通信480 「韓国で録音を行うときの問題点」ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第480号 (2024年3月15日発行)

「韓国で録音を行うときの問題点」
ペ・ジョンリョル
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小社では、韓国語学習書の録音の多くを韓国で行っています。なんといっても良い韓国語の声優が多くいます。録音費、声優費も日本に比べて安く、最近では完成したMP3ファイルをネット経由で納品してもらうので、タイムラグもありません。

一方、デメリットとしてはまず、日本語の声優が少ないことが挙げられます。そして、10年以上韓国で録音をしていますが、すごく満足できる人にいまだ巡り会えていません。大きな不満が何かというと、単語のアクセント(抑揚)を間違えることです。

音声の録り直しが生じると、スタジオと同じ声優を再度ブッキングする手間と、最低でも(再録音時間が5分でも10分でも)1時間分のスタジオと声優の費用がかかります。チェック用の音声を聞いたら、韓国語は問題ないのに日本語のアクセントの誤りを見つけてがっくりする、ということがこれまでに何度もありました。さらに、同じ声優さんの再々録音の予定がどうしても合わず、音声が遅れて本の発売に間に合わなかったこともありました。

日本国内で録音するときは編集者や著者が現場に立ち会えるので、あやしい発音に気付いたらその場ですぐに録り直すことができます。それに対し、韓国だといちいち現地に行って立ち会うことができず、上がってきた音声をチェックすることになります。それが韓国で録音することの一番の問題です。

なので、なおさら完璧に発音できる人が求められるのですが、なかなかそういう人がみつからないのです。

日本語の部分だけ日本で録音して、編集で音声を合体させるという方法もありますが、場所や機材が違うと音の雰囲気がまったく違ってしまうそうで、あえて試したことがありません。いまや多くの会社でオンライン会議を取り入れているご時世ですから、できたらZoomなどの中継で録音に立ち会えたら一番いいんですけれど。

ちなみに、韓国語の声優が単語レベルで抑揚を間違える問題はほぼ起きません。これは高低アクセントがある日本語特有の問題でしょう。

話は変わりますが、数年前、大阪出身の方に「ペさん関西の出身ですよね?」と言われたことがありました。東京弁を話しているけど西のアクセントがときどき混じっているとのことでした。でも私は東京以外に住んだことがないので、その自覚がありません。

ところが最近、ある会議の文字起こしをするために、録音された自分の声を聞く機会があったのですが、気を付けて聞いていると、たしかにあやしいアクセントがいくつも混じっています。社内に関西弁でよくしゃべる人がいるので、それがうつってしまったのでしょうか。

前述した韓国での日本語のアクセント問題、声優さんの出身地やスキルの問題かもしれませんが、案外、韓国に住んでいて日本語に接する時間が少ないことにも原因を求められるかもしれませんね。