【週刊ハンガンネット通信】第441号 (2023年5月19日発行)
日本のオーディブックの状況
株式会社HANA ペ・ジョンリョル
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先日久しぶりに新宿で会食し、2次会でゴールデン街に足を伸ばしました。ご存じの方も多いと思いますが、新宿のゴールデン街は、新宿区役所の向かい側に幾つもの細い路地に小さなスナックやバーがひしめき合っている地域で、約300件もの店があるといわれています。
行ってみると、路地が外国からの旅行者でごった返していました。多くの、いやほとんどの店が彼ら・彼女らに埋め尽くされ、街全体が外国勢に占拠されている感じです。これでは古いお客さんは行きつけのお店にいって落ち着いて飲めないでしょう。でも一方で、ここはただの酒飲みから著名文化人まで多種多様な背景の人たちが気安く接し、言葉を交わしてきたそんな場所ですから、今後面白い空間になるのではないかとも思いました(私が行った店では、お店の女性がスマホアプリの通訳機能を使って会話していました)。
実はこの日、オーディオブックに力を入れている韓国の出版社の方を接待しました。そこでは韓国の著名俳優を起用した『100인의 배우, 우리 문학을 읽다』『100인의 배우, 세계문학을 읽다』という商品を出しています。朗読している俳優たちはチェ・ミンシクをはじめそうそうたる俳優たち。韓国語の学習にも活用できそうです(USBメモリー付きの書籍が販売されています。ただし原作のテキストは含まれていません)。
私がオーディオブックというものを意識したのは、20年ほど前、韓国語の学習雑誌を始めてからのことだったと思います。特にアメリカは車社会なので、小説などを音声で聞く習慣の人も多く、かなり普及していると聞きました。
それをきっかけに、学習者が文学作品を韓国語の音声で楽しむ、そんな企画をできないかと考えるようになったのですが、学習者が韓国語の音声だけで文学作品を楽しむのはかなり難しいですし、またその原文と訳も確認したいでしょう。結局、原作ではなくリライト、オーディブックではなく対訳本に音声が付いた形に行き着きました。
『多読多聴の韓国語 やさしい韓国語で読む世界の名作文学』というCD付きの本がそれです。2011年に出したときはまったく売れず、19年に改訂してからは何度か増刷するくらいにぼちぼち売れています。この本の後に、リライトではなく書き下ろしですが『やさしい韓国語で読む韓国の昔ばなし』『やさしい韓国語で読む韓国人物伝 歴史編』という本も出しました。次は『やさしい韓国語で読む韓国名作文学』も出そうと、書きたまった原稿はあるのですが、まだ実現に至ってはいません。
今回韓国からお客さんを迎えることになって、日本のオーディオブック市場について少し調べてみました。日本では「オトバンク」とamazon傘下の「Audible」が主なオーディオブック提供サービスとのこと。Audibleは日本語の作品の他、英語の作品が幅広く選べ、オトバンクは日本の俳優・声優による朗読作品が主で、アニメキャラがアニメと連動して名作を読んでくれる「朗読少女」というアプリも出しています。
一方韓国語のオーディオブックは韓国に윌라というストアがあることは知っているのですが、日本からだと決済ができないようです(윌라については弊社の『hana Vol. 47』でも紹介しています)。
出版業界紙『新文化』(2023年4月27日号)の記事によると、2018年に30億円だった日本のオーディオブック市場は20年に70億円を超え、24年度には240億円に達する予想だそうです。ものすごいスピードで広がっていることになります。
通勤しながら、家事をしながら、ジムでエクササイズをしながら聞いているという人が増えているのではないでしょうか? やはりスマホが普及したことが決定的な要因でしょうね。
私も最近体力作りに励もうと「●●●ザップ」に入会したので、運動と語学学習を一緒にできるようオーディオブックの作品を物色してみました。問題は仕事が忙しくて余裕がなく、たまに行って体を動かすと、その疲れで風邪を引いたり、体に不具合が生じたりして、ジム通いが続かないことです。それでいまだに体力作りの入口にも、オーディオブックによる語学学習の入口にもたどりつけていません。
