【週刊ハンガンネット通信】第457号 (2023年9月18日発行)
「講座の料金設定と講師の収入」
伊藤耕一
=================================================
幡野先生の通信に続き、私もお金にまつわる話題を書いてみたいと思います。
例えば、授業料をいくらに設定すれば良いか、これはとても悩ましい課題かと思います。
自宅の一室を利用して、半年コース(25回)の講座を複数設定しようとする場合、1回当りの講座料金もしくは、1コースの料金をいくらに設定すれば良いのでしょうか?
原則的には需要と供給の関係で決まってくるのですが、そのあたりの関係をどのように考えれば良いのか、飲食店の例を参考にしながら考えてみたいと思います。
飲食店業の場合、よく言われるのが「飲食店の原価は約3割が適正」という指標です。
「原価」とは飲食店の場合「食材費」のことを指します。
例えば1食1,100円のラーメンを考えた場合、スープ・麺・具材・調味料等が330円という意味です。
残りの770円は家賃・光熱水費・アルバイト等の人件費・広告宣伝費・設備の減価償却費・その他経費と利益ということになります。
利益が3割(330円)欲しいとすると、諸経費を440円以内に抑えなければなりません。
続いて、自分が1ヶ月でいくら稼ぎたいかを考える必要があります。
例えば月に手取り30万円くらい欲しいと思えば、額面ではザックリ40万円ほどの利益を得る必要があります。(税金・社会保険料を約25%と仮定。消費税は40万円の中から3万円ほどを納めなくてはならず、実質収入は37万円ほど。)
では、月に40万円の利益を得るには、いくら売り上げれば良いか?
それは「利益÷利益率」という算式で求められ、40万円÷30%=約133万円、月に133万円程度の売り上げが必要となります。
では、月に25日働くとして、一日いくらを売り上げれば良いか?
133万円÷25日=約53,000円となります。(売上121万円+消費税12万円=133万円)

左側の表は顧客の目線で考えた視点、右側の表は、経営者の目線で考えた視点のイメージです。(万円単位で表示しているため、矛盾する箇所はご了承ください。)
次に、ラーメンを一日に何杯売れば良いか?
53,000円÷1,100円=49杯≒50杯、以下の計算では一日50杯としてみましょう。
続いて、1杯作るのに何分必要か?
もし10分なら、50杯×10分=500分=8時間20分、これだと休憩時間もなさそうです。
もし8分なら、50杯×8分=400分=6時間40分、休憩はできそうですが、仕込みや閉店後の清掃の時間は取れそうでしょうか?
このように考えながら、無理そうなら利益を減らす、あるいはアルバイトを増やして食数を増やし売り上げを上げることを考える、時短での調理法を考える、といったことを試行錯誤しながら考える必要があります。
また、これはひっきりなしにお客さんが来てくれる場合の想定ですが、閑古鳥が鳴いたらどうするかも考えなければなりません。
最悪の場合、一日25杯でもやって行けるだろうか? 食材が残ったとしてもロスにしにくい方法はないだろうか? 自分が風邪を引いたらどうしよう? 昨今の電気代やガス代や食材費の値上がりは1,100円で吸収できるだろうか? 等々、リスクについても考えておく必要があります。
韓国語講師の原価を考えるのは、経営方法によって千差万別なので、今回は自宅の一室を教室にして極力諸費用を抑え、自身の人件費のみが必要という前提で考えてみます。
自宅の一室なので、定員は1回当り8人としてみます。
90分授業を一日に4回、間に30分休憩を挟み(90分×4回+30分×3回=450分=7時間30分)、週に5日(月に20日)働くという前提にしてみましょう。
月に40万円を稼ぐには、40万円÷20日÷4講座÷8人=625円となるので、1人の受講生から1講座1回当たり625円の受講料を受け取ることができれば実現できそうです。
1講座25回(半年コース)とすれば、625円×25回=15,625円となり、受講料は1人当たり半年で約16,000円という計算になります。
しかし、全講座に8人が集まるとは限らないので、リスクを考えて半分の4人としてみると、受講料は1人当り半年で32,000円という計算になります。
つまり1回当り1,280円(32,000円÷25回)ですが、受講生は集まりそうでしょうか?
一日に4講座を1人でやって行けそうでしょうか?
このあたりが「需要と供給の関係」を考える場面になります。
もし難しそうであれば、40万円の稼ぎを35万円にしてみる、授業時間を60分にして一日の講座数を増やしてみる、プライベートレッスンを行い単価を上げてみる、オンラインの授業も行い遠隔地の方でも受講できるようにして定員を増やしてみる、平日の午前は休みにして、平日の夕方から夜にかけてと土日に授業をするようにしてみる、等々、条件を変えて試算することになろうかと思います。
いずれにしても、自分自身が満足できる収入を得つつ、受講生に料金をリーズナブルと感じてもらい、受講生が参加しやすい時間帯と手段で授業を行い、働き過ぎにならないように気を付け、リピーターを確保し、、、講師にとっても受講生にとっても持続可能なところで時間とお金の折り合いを付けることになるのだろうと思います。
何となく半年の講座で授業料40,000円とか50,000円などと上から考えるのではなく、1日当り売上〇〇円、1ヶ月当り売上〇〇円、1回当り受講料〇〇円と、受講生の立場も考えながら下から積み上げて計算してみるのが良いのではないかと個人的には思います。
このように考えておけば、価格競争に巻き込まれ価格を維持するか下げるかの判断を迫られた時や、コロナ禍のような減収があった時でも、根拠を持った対策が打てるのではないかと思います。
もしくは32,000円もらえば十分だけど、強気に40,000円に設定してみることも可能になります。
以上は、もし私が韓国語講師を専業でやってみたらどうなるだろうかと何年か前に考えた時の思考法ですが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
