通信599 「韓国語の授業でAIをどう使うか学ぶセミナー」裵正烈

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【週刊ハンガンネット通信】第599号(2026年9月26日発行)
「韓国語の授業でAIをどう使うか学ぶセミナー」株式会社HANA 裵正烈
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出版取次大手の日販(日本出版販売)が生成AIの開発会社に大量の書籍を販売していたと、先日報じられました。

通信537「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞くようになると」で、苦労して作った本やウェブサイトのコンテンツを、AIに無制限に学習されて使われたら出版社の商売はあがったりだと書きました。出版流通の中核にあり、出版社と書店をつないで読者に本を届ける役割を担う取次がそれをやっていたとしたら、出版社の人間として心中穏やかではないです。

買われた本は生成AIに学習させるために使われるのでしょうか。もっともこの「AIに学習させる行為」自体は、現在の日本の著作権法では直ちに著作権侵害に当たらないそうですし、もちろんここまで普及している以上AIを禁止することなどできないので、著作権者や出版権者の権利をどう守るのかなどを、法制度の見直しを含めて議論していくべきだと思います。

外国語はすでに、AIを使ってかなり体系的に学べるようになっているそうです。AIの強みは、何度間違えても気兼ねなく練習できること、レベルを細かく合わせられること、即座に添削してもらえることだそうで(以上ChatGPT談)、これからは「韓国語を本で学びました」「教室で先生から学びました」ではなく、「主にAIから学びました」という人が増えてくることでしょう。

私たちは、こういう時代にいやおうなく適応していくしかないでしょう。出版社もそうですが、韓国語の教育に携わる人たちも、AIを否定的に捉えるだけでなく教育現場での活用や「協業」について考えてみる必要があると感じます。

こうしたことから、秋のハンガンネットセミナーでは、韓国語の授業でAIをどう使うかついて学ぶ機会を設けることになりました。

次回のハンガンネットセミナーは、韓国文化院と共にリアルイベントとして開催します。場所は東京・四谷にある韓国文化院で、11月7日(土)の11時から17時まで開催する予定です。

セミナーは大きく午前と午後に内容を分けて進行します。まず午前のプログラムでは、韓国語の抑揚のルールについて講義を受け、音声添削の実習を行う予定です。

午後のプログラムでは、教師たちがAIを授業にどう取り入れたらよいかというテーマで講演を聞き、実際にパソコンやスマートフォンを使ってAIを操作し、授業準備や教材作成、授業用の動画作成などのワークショップを行う予定です。

ハンガンネットワークでは、コロナ禍を境にすべてのセミナーをオンラインで開催してきましたが、今回は(東京のみの開催ではありますが)リアルイベントということで、韓国語を教える多くの先生方が一堂に会して交流できる貴重な機会になると思います。

セミナーの詳しい内容については、近日中にこのメーリングリストでお知らせする予定です。ぜひ、多くの方にご参加いただきたいと思います。

通信591 「上級向けの本を2冊担当しました」ペ・ジョンリョル

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【週刊ハンガンネット通信】第591号(2026年7月27日発行)

「上級向けの本を2冊担当しました」株式会社HANA ペ・ジョンリョル

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会社を20年以上経営していますが、自分は経営者に向いていないと思うことが多い一方で、本を作るのは今も好きで、締め切り仕事ゆえの苦しい経験を何度経験してもこの仕事が嫌になったことはたったの一度もありません。

社内に編集長がいる今でも、「社長案件」と称してたまに本を担当することがあります。ただし、編集作業に集中できる時間はそれほど多くないので、期限を定めず、進められるときに進めて手が回らないときは待っていただく、場合によっては外部の編集者にお願いする。そんなわがままを著者の方に許していただいています。

HANAでは、新刊を1カ月に1冊出すことにしているのですが、小さな会社なので予定どおりに本が出ないと資金繰りがたちまち苦しくなることがあります。そのため経営者としての立場からは、発売スケジュールを守ることの大切さについて、普段から口うるさく社員に強調しています。

実はこの7月、久しぶりに自分で2冊の本を担当して、ほぼ同じタイミングで校了しました。

だいぶ前に7月の新刊に穴が空くことが分かったので、ゆっくり進めていた自分担当の本のピッチを上げてそこに滑り込ませようとしました。急いで進めてみたところ、それも間に合わないかもしれないということになり、間に合いそうな別の本をもう1冊進めることにしました。その後、どちらも大きく遅れることなく、どちらも7月に間に合いそうな感じになったので、欲を出して同時進行を続けることになりました。こんないきさつで、自ら2冊かぶってしまったのです。

社長業もほったらかして本の方に集中することになり、なかなか大変な思いをしたのですが、結果的になんとか2冊とも期日に間に合わせることができました。

しかし無理をしすぎたせいか、校了の数日後に尿管結石が再発しました。「世界三大激痛」のあれです。会社でしかも夜だったので対処のしようもなく、救急車で病院に搬送されることになりました。

トップの人が病気や寝不足でも頑張る話は特に最近ウケが悪いのでこれ以上書きませんが、今回のケースも(痛いのは自分だったとはいえ)人を管理する立場として褒められた話ではないと思いました。

社長にとって手元の資金が減っていく恐怖は20年会社をやっていても変わりがありません。それが上記の無理をした根本的な原因なのですが、本を作ることで穴埋めするのではなく、資金を手当する方向で対応すればよかったのでしょう。制作に集中し始めると、逆に銀行からの借り入れ準備などに手が回らなくなります。こんな割り切りができないことも、自分が経営に向いていない部分だと思います。

さて、完成した2冊のうちの一つは536ページの『韓国語の重要文型180 中級・上級レベル』という本です。企画から4年かかってしまい、当初予定していた印刷所には「496ページを越える本はうちではもう扱わなくなった」と言われ、用紙代もこの間に大幅に上がりかなり予算オーバーしました。期限を定めずノロノロ進行すると、こういう問題も生じますね。でもなんとか刊行にこぎ着けられたので喜びはひとしおです。

もう1冊は、本ネットワークの世話人を務めていらっしゃる前田先生の『韓国語のディクテーション&音読トレーニング』です。こちらは2014年に出た本の改訂版で、一部ページをカラーにする、用紙を薄く柔らかくする、QRコードで音声再生ページに直接アクセスできるようにするなどの改良を加えました。

しばらく上級向けの本が出せていませんでしたが、6月の稲川右樹先生の『ネイティブっぽい韓国語の話し方』に続き、上級本を久しぶりにHANAから出すことができたのがうれしいです。

『韓国語の重要文型180 中級・上級レベル』

『韓国語のディクテーション&音読トレーニング』

通信583 「本の価格と値上げについて」ペ・ジョンリョル

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【週刊ハンガンネット通信】第583号(2026年6月1日発行)

「本の価格と値上げについて」 株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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HANAが韓国語の出版を始めたのは2007年のことです。1冊目の『KBSの韓国語 標準発音と朗読』は、2色刷り168ページの本で、価格は2300円(以下、価格はすべて税抜)でした。いささか強気な価格設定でしたが、当時は中上級レベルの本が少なかったこともあり、この本は数カ月で増刷に至りました。それからは、この2300円を基準にして数冊の本を出しました。

その後、本腰を入れて出版活動を行うようになり、出版社としての信用や営業力が高まるにつれ、より求めやすい価格にするための努力を続けました。

最初の本の出版から20年近くがたちましたが、現在では、同じような仕様の本は2000円から2300円くらいの価格設定となっています。これで初刷を3000部刷って7、8割売れれば、印税や編集費、校正費、印刷製本費を払っても黒字になる、という感じです。

しかし、こう振り返ってみると、この20年間で、小社では本の価格をほとんど上げていない、むしろ安い価格で本を出しているということが分かります。

出版業界全体が右肩下がりの中で、韓国語分野は好調な部類に入ります。そうなると、語学系ではない他の大手出版社や総合出版社も参入してきます。語学書は、普通の読み物に比べてチェックすべき内容が多く、何人もの目を通したり、音声を制作したりと手が掛かりますが、大手が自分たちの価格感、つまり安い価格で韓国語学習書を出し始めると、それらを意識しないわけにはいきません。

小さい会社が価格競争をしたら、最後には資本力に勝る大手に負けるというのは、よく言われることです。分かっているつもりでも、結果としてこういう状況になってしまっています。

上記の結果にはこういう要因もあるでしょうし、そもそも人々の購買力が低下しているので安くせざるを得ないという心理的な要因もあると思います(デフレマインド)

実は昨年、定価3000円のTOPIK対策書を出しました。高すぎるのではないかという心配をよそに大変よく売れ、現在ではHANAの稼ぎ頭になっています。きちんと手を掛けていいものを作れば、高くても売れる。そう信じてもいいのかもしれません。

読者の立場では、安い方がいいに決まっています。しかし出版社にとっては、自社の持続可能性という問題もあります。成り立たなくなることが、何より大きな問題でしょう。とにかく、本の価格についてはいまだに試行錯誤中です。

今回の中東情勢では、用紙代やインク代に影響が出ています。以前からこれらの資材価格は段階的に上がり続けてきましたが、今回はかなり大きなインパクトがあります。

一例を挙げると、5年前に約110万円だったある本の印刷・製本費が、今回取った見積もりでは、同じ部数で147万円になりました。実に37万円、約35%の値上げです。

こうなると、企業努力で高騰分を吸収するのは、もう無理と言わざるを得ません。

大きなニュースにはなっていませんが、すでに各出版社が次々と値上げを始めています。「出版/価格改定/お知らせ」で検索してみると、値上げのお知らせがぞろぞろと出てきます。

実は、私は本の価格は一度決めたら変更できず、価格を変えたいときは、新装版や改訂版など「別の本」にするしかないと思い込んでいました。しかし最近になって、実はそうではないということを知りました。上記のような「値上げをする本」は、多くの場合、タイトルやISBN番号はそのままで、価格情報(定価表示とバーコード)だけを新しく書き換えたカバーを巻き直して出荷するそうです。

ところが、すでに売り場に出ている本を回収してカバーを巻き直すわけではありません。すると、しばらくの間は、同じ本だけれど価格の違う二通りのものが売り場に混在し得る状況になります。「それはどうなの?」と思いますが、仕方がないようです。

HANAでは今のところ、既刊分について値上げを行う予定はありません。ただ、増刷をする際の見積内容によっては、真剣に検討する必要が出てくるかもしれません。

通信575 「昨年度の韓国語学習書の販売傾向」ペ・ジョンリョル

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【週刊ハンガンネット通信】第576号(2026年4月6日発行)
「昨年度の韓国語学習書の販売傾向」 株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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新年度が始まりました。4月から新たにMLに加入された方が多くいらっしゃるので、少しだけ説明をいたします。

本通信は、韓国語教育に携わっている方を中心に、韓国や韓国語、さらには言語に関わりのある8〜10人ほどの筆者が週替わりで執筆しています。新年度第1号目のハンガン通信がたまたま私の順番になってしまいましたが、私は韓国語教育や教授は専門外ですので、韓国語の専門出版社の立場から駄文を綴らせていただきます。

さて、私の会社HANAも3月決算のため、同じく新年度を迎えました。昨年度の実績が確定するのは少し先ですが、一昨年とほぼ同じくらいの売上になりそうです。「成長がなかった」ということになりますが、昨年度は育休などで人員が大きく減ったので、悪条件の中、社員たちはかなり頑張ったと思います。

日本の出版は右肩下がりを続けていますので、現状維持と言えるだけでも良い方なのかもしれません。出版業界の関係者の話を聞くと、K文学や韓国語の分野は元気があるけど、目も当てられない状況のところも少なくないとのこと。昨今の状況を受けて資材はさらに値上がりするでしょうし、本を日本全国の書店に届けるシステム自体が危うくなっています。私たちも将来を楽観できません。

今回は、昨年度の韓国語学習書の販売傾向について自社の実績を基に見ていきたい思います。

何と言ってもTOPIKの対策書がよく売れました。受験者数が増えていることの反映でしょう。若い受験者が多いようですね。毎回TOPIKを受検しているHANA社員(50代男性)が、以前も女性に囲まれてアウェーだったが、最近は「若い」女性ばかりでもはや居場所がないと言っております。

小社のTOPIKの対策書はすでに定番化して大学での採用実績が良い本が着実に売れていることに加えて、以前から受験者の間で評判の良かった原書を翻訳出版できたことが大きかったです。かなり値段の張る本ですが、高くても必要な本は売れるということを実感しました。

次に売れたのが入門書です。入門レベルは一番需要が多く品数も多い領域で、各社からどんどん新刊が出されていますが、今後もずっと需要があると思います。問題はその中でいかに選ばれるかです。小社は零細版元で書店への営業が弱いのですが、幸いなことに書店さんにも「売れる」と認知される本が揃い、店頭でも良い扱いをしていただいています。

入門書の場合、買ってそのまま「本棚の肥やし」になる率が高いのではないかと思います。この「関門」を越えた人だけが初級学習者となり、単語集や検定対策、文法書など次のレベルの本を手に取るので、ここから先は本の売れ部数がぐっと減ります。本来HANAの強みでもあるのが、このレベルや中級・上級学習者向けの本なのですが、ここ数年は新刊を出しても、最初は売れても、その後なかなか売れ伸びないと感じています。文法書も売れないです。これらの本は、長い時間をかけて「元を取る」、全体のラインナップを構成するために揃えるといった考えで、割り切って出すしかないのかもしれません。

単語集は、小社に関しては検定レベル準拠のものが手堅い印象です。他社もamazonなどのランキングの上位に上がる単語集はやはりTOPIK対応のものが目立ちます。もっとも、アイディアが際立っている単語集で、検定に関係なく売れているものもあります。みんな単語を覚えるのには苦労しているんだなと実感します。

なお、ハングル能力検定試験が今年度から改訂されます。級ごとの単語の入れ替えがそれなりにあったので、以前のハン検基準で級別対応していた単語集は今後順次改訂が行われると思います(現在HANAでも進行中です)。

韓国語学習書の中心的な読者層は、40代から60代までの女性です。20年近く韓国語の出版をやっていますが、この年齢層はほぼ変わらず、時間の経過とともに高くなることがありませんでした。つまり常に人が入れ替わっているといえます。

一方で若い学習者も増えていますが、この層は無料で情報や知識を得ることに慣れていて本にお金を使わないといわれています。しかしTOPIK受験のために対策書はどうしても必要なのでしょう。POSのデータを見ても、TOPIKの対策書の購買者は他の本と比べて明らかに若年層が多いです。

この若年層をどうやって自社の読者に取り込んでいくかが、今後の経営上の大きな課題です。若年層との最も有効なタッチポイント(顧客接点)がYouTubeやTikTok、Instagramなどのショート動画ですが、平均年齢がそこそこ高いHANAにとっては苦手な分野で「束手無策」でした。しかし、この4月からフルタイムで新卒のアルバイト社員(しかも韓国語専攻)が入社したので、その若い感性に大いに期待したいと思います。

最後に、意外なことに韓国で出版産業はここ10年間売上が拡大しています。欧米の国々でも微増か現状維持のところが多く、日本以外の国で衰退しているという話を聞いたことがありません。

韓国ではここ数年MZ世代を中心に、紙の本を読むのがヒップ(Hip=かっこいい)と考える「텍스트힙(テキストヒップ)」というトレンドもあります。KPOPだけでなく、「本を読む人はかっこいい」という、この若者のKカルチャーもぜひ日本で流行ってほしいですね。

通信564「絶版と品切重版未定」 ペ・ジョンリョル

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【週刊ハンガンネット通信】第564号 (2026年1月5日発行)
「絶版と品切重版未定」ペ・ジョンリョル
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前回著作権の話をしましたが、今回も続けて著作権に関することを記したいと思います。

出版社から本を出すとき、通常、著作権者である著者と出版社との間で出版契約を結びます。出版社はこの契約により、著者の原稿に出版権(業界では版権と言うことが多い)を設定し、多くの場合、国内で独占的にその原稿を出版する権利を持つことになります。この場合でも、あくまで著作権は著者に帰属します。

なお、雑誌などでは、原稿料を支払って原稿を書いてもらうことがあります。これを「買い取り」と呼ぶことがありますが、この場合も、契約書などで特段の取り決めがある場合を除いて、出版社は原稿料と引き換えにその原稿の1回きりの使用権を得ているだけで、著作権は執筆者にある(出版社が著作権を「買い取った」わけでない)と解釈されることが多いです。

ほとんどの本は、時間の経過とともに販売が低下します。書店の売り場は限られているのに毎月新刊が出て、常に入れ替わるからです。Amazonなどのオンライン書店はその限りではありませんが、やはり新しい本やよく売れている本が目立つように表示されるので、時間がたった本、売れ行きを維持できない本はやがて先細りしていきます。書店の売り場やオンライン書店での露出を勝ち取るためには、絶え間ない営業・販促活動が必要です。でも出版社も、古い本より新しい本の営業に力を入れる傾向にあります。

さらに出版社にとって、在庫は経理上財産であるため、処分することで会社の利益を圧縮することができます。在庫を持っていると倉敷料(保管料)もかかります。加えて、お金を貸してくれる金融機関は在庫の増加を好ましく思いません。法人税を減らすため、経費を減らすため、よい決算書を作るために、出版社は売れないタイトルから絶版処分を行います。出版社の中には、あまり絶版にしないところもあれば、売れないとみるやさっさと絶版にする出版社もあります。

絶版は「版を絶つ(印刷用の版を廃棄する)」から来ている言葉で、出版社がその本をもう売らない、出荷しないと決めたことを指す用語です。これに伴い、(私が知る限り)倉庫の在庫を廃棄し、著者との契約も終了することがほとんどです。

契約が生きている間は、著者がその原稿を他の出版社から本にすることができません。しかし契約が終了すれば、別の出版社から出すことが可能になります。もし引き受けてくれる出版社があればですが、一度売れなくなった本も内容をアップデートさせて、再び日の目を見られるようになるかもしれません。

一方「品切重版未定」という状態もあります。出版社に在庫がないのに増刷を行わない場合です。増刷をすると印刷・製本費がかかりますが、一定部数売れないとその費用は赤字になってしまうので、ある程度の売上が見込めないときは、出版社も増刷ができないのです。ではなぜ絶版にしないのか? 市中在庫があるから?(返品されたら改装して出荷できる)、取り置き在庫だけはキープしてあるから? 要件が揃ったときに増刷する可能性を残しておきたいから? HANAではこういうケースがないので私もちょっと良く分かりません。

著者にとっては在庫がないので売れる可能性はゼロ。一方で出版権が有効なので他の出版社から出すこともできず「塩漬け」状態になります。人生を懸けて書いた本がそんな状態だったら、困りますね。

こういう場合は、出版社に連絡をして、「もう増刷しないのなら出版契約を終了してほしい」と相談するとよいと思います。応じてくれなくても(そういうことはまずないと思いますが)、多くの出版契約では「契約期限の●カ月前までに文書で知らせない限り1年ずつ自動更新する」といった条項を設けてあります。この場合、逆にいうと、次の更新日の●カ月前までに「更新しない」と文書で通知すれば、契約を終了させることができるわけです。すでに本を出版されていて関心のある方は、ぜひ一度出版契約書の内容を確認してみてください。

通信537「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞くようになると」裵正烈

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【週刊ハンガンネット通信】第537号 (2025年6月27日発行)

「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞くようになると」
   HANA ペ・ジョンリョル
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近ごろ私の周りでは、「何かを調べるとき、検索するよりもAIに聞く」という人が増えています。確かに検索で示されたサイトを見に行き自分で情報を取得するよりも、AIとやり取りして答えを聞くほうが手っ取り早いときもありますよね(AIの回答が怪しいこともありますが)。

小社では「韓国のことばと文化を学ぶサイトhana+(ハナタス)」を2023年12月に始めました。オープン以来ずっと定期的に記事をアップしてきて、これまでに公開した記事の総数は900以上にも上ります。Googleでも韓国語関連の検索を行うと上位に表示されることが多くなってきました。まだご覧になっていない方は、ぜひこのサイトを一度訪れてみてください。アドレスはhttp://www.hanatas.jpです。

最近Googleで検索を行うと、結果ページの冒頭に「AIによる概要」が表示されるようになっていますが、その際、AIが参考にしたサイトが示されます。韓国語関連の検索を行うと、hana+が表示されるようにもなってきました。

当初は「AIにも結構頼られているんだな、よし」と思ったりもしましたが、のんきに喜んでばかりいられません。こうやってソース表示でもされるのならまだましですが、対話型AIのChat GPTの場合はそういう機能はなく、どこから情報を得たのかがすぐ分からないようになっていたと思います。

冒頭で書いたようにAIがウェブ上の情報を集めて回答の精度を上げてどんどん便利になると、ウェブで情報を出している人や企業は困ったことになってきます。多くのサイトは無料で見られるようにしているとはいえ、企業には「広告収入を得るために集客する」「有料会員を増やす」「商品やサービスの購買につなげる」など、何かしらの目的があって人力や費用を費やしてコンテンツを提供しているわけです。

AIが便利になればなるほど、企業は費用をかけてウェブを更新したりSEO対策をしたりする意味がなくなる。サイトが更新されないとAIは新たに得られる情報が少なくなる。するとAI自体もどんどん陳腐化して使えなくなる…となってしまうのではないか。ふとそのように思いました。

この疑問をAIに聞いてみたところ、「【結論】確かに、AI利用の拡大がSEOやWeb更新の意味を変えてしまうことは避けられません。ただ、それは「終わり」ではなく、「新しい情報流通の時代の始まり」と捉えるべきです。いま私たちは、Webができた頃と同じように、新しいルールを作る過渡期にいるのだと思います」となんともモヤモヤさせる回答です。

6月26日の朝日新聞朝刊に「AI学習に書籍無断利用 『購入なら合法』米判決」という記事が出ました。あるAIの会社が書籍(を買って?その)データをAIの学習のために無断利用したことに対し、作家が訴えたが、法廷は「作品をそのまま模倣せず独自の『回答文』を生成しているので合法」だと認めたそうです。

仮にAIの会社が、こんなやり方であらゆる本の内容をもAIに取り込み、元ソースも示さずに別の形で配布し、そしてそれが市民権を得るようになるなら、われわれの商売はもう成り立たなくなります。

先のAIの回答にもあったのですが、「自社コンテンツをAIに利用させる代わりに情報提供者が報酬を得る」ようなきちんとした仕組みが早くできるといいのですが。

通信528「中学生、高校生向けの独習書を出版」 ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第528号 (2025年4月21日発行)

「中学生、高校生向けの独習書を出版」 ペ・ジョンリョル
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2年ぶりに担当した学習書が4月の末に発売されます。タイトルは『ひとりで学べる!中学生と高校生のためのはじめての韓国語』という本です。

この本の録音は韓国で行いました。これまで韓国で録音する際に日本語の声優さんが安定せず、その悩みについてこの通信で書いたことがあります。

しかし、今回の日本語の声優さんは「大当たり」でした。ほぼノーミスでした。

それで今後のためにと、スタジオに連絡して声優さんの名前を教えてもらったのですが、なんと、以前お願いしたことのある人でした。前は録り直しがいくつも生じたので、同じ人でもその時の調子や集中力の問題などがあるのかもしれません。

韓国での録音で困るもう一つの問題として、録音したい音声について、こちらの意図がなかなか伝わらなかったり、声優さん本人が理解・認識できなかったりすることがあります。

今回も発音変化や抑揚のサンプルを録る際にそういうことが生じました。たとえば、簡単な語を使ってアクセントを説明するための音声が必要だったのですが、가수、노래、가요などなど、本で説明した抑揚どおりの音声をなかなか取ることができませんでした。

こういう音声を取るためには、非母語話者に韓国語を教えるための学習書の意図を理解できる人、言語学を学んだ人や日本語話者への教授経験がある人がいいように思います。あるいは、いっそAIや音声読み上げサービスにやらせた方が、感情なしに規則どおりに発声してうまくいくのかもしれません。

蛇足かもしれませんが、この本には「新大久保」という地名が何度か登場します。声優さんは[시노쿠보/シノクボ]と発音すると思い込んでいたら、3人の声優さん全員が[신오쿠보/シンオクボ]と発音してきました。新大久保周辺の韓国語話者たちはみな[시노쿠보/シノクボ]と呼んでいるはずなので、録り直してもらいましたが、今回の声優さんたちが「新大久保」や「大久保」のことを知っていたのか知らなかったのか、なぜそう読んだのかは聞いてみたいところです。

なお、この中高生向けの本は、用言についてはヘヨ体現在形を教え、そこから疑問形、過去形、パンマル、命令形、勧誘形、안(アン)否定形、さらにいくつかの表現を学ぶ流れになっています。

つまり用言は辞書形で提示せず、活用も基本的に学ばないわけです(ただし次の学習段階への橋渡しとして本の最後で説明しています)。

文字と発音、活用以外の文法はもちろん学びます。高校の授業で1年間かけて学ぶ内容を4週間(28日=28課)で習得する構成となっています。

著者は、JAKEHS〔ジェーケーズ=高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク)会員で長年都内の高校や社会人向け講座で韓国語を教えていらっしゃる武井一先生です。

機会があったら、お手に取って見ていただければ幸いです!

通信512「K-POPを使った教材」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第512号 (2024年11月25日発行)

「K-POPを使った教材」
  ペ・ジョンリョル
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今年末のNHK紅白歌合戦の出場者が発表されましたが、K-POPからは、TOMORROW X TOGETHER(TXT)とILLIT、TWICE、LE SSERAFIMが選ばれました。

案の定、ネットには「誰?」「韓国人ばかり」「韓国推しの紅白が招いた“お茶の間”の分断」などという見出しが見受けられます。単に若年層の視聴者を念頭に、その人たちに人気のあるアーティストを選んだだけでしょうし、見るメディアが多様な時代にあって、分断もなにもないと思うのですが…。

私はなんとかすべてのグループ名を字面で知っているくらいですが、若い世代を中心にこれだけK-POPの人気があるなら、商売人としてはなんとかこの人気に便乗しなければと思ったりします。

前々回の加藤さんに続いて、私も歌の話をしたいと思います。

HANAからは、過去に以下の『K-POPで韓国語! 2017-2018』をはじめ『KPOPで韓国語!』というシリーズを計5冊出しました。担当はもちろん私ではありません。

https://www.amazon.co.jp/dp/4295402435/

K-POPの人気曲の歌詞に発音や文法、語彙の説明を付けて、対訳とともに掲載した本です。オンライン書店のレビューでは「知りたい文法事項がたくさん載っていて利用価値が非常に高い」といった評価も頂いています。

このシリーズは素材(歌詞)ありきで編集制作のフォーマットもできているので、作るのは至って楽なのですが、歌詞の使用許可を取るのがなかなか面倒でした。もっとも最近では、韓国の著作権管理団体KOMCAと日本の著作権管理団体JASRACとの提携が進み、データベースも整理されているようなので以前に比べると手続きがだいぶ楽になっているはずです。

これまでに出した5冊では、歌詞を掲載するだけで歌をすぐ聴ける仕組みを加えられなかったのですが、最近ほとんどすべての曲の公式動画がyoutube上にあり、スマホとQRコードが普及したので、今後はそのサイトへのリンクを埋めこんだQRコードを誌面に載せて、スマホから動画に直行して歌を聴いてもらうことが可能です。

語学書ではなく解説書ですが、野間秀樹先生が出版された『KPOP原論』(ハザ刊)がまさにこのスタイルを取っています。さらに今年9月に出版された同書の韓国語版『K-POP 원론』(연립서가刊)にいたっては、なんと400ものQRコードが紙面に掲載されており、動画も併せ見ることで本の内容を立体的に理解できるようになっています。

https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000214379140

韓国語版ではさらなる増補改訂が行われており、アーティスト名索引やおすすめ動画リストが充実しています。私のようにK-POPに明るくないけれど必要に応じて調べたり書いたりしないといけない人間には、ぜひ手元において置きたい資料でもあります。

HANAではK~POPで韓国語を学ぶ本を2018年に出したのを最後に出せていません。他の本で手が一杯だったのが一番の理由ですが、最近のK-POP曲は英語の歌詞が多かったり、単純なフレーズの反復が多かったりして、語学素材として使えそうな曲がなかなか少ないということがあります(調べが足りないだけかもしれませんが)。そして手を挙げる人がいないということも理由の一つです。

私がもう少しK-POPに興味と理解があればいいのですが、かなり前に5人のグループ(東方神起)の次に13人のグループ(SUPER JUNIOR。12人?)が出てきたときに誰が誰だか分からなくなり脱落し、現在に至ります。

さて何年か前、私が東京の韓国書籍専門店チェッコリで偶然手にした本に『우리가 사랑한 아름다운 노랫말』(책비刊。絶版)というものがありました。

https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000001612793

いわゆる7080音楽から90年代音楽まで、101曲の歌詞を収めた本で(上記商品ページから収録曲も見られます)、歌詞の対向面には書き写しのためのスペースが設けられています。

私は韓国で青春時代を過ごしたわけではありませんが、本の中の歌詞を眺めているとじわじわと感じ入るものがあります。こういう企画ならやってみたいんですけどね。

通信504 「スマホのハングル入力方法 どちらが主流?」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第504号 (2024年9月24日発行)

「スマホのハングル入力方法 どちらが主流?」
HANA ペ・ジョンリョル
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小社が運営している国語学習のサイト「hana+(ハナタス)」で常に多くアクセスを集めているのが、「ハングルの入力方法徹底解説! スマホで韓国語を打ってみよう」というページです(https://www.hanatas.jp/study/3273/)。

まったく大したことは書いてないのですが(私が執筆したのでそう言えます)、私のパソコンで「スマホ/ハングル入力」でグーグル検索しても最上位に表示されます。

このページでは、スマホの言語設定方法を説明したのち、쿼티(QWERTY、つまり두벌식=2ボル式のキーボード入力)と천지인(天地人)という二つの入力方法について説明しています。天地人方式についてここで詳しく説明はしませんが(知らない方は上記記事ご参照ください)、もともとサムスンの피처폰(ガラケー)特有のものだったかと思います。

私も以前、韓国携帯を1台持っていて天地人方式でハングルのショートメールを打っていました。ガラケーの10キーでハングルを入力するには優れた方法だと思いましたし、感心もしました。しかし片手の親指入力が得意ではないので、iPhoneを使うようになるとキーボードの両手親指打ちに移行しました。しばらくそれを続けたのですが、今度は指が大きすぎて打ち間違いが多く、結局また天地人に戻っています。

最近社内でその話題が出た際に、小社の30代社員も「自分は以前から天地人方式。でも周りの韓国人の友達からずいぶん珍しがられる」と言います。彼女の周辺の友人はみな2ボル式で、まるで珍しいものを見たように扱われるというのです。

たまたま小社を訪れた韓国の60代男性、40代男女にも聞いてみたところ、3人とも2ボル式使用者で「天地人は昔のガラケー時代のもの」と言い切ります。

気になってネットを検索してみると、「天地人の総本山」サムスン電子も、今年ついに天地人に代えて、QWERTY方式を自社スマホのデフォルト設定にしたというニュースがありました。

https://www.chosun.com/economy/tech_it/2024/03/12/42EQ3UVN3VCZLGTQLT4V6YPG3U/

さらに、あるサイトでは「天地人を使うのは아재」「天地人は아재判別機」などと、若い世代のネタにもなっていました。もう世宗大王が草葉の陰で悲しんでいるに違いありません。

私や小社30代社員のようなガラケー体験世代はともかく、Z世代においては絶滅したのではないかと心配になってきました。そこで現在韓国の大学院に通っている小社の元バイトの女性(20代)に頼んで、韓国に住む彼女の周囲の韓国人はどうか聞いてもらいました。

すると、20代の男女42人に聞いて返事をくれました。結果は、キーボード入力が34人(81%)、天地人が8人(19%)とのこと。若い世代でも天地人を使っている人はいるんですね!

天地人の欠点として、キーボードに比べて打つ回数が多くなることが挙げられますが、実はiPhoneはフリック入力ができるので、その欠点をある程度カバーすることができます(フリック入力についても知らない方も上記ご参照ください)。

余談ですが、小社で今働いているアルバイトの人(1年ほど韓国の学部課程に通ったことがある日本人大学生)に聞いたところ、天地人方式自体を知りませんでした。そこで天地人方式の原理を教えて、フリックによる入力方法をデモしてあげたところ、「これはすごく便利そう!」と大いに興味を示していました。