや紙を接着材で固めた素材(板)にあります。ケミカルで長持ちしない、大量生産・大量消費の負の象徴のようなもので、時にわざわざ木肌のプリントを表面に施したりしているのを見て、そのチープな意図に嫌悪感を感じたりもします。

まあ、後者は個人の嗜好の問題なのでさておくとして、要は、余裕のない室内に大量の本をしっかり、機能的に保管できるぴったりの商品がないと常々感じているということです。そしていい商品がないのなら、自分で本棚を作ってしまうのが自分にとっての最適解の一つということになります。

語学学習書で一般的な本の判型と左右幅は、

B6判 12.8cm(CD付きのB6変型は13.1cm)
A5判 14.8cm
B5判 18.2cm

です。雑誌によく見られる大判のA4でも21cmなので、棚板の奥行きが20㎝程度の本棚を作れば、ほとんどの本が無駄なく収まります(奥行き30cmがいかに本に合っていないか分かっていただけるかと思います)。

それで弊社では、加工しやすいシナ合板(182X91cm)を幅20cmでカットしてもらい本棚を組みました。それを階段の脇などのスペースにぴったり合わせて設置しています(写真)。写真の4列の本棚には1000冊以上の韓国語学習書が収まっていますが、同様の本棚が一つ上の階の階段とフロアにもあります(これらは韓国語学習書以外で使用)。板の厚みは最初にお金をケチって1.5cmにしたので、すべてそれで統一しましたが、これはあきらかに失敗でした。1.8cm厚や2.1cm厚にすればより強固な本棚になったのにと後悔しています。

IMG_3080

なお会社の棚では合板を使用しましたが、自宅の本棚は1X8(ワンバイエイト=幅18.4cm、厚さ1.9cm、長さはいろいろ)という規格の使いやすく廉価な無垢板で作りました。好きなオイルやワックスで塗装を行い、無垢材本来の木目や質感、経年変化の味わいを楽しんでいます。

多くのホームセンターでは木材カットや電動工具、軽トラック貸し出しなどのサービスを提供しています。カットしたパーツを持ち帰って組み立てるだけなら、もちろん個人によりますが、作業自体の難易度はさほど高くはないはずです(組み立ての際、電気ドリルは必須)。手間はかかりますが、同等の市販品を買うよりは費用も安く済むと思います。

以上、私の本棚についての個人的な考えと経験を記しましたが、作り方についてはあまりにアバウトな説明だったかと思います。「清く正し本棚の作り方」というサイト(https://www.todaproduction.com/books/bkshelf/bkfrm.htm)には、上記のような本棚を作る根拠や方法がより具体的に説明されており、その内容は書籍化もされています。本棚の自作に興味がある方はぜひご参照ください。