通信489 「アンガールズ、アンジャッシュ、アンミカ」田附和久

【週刊ハンガンネット通信】第489号(2024年5月27日発行)

「アンガールズ、アンジャッシュ、アンミカ」
田附和久
==========================================

4月開講の入門クラスは、5月の連休が明けて数週間が経ち、雰囲気が落ち着いてきた頃ではないでしょうか。週1回の授業であれば、文字と発音の学習が後半に入り、今頃パッチムを学んでいるクラスも多いのかと思います。

パッチムを扱う単元は、文字と発音の授業の一つのハイライトと言えるのではないでしょうか。日本語にはない子音で終わる音は、日本語母語話者にとっては、違いを聴き分けることも、正しく発音することも、なかなか容易ではありません。「がっかり」、「はったり」、「やっぱり」、「あっさり」、「うっちゃり」、あるいは「パンと」、「パンが」、「パンも」等といった日本語の「っ」や「ん」の音を例として用いながら、受講生の皆さんに口の中の発音器官を意識してもらい、実際にその音を発音できるように導いていくこの単元の授業は、教師自身の言語学、音声学の理解度だけでなく、それをわかりやすく学習者に伝え、理解してもらう指導力そのものが問われます。

このパッチムを最初に学ぶ授業が楽しく盛り上がり、受講生たちが一つひとつの音の違いを理解して発音できるようになる様子を見るとき、教師としてはこの上ない満足感を味わいます。まさに外国語教師冥利に尽きる瞬間です。ちなみにここ数年私は、以前SNSを通して教えてもらった、「アンガールズ」、「アンジャッシュ」、「アンミカ」という例を用いて「ん」の音の違いを説明するのが好きです。これはなかなか受講生の受けがよく、笑顔になった受講生たちとの間で、「先生、アンジャッシュよりアンタッチャブルのほうがいいと思います」、「あのー、アンミカは芸人じゃないのでは?」等といったやり取りが生まれるのを楽しんでいます。

もちろんこの一回の授業がうまくできたからと言って、それだけで満足してはいけません。現実の対話の中では、반、방、밤のようなミニマルペアの聴き分けや言い分けが求められる機会はそれほど多くなく、実際には、文や単語の中に出てくるパッチムを正しく発音できるようになることこそが求められます。そのための指導は1回だけの授業で終わるものではなく、その後の時間にずっと続いていきます。

パッチムの発音で特に注意が必要なのは、ㄴ+ㄱ、ㄴ+ㅂ、ㅇ+ㄷ、ㅇ+ㅂのような日本語母語話者にとって難しい音の続き方になる場合です。恥ずかしながら、私自身、学習を始めてからの数年間、こうした場合のパッチムの発音を正しくできていませんでした。韓国に留学して、現地の人との会話の中で공장という基本的な単語が通じないという経験をして初めて、自分の発音が곤장となっていることに気付かされたのです。このときはたいへん恥ずかしい思いをしましたが、振り返ってみれば、このときに気付かせてもらえて、ほんとうによかったです。

今、授業の際には私自身のこの恥ずかしい経験も必ず話すようにしています。そして、공장、상담、전부、정부といった単語が出てくるたびに「アンガールズのアン!」、「アンジャッシュのアン!」と声を上げて、注意を促しています。