【週刊ハンガンネット通信】第463号 (2023年10月30日発行)
「4技能5領域」
田附和久
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私は前回、学習指導要領改訂に伴う高等学校での観点別評価の実施というトピックをご紹介しました。学校教育の現場から離れている方々はあまりご存じないかもしれませんが、今、日本の小中高校の現場は評価方法の変更というたいへん大きな変化に直面しているという話でした。
今回は関連してもう一つ、学習指導要領の改訂に伴い、小中高校での外国語教育(現状では主に英語教育ですが)の指導目標が、これまでの「4技能」別ではなく、「4技能5領域」別に設定することが求められるようになったということをご紹介したいと思います。
「4技能」が何かはご存じでも、「5領域」というのは初めて聞くという方も少なくないのではないでしょうか。「4技能」と言えば、「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと」、「書くこと」ですが、「5領域」というのは「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと(やり取り)」、「話すこと(発表)」、「書くこと」であり、すなわち従来の「話すこと」が「話すこと(やり取り)」と「話すこと(発表)」に分けられるようになったのです。この変更に伴い、高校英語は、細分化した5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」と、発信能力を強化する「論理・表現」の2種類の科目に再編されました。
現在の高等学校では、英語教育以外の外国語教育はまだあまり多く実施されていませんので、科目の細分化は行われていませんが、私自身は、近年、自らの高校での韓国語授業の目標を5領域別に設定するよう心がけています。そして授業の中では、従来から行ってきた、やり取りの力を養うための会話練習だけでなく、発表する力を養うためのプレゼンテーションやポスター発表の時間も設けるようにしています。
具体的には、「ソウル2泊3日旅行計画の作成と発表」、「日本の高校生が好きな○○ベスト5のポスター制作と口頭発表」といった課題を出題しています。私からは、ルーブリックによる評価基準と、発表の中で使ってほしい文型等をわずかに伝えるのみで、あとは生徒の自発性に任せていますが、多くの生徒はたいへん生き生きとした表情でこれらの課題に取り組んでいます。Papago等のアプリも使いこなしながら作成した成果物やプレゼンテーションはなかなかの水準に達していて、韓国の大衆文化が大好きな、2023年という時代に生きる日本の여고딩たちの生態をよく描き出した内容となっています(여고딩のような単語も私からは教えていませんが、自分たちで学び、使いこなしています)。
さて、一般市民を対象とした講座の場合には、準備したテキストに依拠した授業になることが多く、発表課題等に取り組む機会はあまり多くないのではないでしょうか。受講生の方たちも発表の力を養うことはあまり求めていないかもしれませんが、仕事の現場等ではプレゼンをすることもあるでしょうし、考えようによっては自己紹介も発表の一つの形態と見ることができるかもしれません。
授業のはじめに一週間の出来事等を自由に語ってもらう時間を設けている先生もいらっしゃるかと思いますが、「やり取り」とは異なる「発表」の力を養うという視点で取り組んでみると、少し違った展開へと発展させることができるのではないでしょうか。
2回続けて、高校の外国語教育の現場における近年の変化についてご紹介しましたが、高校の韓国語教育の水準をさらに高めようと努力している仲間たちが集まって高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク(JAKEHS)という団体を組織し活動を行っています。同団体の今年度の全国研修が来る11月25日、26日に東京で開催されます(会場は25日が韓国文化院、26日が目白大学)。ご紹介した観点別評価に対応した授業の実践報告等も行われます。高校で教えていない方でも興味関心のある方でしたら、どなたでも参加いただけます。オンライン視聴も可能です。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。
高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク
http://home.a08.itscom.net/jakehs/
