【週刊ハンガンネット通信】第483号 (2024年3月25日発行)
「英語由来の外来語」
田附和久
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教える仕事を何年あるいは何十年と続けてこられた先生方は、ある単元を教えるときに必ず話すジョークや面白い話などの「鉄板ネタ」をいくつもお持ちのことと思います。私も、それほど多くはありませんが、そのようなネタのストックがいくつかあります。
例えば아야어여を学ぶ際には、「유」を発音する際に口をよくとがらせないと通じないということを記憶にとどめてもらうために、自分が留学した際、「저는
유학생(留学生)이에요.」と発音したつもりが「저는 여학생(女学生)이에요.」と聞こえてしまい、相手に驚いた顔をされたという話を必ずします。
また、次のようなネタもあります。
40年近く前に初渡韓した際、旅を終えて金浦空港に向かうタクシーの中、もうすぐ空港に到着しようというところで、運転技士ニムから
「チャール?」
とたずねられました。
チャール? 朝鮮語を学び始めたばかりだった私は、「チャールといえばチャールモゴッスムニダのチャールかな?」という連想から、楽しく観光したのかとたずねられたのではないかと考え、
「네. 잘 봤습니다.」
と答えてみましたが、反応なし。
それならば、タクシーの乗り心地をたずねられたのかなと思い、
「잘 탔습니다.」
と言ってみても、やはり反応なし。
そして繰り返される「チャール?」の質問。
いったい何を聞かれているんだ!とわからずに混乱しているうちにタクシーは空港に到着し、国際線の出発ロビーの前で停車したのでした。
「チャール?」
技士ニムが指さす赤い鶴のマークを見て、ようやく「チャール」が「JAL」のことだったのだと理解しました。
この話は、英語由来の外来語の発音の聞き取りが難しいという話題になったときに必ず話す、私の「鉄板ネタ」です。
英語由来の外来語は漢字語同様、日本語話者にとっては語彙を大幅に増加させる「強い味方」になるはずのものですが、語頭に有声音がなく、転記の規則も異なり、日本語でカタカナを用いるような表記上の区別もしないため、規則性を身につけるまでは、学習者にとっては逆につまづきになりがちです。
学習者には外来語に苦手意識を持つことなく、上手に味方にしてほしいという意識を持って、私も「チャール」の話などを導入に使いながら、毎学期、教室での努力を重ねています。
この一週間、韓国から伝えられる報道を通して「다저스」という表記や発音に触れ、「タジョスって何?」と戸惑った学習者が多くいたのではないでしょうか。
正解を知り、「なんでドが다で、ジャが저になるの!」と嘆きの声を上げた学習者の皆さんが、そこで感じた素朴な驚きや疑問をきっかけに、身近にいらっしゃる先生方のご指導によって外来語表記への関心をさらに深め、外来語を味方にできるようになったらいいなと思いながら、韓国からのニュースを見ていました。
