【週刊ハンガンネット通信】第487号(2024年4月30日発行)
「日本語的な表現」
伊藤耕一
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4月に半年ぶりに日本に戻って、数週間を過ごしています。
聞こえてくる言葉がほとんど聞き取れるというのは、とても楽なことだと、帰ってくるたびに感じます。
その中で、日本語的だなと感じた表現について書いてみたいと思います。
歯だけは、外国で治療を受けようと思っても海外旅行保険が適用されず高額になることがあるため、一時帰国するたびにクリーニングとチェックをしてもらっています。
今回のチェックでは、幸い虫歯はありませんでした。
その時の歯科衛生士の言葉に、このような表現がありました。
「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」
何気ない表現なのですが、少し違和感のようなものを感じました。
このような表現を英語にすると、こんな感じになろうかと思います。
“OK, let’s check from the upper teeth.”
直訳すると「それでは、上の歯から診ましょう。」といったところでしょうか。
私が気になったのは「診て行きます」という部分です。
英語なら「診ましょう」で済むのに、この場合は「診て」に「行く」を付け加えないと、日本語では少しもの足りない印象を個人的に感じます。
皆さんは、そのように感じられるでしょうか。
ここからは、私の個人的見解ですが「診て行く」のように「診る」と「行く」の2つの動詞を繋げないと、全ての歯の検査をしてもえないような気がしました。
一方で英語は「from」があれば「check」される歯は全てであると解釈できるような気がします。
私の場合、歯の治療はつい身構えがちになる(突然、痛みやしみを感じるのではないかという恐怖に備える)ので、こんな重たいことを言われると、その恐怖が増幅されるような気がします。
なので、できるだけリラックスした状態で治療を受けたいと思います。
そんなことを考えているうちに歯のチェックは終わり、年齢の割には歯茎の出血が少なく悪くはない状態とのコメントをいただき、歯磨きのブラッシングに気を付けるようにとのお話があって診察は終わりました。
「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」を無理して英語に逐語訳すると、こんな感じかと思います。
“OK, I will go and check your upper teeth first.”
家に戻ってから検証のためにDeepLで日本語に訳してみると、は「では、まず上の歯を診てきます。」となりました。通じないこともないようです。
もう一度「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」をDeepLで訳してみると、こうなりました。
“I will now examine the upper teeth first.”
これも悪くはないと思いますが、”OK, let’s check from the upper teeth.”と比べると、少し重たい感じがします。
また「それでは、上の歯から順番に診て行きますね。」をDeepLで韓国語に訳してみました。
「그럼 윗니부터 차례로 진료해 보겠습니다.」
私は韓国で生活したことがないので「차례로」が自然な表現なのかどうか、よく分かりません。
私の第一感では「순서대로」とか「하나씩」が浮かんで来ましたし、「진료해」も今回はチェックなので「확인해」くらいかなと思っていましたが、いかがでしょうか。
自動翻訳が手軽にできるようになったのは良いことですが、翻訳結果が自然なのか適切なのかの判断は、まだ人間がしなければならないなと、そんなことを考える機会となりました。
